SSD の寿命はどれくらいあるのかという疑問をお持ちですか?低価格化と大容量化が進むにつれて普及が進んでいる SSD ですが、メリットが多い一方で新しく登場してきたものだけに、寿命について分からない部分が多いのも事実です。
そもそも SSD にはどれくらいの寿命があるのか、寿命が近いことを知る方法はあるのか、そして寿命を伸ばす方法はあるのかという疑問にお応えして、SSD の寿命に関する情報をまとめました。
また、SSD には寿命があるという事実を踏まえて大切なファイルを失わないようにするために行いたい効果的なバックアップについても解説します。
目次
1. SSD の仕組みと HDD との違い
2. SSD の寿命
3. SSD の健康状態をチェックする方法
4. SSD の寿命を伸ばす方法
5. 寿命がないオンラインストレージに大切なファイルをバックアップ
6. まとめ
1. SSD の仕組みと HDD との違い
1-1. SSD とは
SSD とは、記憶媒体に半導体メモリを採用した大容量記憶装置のことです。半導体メモリというとピンと来ない方が多いかも知れませんが、USB メモリや SD カードなどに使われているフラッシュメモリも同じ半導体メモリの仲間です。
パソコンなどに組み込む際にはハードディスク(HDD)を装着するのと同じところに取り付けるため、HDD とよく似た形状の箱にたくさんの半導体メモリが並んでいるというものをイメージしてもらえると分かりやすいでしょう。
1-2. HDD と比べて優れている点
これまで長らく記憶媒体として採用されてきた HDD との大きな違いは、スピードと静粛性です。HDD を読み書きしているとカリカリという音が聞こえてきますが、SSD は半導体メモリにアクセスしているだけなので、極めて静かです。また、HDD のように磁気ディスクを回して読み書きするという物理的な動きがないため、読み書きの速さは比べ物になりません。
そしてもうひとつ、SSD は物理的な磁気ディスクへの読み書きがないため振動や衝撃に強く、この点も HDD と比べて優れている点だと言えます。
すでに SSD を導入している方の多くは、こうしたメリットを実感しておられると思います。
1-3. HDD より劣る点
SSD を HDD と比較した時、SSD が劣る点としては、2016年6月現在、容量当たりの価格の高さがまず挙げられます。また、HDD はテラバイト単位の容量が当たり前になっていますが、SSD はそこまで大容量化していません。テラバイト単位の SSD もありますが、まだまだかなり高価です。
その他には、読み書きをする回数に一定の限度があるのもデメリットです。これは SSD の寿命にも大きく関わってくる部分なのでこの記事で詳しく解説しますが、HDD のように音を立てて読み書きをしているわけではないので寿命が近づいていることを意識しづらいのも SSD 特有の事情と言えるでしょう。
メリット | デメリット | |
SSD |
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HDD |
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ここで解説した SSD と HDD の比較については、「SSD と HDD の違いから分かるデータ保存の最適な選択肢」に詳しい解説がありますので、興味のある方はぜひお読みください。
2. SSD の寿命
2-1. SSDの寿命はどのくらい?
SSD の寿命については諸説があるのですが、おおむね 5 年が目安と言われています。
しかし、この 5 年という期間についても使い方によって差が生じるため、一概には言えません。特に SSD には読み書きの回数で劣化する特性があるので、使用頻度が低ければその分寿命は長くなります。
ちなみにこの 5 年間という数字は、合計 36.5 テラバイトの読み書きで寿命を迎えるという基準が根拠になっています。1 日に 20 GB のデータを利用すると 5 年で 36.5 テラバイトに到達するというわけです。
主要な SSD の機種について、「これくらいのデータを読み書きしたらエラーが発生する」という調査結果があります。「THE TECH REPORT」という英語のサイトですが、グラフ化されているのでどれくらいのデータを読み書きできるのかという参考になるのではないかと思います。
参考:The SSD Endurance Experiment: Casualties on the way to a petabyte
SSD の主要メーカーはそれぞれ、メーカーの保証期間を設けています。この保証期間にもかなりのばらつきがあり、メーカーとしてもなかなか寿命を計りかねている印象を受けます。
主なメーカーを見てみると、東芝が 1 年間、サムスン電子が 3 年間、Plextor とインテルがそれぞれ 5 年間といった具合です。
この保証期間をひとつの目安として考えるのもありです。
2-2. TLC NAND の SSD は寿命が短くなるという説について
2015 年頃から主要メーカーが続々と開発、販売をし始めた TLC NAND の SSD は、次世代の SSD になるとして話題になっています。
同じサイズでより多くの記憶容量を確保できるので、そのメリットに注目が集まりがちですが、その一方で TLC NAND の SSD は寿命が短くなるという説があります。
まだまだ寿命について分かっていない部分が多い SSD なので確定的なことは言えませんが、同じスペース内により多くの記憶媒体が詰め込まれることになるので、その分読み書きするデータ量が大きくなります。読み書きの回数が寿命に直結する SSD で読み書きの回数が多くなることは寿命を短くするのでは?というのがこの説の根拠です。
この点についてはメーカーも当然把握している特性なので、従来の MLC NAND の SSD と性能的な遜色がないように設計されています。理論的には寿命が短くなるかも知れませんが、実際のところはそこまで意識しなくても良いでしょう。
3. SSD の健康状態をチェックする方法
3-1. SSD の寿命を早めに察知して有効な対策を
大容量記憶装置である SSD には、大切なデータが大量に保存されています。ある日突然寿命が訪れて中のデータを失ってしまうのは損害が計り知れないので、SSD の寿命が近いことを事前に察知するのもひとつの対策です。
ここでは、SSD の健康状態をチェックできるフリーソフトをご紹介します。
3-2. フリーソフト「CrystalDiskInfo」で診断する
3-2-1.「CrystalDiskInfo」の入手とインストール
ディスク診断ツールの「CrystalDiskInfo」は、以下のフリーソフト配布サイトからダウンロード可能です。
⇒「CrystalDiskInfo」ダウンロードページ(窓の杜)
3-2-2.「CrystalDiskInfo」で SSD の状態を診断する
「CrystalDiskInfo」を起動すると、メイン画面には SSD の健康状態が表示されます。細かい部分を見るよりも、画面左上の健康状態を見るのが最も手軽です。
この場合、青い色で「正常」と表示されているので、「CrystalDiskInfo」は問題ないと判断していることが分かります。
この部分が「異常」になっている時は、読み書きにエラーが発生しやすい状態になっている可能性が高いので、早急に対処が必要です。
3-3. 診断の結果、寿命が近いことが分かった時の対処法
それでは、「CrystalDiskInfo」の診断で SSD に寿命が近づいていることが察知できた場合はどうすれば良いのでしょうか。
まずやっておきたいのが、バックアップです。異常が検知された SSD から他の記憶媒体にデータをコピーします。主な方法としては DVD-R やブルーレイディスクなど光学メディアに焼くこと、外付けの HDD などにコピーすることなどが考えられます。
ここでおすすめしたいのが、単一の媒体ではなく複数の媒体にコピー、つまりバックアップを取っておくことです。
例えば DVD-R に大切なデータを焼いたのであれば、もう 1 枚焼くのではなく外付け HDD にバックアップを取るなど、敢えて異なる方法でバックアップを取っておくことでリスクを分散します。
さらに、その選択肢に加えたいのがオンラインストレージです。これについては、「5. 寿命がないオンラインストレージに大切なファイルをバックアップ」で詳しく解説します。
4. SSD の寿命を伸ばす方法
4-1. 寿命を伸ばす基本は読み書きの軽減
SSD の寿命を伸ばすための基本的な考え方は、想定されている読み書きデータ量の上限に到達するのをいかに遅らせるかがポイントになります。36.5 テラバイトというメーカーが想定している寿命に到達しなければまだ使えるという推測が成り立つので、読み書きするデータ量が寿命に直結しているという認識を持っておくのが良いでしょう。
必要性のない大容量ファイルを何度もコピーしたりといった、これまであまり意識しなかった作業を減らすことを意識するのも有効です。
4-2. SSD をデフラグする
HDD のアクセス速度を上げたり、寿命を伸ばすために有効とされているのが、デフラグです。HDD 上では空いたところにデータを保存していくため、ファイルの削除や保存を繰り返しているとデータが整理整頓されていない状態で保存されるようになります。これを断片化といいます。
断片化が進むと無駄なアクセスが増えてしまい、HDD への負担が大きくなって寿命を縮めることにつながります。その断片化を解消するのが、デフラグです。
SSD も同様に、削除と保存を繰り返していると断片化が進みます。断片化したままだとあちこちにアクセスをする必要があるので読み書き回数が増え、寿命を早める恐れがあります。
HDD 同様、SSD にも定期的にデフラグをすると断片化が解消されてデータが整理整頓されます。ただし、ここで重要なのが SSD に HDD と同じデフラグをしても効果がないということです。そこで、SSD に最適なデフラグを行うために「Defraggler」というフリーソフトを使用します。
4-2-1.「Defraggler」の入手、インストール
「Defraggler」は、作者の公式サイトからダウンロード可能です。
左半分に表示されているのが無料版で、「Download from:」と記載されているところの「Piriform.com」をクリックします。
ダウンロードが完了したらセットアップファイルを開いて、インストールしてください。なお、言語設定に日本語があるので、ここで日本語を選択しておくと日本語で利用可能になります。
4-2-2.「Defraggler」を使ったデフラグ方法
「Defraggler」を起動すると、現在利用可能なドライブが表示されています。
最初は解析されていないので断片化の状況が分かりません。そこで最初に、画面左下の「解析」をクリックして断片化がどの程度進んでいるのかをチェックします。
断片化のチェックが完了すると、その結果が表示されます。
メニュータブの「ドライブマップ」をクリックすると、色分けの意味が表示されるので、それをもとに結果を照らし合わせてください。
それともう一点、解析をしたドライブの「断片化の割合」も確認してみてください。この数値が高ければ断片化が進んでいるので、デフラグの必要性が高くなります。
この場合だと 48% も断片化しているので、デフラグをした方が良いでしょう。
デフラグを実行する場合は、下にある「デフラグ」ボタンをクリックします。
SSD の容量にもよりますが、数分~数十分程度でデフラグは終了します。
この操作は定期的に断片化の状況をチェックした上で、かなり断片化が進んでいると判断した時に行ってください。
4-3. SSD の寿命をのばすフリーソフト「SSD 最適化設定」
SSD は OS と呼ばれる基本ソフトによって管理されています。こうした OS の設定は HDD を想定した設定がベースになっていることが多く、そのままだと SSD の寿命を縮めてしまう可能性があります。
そこで OS の中でも Windows の設定を自動的に判別した上で最適な設定に変更してくれるのが、この「SSD 最適化設定」です。
ダウンロードした圧縮ファイルを解凍、そこにある「SSD 最適化設定」というファイルを開いて左にある「SSD の最適化設定」というボタンをクリックするだけです。
これで Windows の設定が自動的に SSD に最適化され、寿命を伸ばすことに配慮した設定となります。
設定が完了したら、この「SSD最適化設定」は閉じても構いません。以後は SSD の寿命に配慮した設定が継続します。
5. 寿命がないオンラインストレージに大切なファイルをバックアップ
5-1. オンラインストレージには寿命がない
いくら寿命を伸ばしたとしても、SSD の寿命は永遠ではありません。その予兆が明確にあるのであれば事前に備えることもできますが、突然使用不能になることがあるのも、SSD や HDD に共通するリスクです。
そこで提案したいのが、寿命のない記憶媒体へのバックアップです。オンラインストレージはネット上で利用できる記憶スペースですが、その正体は巨大な HDD の集合体です。HDD なのでもちろん寿命はあるのですが、サービス事業者が常にバックアップや HDD の交換というメンテナンスをしているため、サービスが継続する限り事実上寿命がない状態が保たれます。
5-2. オンラインストレージにバックアップして SSD の寿命に備える
必ず寿命が訪れる SSD に保存されている大切なファイルをオンラインストレージにバックアップすることで、SSD が突然寿命を迎えて使用不能になっても新しい SSD に交換してオンラインストレージと同期すれば、簡単な手間だけでファイルを復元できるので安心です。
そこで代表的なオンラインストレージサービスとして Dropbox を例に、SSD の大切なファイルをバックアップする方法を解説します。
5-3. Dropbox に SSD のファイルをバックアップする方法
SSD が寿命を迎える前に、Dropbox にアカウントを作成しておき、そこに大切なファイルを保存しておくのが基本的なバックアップ方法です。
Dropbox にはデスクトップアプリケーションといって、特定のフォルダに保存しているファイルを自動的にオンライン上にもアップロード(これを同期といいます)する機能があります。
つまり、大切なファイルをこの同期フォルダに保存する習慣を付けておけば、ほとんど意識することなく大切なファイルが自動的にバックアップされます。
もしくは、Dropbox Pro か Dropbox Business で 1 TB の容量を確保した場合は SSD のファイルをすべて Dropbox フォルダに保存することで、すべてのファイルが最新の状態で自動的にバックアップが取られている状態を作ることができます。
5-3-1. Dropbox の利用開始方法
Dropbox には無料と有料のアカウントがあります。無料アカウントである Dropbox Basic では 2 GB の記憶スペースが利用可能なので、最初は無料版から始めてみるのも良いでしょう。
アカウント作成とデスクトップアプリケーションのインストールについては、「約 5 分で完了!Dropbox のインストール方法を画像付で解説」に詳しい解説があります。このタイトル通り、本当に約 5 分程度で簡単に完了します。
Dropbox の利用準備ができたら、そこにファイルを保存、同期してみましょう。
5-3-2. Dropbox にファイルを保存・同期する
Dropbox のデスクトップアプリケーションをインストールすると、Dropbox フォルダが作成されます。このフォルダに保存されているものは自動的にオンライン上の Dropbox サーバーと同期されるので、大切なファイルをここに保存してください。
同期の方法については、「お悩み解決! PC 版 Dropbox のインストール、同期、活用ガイド」に詳しい解説がありますが、おそらく直感的な操作だけですぐにマスターできると思います。
なお、ここでは Dropbox Basic についての解説をしていますが、2 GB という容量では足りないという方は容量が大幅にアップする有料版へのアップグレードをおすすめします。有料版である Dropbox Pro、Dropbox Business については「Dropbox 有料版 [Pro / Business] 徹底比較|最適プランが一目瞭然」で詳しく解説しています。
Dropbox Basic (無料版) |
Dropbox Pro | Dropbox Business | |
容量 | 2 GB | 1 TB | 無制限
※ 初期導入 必要に応じ無料追加 |
アクセス管理機能 | × | ○ | ◎ |
ファイル復元期間 | 30 日 | 30 日 | 無制限 |
遠隔削除 | × | ○ | ○ |
共有リンク期限設定 | × | ○ | ○ |
価格 | 無料 | 1200 円/月 | 1500 円/月 |
※ Dropbox Pro の価格については年額だと 12000 円、Dropbox Business は 1 ユーザーあたりの価格で、最少人数 5 人だと 8100 円/月になります。
さらに詳しいプランの説明は、こちらのページ(Dropbox オフィシャルサイト)でご覧いただけます。
6. まとめ
HDD と比べて何かとメリットの多い SSD ですが、いつか寿命を迎えてしまうのは HDD と同じです。そこで、SSD の健康状態を知る方法、少しでも寿命を伸ばす方法について解説してきましたが、大切なファイルを守る決め手はやはり、バックアップです。
DVD-R やブルーレイディスクなどにバックアップをするのも有効ですが、常に最新のファイルを自動的にバックアップできる方法としてオンラインストレージについても提案、解説しました。
SSD を安心、快適に利用するためにこれらのノウハウをぜひお役立てください。