企画書を作ろうと思っていざパワーポイントを開いてみたものの、何か書き始めればよいのかお困りではありませんか?もしくは、自信のあるアイデアを企画として通したいので説得力のある企画書を作りたいとお考えではありませんか?
企画書は文字通り企画を書面化したもので、これがなければどんなに素晴らしいアイデアであっても人に伝えることができません。しかも、企画が通るかどうかは企画書の出来次第といってもよい部分があります。
そこで、この記事では今すぐ説得力のある企画書を作りたいという方のために必要な基礎知識から実践的なノウハウを解説します。また、そのメリットの多さから利用されることの多い 1 枚もの企画書についても解説していますので、最後までぜひお読みください。
目次
1. 企画書の基本
2. 1 枚もの企画書の書き方
3. 簡単に本格的な企画書が作成できるテンプレート 5 選
4. まとめ
1. 企画書の基本
1-1. 企画書の目的
古くからよく用いられている言葉に、「企画とは問題解決である」というものがあります。何か新しい企画を立ち上げるということは、現在ある何らかの問題を解決することが目的だからです。何か問題がある=足りないものがあるからこそ、そのニーズに応える企画がビジネスチャンスを生みます。
問題解決と言い換えることができる企画の内容を書面化したものが企画書なので、企画書の目的は問題解決の方法や道筋を示すことと言えるでしょう。その企画を提案するに至った現状の問題点を洗い出し、その問題を解決する方法を提示、そして企画が実践された暁に得られるメリットをしっかりと伝えることでこそ、企画書の役割が果たされます。
1-2. 企画書に必要な情報と構成
企画とは問題解決である、という前提を踏まえると企画書に必要な情報が見えてきます。「企画」という言葉をそのまま「問題解決」に置き換えるととても簡単です。
それでは、企画書に必要な情報とそれらの情報をどのように構成するのかという基本をまとめてみましょう。
- 問題提起、現状分析
- 問題解決策を提案
- 具体的な方法、費用の提示
最も短いものでは 1 枚で完結する企画書から、数十ページに及ぶ企画書まで長短はさまざまですが、どんな企画書であってもこの基本情報が必ず盛り込まれています。しかも、ほとんどの場合、この順序で並んでいるはずです。
この構成で企画書を作成するために、揃えておくべき情報を次項で見てみましょう。
1-3. 企画書作成に必要な情報収集
1-3-1. 現状分析
なぜこの企画書が作成されるに至ったのかという経緯を示すために、現在横たわっている問題、課題を指摘します。最初は何となく「こんなニーズがあるのではないか」というおぼろげなものだと思いますが、企画書を作成する段階ではそれをより明確なもの、具体性のあるもの、誰もが共感できるものにしていく必要があります。
たとえば、新型のエコカーを提案する場合。「地球環境が破壊されている」「ガソリン資源には限りがある」という漠然としたイメージから企画が始まると思いますが、企画書の現状分析ではどれだけ地球環境が破壊されているのか、ガソリン資源枯渇への深刻度はどれくらいあるのかという具体的な情報が必要になります。そうすることで「地球環境と資源を守るために、このエコカーは役立つ」という共感が得られるのです。
1-3-2. 解決方法の提示
企画書の本丸とも言えるのが、問題・課題の解決方法の提示です。この企画を実行してもらえれば、現状分析で指摘した問題を解決することが出来るという道筋を示します。先ほどのエコカーの例では、より燃費や環境性能が高いエコカーを投入することで環境負荷をさらに低くすることができるという提案に加えて、なぜそれが可能になるのかというエコカーの環境性能をアピールします。
企画書の最も重要な部分なので、より強く優位性をアピールしたいところですが、企画書にはストーリー性が必要なので前項の現状分析がどこまでしっかりとできているかが企画本体の説得力を決めるということを忘れないでください。
1-3-3. 費用対効果 (ROI)
どんなに秀逸な企画であっても、それを実現する具体性がなければなりません。素晴らしい企画が絵に描いた餅になってしまわないために、お金の話は欠かせません。この企画を実行するためにどれだけの費用が必要なのかという話が出てくることによって、企画書にぐっと具体性や本気度が感じられるようになります。
もしその企画にかかる費用が大きくなるのであれば、その費用がどれだけ大きな効果を生むかという費用対効果をアピールするのが得策です。「こんなに高いのか」と思われてしまうと企画が通りにくくなるので、「高いけれど価値はある」と思ってもらうことが重要です。
費用についての言及は企画書の本体には含まれていない場合もあります。別途見積書という形で価格提示をするのであっても、企画書の本体では費用対効果が高いことを訴求しておくべきです。
1-3-4. 数値、データの収集
企画が持ち上がった背景や企画内容など、一連の情報に説得力を持たせるために外せないのが、数値やデータといった具体的な裏づけです。企画が持ち上がった段階であれば、何となくそうだと思うという程度の認識で構いませんが、それを企画書として提出する段階になったら客観的な裏づけがなければ「思いつき」レベルのままです。
「若者のクルマ離れが進んでいる」という現状分析から始まるのであれば、20 代の人たちの自動車所有率がどれだけ下がっているのか、運転免許保有率がどれだけ下がっているのかを数値で明らかにするべきです。
こうした裏づけのために有効なのが、国や省庁などが発表している調査結果や、大手シンクタンク、ポータルサイト、市場調査会社などが発表しているデータです。こうしたデータの中に企画主旨を裏づけてくれるようなものがあれば、それらを引用して説得力を補強しましょう。
1-4. 企画書作成の CTPT
企画書には、CTPT という概念があります。それぞれ企画書に必要な要素の頭文字を 4 つ並べたもので、それぞれの要素を起承転結のように構成すると伝わりやすい企画書になります。
企画書に必要な4要素CTPT
- C:コンセプト
- T:ターゲットやペルソナの設定
- P:プロセスの明示
- T:ツール
ここでは、実際に提案に使用された企画書「佐賀県観光誘致プロジェクト」を使って CTPT を解説していきます。
1-4-1. C:コンセプト
この企画が生まれた経緯や背景、そして現状分析から浮き彫りになった課題などに対してどうアプローチするのか。誰に対して何を提案したいのか、どんな成果が得られるのか(これをベネフィットといいます)という、企画全体のコンセプトが第一段階にあります。
起承転結の中では「起」にあたる部分で、企画主旨の前に問題提起をします。先ほどの佐賀県観光誘致プロジェクトの企画書では、以下のように問題提起されています。
地方自治体が観光 PR のために動画を作成し始めた頃は注目度も高く成功例も多かったのですが、次第に陳腐化してしまった部分はあると思います。ついには動画が拡散すること、動画の知名度を向上させることが目的のようになってしまっているという指摘も、おっしゃる通りです。
こうして問題提起がなされた上で、これをどうしたいのかが次に続きます。
動画の知名度を向上させることではなく、真の目的は佐賀県の観光アピールです。その目的を達成するためのコンセプトとして、持続性と自走性が挙げられています。
1-4-2. T :ターゲットやペルソナの設定
CTPT の 2 番目にあたる T は、ターゲットの頭文字です。ターゲットとは企画書に書かれている企画内容を誰に訴えかけるのかという対象者です。その対象者はどんな人物像なのかを想定する手法も最近多く見られますが、これをペルソナといいます。
佐賀県観光誘致プロジェクトの企画書では、以下のようにターゲットが設定されています。
20 代~30 代という年齢層が明確に示されています。この年齢層の人たちに佐賀県の魅力をアピールするにはどうすればよいか?というのがこの企画書の趣旨であることがこれで伝わります。
1-4-3. P:プロセスの明示
プロセスとは、企画を実行するための具体的な手順です。コンセプトとターゲットを明らかにした上で、そのコンセプトをターゲットとして設定している人たちにどうアプローチしていくのかという手段を提案します。
佐賀県観光誘致の企画書では、これら若い人たちへのアプローチとして観光体験を提案しています。さらにその体験の方法として「抱く人」というキーワードを挙げています。
見たり食べたりするだけの観光ではなく、地元の人たちとの交流を魅力として伝えようというのが、この企画主旨であることが分かります。
この企画が重視しているのは、観光客だけでなく「佐賀で観光してもらいたい」と思っている地元の人たちの存在です。
その人たちと若い観光客をどうつなげるか、そこにこの企画の肝があります。
1-4-4. T:ツール
では佐賀県に住んでいる「抱く人」と、若い観光客をどうつなぐのか。いよいよこの企画書は CTPT の最後にあたる T 、ツール(具体的な手段)に進みます。
これで企画の意図がはっきりとしました。若い人が最もよく使う情報通信手段としてスマホを活用し、位置情報で近くにいる地元の人と交流して、その結果を SNS でシェアすることによって自然発生的に観光情報が拡散するという効果を狙っています。
コンセプトとターゲットが明確にされた上で、その延長線上にある企画主旨なので、論理的に整合性の取れた企画書になっています。
1-5. プロが作った企画書を見てみよう
企画書に必要な情報や基本的な構成、そして CTPT などを解説してきましたが、特に CTPT のところで取り上げたようにサンプルとなるような企画書があると分かりやすかったのではないでしょうか。
これ以外にも色々な企画書を見てみたいという方は、以下のサイトをおすすめします。プロが作成した様々な企画書を見ることができますので、参考になると思います。
⇒ BB-WAVE
大手企業を中心に、実際に提案で使用された企画書が紹介されています。当記事の解説に引用した佐賀県観光誘致プロジェクトの企画書もあります。
1-6. ダメな企画書になっていないかのチェックリスト
ここまで企画書に必要な情報や構成を解説してきましたが、それを盛り込んでいるからといって企画書として秀逸であると決まったわけではありません。そこまで作り込まれているのにダメな企画書という烙印を押されることのないよう、以下のダメな企画書にありがちな項目に該当していないかをチェックしてみてください。
- ターゲット、ペルソナ設定が曖昧になっていないか
- 文章が多すぎたり、ダラダラとした表現になっていないか
- 現状分析、提案内容に数値や客観的事実の裏づけが欠けていないか
- 誰が提案している企画で、誰が実行するかという主語が曖昧になっていないか
- 企画内容に現実味のないものが含まれていないか
- いつまでにやる、いつまでにメリットが得られるという点が抜け落ちていないか
2. 1 枚もの企画書の書き方
2-1. 1 枚もの企画書とは
企画書というと、パワーポイントで作成した紙芝居のような状態になっているものを想像される方が多いと思います。パワーポイントはプレゼン資料を作成するためのアプリなので、戦略上まだ肝心な部分は見せずに徐々に興味を引いていくという手法にも用いられるわけですが、それとは異なる価値観で作成される企画書があります。
それは 1 枚もの企画書と呼ばれる、文字通り 1 枚で完結する企画書のことです。実際に作成された 1 枚もの企画書は、このような感じになります。
出典:http://ascii.asciimw.jp/pb/bookmart/pdf/47561/4756147534.pdf
出典:https://www.josys.jp/itknowledge/fujiki02
1 枚の用紙に、企画書に必要な情報をすべて盛り込まれていることがお分かりいただけると思います。1 枚だけなので受け取った人がすぐに目を通せることや、多ページの企画書とは違って見落としがなく全情報を伝えやすいなどのメリットがあります。
1 枚ものであっても企画書に変わりはないので、そこに盛り込まれる情報や構成は同じです。違うのは、それが 1 枚にすべて収まっていることだけです。
2-2. 1 枚もの企画書の基本的な構成
1 枚もの企画書では 1 枚の用紙に企画書の情報をすべて記載するので、おおむねどの企画書も左上から右へ、そして左下から右へという流れで読み進むように構成されています。
先ほどの例でも、仮説から背景、そしてアイデアへと進んでいるのでアルファベットの Z を描くように構成されていることが分かります。
企画書の CTPT を、左上から順に並べていって右下で完結するのが基本的な形なので、以下のような構成になっていればよいと思います。
1 枚もの企画書の場合はスペースが限られているので、この限られたスペースでしっかりと企画主旨を伝えられるように工夫が必要です。
文章が長くなりすぎないことや、グラフなど視覚的な情報を多用して「一目で分かる」という 1 枚もの企画書のメリットを最大限にいかすようにしましょう。
2-3. 1 枚もの企画書のテンプレート
1 枚もの企画書を作るのに役立つテンプレートサイトをご紹介します。
・パワポで極める 1 枚企画書
サンプルも多数、テンプレートも多数あります。
・ bizocean 「企画書」の書式テンプレート
社内向け企画書など、1 枚ものだけでなく多数のテンプレートがあります。
・経費削減実行委員会
社外向け、社内向け、色違いなど数種類の 1 枚企画書テンプレートがあります。
3. 簡単に本格的な企画書が作成できるテンプレート 5 選
3-1. bizocean
圧倒的な掲載数を誇るビジネステンプレートサイトです。企画書も多数揃っているので、用途に応じて使い分けることができます。
⇒ bizocean
3-2. Misoca
請求書サービスでおなじみの会社による、企画書のテンプレートです。シンプルかつ 1 枚もの企画書の作成に役立ちます。
⇒ Misoca
3-3. 楽しもう Office
マイクロソフト社による、パワーポイント用の企画書テンプレートです。特設のキャンペーンサイトにあるので、企画書の書き方解説コンテンツもあります。
3-4. テンプレート BANK
会員登録を要しますが、テンプレートの質・量ともに満足できるラインナップです。企画書のテンプレートは多ページ用のものがたくさんあるので、本格的な企画書の作成にも十分使えます。
3-5. PowerPoint Factory
複合機大手のリコー社が提供している、パワーポイント用の素材集です。シンプルなテンプレートに加えて、パワーポイントで使える素材が満載です。
4. まとめ
ここまでお読みいただいた方は、企画書とは思いつきを書面化したというだけの簡単なものではなく、かと言って正しい構成を知っていれば決して難しいものではないことがお分かりいただけたと思います。
どんなヒット商品も最初は企画段階のものであり、それが企画書という書面によって正式な企画となり、世に送り出されてきたのです。
素晴らしいひらめきやアイデアがあったとしても、それを企画書という形で伝えなければ思いつきのままで終わってしまいます。せっかくのアイデアをしっかりと世に送り出すためにも、企画書作成のノウハウをぜひお役立てください!