デンジャー・マウスと Lux Prima チームが編み出した、音楽を五感で体験する方法とは

どんな音楽ストリーミング サービスでも、アクセスすれば、仕事やワークアウト、通勤時間に聴くためのプレイリストがいくつも見つかります。

私たちが音楽を聴く時間はこれまで以上に増えていますが、多くの人にとって、音楽は単にストレスを和らげるためのものであり、他の必要な作業の BGM に過ぎません。

音楽は、いつの間に私たちの人生の裏方に回ったのでしょうか。ノイズ キャンセリング ヘッドフォンの性能が良くなる一方で、コンサートでのおしゃべりはひどくなってきているように思えます。音楽フェスにはたくさんの人が集まりますが、果たして主役は音楽でしょうか。2019 年「聴く」という体験がますます孤独になるという感覚は拭いきれません。

もしあなたがミュージシャンなら、どのように反応するでしょうか。カレン・O とデンジャー・マウスは、この現状からインスピレーションを得て、大胆な新しいプロジェクト「Lux Prima との遭遇(An Encounter with Lux Prima)」を作り上げました。

世界では、たくさんの新しい音楽が次々と生み出されています…多くの人は、年をとると新しい音楽を聴いても若い頃のように感銘を受けなくなってしまいます。しかし、今回の共有体験はそうした人の記憶にも残るものになっている点で際立っているのかもしれません。

– デンジャー・マウス氏

オーディエンスが一体化できる体験を生み出す

カレン・O がパート 1 で語ったように、彼女とデンジャー・マウスは、ニュー アルバム「Lux Prima」を共同制作していたとき、この音楽が「強烈なプレゼンテーション」を求めているのに気づきました。

ほとんどの曲にはたくさんの楽器が使われていますが、音の表現により誰かが楽器を演奏しているイメージが思い浮かぶわけではありません。すべての音は、より一体感のある視覚効果が得られるように重なり合い、リスナーが音楽を聴いて自身を振り返り、めいめいに何かを思い浮かべることができるのだと思います。

– デンジャー・マウス氏

写真:ルイーザ・コンロン氏、マックス・ナイト氏

このようなアルバムの複雑な音をすべてライブで再現するのは至難の業で、私たちは、サウンドを正確に再現するために多くの時間をかけました。ですので、ライブ パフォーマンスは従来とはまったく違ったものになると考えました。

そのためデンジャー・マウス氏は、通常のコンサート ツアーを企画するのではなく、共同制作者のグループと協力して、今までと違ったライブ ミュージック体験のコンセプトについてブレインストーミングを行うことにしました。

プロジェクトの皮切りとして、カレンの家で自由なセッションを開き、アイデアを次々と出しあいました。そこで主な共同制作者の何人かがアルバム全体を聴き、思い描いたイメージを分かち合いました。

ー プロデューサーのマンゴ・マクラガン氏

はじめは、その体験がどのような形になるのか誰にも見えていませんでした。音楽が主役であることと、抽象的なイメージと感覚でそれを補うということでは合意していましたが、予算と場所もまだ決まっていなかった分、制約もありませんでした。そして同時に、何にも縛られないということが最大の課題でもありました。

3 つの都市からの共同制作

変化し続ける現実に合わせて、デザインやアプローチ、スケジュールなどを絶えず見直す必要がありました。クリエイティブ チームは、ロサンゼルス、サンフランシスコ ベイエリア、イギリスに分かれて作業していましたが、DropboxDropbox Paper を使うことで、クリエイティブ関連のあらゆる資料を簡単に共有することができました。

ー マクラガン氏

Dropbox Paper は制作とチーム作業を 1 か所に集約できるワークスペース

デンジャー・マウスの家で 2 回目のミーティングを開いたときには、大きな岩のモノリスを中心に据えた没入型インスタレーション体験というアイデアに皆が引き付けられていました。

モノリスは、ジョシュア・ツリー国立公園の近くに住む彫刻家を通じて、カリフォルニア州フレズノで調達しました。当時すでに、カリフォルニア各地にメンバーがいたので、Dropbox や FaceTime でやり取りして、岩の調達を進めることができたのです。

テクニカル デザインが決まっていくにつれて、プロジェクトも前に進んでいきました。しかしマクラガン氏は、マルシアーノ アーツ ファンデーションを会場として確保できたことが本当のターニング ポイントだったと言います。具体的なスペースに合わせてデザインできるようになったからです。

写真:ルイーザ・コンロン氏、マックス・ナイト氏

「シャドウ ロック」を作る

会場と日程が決まり、コンセプトも明確になりつつあったものの、克服しなければならない課題はまだまだありました。

当初のデザインはとても複雑で臨場感あふれるものでしたが、案の定コストがかかりすぎました。本物の岩を使えるかどうかを巡って、技術的な議論が何度も交わされました。

実際のモノリスは 10 トンもの重さがあります。ただでさえ移動や設置は困難であるのに加え、会場は歴史的建造物であり、いくつもの制約があります。そこでチームは、オリジナルのモノリスを 3D スキャンしたデータから、原寸大のレプリカである「シャドウ ロック」を作成することにしました。

写真:ルイーザ・コンロン氏、マックス・ナイト氏

シャドウ ロックを使うことに決めるまでは、このインスタレーションを実現に必要なすべての技術の中心に位置するものとして、起源的で物理的、かつ具体的な、非常に現実的な物体をイメージしていました。しかし、最終的にこの変更を行ったことで、本物の岩を使った場合よりも多くのオーディエンスにインスタレーションを体験してもらうことが可能になり、ツアーの可能性も広がりました。

プロジェクトの共同制作者を見つけるために、チームはまず、それぞれの専門分野で優れたスキルを備えた上で、ジャンルを超越した仕事をしている人を探した、とマクラガン氏は言います。

カレンとデンジャー・マウス、そしてクリエイティブ ディレクターのバーナビー・クレイは、できるだけ一人一人と個人的に交流したり面会したりしましたし、人となりを詳しく知るために電話で話したりもしました。難しいプロジェクトに長期間一緒に取り組むことがわかっていたので、人柄を知ることも重要だったのです。素晴らしい人材の集まりということもあり、チームはすぐに信頼し合い親密になりました。

マクラガン氏によれば、プロジェクトの最初に彼が行ったことは、すべてのクリエイティブ資料とプロダクション資料を格納するための Dropbox フォルダを作ることでした。

45 名を超える共同制作者とスタッフがいたので、すべての情報を簡単にアクセスできる 1 か所にまとめておくことが肝心でした。また、早い時期から Dropbox Paper を使用して、ショーの詳細なシーケンスを伝えるドキュメントを作成し、何度も行ったグループ通話やビデオ チャットでコメントとして寄せられた各担当者へのメモを添えました。

プロジェクトの間は、さまざまなクリエイターやベンダー、技術者たちが自分の Dropbox ファイルとフォルダをチームと共有していたので、すべてを 1 か所にアーカイブすることが必要になりました。そこでプリプロダクションが終わりに近づいた頃、やはり Dropbox を使って、プロジェクション マッピングで使われるアニメーションやプリビジュアライゼーション、未加工の映像ファイルのすべてをまとめました。Dropbox スマート シンクを使うことで、大容量のファイルはオンラインのみに保存することができました。

このインスタレーションの制作は終わりましたが、プロジェクトを将来再演するための参考資料として、Dropbox 上のプロジェクト ファイルはまだ参照しています。

デンジャー・マウス氏は、信頼できる多くの人に仕事を託したおかげで、よどみなく共同作業を進めることができた、と感想を述べています。

クリエイティブな作業に携わったすべての人が自分の仕事を全うして、それが最終的な成果物の中で本当にうまく調和しています。誰がどこから作業を始め、誰がどこから引き継いだのかはほとんど見分けがつきません。

パート 1 「カレン・O、没入型インスタレーション作品の制作について」もぜひお読みください。

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