世界の働き方:海外から見た日本の働き方、企業文化の独特なポイント4つ

新ブログシリーズ「The Working World」では、世界の様々な国で、どのように仕事環境の課題にアプローチしているかを紹介します。
今回最初に取り上げるのは日本です。

多くの先進国では働き方を変えていきことがテーマになっています。
日本でも同様に「働き方改革」が大きなテーマになっていることはご存知のことでしょう。

ここでは、海外から見た日本の企業文化独自なところを紹介します。
海外から見て、日本の企業文化がどのように見えるのかを楽しんでいただければ嬉しいです。

目次

  1. 残業に対する文化的背景
  2. 職人気質な日本独自の仕事文化
  3. 仕事と家庭の両立ができる多様で柔軟な働き方を目指す
  4. 働き方改革に伴う民間企業の取り組み

1. 残業に対する文化的背景

日本人は残業が多いと思われるかと思いますが、労働時間の世界ランキングから見ると22位と上位にいるわけではありませんが、日本は祝日が多いこともランキングに寄与していると思います。さらに職種、働く会社によって残業時間は変わっていきます。

日本の仕事環境を理解するため、Dropbox Japan 株式会社のマーケティング業務を務める 上原 正太郎 に話を聞きました。

在宅勤務とフレックスタイム制が当たり前になっている多くの米国企業とは違い、日本人の多くは「上司が帰るまでは自分もオフィスを出られない」と感じているのではないでしょうか。
そのため会社によっては、終業時間になったら帰らざるを得ないような状況を意図的に作っているようです。特定の時間になったら、すべてのパソコンの電源を強制的に切ってしまうのです。

私たちは多種多様なデバイスとアプリを駆使して、いつでもどこでも仕事ができるようになりました。しかし、多くの人は、デスクに縛られて仕事をしていた過去数十年前の親世代と比べても、それほど自由になってはいないと感じているのではないでしょうか。私たちを束縛するものが、テクノロジーの問題ではないとしたら、いったい何が問題なのでしょうか。

1 つの背景として、1968 年 11 月、日本の失業率が史上最小の 1 % になったとき、多くの企業は、若い労働者を確保するため、充実した研修制度や終身雇用の保証を打ち出す必要に迫られました。こうしたメリットの見返りとして、企業は社員に対し、自社への忠誠心を求めるようになります。ここでいう忠誠心とは、長時間の時間外労働、さらには遠隔地への単身赴任を受け入れることを意味します。
これ以降、長時間労働を求める圧力は高まる一方となり、多くの人々が十分な休みなしで働くようになりました。たとえば、ある通信事業者の社員は、なんと 37 時間連続で勤務したと報道されています。このような長時間労働の行き過ぎにより、人が亡くなる事件も起きています。働き過ぎが原因で死に至る「過労死」が社会問題化となったのです。24 歳の女性社員が月に 105 時間の時間外労働をした後に自殺して亡くなるなど、過労死報道が相次いだことで、仕事環境の改善を求める声は日増しに大きくなっています。

もう 1 つの背景として「働き方改革関連法」の法改正があります。この法改正では時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定とありますが、24歳の女性社員が過労死に至った時間外労働時間からみると、この設定が十分なのか疑問に思うところです。
また、時間外労働の上限が月 100 時間ということは、週あたり 25 時間、1 日あたり 5 時間まで残業できるということです。この新法が施行されても、労働者は依然として毎日 13 時間働くことができてしまいます。

ただその一方で、昇進や金銭的報酬のために、たくさん働きたい(あるいはそのように見せかけたい)と考えている人がいるのも事実です。働き方改革関連法は、時間外労働の上限を設けることで働き過ぎ問題の解消を目指していますが、意図せず別の反応を引き起こしています。一部の労働者にとって、残業代は給与のかなりの部分を占めており、こうした労働者は、収入を維持するために自ら長時間働くことを選択しています。そのため、労働者の中からも反対の声が上がっているのです。

2. 職人気質な日本独自の仕事文化

もう 1 つ問題となるのは、「長い年月をかけて社会的価値観を醸成してきた文化的な影響力に、果たして法律は対抗できるのか」という点です。米国人の多くは、同じ作業を何度も繰り返すことが燃え尽き症候群の原因だと考えるかもしれませんが日本的な価値観ではそうではありません。日本では古くから、専門的な技術を磨くためには反復が欠かせないとされています。ひらめきによって創造的な発見をする「アハ体験」が最も重んじられる米国とは対照的に、日本では、反復で得られる改善と学びこそが最終的な目標とされているのです。

職人気質は、日本文化に深く根付いています。
何事も、食に関する分野や、刀鍛冶、和服用の織物作りといった伝統的な分野のやり方に似る傾向があります。
日本人は、いつでも物事を改善する新たな方法を模索しているのです。

ー上原 正太郎

職人気質は創造性に対する情熱から生まれるものだと考えていますが、日本の場合ひらめきよりも、日々コツコツと問題解決に取り組む姿勢の方が重視されます。

たとえば、生産工程の効率をアップさせる新しい方法を模索しているとした場合、その工程について『なぜ』という疑問を 5 回繰り返して問いを掘り下げていきます。そうするうちに、解決すべき根本的な問題に行き当たります。このプロセスを繰り返していくと、最終的に製品の品質が向上するというわけです。日本人の多くは、このようなプロセスに重きを置いているのだと思います。

ー上原 正太郎

3. 仕事と家庭の両立ができる多様で柔軟な働き方を目指す

「一億総活躍社会」の実現に向けて、ダイバーシティの推進が叫ばれています。
その中でも女性の活躍にフォーカスすると、日本は先進国の中でも遅れをとっていることはよく言われることです。

共働き世帯が平成 8 年あたりを境に、専業主婦世帯よりも上回っているものの、昭和の昔より続く「男性は仕事、女性は家庭」という考え方が、今も男女問わず固定しているようです。女性はキャリアの途中で育児や介護の必要に直面することが男性と比べて多いのが実情です。このような中で柔軟に働くことができればと望みながらも専業主婦をしている女性も少なくないのではないでしょうか。

育児をしながら働きたいと希望し、短時間勤務という柔軟な働き方で家庭と両立しながら仕事の継続を叶えている Dropbox のマーケティング アシスタント 小川 のりこは、以前の職場では両立は難しく、同僚からの理解を得るのも難しかったといいます。しかしながら育児中でも職業生活を望み、今の仕事に転職でき、現在の仕事環境に満足しているといいます。

ここにも日本独自の仕事文化が存在するのかもしれません。男女問わず、日本社会全体で今以上に女性が働くことに対する理解が、今回の法改正で進めばと願うところです。そして、多様で柔軟な働き方ができる職場をもつ企業がより増えれば、育児や介護をする女性の活躍の場も広がるのではないでしょうか。

4. 働き方改革に伴う民間企業の取り組み

国を挙げての働き方改革の一環として、多くの民間企業も新たな取り組みを始めています。たとえば電通は、月に 1 日、社員に休暇を付与する試みを開始し、アルプス電気は、時間外労働を減らして、浮いた残業代をボーナスに回すとしています。また日立、アサヒビール、イトーヨーカ堂は、作業シフト間の休憩やインターバルを増やすことを計画。さらに、睡眠不足解消のため、デスクでの 20 分ほどの仮眠(昼寝)を奨励する企業も現れました。

企業は働き方改革の中で、従業員の健康により一層配慮する必要があります。併せて、人材不足と市場競争という 2 つの要因もあります。高齢化が進む日本では、8 年連続で人口が減少しており定年退職した社員に代わる人材を見つけることが難しくなっています。働きやすい職場をもつ企業に労働力は集まるものなので、企業の仕事環境を向上させる取り組みが、ますます期待されるところです。

Japan Times 紙の最近の報道によれば、人口動態の変化によって、日本の労働者は今後 50 年で 30 % 減少する可能性があるとされています。このように人材不足が加速する中、企業各社は、よりよいワークライフ バランスを求めて競合他社に転職または独立しようとする社員をつなぎ止めるため、これまで以上に努力する必要に迫られているのです。

日本のフリーランス人口(20~69 歳)は、2017 年 2 月時点で約 1,122 万人。
これは、前年比 5 % 増となる数字であり、労働人口全体の 17 % にあたる。

Japan Times(2017 年)

まとめ

海外から見ると、このようなことが日本の労働文化が独特に見えるみたいです。
これからさらに生産性が上がることを多くの方が願っていると思いますが、どのような変化が今後起こるのでしょうか。最後に弊社の2人が今後の変化について記したコメントを紹介します。

個人的には、現在の日本の仕事環境が一気に変わるとは思っていません。
これは、複数の層が絡み合う非常に複雑な問題です。世代間の価値観が多様でテクノロジーに対するリテラシーも大きく違う、高度に階層化された社会では、旧世代からのさまざまな制約が足かせとなります。
高齢者世代と若年世代の両方にとって心地よい均衡状態というものが存在するようには思えません。

伝統ある企業の多くは、切迫感をもって変化していかなければ、瞬く間に時代に取り残されてしまうと感じています。
私が望むのは、変化しなければならないという緊張感が一層高まり、さらなる変化が続いて起きることです。
そうすれば、若い世代がもっと創造性を発揮し、ビジネス上の意思決定の場面で発言力を持てるような仕事環境が実現するかもしれません。

ーと話す 上原

Dropbox でアジア太平洋および日本の
コミュニケーション担当責任者を務める リー・トランは次のように話します。

この 18 か月の間、私は、第三者の目で日本の市場を観察する機会に恵まれました。

一大転換期を迎えている日本は、大変興味深い市場です。
中でも目を引くのは、旧来のヒエラルキーを大切にする立場とイノベーションを重視する立場の対立です。
職人気質や伝統、細部へのこだわりを大切にする日本固有の文化を維持することと、新しさを追い求め、めまぐるしく変化するデジタル主体の世界に対応していくことは、明らかに両立しません。
日本の働き方改革によって、改善と職人気質を重んじる文化が、起業家精神とイノベーションを重んじる文化と共存できる、そんな調和の道が見いだされることを期待しています。

ーリー・トラン

「The Working World」シリーズのパート 2 では、フランスで法制化された「つながらない権利」と、同国企業の間で試みられているワークライフ バランスを改善するその他の取り組みを紹介します。

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