情報アーキテクチャを活用して、分散化した仕事環境をもっと快適に

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在宅勤務をしていると、同僚と適切にコミュニケーションできているかが、わかりづらいものです。たとえば、メールをもっと簡潔にすべきなのか、あるいはもっと詳しく説明したほうがよいのか、と悩むことがあります。

同僚は情報が多すぎて困っているかもしれません。逆に、連絡が回ってこないと感じているのかもしれません。これまでのように表情やボディ ランゲージが見えなくなってしまった今では、判断のしようがありません。

ビデオ会議では、これまでのように対面に近いやり取りをすることは可能です。
しかし現在の業務の大部分を占めているのは、文書によるコミュニケーションです。このような状態で、メールや議事録、プロジェクト計画、クリエイティブ ブリーフを、混乱なくわかりやすい内容にするには、どうしたらよいのでしょうか。

一般に「情報アーキテクチャ」とは、デザイナーや UX ライターがウェブサイト上のコンテンツ構造を考え、データを提示することです。しかしウェブ以外でこの用語が使われる場合、その意味は異なります。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大によって、まったく新しい状況も生み出されました。

チーム メンバーは、オフィスに出社しなくなり、メンバー同士も物理的に離れて働くことになりました。新しいコラボレーション ツールを使い始めた人も多く、適切な情報にたどり着くまでに時間がかかる人もいるかもしれません。

何重にもネストされたフォルダ構造を掘り下げながら、時には統一感のない命名規則や分類方法に困惑していると、さながら迷路の中を進んでいるような心持ちになります。

Dropbox はコンテンツを状況に合わせて整理することで、チーム メンバーが必要な情報を簡単に見つけられるようにしたいと考えています。

今回は情報アーキテクチャを活用して、適切な構造を維持したままコンテンツを一元化する方法をご紹介します。

目次

  1. パズルの 1 ピースではなく、全体を見る
  2. 非同時ツールに移行する
  3. 共通の言葉を定義する
  4. ふさわしい名前を付ける
  5. プロジェクトごとに共有ドキュメントを作成する
  6. 一目で内容が伝わるメッセージに
  7. 相手が好む連絡手段を明らかにする

1. パズルの 1 ピースではなく、全体を見る

カレン・マクグレイン氏は、「Content Strategy for Mobile(モバイル向けのコンテンツ戦略)」や「Going Responsive(レスポンシブ対応)」の著者であり、UX に関するコンサルティングを行う Bond Art + Science の創始者です。コンサルタントとして働く中で、マクグレイン氏はあることに気がつきました。それは、たとえフロント エンドのデザインが非常に優れていても、バック エンドのプロセスやツールをないがしろにしていると失敗することがある、ということです。

コンテンツ チーム、デザイン チーム、そして開発チームがそれぞれ、自分の手元にあるパズル ピースだけに集中し、他チームへの影響を考えないとき、問題は発生します。多くの企業で分散チームの効果的なコラボレーションが重要になっている現在、こうした指摘はこれまで以上に重要性を増しています。

リモート ワークへの移行は、今や誰にとっても大きな問題となっています。同じオフィスで働いていれば当然のようにわかっていたことが、今ではインターネット越しに考えなければなりません。

そこでマクグレイン氏は、チーム全体にメリットとなるような情報アーキテクチャの整備を手始めとして、包括的なアプローチをとることを提唱しています。具体的な方法については、以降をご覧ください。

2. 非同時ツールに移行する

分散化した仕事環境では、言葉、構造、カテゴリー分け、そして命名規則がいっそう重要になります。

この 15 年間リモートで働いている私の同僚が、在宅勤務についてツイートしました。この中で特に共感したのが、ビデオ会議にしろ電話会議にしろ、在宅勤務をしている人にとって会議は認知的な負荷が大きくなるという点です。

自宅にペットや子ども、同居している家族がいると、会議に参加する際にはどうしても邪魔が入りやすくなりますす。

これはかなりの負担となります。こうしたやり取りの一部をたとえば Dropbox Paper ドキュメントのような非同時ツールに移行することを検討すべきです。ドキュメント内で『こんな問題が発生しています』と誰かが書けば、別の人がそこにコメントを追加できます。また、タスク期限を設定することもできます。具体的には、@メンションで『回答は明日までにお願いします』などと書くことができます。

プロジェクト計画や戦略を策定するためのドキュメント、そしてクリエイティブな制作物など、一定以上の規模になるコンテンツを作成する場合には、共有可能な非同時ツールを使用することを同氏は提案しています。音声通話やビデオ会議は、リアルタイムで人間味のあるやり取りができるので、チームの結束を強めたいときに使うとよいでしょう。

適切なツールを自在に選べる仕組みを考えなくてはなりません。私はこれまでに、あらゆる会議を対面で行う企業をたくさん見てきました。今こそ、『対面の価値とは何か』を考えてみるべきではないでしょうか。

チームの結束を強めるという目的であれば対面がよいでしょう。一方で、ある議題について話し合って何らかの決定をするだけであれば、在宅勤務に適したツールをより効果的に活用することで、もっと効率的な形で目的を達成できるのではないでしょうか。

3. 共通の言葉を定義する

コンピュータの黎明期に幼少時代を過ごした私にとって、フォルダ名の文字数は最大で 8 文字でした。

当時の人々は、簡潔な表現に慣れていました。Mac でファイル名の長さ制限がなくなったときは、『これですべてが変わる!』と思ったことをよく覚えています。

フォルダ体系を作るときには、明確な命名規則にすることが大切です。ファイルの命名規則について、チーム内で共通の用語を決めておくとよいでしょう。文字数を気にせずに、内容をわかりやすく伝えてください。

自分で決めた命名規則に従って保存しているファイルを共有する場合は、同僚にもそのルールを伝えて、統一的なフォーマットを維持できるようにしましょう。

わかりやすさが肝心です。ドキュメントを受け取って編集し、ファイル名を変えて新バージョンを保存するとしたら、どのような名前にすべきかを考えてください。これは、ファイルを整理するための基本事項です。

4. ふさわしい名前を付ける

コンテンツ構造を考える際には、ファイルやフォルダの命名規則だけでなく、ストリーム、チャンネル、タスクの名前についても慎重に検討すべきだとマクグレイン氏は話します。

業務で処理すべき文字情報が増えるほど、命名規則の重要性は高まります。多数の厳しいセキュリティ要件を課しているクライアントから、仕事用に Windows PC の提供を受けており、それとは別に個人所有の Mac も使っています。

デスクでは実際に、Mac と Windows、さらにはスマートフォンを同時に使いながら作業をしています。1 つのデバイスでしか受信できないメッセージがあるからです。受け取る情報を理解し、優先順位付けができるものがあれば、本当に助かります。

1 つの目標として考えるべきことは、同僚が自分にとって関係のないコンテンツを除外しやすくすることです。Slack チャンネルの名前の付け方でさえ、参加すべきか無視してもかまわないのかを判断するのに役立つでしょう。よく練られた、用件がわかりやすい件名にすることで、受信者はしっかりと目を通すべきメールなのかどうかを判断できます。

5. プロジェクトごとに共有ドキュメントを作成する

分散チームが活用するアプリは多岐にわたりますが、コミュニケーションを円滑にするためのアプリと、コンテンツ作成やコラボレーションを円滑にするためのアプリとを明確に区別しておくことが重要です。

私の Slack は、Twitter、Dropbox、Google ドキュメント、そして Zoom と連携させています。マネージャーという私の役割を考えれば、あらゆるツールと連携させておくことが大切です。相手側で切り替えるツールが少ないほうが、負担も少ないはずです。

ただし、窓口の数が多すぎると、認知的な負荷を高めてしまう危険性もあります。チャットの機会はこれまで以上に増えますが、重要ではないチャットや、プロジェクトの進行にプラスとならないチャットも存在しています。

共同作業が可能なスペースに共有ドキュメントを準備しておけば、皆がアイデアやメモを入力し、コメントを追加して、共同で編集することができます。こうした仕組みは、現代の職場環境に必要不可欠です。

これから在宅勤務を始める人の中には、自宅で働くのが初めてという人もいるでしょう。そんな状況で役立つのが、Dropbox Paper、Google ドキュメント、Slack のドキュメント編集機能です。私はこれら 3 つのツールをほぼ同じ割合で使い分けています。

6. 一目で内容が伝わるメッセージに

ファイルやフォルダにわかりやすい名前を付けてアクセスしやすくしたように、情報アーキテクチャの原理を活用すれば、ドキュメント内のメッセージも改善できます。

普段よりも多くの文字コミュニケーションにさらされている同僚のことを考えると、メッセージは簡潔で要点を捉えたものにする必要があります。メールを短くし、何をすべきかを基準にまとめるのが最善の方法です。そこに加える説明は、できる限り明確で簡潔にしてください。

たとえば、シンプルな書き出しにするのが有効です。傾向としては、メールの内容をざっと見るときに、センテンス冒頭の言葉をいくつか拾っていく人が多いでしょう。メールを書くときには、読み手が一瞬で目にするであろう言葉を 2 つか 3 つほど考えてみてください。さまざまな画面サイズやデバイスを考慮しながら、メールのレイアウトを組み立てていきましょう。受信者がどの程度の情報量を目にできるのかを事前に予測することはできません。

ざっと読んでもメールの内容を把握できるよう、メール内には太字でセクションの見出しを付けるようにしてください。共有ドキュメントのフォーマットには、なるべく H2 の小見出しや箇条書きを使うとよいでしょう。

何らかの操作を依頼する場合には、依頼の文言の近くに操作対象となるものを書くべきだととマクグレイン氏は言い、次のような具体例を挙げています。

たとえば、非常に長いメール スレッドを受信したとして、送信者のコメントが『以下のドキュメントを更新しました』だったとします。ところがメールが長すぎて、70 ページほどスクロールしないと対象のドキュメントにたどり着けない、ということがあります。こうなると、重要なファイルを見落としてしまう、必要なアクションを理解できない、というような不都合が生じてしまいます。メールにファイルを添付するのではなく、クラウドベースのドキュメントをリンクすれば、こうしたやり取りはずっと楽になるはずです。

白紙のドキュメントから始める場合でも、あらかじめいくつかの要素が配置されているテンプレートを使う場合でも、伝えたい情報の構造がわかるようコンテンツを整理してください。共有された相手が、ドキュメントの目的を一目で把握できるかを考えます。情報がテキストの単なる羅列になっていたら、読み手を導くようなアウトラインになるよう構成を練り直してください。

単に共同編集できるメモ帳から、ビジネス ユースのドキュメントへと格上げするには、情報をわかりやすく構造化することが必要だとマクグレイン氏は言います。

次のような点について考慮すべきです。たとえば、情報が意味のある形でまとめられているか、見出しや小見出しの使い方は適切か、そのスタイルはわかりやすくなっているか、アウトラインを読むだけで、必要な情報がドキュメント内にあることがわかるか、といった点です。こうしたポイントが、仕事上のコミュニケーションには欠かせないと考えています。

7. 相手が好む連絡手段を明らかにする

共有ドキュメントにユーザーを招待し、フォルダへのリンクを送信できるようになれば、相手がどこにいてもすぐに反応してもらえるようになります。相手のデスクまで歩いて行くことができない状況では、連絡をとるために複数の手段を用意しておく必要があるかもしれません。

次は、どの手段ならチーム メンバーに連絡がつきそうかを考えましょう。マクグレイン氏は、同僚に希望する連絡方法を尋ねておくことを推奨しています。「たとえばこんな状況で、すぐに意見が欲しいときは、どうやって連絡したらよいですか?」と聞いてみるのです。

メール、SMS、Slack、Skype、Zoom、Google ハングアウトなどがよいか、電話で直接がよいかを尋ねてください。質問をまとめて一度に話し合えるよう、「1 日の終わりに相談する時間を作りたい」と提案されることもあるかもしれません。

どれも、これからは日常的な業務慣行になるでしょう。プラットフォームやデバイスを問わず、メッセージを確実に届けて、アクションにつなげるためには、どのような方法で伝えるのが最適かをしっかりと考えるべきです。

分散化した仕事環境での新しい働き方に順応していく中でも、柔軟性を忘れずに、発展し続けるエコシステムに対応できるよう準備を整えておきましょう。

ツールを理解すること。これが鉄則です」とマクグレイン氏は言います。「ただしツールも変化していくため、1 つのツールだけを偏重しないようにしたいものです。

共有ドキュメントを使って効果的な情報アーキテクチャを構築する方法について詳しくは、dropbox.com/paper をご覧ください。