Dropbox は昨年、地球温暖化対策に取り組み、持続可能性の目標を通じて二酸化炭素排出量を削減すると発表しました。具体的には、2030 年までに以下の目標を達成する計画です。
- スコープ 1、スコープ 2、スコープ 3(出張に伴う二酸化炭素排出)にわたってカーボンニュートラルを達成する
- データセンター運営を含む企業活動において、100 % 再生可能エネルギーを調達する
- 気候変動対策に取り組む組織を支援する
- ボランティア休暇を環境活動に使うよう社員に呼びかける
データセンターを運営する企業として、私たちは、弊社の企業活動が世界のエネルギー消費に与える影響を自覚しています。それだけに今回、データセンターのストレージサーバーで使用するすべての電力を 100 % 再生可能エネルギーでまかなえるようになったと発表できることをうれしく思います。これは、お客様が Dropbox にデータを保存する際に二酸化炭素が排出されなくなったことを意味します。
Dropbox のインフラストラクチャチームは、このマイルストーンを達成するため、「業界最高水準の電力使用効率の維持」「全体的な電力消費の最適化」「より多くの再生可能エネルギーの調達」という 3 つの領域で懸命の努力を続けてきました。
業界最高水準の電力使用効率(PUE)の維持
電力使用効率は、データセンターで消費する電力をどれだけ効率的に利用できているかを表す指標です。この指標は、Dropbox のビジネスにとってだけでなく、お客様にとっても大きな意味を持ちます。エデルマンの「2021 トラストバロメーター」レポートによると、企業に対する顧客の信頼は、持続可能性に取り組む企業のほうが 5.7 % 高くなります。
Dropbox の PUE は業界最高水準であり、2020 年の時点で業界平均を 17 % 下回る数値でデータ センターを運営できています。この数値を達成するために実施した対策は、「外気の活用による節約」「熱抑制システムの導入」「データセンター空間における電力効率の最大化」です。しかし私たちは、この現状に甘んじることなく、現在および将来のデータセンターにおいて革新的なソリューション開発を続け、電力効率のさらなる最適化を追求していきたいと考えています。
全体的な電力消費の最適化
電力消費を最適化するために Dropbox が講じている対策の 1 つは、運用を終了したホストを速やかに停止するというものです。Dropbox のデータセンターでは、寿命に達するサーバーが定期的に発生しています。Dropbox のエンジニアは従来、これらのサーバーの運用を手動で終了していましたが、現在では、新しい Pirlo システムを使って、運用を終了したサーバー ホストを直ちに自動停止できるようにしています。この工夫によって、各サーバーのライフサイクル全体での電力消費量を推定で 5 % 削減することに成功しています。
またデータセンターには、アイドル状態でありながら電力を消費しつつ、特定のサービスに割り当てられていないサーバーも存在します。そこで私たちは現在、データセンターに「HDD スタンバイ」という新たなステータスを導入する作業を進めています。HDD スタンバイの導入によって、サーバーを必要に応じてアクセスできる状態に維持しつつ、ストレージホストの消費電力を約 50 %、Hadoop Distributed Filesystem(HDFS)ホストの消費電力を 25 % 削減できる見込みです。
全体的な電力消費を減らすもう 1 つの方法は、サーバーで必要となるキャパシティを的確に見極めることです。そのため私たちは、需給を監視するチームを拡充すると同時に、計画策定の頻度を月 1 回に変更して、キャパシティの使用を常に適正レベルに維持できるようにしました。これにより、データポイントを増やしてより信頼性の高いモデルを構築できるようになり、その結果、説明能力を高め、必要な変更を速やかに実施することが可能になります。
さらに、インフラストラクチャ全体の改善を通じて、ハードウェアの性能を最大限に引き出す機会を常に模索しています。現在は、全体的なリソース使用率の最大化、効率性の改善、ピーク時間の電力消費量削減を実現するため、オーケストレーションプラットフォームの改善に取り組んでいます。
加えて、ストレージプラットフォームを改良してストレージ容量を 43 % 増やす取り組みを進めています。また今後も、新しいテクノロジーを導入して継続的に高密度化を図り、全体的な電力効率の向上に努める計画です。
より多くの再生可能エネルギーの調達
私たちは、データセンター運営を可能な限り効率化する新たな方法を模索し続ける一方、データセンターで使用する電力を再生可能エネルギーでまかなえるようにしたいと考えていますが、その第一歩はストレージです。2021 年、Dropbox は、再生可能エネルギーを調達するために多大な投資を行っており、自社のストレージ プラットフォームが直接消費する電力を 100 % カーボンニュートラルにすることを言明しています。Dropbox が独自に開発、構築したエクサバイト級のインフラストラクチャである Magic Pocket は、オンプレミスとパブリッククラウドのストレージを使っているため、排出する二酸化炭素を抑制するには地域ごとの対策が必要です。そこで、クラウドパートナーに加え、公益事業者や地権者と積極的に協力して、これらの目標を世界規模で達成できるように取り組んでいます。
これまでのところ、私たちは着実な成果を上げています。この 1 年半の間に、データセンターの二酸化炭素排出量を 15 % 削減することに成功しました。二酸化炭素排出量をさらに減らし、2030 年までに持続可能性の目標全体を達成できるよう、今後も、スマートで革新的な方法の模索を続けて参ります。
データセンターにおける持続可能性の取り組みの詳細については、技術ブログをご覧ください。