絶対に外部に流出してはいけないファイルやフォルダを守るために、フォルダそのものにパスワードロックを設定できればいいのにと思ったことはありませんか?
実にシンプルかつ効果の高い方法なのですが、意外にも Windows と Mac のどちらにもフォルダをパスワードでロックする直接的な機能はありません。
そこで Windows と Mac それぞれの環境でフリーソフトや ZIP 圧縮などを活用して、フォルダごとパスワードで保護する方法を解説します。
なぜそこまでする必要があるのか?という疑問をお持ちの方も、パスワードロックが必要な理由と併せてぜひご一読ください。
目次
1. フォルダにパスワードロックが必要な 3 つの理由
2. Windows 7、8、10 でフォルダにパスワードを設定する方法
3. Mac OS X でフォルダにパスワードを設定する方法
4. パスワードロックされた ZIP ファイルのパスワードを忘れてしまったら
5. Dropbox におけるフォルダの管理体制について
6. まとめ
1. フォルダにパスワードロックが必要な 3 つの理由
1-1. フォルダ内のデータが狙われている
パソコンに保存しているファイルに対する不正アクセスのリスクは依然として高く、インターネット経由だけでなく LAN や Wi-Fi などさまざまなルートから侵入され、フォルダ内のファイルが盗み取られる可能性があります。
不正アクセスに対するセキュリティをどれだけ高めたとしても、保存しているファイルが 100 % 安全になることは難しいのが現実です。このリスクを認識した上で、万が一不正アクセスの被害に遭ったとしてもフォルダがパスワードでロックされていれば情報漏洩をある程度防ぐことができます。
1-2. メール添付に情報漏洩のリスク
メール添付で書類や資料などを送ることはビジネスシーンでもよくあります。しかし、メールを使って機密性の高いファイルを送る際には、誤送信によって意図しない人に届けてしまったり、メールそのものを途中で盗み見されるリスクがあります。
添付するファイルにパスワードでロックをしておけば、こうしたリスクを回避し、情報の漏洩を防ぐことができます。
1-3. 最大のリスクは身内にも
情報漏洩というとネット経由のリスクに目を奪われがちですが、実はネット以外の経路による漏洩リスクも看過できません。
職場で席を外した時にパソコンを勝手に操作されたり、作業中の画面を盗み見されたりといったショルダーハック行為は「身内の犯行」だけに被害が深刻になりやすい特徴があります。
こうしたリスクを管理するためにも、フォルダにパスワードを設定して守る習慣を身につけておきたいものです。
2. Windows 7、8、10 でフォルダにパスワードを設定する方法
2-1. Windows にはフォルダをパスワードで保護する機能がない
Windows 各バージョンには、共通してフォルダにパスワードを設定して中身を保護する機能がありません。そこで使いたいのが暗号化ソフトです。「アタッシェケース」というソフトはフォルダごと暗号化してパスワードで保護する機能があり、無料ということもあって高い人気を誇ります。
フリーソフトでありながら世界標準の AES 256 bit という暗号化技術を採用しており、強固なセキュリティも魅力です。
2-2. フリーソフト「アタッシェケース」でパスワードロックと暗号化
2-2-1.「アタッシェケース」の入手、インストール
「アタッシェケース」は、作者による公式サイトからダウンロード可能です。ただし、少々分かりにくいかもしれないのでその場合はフリーソフト配布サイトからもダウンロードできます。
こちらからダウンロードした「atcs2828」というファイルをデスクトップなど任意の場所に保存してください。
ダウンロード完了したら「atcs2828」のアイコンをダブルクリックして解凍します。解凍したフォルダ内にある「AttacheCase」というカバンと鍵をモチーフにしたアイコンを開くと「アタッシェケース」が起動します。
2-2-2.「アタッシェケース」でフォルダをパスワードロック
フォルダにパスワードを設定して暗号化する方法は、実に簡単です。パスワードロックをしたいフォルダを、開いている「アタッシェケース」にドラッグ & ドロップするだけです。
実際に、やってみましょう。「機密フォルダ」をというフォルダを、「アタッシェケース」にドラッグ & ドロップします。
ドラッグ & ドロップをすると、パスワードの入力を求められます。
ここで、フォルダを開くために必要なパスワードを設定してください。
「実行形式出力」という項目にチェックを入れると自己解凍形式のファイルが作成され、「アタッシェケース」がなくても開けるようになります。
ただし注意点もありますので、詳しくは「2-3. atc ファイルと実行形式ファイル」で解説します。
ここでは、実行形式にチェックを入れずに暗号化してみましょう。
任意のパスワードを入力したら、「OK」をクリックします。
再度パスワードの確認入力を求められるので、先ほどと同じパスワードを入力して「OK」をクリックします。
暗号化が完了すると、「フォルダ名+.atc」という名前のファイルが作成されます。これが、先ほどのフォルダがパスワードロックされたものです。
2-2-3.「アタッシェケース」でパスワードを解除
「アタッシェケース」によってパスワードロックされたフォルダを元に戻すには、復号という処理を行います。
方法はとても簡単で、「アタッシェケース」によって作成された「フォルダ名+.atc」という名前のファイルを「アタッシェケース」のウィンドウ内にドラッグ & ドロップするだけです。
「復号して元のファイル/フォルダに戻します」というメッセージが表示されるので、ここであらかじめ設定しておいたパスワードを入力します。
パスワードが正しければ、暗号化する前のフォルダとして元通りになります。
2-3. atc ファイルと実行形式ファイル
「アタッシェケース」には、実行形式ファイルとして保存する機能があります。フォルダをドラッグ & ドロップした時に「実行形式出力」にチェックを入れると、「アタッシェケース」がなくても復号できる形式で保存することが可能です。
「アタッシェケース」がなくてもフォルダを元通りにできるので便利な機能ですが、大容量になると Windows がそのファイルを開けなくなることがあるため、あまり容量の大きなファイルが入っているフォルダでは使わないようにしてください。
また、実行形式のファイルはセキュリティソフトが未知のウイルスではないかと非常に警戒するため、設定によってはセキュリティソフトの影響で開けなくなることがあります。できるだけ実行形式ではなく「アタッシェケース」を使って復号する形式で暗号化することをおすすめします。
3. Mac OS X でフォルダにパスワードを設定する方法
3-1. Mac OS X でフォルダにパスワード設定するには
広く利用されている ZIP 圧縮形式のファイルにはパスワードを設定することができます。しかし、Mac OS には標準で ZIP 圧縮ファイルを作成する機能があるものの、右クリックからの ZIP 圧縮ではパスワードを設定することができません。
そこで、Mac OS に標準搭載されている「ターミナル」というアプリケーションで zipcloak というコマンドを呼び出し、そこでパスワードを設定してフォルダをパスワードロックします。
3-2. zipcloak コマンドで ZIP ファイルにパスワードを設定する方法
まずは、パスワードを設定したいフォルダのZIP ファイルを作成します。やり方は簡単!フォルダを右クリックして「“ファイル名”を圧縮」を選択するだけです。
3-2-1. ターミナルを起動する
パスワードロックされた ZIP 圧縮ファイルを作成するには、「ターミナル」で「zipcloak」というコマンドを使用します。
Mac OS のファインダーを開いて、検索窓に「ターミナル」を入力して検索をしてください。「ターミナル」というアイコンが表示されたら、それをクリックして開きます。
3-2-2. zipcloak コマンドから ZIP ファイルを作成する
ターミナルが開いたら、そこに「zipcloak」というコマンドをキーボードから入力してください。
zipcloak というコマンドの次には半角スペースを 1 回入力して、その状態のところにパスワードでロックしたいフォルダをドラッグ & ドロップします。
3-2-3. パスワードを設定する
フォルダをドロップしたあとに Enter キーを押すと「Enter password:」と表示されるので、ここでパスワードを入力。再度 Enter キーを押し、下の行に表示される「Verify password:」にも同じパスワードを確認入力します。なお、ここではパスワードが表示されないので間違えないように注意してください。
パスワードを入力が完了して作成された ZIP 圧縮ファイルには、パスワードが設定されています。
3-3. パスワードロックを解除する
正しく設定できていたかどうか確認してみましょう。ZIP ファイルを開いてパスワード入力画面になれば正しく設定されています。
ここでパスワードを入力すると、ZIP ファイルは元のフォルダに戻ります。
4. パスワードロックされた ZIP ファイルのパスワードを忘れてしまったら
4-1. ZIP ファイルのパスワードは解析できることがある
この記事では Windows 向けの「アタッシェケース」を用いた方法、Mac 向けの ZIP 圧縮を用いた方法でそれぞれ、フォルダにパスワードを掛ける方法を解説しています。
「アタッシェケース」についてはかなり高度な暗号化技術を利用しているため、パスワードを忘れてしまった際の解析は事実上不可能です。もう一方の ZIP 圧縮についてはパスワードを解説する技術が存在します。
すべてのファイルで解析が可能ではないこと、パスワードの長さや複雑さによっては解析に時間がかかることを前提に、ZIP パスワードの解析方法を解説します。
4-2. Lhaplus の探索機能を使ってパスワードを解析
「Lhaplus」という Windows 用の ZIP 圧縮ソフトには、圧縮ファイル作成機能に加えて、パスワードを解析する機能が付加されています。とても有名なソフトなので、フリーソフト配布サイトの「ベクター」や「窓の杜」で簡単にダウンロードすることができます。
4-2-1. Lhaplus のパスワード探索
「Lhaplus」を起動すると、ウィンドウ上部のタブに「ZIP パスワード探索」というタブがあります。このタブをクリックすると、以下のような画面になります。
探索範囲というのは、パスワードに使われていそうな文字列の範囲のことです。できるだけ範囲を狭くしたほうが解析が速くなるので、ある程度パスワードの予測が立っている、またはおぼろげな記憶に残っている場合などは、必要な範囲で探索をしてください。
範囲を設定したら、「開始」ボタンをクリックします。
探索の結果、パスワードが見つかった場合は以下のように結果が表示されます。この例では単純な「1234」というパスワードにしていたので、一瞬で解析が完了しました。複雑な文字列だと数時間かけても完了しないこともあります。
5. Dropbox におけるフォルダの管理体制について
5-1. Dropbox にあるフォルダにはパスワードを設定できる
オンラインストレージサービスである Dropbox の有料版である Dropbox Pro と Dropbox Business には、フォルダそのものにパスワードを設定してロックできる機能があります。この機能を使えば、権限のない人が共有リンクを入手したとしても勝手にフォルダの中を盗み見するリスクを解消することができます。
5-2. 共有フォルダのパスワード設定方法
Dropbox でのリンク権限設定は、ウェブ版の Dropbox にログインした上で、パスワードを設定したいフォルダの右に表示される「共有」ボタンをクリックします。
「共有」ボタンをクリックすると、以下の設定画面が開きます。ここで、「リンクの設定」をクリックします。
次に、「閲覧できるユーザー」の項目にある「パスワード所有者のみ」という項目を選択して任意のパスワードを入力、最後に「設定を保存」をクリックします。
これで該当のフォルダにはパスワードが設定されました。
このフォルダへの共有リンクを発行して誰かに送ったとして、そこからアクセスしようとしてもパスワードがなければ開きません。
これで、オンライン上に保存されているフォルダの中身が守られます。
6. まとめ
機密性の高いファイルが万が一第三者の手に渡ってしまったとしても、フォルダにパスワードを設定しておくことで情報漏洩を防ぐ「最後の砦」についての解説をしてきました。
これからも機密情報の取り扱いがますます重要になっていくことは確実です。ここで解説した方法は Windows、Mac それぞれの環境で今すぐ使えるものばかりなので、あらゆるリスクから大切なファイルを守る方法としてご活用ください。