本記事はDropbox UX WriterのJohn Saitoがこちらで執筆した記事を本人の許可のもと掲載しています
最近私は、数千件に及ぶ Dropbox アプリのレビューに目を通しました。変なやつと思われるかもしれませんが、この 1 年で最も面白い読み物でした。心の中で笑い、泣き、そして慰められました。
それにしても、これほど多くのアプリ レビューは、実際誰かに読まれているのでしょうか。私の場合は仕事だったのでわかります。ユーザーの皆さんの意見や、Dropbox 製品の感想を知る必要があったからです。
確かに、弊社はユーザー調査を実施していますが、それだけではわからないことを知る必要がありました。世界中の人々から寄せられる生の声を、非難も賞賛も含めてすべて読みたいと思ったのです。
今振り返ると、非常に勉強になったと言わざるをえません。ユーザーの皆さまについて、レビューを読まなければわからなかった新たな事実を知ることができました。
それは一体どんなことだと思いますか。ここからは、レビューを読んで気付いた大きなポイントをいくつか紹介します。
1. ユーザーは自分の声を聞いてもらいたがっている
レビューを読んでいて真っ先に気付いたのは、Dropbox アプリについて、ユーザーには明確な意見があることでした。レビューを次々とスクロールしていく中、何度も目に飛び込んできたのは、「最も」、「最高」、「最悪」などの最上級です。
いくつか例をお見せしますので、雰囲気をつかんでください。
Dropbox の評価は人によってさまざまです。
集計したところ、レビューした人の 70 % 以上が星 5 つまたは星 1 つの評価を付けていました。つまり、Dropbox ユーザーの 3 分の 2 以上が、好き!と嫌い!の両極端に分かれているのです。
なぜ評価が分かれるのでしょう。いくつかの仮説で、極端な反応についての説明が試みられていますが、私自身は、人々はインターネット上では自分の意見を述べることに熱くなる、という考えに賛成です。
声を聞いてもらいたいばかりに、星の数を 1 つや 5 つにしてアピールするのです。
2. ユーザーは、今何が起きているのかを知りたがっている
弊社は 1 年ほど前に、iOS と Android アプリのリリース ノートの作成をやめ、「定期的なリリース更新」をどのように実施しているかを知らせる一般的なメッセージを送ることに変えました。リリース ノートの作成は続けたかったのですが、社内のさまざまな事情を考えると無理でした。
皆さんは、「リリース ノートを読む人って、いったいどんな人?」と思われるかもしれません。実は、リリース ノートは多くの人に読まれていたことがわかりました。作成をやめたところ、レビュアーの 12 % から、一般的なリリース ノートについての苦情が寄せられたのです。10 人に 1 人以上の割合です。
私たちは数か月にわたって、次のようなお叱りの言葉の嵐にさらされました。
辛い時期でした。
それはそうです。お叱りは真摯に受け止めながらも、数百人ものユーザーから、リリース ノートという理由だけで星 1 つの評価を付けられたのは、正直辛いものです。
私たちは、これを胸に刻み込みました。プロセスの不備を解決した結果、現在は幸いにも、iOS 版と Android 版のリリースの度にリリース ノートを作成しています。アプリに寄せられたレビューがなければ、この改善はなかったでしょう。
3. アプリの新しい使い方
人類には創意工夫という喜ばしい力があります。だから、世に送り出された製品がどのように使われるかは誰にもわかりません。
子供用の粘土、「プレイドー」は、元々壁紙クリーナーとして作られたということをご存じでしたか?ところがあるとき、一部の利用者が創作活動に製品を使っていることがわかりました。
そこでメーカーは製品に少し手を加え、子供用の玩具として売り出すことを決めました。見事な方向転換の末、プレイドーの販売が始まり、今では 20 世紀で最も有名な玩具のひとつになりました。
プレイドーで遊ぶ
アプリのレビューのおかげで、Dropbox の面白い使い方を色々知ることができました。たとえば、Dropbox を音楽プレイヤーやノート代わりにしている人がいます。
これを念頭に設計すれば、シャッフル ボタンや急いでメモできる機能を加えるなど、使い方に合った最適な製品を開発できます。こんなこと、誰が予想できたでしょう。レビューの中にはこのように、次の目玉機能開発のきっかけになるものがあるのです。
4. 意見や感想はモチベーションになる
製品開発は楽な仕事ではありません。決まり切った日々の仕事に埋もれていると、人々の生活に変化をもたらすにはどうすればよいかという視点を簡単に失ってしまいます。ユーザー レビューは、自分たちが作り出そうとしているものの大切さをいつも思い出させてくれます。
私は時折、ユーザーの個人的な体験に基づく書き込みを見て、元気をもらっています。こちらをご覧ください。
時には、気が滅入って完全に落ち込んでしまうような書き込みも目にします。
書かれているのが良いことでも悪いことでも、こうした書き込みは、いつも私のモチベーションを高めてくれます。ユーザーのご意見は私たちへの贈り物です。もちろん、欲しかった贈り物でない場合もありますが、それでも貴重であることにもちろん変わりはありません。
フィードバックがあるから、常に基本に立ち返ることができるのです。自分たちは、会社が手当たり次第に掲げる目標のためだけでなく、実在するユーザーのために設計しているのだ、ということを思い出させてくれるのが書き込みです。
5. 評価は国によって大きく異なる
Dropbox アプリは 100 か国以上でご利用いただいています。UI の言語以外、アプリの内容はどの国でもほとんど同じです。
同じなら、各国の評価も大体同じになるだろうと思うでしょう?ところが、評価は国ごとにかなり異なります。
たとえば、iOS アプリを見てみましょう。米国では、星 5 つと星 1 つの評価がほぼ同数です。でも日本では、星 1 つが星 5 つの倍近くになり、ブラジルでは一転して、星 5 つが星 1 つを大きく上回ります。
評価は国によって異なる
なぜこのような違いが生じるのでしょう。ここには 2 つの理由が考えられます。
- 翻訳の品質:世界には、他の言語よりも翻訳が難しい言語があります。そうした言語で訳が不自然になると、評価が下がる可能性があります。
- 文化的な傾向:さまざまな調査から、アンケートへの回答方法には文化的な違いがあることがわかっています。
数年前、Dropbox は世界各国のユーザーを対象にアンケート調査を実施し、UI のテキストの質を評価してもらいました。
評価が最も低かった言語はどれだと思いますか?日本語です。このことから、日本では翻訳後のテキストが、App Store での評価を引き下げていると思われます。
一方ブラジルのポルトガル語では、英語と同等に高い評価が得られました。ということは、おそらくブラジルでは、一般的に評価が高くなる傾向があるのでしょう。YouTube チームが数年前に実施したアンケートでも、ブラジルの結果はほぼ同じだったそうです。
6. Android ユーザーの方が iOS ユーザーより満足度が高い
正直な話、この結果には戸惑っていますが、なぜか Android ユーザーの方が iOS ユーザーよりも Dropbox を高く評価しています。
実際にご覧ください。
なぜ、Android ユーザーの方が満足度が高いのでしょう。
iOS アプリと Android アプリはそれほど違わないので、この結果はショックでした。
では何が理由でしょう。明確な理由はまだ見つかりませんが、詳しく調べなければならないのは確かです。何らかの説明ができるという方や、これについての調査結果を知っているという方は、教えていただけると幸いです。
これは現代の最大の謎かもしれません。Android ユーザーは総じて不満が少ないだけなのでしょうか。アプリに寄せる期待が低いのでしょうか。一体、どういうことでしょう。
開発者はアプリのレビューを読むべきか
私が Twitter で呼び掛けて調べたところ、アプリ開発者の 37 % は、自分のアプリのレビューをほとんど、またはまったく読まないそうです。皆さんもそうでしょうか。
ビューを読むのは確かに時間がかかりますが、それだけの価値は十分あると思います。自分が手がけたアプリのユーザーを詳しく知りたければ、レビューを読んで、その声に耳を傾けましょう。ユーザーだって、よく考えた末に、忙しい合間を縫って意見を述べているのです。それを思えば、こちらも時間をとって話を聞くべきではないでしょうか。
そして、もしレビューの内容を分析したくなったら、Appfigures のようなサービスが役立つことでしょう。Appfigures を使えば、レビュー データの検索やふるい分けが簡単にできます。
開発、設計、プログラミング、製品化のいずれに携わっている人でも、アプリのレビューをよく読めば、必ず新しい何かがわかります。
少なくともレビューの内容について、ブログに載せる記事を 1 本書き上げようかという気になるはずです。✌️