マーケティングミックスの基礎知識と 5 つの実践理論を紹介

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マーケティングミックスについて詳しく知りたいとお考えですか?マーケティングミックスは多様な業界で利用できる理論なので、さまざまなビジネスシーンで役立ちます。既存の商品やサービスを改善したい、新規顧客を獲得するためにどうすればいいのか、など今後の企画・営業戦略の参考になるはずです。

本記事ではマーケティングミックスについて、基礎から詳しく紹介します。専門用語は少ないため、ビジネス書に明るくない人でも読みやすい記事となっています。

マーケティングミックスは昨今のソーシャルやウェブ環境にも通用する理論なので、本記事をご覧いただき、ぜひ今後のビジネスで実践してみてください。

目次

1. マーケティングミックスとは?
2. マーケティングミックスを成功させるための 2 つの準備
3. 4P、4C だけじゃない!マーケティングミックスの実践理論 5 選
4. マーケティングミックスを極めるための書籍 3 選
5. まとめ

1. マーケティングミックスとは?

マーケティングミックスについて、基礎的な知識から紹介します。大まかに概要を知っておくと、あとに紹介する具体的な理論もわかりやすくなります。

1-1. マーケティングミックスの概念

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マーケティングミックスとは見込み顧客に対して、さまざまなマーケティングの手法を組み合わせて、アプローチすることです。ポイントは「見込み顧客」をメインに考えることです。

現代人の多様なニーズに対応しなくてはいけないからこそ、そのニーズに対応すべくさまざまなマーケティング手法が生まれてきましたが、どの理論も見込み顧客をメインに考えられています。

見込み顧客への考えが抜けていれば、たとえ成功事例の多数あるマーケティング理論を実践しても、成功しないでしょう。

1-2. マーケティングミックスと 4P

マーケティングミックスと調べると、「マーケティングミックスは 4P のこと」と説明されることもありますが、4P はあくまでマーケティングミックスの中の代表的な 1 つの手法であり、マーケティングミックスは 4P だけを指す言葉ではないと思います。

ちなみに、マーケティングの 4P とは

  • Product(製品)
  • Price(価格)
  • Promotion(プロモーション)
  • Place(流通)

の 4 つの P を組み合わせて実践するマーケティング理論です。

マーケティングミックスのさまざまな理論については、のちほど紹介しますが、「マーケティングミックス=マーケティング 4P」で思考を止めてしまうのはもったいないです。

※「マーケティング 4P」や 4P から派生した「マーケティング 4C」については、「マーケティングの 4P とは?基本的な考え方を 10 分でマスターする」をご覧ください。

1-3. マーケティングミックスの成功事例

マーケティングミックスの成功事例を紹介します。マーケティングミックスの中でも代表的な 4P を駆使した例で、キリンビバレッジ(以下キリン)の「午後の紅茶エスプレッソティー」です。

キリンは「午後の紅茶」で成功を収めていますが、缶コーヒーユーザーにもアプローチしようと考えました。そこで缶コーヒーに近い紅茶を作り出すことにします(Product)。

キリンは「FIRE」という缶コーヒーのノウハウも利用し、缶コーヒーが置かれてある棚に缶コーヒーと似たサイズで新商品を置くという戦略に行きつきます。コンビニでは従来缶コーヒーと午後の紅茶が置かれる場所は違っていたので、缶コーヒーユーザーを獲得するために、缶コーヒーが置かれている棚に缶コーヒーのパッケージで紅茶を配置するというのは、絶好のアイデアでした(Place)。

価格帯もその他缶コーヒーと変わらなかった、というのも、見込み顧客はすんなり受け入れやすかったのかもしれません(Price)。

缶コーヒーと似た購入者を見込み顧客に想定し、パッケージもコーヒーと似たスマートさを出したデザインに。CM に起用されていたジローラモ氏が、今までの女性向けの紅茶というイメージを一新させました(Promotion)。

このようにマーケティングミックスはさまざまなマーケティング要素を使い、商品の販売戦略を実践していきます。

2. マーケティングミックスを成功させるための 2 つの準備

マーケティングミックスを成功させるために準備することがあります。それは「見込み顧客の想定・分析」と「自社の分析」の 2 つです。

「どのような相手(見込み顧客)」に「どのような自社の商品」を提供するかを考えることで、マーケティングは成功に近づきます。

2-1. 見込み顧客を想定・分析

見込み顧客は「彼らの持つニーズ」と共にイメージを作ります。どんな相手にアプローチするかは、どのような欲求(ニーズ)を持っているかを探ると見えてきます。

2-1-1. 社会的流行から見込み顧客を想定

今の社会で流行しているものをもとにニーズを特定し、見込み顧客を考えます。見込み顧客のライフスタイルをメインに考える方法です。

たとえば「健康」「環境」「地域活性」などは新聞や TV、雑誌でよく報じられるニュースのネタで、特に「健康」というジャンルにおいては、「健康=運動」という一般的な考えから「健康=お茶」という考えを普及させた「ヘルシア緑茶」や「特茶」が有名ですね。

健康になりたいという大きな欲求に加えて、「ラクに健康になる方法」という欲求もビジネスマンは多く抱えていました。そのニーズをうまく満たす商品が上記のお茶でした。

このように「流行のジャンル(たとえば健康)」に加えて、さまざまな欲求が眠っているので、「自社が提供可能な商品」の特徴を念頭に「プラスアルファのニーズ」を特定し、見込み顧客を想定することも可能です。

2-1-2. ライバル会社を参考にする

ライバル会社を参考に見込み顧客を想定することも可能です。ライバル会社の顧客をターゲットにする、もしくはライバル会社の顧客とは、少し違う顧客を狙いにいく、というすみ分けもできます。

あの企業は自社商品を「○○の欲求を持つ人」に提供しており、「▲▲のようなプロモーション」で、「■■の販売経路」を使っている、などライバル会社の戦略を詳細に調べることで、その企業の顧客が見えてきます。たとえば下記のように考えます。

“調査したライバル企業の顧客を見ると、○○の欲望をもつライバル企業の顧客に対しては、自社も有効なアプローチができそうだ。ライバル企業の○○の欲望をもつ顧客を自社の見込み顧客にしてみよう。しかもその見込み顧客はまだ市場に多くおり、ライバル企業もアプローチしきれていないようだ。”

このようなイメージで、ライバル企業の顧客から自社の見込み顧客を想定します。

2-1-3. 社会情勢の変化から見込み顧客を想定

社会情勢とは「法律」「経済面」の観点をもとに、見込み顧客を想定する方法です。

法律面では、2014 年の消費税の引き上げは大きな話題になりました。消費税が引き上げられたことにより、消費は落ち込みを見せ、日用必需品の売り上げは減少傾向にあるそうです。ここでたとえばビールの売り上げ落ち込みが激しいようであれば、ビールの代用になるものを欲する人が増えそう、など見込み顧客を想定することは可能です。

経済面でいえば、円安になったことで、この 2 ~ 3 年で訪日観光客が急激に増えました。訪日観光客が増えたことで、英語を話せる人、英語を翻訳できる機会の需要は増えたかもしれません。また、観光客の宿泊用ホテルの不足も問題になっていますね。

このように法律、経済面の変化から生まれるニーズを予想し、見込み顧客を想定することが可能です。

2-2. 自社を分析する

マーケティングに自社の分析は欠かせません。今できること、できないことを認識するだけではなく、「今できないけれどもそれが見込み顧客を獲得するために必要な要素」といったことも見つかる可能性があります。

2-2-1. マーケットのポジショニングを知る

自社がマーケットの中で、どのようなポジションにいるか、ざっくり把握します。経営学者マイケル・ポーターが提唱した企業の 4 つの立ち位置が参考になります。

■マーケット・リーダー
マーケットシェア NO.1 の企業で、資金も経営資源も豊富

■マーケット・チャレンジャー
マーケットシェアの NO.2 におり、マーケット・リーダーとは差別化を図りながら、市場の多くを占める企業

■マーケット・フォロワー
マーケット・リーダーやマーケット・チャレンジャーと似たようなことを行い、攻める企業

■マーケット・ニッチャー
他企業とは競合しないように、特定の領域で勝負する企業

この立ち位置を知ること自体に深い意味はありませんが、この立ち位置を把握したうえでとる戦略には違いが出てくるはずです。

次の SWOT 分析で自社の分析をさらに進めましょう。

2-2-2. SWOT 分析でさらに自社を分析

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自社の分析を SWOT 分析で詳細に行います。SWOT とは Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威) の頭文字をとった言葉です。この 4 つの要素から自社の内部環境と外部環境を分析します。

ここでも見込み顧客をメインに考えます。外部環境とは、見込み顧客を取り巻く「社会情勢」「生活水準」や「ライバル会社」などで、反対に内部環境は見込み顧客に商品を提供する自社の状況です。想定した見込み顧客へ提供できる「自社商品の質」や「人手」「人脈」などです。

見込み顧客に対して、自社にはどんな強みや弱みがあり(内部環境)、見込み顧客の周りはどのようなチャンスや脅威(外部環境)があるかを詳細に分析します。

漠然と各要素を挙げても意味はないので、さきほど 2-1. で想定した「見込み顧客へのアプローチするうえで」ということを忘れずに分析を行いましょう。

3. 4P 、4C だけじゃない!マーケティングミックスの実践理論 5 選

マーケティングミックスは 4P と 4C に限らず、多種多様です。さまざまなマーケティング要素を組み合わせることで、時代に沿ったマーケティング理論、つまりマーケティングミックスになります。

ここではマーケティングミックスの理論を 5 つ取り上げています。あなたの見込み顧客に対して、最善なアプローチを探してみてください。

3-1. ホリスティック・マーケティング

ホリスティック・マーケティングとは 4 つのマーケティング方法を包括的に起用する方法で、経営学者フィリップ・コトラーが提唱する理論です。

いずれも見込み顧客を第一に考え、見込み顧客を取り巻く社会にもアプローチすることで、息の長い経営活動を可能にするマーケティング手法です。

■リレーションシップ・マーケティング

見込み顧客に加えて、ビジネスパートナーまで相互に良い関係を築くための施策です。

見込み顧客が商品を購入する前のサービスや購入後のケアが良ければ、リピーターになる可能性は上がります。また見込み顧客へアプローチする中で、協力した事業者にも満足してもらえる待遇や付き合い方をすれば、見込み顧客へのサービスが向上するかもしれません。

自社と接点を持つさまざまな人たちと良好な関係を保つことが自社に良い結果をもたらしてくれます。

■統合型マーケティング

4P や 4C などの複数の要素を統合し、顧客へアプローチする施策です。これは「マーケティングの 4P とは?基本的な考え方を 10 分でマスターする」をご覧いただくとわかりやすいです。

■インターナルマーケティング

インターナル(internal)は自社内に向けた施策です。

見込み顧客と良好な関係を築くためには、マーケティング部の人が頑張るだけでは足りません。経理部の人も顧客と良い関係を築くためには必要です。事業に関わるすべての人の意欲や姿勢、行動を管理する必要があります。

■社会責任的マーケティング

自社がいかに社会へ貢献しているか、の施策です。社会福祉などの直接的な行動だけではなく、自社の商品がどのようなかたちで人々の生活に貢献し、社会活動へ影響するか、を把握し、意識することは重要です。

自社のブランディングにもつながることなので、長期的には商品やサービスの価値を向上することになります。

3-2. サービス業向け マーケティング 7P

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マーケティングの 4P は、Product(製品)、Price(価格)、Promotion(プロモーション)、Place(流通)で構成されますが、さらに以下の 3 つを加えて 7P という考えもあります。

  • Personnel(従業員やビジネスパートナー等)
  • Process(手順)
  • Physical Evidence(物的証拠、環境)

マーケティングの 4P はモノの商品がイメージしやすい考えで、サービス業においては不十分だろう、ということで追加された 3P です。

たとえばレストランの場合、従業員(Personal)が気持ちのいい笑顔と共に、きびきびと親切丁寧に(Process)料理を提供してくれれば嬉しいものです。それに加えてお店の雰囲気や内装(Physical Evidence)も気に入るようであれば、デートでも家族で来店した場合でも、また来ようかなと思えますよね。

形に残らない無形のサービス面においては、これら 3 つの要素も考えておくと、価値をさらに向上させることができるでしょう。

3-3. One to One マーケティング

One to One マーケティングは見込み顧客ひとりひとりに対して、アプローチしようという理論です。

見込み顧客の趣味嗜好を的確に捉えていくには、膨大なデータが必要です。スーパーやコンビニでは POS データ(レジに記録されるデータ)を使い、商品購入者の傾向を読み取ることができるため、今や多くの企業がこのデータで対策を練っています。

「あなたにおススメです!」といって、閲覧者ごとに商品を表示させる Amazon や、「関連記事」として閲覧者の cookie(ページの閲覧履歴)ごとに、サイト内のレコメンド記事を表示する Yahoo! なども One to One マーケティングの一例といえます。

一方で、個人レベルでも One to One マーケティングは可能です。

Web マーケティングの DMP 広告では、見込み顧客に向けて、比較的安く広告を表示させることも可能になっています。また、SEO を使えば、見込み顧客の検索ワードを想定し、コンテンツを作ることで、見込み顧客にアプローチすることができます。

※Web マーケティングについては「ゼロから始める Web マーケティング|基礎知識から最新事情まで解説」も参考にしてください。

見込み顧客の行動履歴となるデータを活用し、見込み顧客のニーズに対して、商品やサービスを作ることは、昨今において難しくなくなっています。

3-4. パーミッションマーケティング

パーミッションマーケティングとは、見込み顧客に対し、許可(Permission)を得てアプローチしようとする理論で、Yahoo! の元副社長セス・ゴーディンが提唱しました。

TV や雑誌の広告、Web 広告では、一方的に見込み顧客へ見せることで、見込み顧客の邪魔になるような場合もあります。それでは効果は減ってしまうので、許可を得たうえで、マーケティングを行おうという考えです。

これは One to One マーケティングを行う際にも参考になりますね。

我々が多く目の当たりにするパーミッションはメルマガではないでしょうか。たとえば何かの無料会員登録をすると同時に、「関連情報のメルマガを受け取る」といったチェックボックスも近くにあることが多いです。

しかし「会員登録だけがしたい」ユーザーにとっては、たとえ許可をとっていたとしても邪魔になり得る可能性はあります。

そこで配信するメルマガにはこちらから配信したい情報だけではなく、見込み顧客の得になるポイント還元などのキャンペーン情報も織り交ぜ、有効な関係を結ぶことを前提として、アプローチするといいでしょう。

顧客第一の考えはどのマーケティングにおいても変わりません。

3-5. オムニチャネル

見込み顧客とあらゆる販売経路(チャネル)から接点をもとうとする理論です。最近ではO2O(Online to Offline)マーケティングという「ウェブ上での購入(オンライン)をリアル店舗(オンライン)に促す」ことが増えています。

オムニチャネルは O2O マーケティングをさらに発展させた考えで、企業が持つ「ウェブ+リアル」のすべてのチャネルを統合させて利用しようとする考えです。

代表的な例でいえば、セブン & アイ・ホールディングスがあります。同社は「オムニ 7」というサイトをもっています。

「オムニ 7」で「イトーヨーカ堂」や「ロフト」などの商品をネットで購入したのち、それをグループ会社のリアル店舗で受け取りや決済が可能。リアル店舗を数多く持つ同社だからこそ、あらゆるチャネルで見込み顧客と接点をもとうとする取り組みです。

セブン & アイ・ホールディングス並みのオムニチャネルのマーケティングを行うのは通常難しいですが、O2O という考えのもと、リアル店舗とウェブをうまく融合させる取り組みは今後も注目度の高い課題となりそうです。

4. マーケティングミックスを極めるための書籍 3 選

マーケティングミックスを極めるためにはここで紹介する 3 つの書籍も参考になります。各マーケティングの成功事例も書かれているので、ぜひご覧ください。

4-1. この 1 冊ですべてわかる CRM の基本

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CRM(Customer Relationship Management)は本記事でも何度もお伝えした「顧客をメインに考える」ということに直結します。Google や Amazon の例に限らず、さまざまな企業の成功例も挙げながら CRM について解説しています。

4-2. コトラーのマーケティング 3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

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コトラーのマーケティング理論は昨今のマーケティングにおいて大変役に立ちます。近代マーケティングの父とも称される彼(なんと 1931 年生まれ)が、昨今の SNS などソーシャルにまで言及した本書は一見の価値ありです。

4-3. 〔エッセンシャル版〕マイケル・ポーターの競争戦略

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2-2-1. マーケットのポジショニングを知る」でも紹介したマイケル・ポーターの著書。マーケットの中で競争していくための方法論について詳しく言及しているため、見込み顧客を想定したのち、どのような戦略を組み立てていけばよいのか、の参考になるでしょう。

5. まとめ

マーケティングミックスについて紹介してきましたが、「マーケティングの 4P とは?基本的な考え方を 10 分でマスターする」の基礎的な考えと同様に、マーケティングミックスでも「顧客第一」の考えは一貫していました。

時代の変遷とともに変わる人々のニーズを効率的に、的確にアプローチするために生まれたマーケティングミックスの考えは、「顧客第一」の視点さえ踏まえていれば、いたってシンプルだったと思います。

マーケティング理論の根幹を忘れなければ、次々出てくる新しいマーケティング理論に戸惑うこともないはずです。簡単に答えを出せないのがマーケティングですが、その根っこを忘れずに、時代に合ったマーケティングを実践していきましょう。

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