離れている同僚と効率的に共同作業をするには

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ここ数十年の間で情報通信や通信メディアが急速に発展し、分散した作業が格段に容易く、よりスピーディーで効率的になりました。多くの企業が、地域や時間、文化、組織といった垣根を越えて共同で作業をするバーチャル チームを導入することで、作業プロセスの分散化に対応してきました。もはやバーチャル チームは、同じ場所にいないという限られた文脈で定義されるものではなく、何らかのテクノロジーを使って共同作業するチームという、より広い文脈で定義される存在になりました。いつどこでも欲しい情報が得られるテクノロジーにより、バーチャル チームとチームは単なる同義語になったのです。

ジェニファー・ギブス博士は、カリフォルニア大学サンタバーバラ校のコミュニケーション学の教授です。博士はこれまで 20 年間、グローバルなバーチャル コラボレーションについて研究してきました。主な研究テーマは、多種多様な境界を越えてチームの共同作業を可能にする方法、チームが直面するコミュニケーションの課題、その課題を克服するためのテクノロジーの活用方法です。

「コミュニケーション技術がソーシャル志向でインタラクティブなものになったことで、バーチャル ワークの研究はこの 20 年の間に変化してきました」とギブス博士は言います。

博士の研究が始まった 1990 年代はちょうどインターネットが成長しつつある時代で、タイムゾーンが異なる地域の人たちでチームを組むという考え方が形になり始めていた頃でした。
バーチャル チームのメンバーはパソコン画面の向こう側にいて、コミュニケーションを取るために利用できる技術はメールにほぼ限定されていたので、チームは分断され、メンバーは孤立していると思われていました。
そこでギブス博士は、バーチャル ワーカーがお互いのつながりを深めるための方法に注目して研究を進めました。ここ 10 年の間にテレビ会議やメッセージング アプリなどのインタラクティブなテクノロジーが広く普及したことから、研究の主眼は、こうしたテクノロジーを使ってチームがどのようにして最善のコラボレーションを行えるのかという点に移りました。
常に誰かとつながっている現代。博士の研究では、働く人々が心身の健康を維持するためにつながりを断って解放されるには、どのような支援が必要かを模索しています。

今や世界的なパンデミックによってテレワークの拡大が勢いを増し、多くの人がオフィスを離れざるを得なくなっていますが、それに伴い、バーチャルなチームが増加したときに仕事がどのように変わるのか、何が課題なのかが見えてきました。

  1. 課題を認識する
  2. 同期型と非同期型のコミュニケーションを使うタイミングを見極める
  3. 計画や事前作業をもっと増やす
  4. 地方拠点のチームにも均等な機会を与える
  5. ソーシャルなやり取りをもっと意図的に行う

1. 課題を認識する

Basecamp のように、創業当初からテレワークを導入している企業も多くあります。そうした企業がずっと取り組んできた課題が、今では普遍的なものになりました。

「テレワークの導入に苦戦している企業は、結局、離れた場所にいる社員でオフィスを再現しようとし始めます。これは、物事の自然な成り行きとも言えますが、実は正しい方法ではありません」と、Basecamp 共同創設者のジェイソン・フリード氏はテレワークに関する最近の Q&A で述べています。

「対面でのミーティングをすべて Zoom 会議に置き換えるべきではない」とフリード氏は言います。いつも相手と時間を合わせてコミュニケーションを取っていると、疲れてしまう恐れがあるからです。ここ数か月、在宅で仕事をしている人の多くが「Zoom 疲れ」を経験しています。言語的でないサインを読み取れないオンライン会議は、対面でのミーティングよりも疲れを感じます。話されている言葉に脳が強く集中し、常にアイコンタクトを図り、表情を読み取ろうとするからです。会議室を渡り歩くこともなく、たいていの場合、ミーティングの合間に頭を休めるための休憩時間もほとんどありません。

バーチャル ワークが世界的に増えれば、企業の本社のほうが支社よりも地位が高くなる「本社は何でも知っている」シンドロームが悪化する可能性も大です。ギブス博士は、「グローバルに連携して仕事をしているチームで、場所によってステータスの違いが生じるのは避けられない」と言います。本社で働いていれば、廊下での会話など、情報を入手できる場が増え、内部事情を把握しやすくなります。多くの場合、意図されたものではありませんが、これがリソースの分配や責任分担の不平等につながることは偶然ではありません。

そして、おそらく人として最も厄介な問題は、私たちがかつてないほど社会的交流に飢えていることです。

「オフィスにいると、いつも人に会って雑談をするのが当たり前です」とギブス博士は話します。「オンラインでのコミュニケーションで一番難しいのはそれです。たいていの場合、オンラインでするのは仕事中心の話で、要点を述べて情報を共有しているだけです。」

ギブス博士はこの 20 年間の研究の中で、こうした課題とバーチャル チームがどのように取り組んできたかを探ってきました。博士が学んだことをもとに、いくつかのヒントをご紹介します。

2. 同期型と非同期型のコミュニケーションを使うタイミングを見極める

ギブス博士は、「どちらのコミュニケーション形態も重要だが、使い方は区別すべきだ」と言います。最も効率的な働き方を見つけ、コミュニケーションのミスをなくすため、チームの仕事にどちらのタイプのコミュニケーションが最も適しているかをメンバー自身が把握することを博士は推奨しています。Dropbox の依頼で The Economist Intelligence Unit が実施したナレッジワーカーに関する新しい調査では、回答者の半数以上が、在宅で仕事をするようになってからコミュニケーションのミスが増えたと答えています。

「非同期型コミュニケーションは情報の伝達に適している」とギブス博士は主張します。「人と共有したい文書やレポートがあるときに、面と向かって全文を読み聞かせることはありませんよね。それに、その場でメモを取ったり、言われたことを復唱したりする負担もなくなります。すべて自分の好きな時間に読むことができるのです。関係を築いたり、意思決定をしたり、ビジョンや目標を決めるなど共通の意義を定着させたりするには、同期型のほうが適しています。」

コロナ禍に見舞われてから、オーストラリアの Dropbox コミュニケーション チームは、自分たちに適した働き方を模索してきました。そして、テレワークを主な働き方とするバーチャル ファースト宣言の発表を受け、同チームは、今後は在宅勤務が多くなることを実感し、コミュニケーション方法を意図的に選ぶことの大切さをはっきりと自覚しました。

「アジア太平洋地域および日本(APJ)チームには、同期型と非同期型のコミュニケーションをいつどのように使用するかのベスト プラクティスを記載した、就業規則のような文書を作成しました」と語るのは、Dropbox で APJ のコミュニケーション担当責任者を務めるリー・トランです。「この文書には、相手の時間を尊重し、自分の予定を他人に押し付けないようにするため、チームとして、またチーム外の人と、どのようにコミュニケーションを取って共同作業をするかについてのヒントが書かれています。」

このプレイブックでは、チャットやビデオ会議は同期型の作業方法に、メールや Dropbox Paper での作業は非同期型の作業方法に分類されています。同期型の作業については、ミーティングの議題を前もって送信し、毎週のミーティングを 25 分以内に終えることを提案しています。非同期型の作業については、ドキュメントの中に背景情報をできるだけ多く盛り込み、見直しや承認が必要なものについて明確な指示を添えることを提案しています。

3. 計画や事前作業をもっと増やす

「テレワークでは計画と事前の作業がさらに重要になります。物理的、社会的な背景を読み取る手掛かりが少ないと、オンラインでのやり取りに時間がかかるからです」とギブス博士は言います。「そして、時間がかかると Zoom 疲労を感じる恐れが強まります。」

周到な計画を立て、あらかじめ情報を提供することで、バーチャル ミーティングを議論や意思決定のための最適な時間にする準備が整います。また、社会のダイナミクスを強めるためにも役立ちます。たとえば、Zoom 会議のメンバーをブレイクアウト ルームに分けるのは時間がかかり、事前に詳しい検討が必要ですが、結果としてメンバーはより個人的な交流を持つことができます。カンファレンスやトレーニングのような長いイベントでは、短いセッションやバックアップ プランを用意したり、うまくいかなくなった場合に備えて時間の余裕を確保したりと、ライブ イベントよりも詳細に構成を計画することが重要です。

4. 地方拠点のチームにも均等な機会を与える

MIT Sloan Management Review で発表された研究によると、世界各地に分散している拠点の従業員が対等な立場で働くことが、企業の業績拡大や成長、地方拠点の貢献度アップ、横の交流の充実につながることが明らかになっています。

均等な機会を与えるためには、ミーティングに時間を割くのではなく、たとえば、ヨーロッパとアジアのオフィスをどちらも優先し、共通のコミュニケーション基準を確立し、文化の違いを学んで理解するための時間をかけること。ギブス博士はそれを推奨しています。また、オフィスで同僚とおしゃべりをするのと同じように、リモートのチーム メンバーとのチャットにも時間をかけることが大切です。

5. ソーシャルなやり取りをもっと意図的に行う

「人間は社会的動物である」とギブス博士は言います。「私たちは、知識や機会、社会的支援の獲得など、ソーシャル キャピタルという形でも他人との関係から利益を得ています。ペットや子供、持ち物など、同僚の家庭環境を Zoom で垣間見ることは、同僚のことをより深く知るチャンスになります。」

多少の手間は増えますが、ミーティングで仕事の話をするだけではなく、打ち解けたソーシャルなコミュニケーションを取り入れるようにすれば、リモートの同僚と交流する機会を作ることができます。最初のぎこちなさを乗り越えさえすれば、バーチャル ハッピー アワーやコーヒー ブレイク、ゲーム ナイトなどを開催することで、人間関係を築くことができます。

ギブス博士は次のように述べています。「最も重要なことは、プロジェクトの目標とその達成方法について考えるときも、次のチーム イベントを計画するときも、常に世界各地の同僚やパートナーのことを忘れないことです。」

このようなソーシャルな交流は、職場環境がさらにリモート化し、バーチャル チームが拡大し続けるにつれて、より重要になっていくでしょう。