メタファーという表現技法。メタファーでデザインをつくる、デザインを壊す

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イラスト:カート・ライス
本記事はDropbox UX WriterのJohn Saitoがこちらで執筆した記事を本人の許可のもと掲載しています

ライティングのクラスを受講したことがあれば、メタファーに触れた経験があるでしょう。メタファーとは、ある物事を別の表現で表すことです。

  • 時は金なり
  • 恋の味を知る
  • 成功の甘い香り

多くの人が、メタファーとは洒落た文章技術であり、表現にスパイスを加えて、詩的な印象を与えるための技法だと考えています。

その考え方は一旦置いておきましょう。メタファーは詩のためだけのものではなく、もっと身近な存在です。言葉の中で自然に使われているので気が付きませんが、メタファーがなければコミュニケーションを取ることはできません。

デザインの世界でも、メタファーはいつでも頼りになる存在です。アイコンから用語まで、デザインの至る所に使われています。

⚙️ というアイコンは、多くのアプリで使用されています。これは設定のメタファーです。「カートに追加」とあれば、これは注文のメタファーです。

直感的なデザインとわかりにくいデザインの違いは、突き詰めて考えると適切なメタファーが使われているかどうかという点に尽きます。この考えをもう少し掘り下げ、メタファーがデザインという言語の中で大きな役割を果たしていることを確認しましょう。

レトリックと人生

ジョージ・レイコフ氏はメタファーのエキスパートであり、メタファーをテーマとするいくつもの書籍を著しました。私は幸運なことに大学で彼の授業を受講して目からウロコが落ち、メタファーのとりこになりました。

彼の著書である「Metaphors We Live By(レトリックと人生)」で、レイコフ氏と共著者のマーク・ジョンソン氏は、日々の言葉にメタファーがあふれていることを示しています。意識しているかどうかを問わず、メタファーは私たちのものの見方、この世界の理解の仕方を形作っているのです。

実際に確認するため、概念メタファーについて詳しく見ていきましょう。知らないものには「up」、知っていることには「down」を使います。英語では、多くのフレーズがこの考え方をベースにしています。

少し考えれば、これらのフレーズに詩的な要素はないことがわかります。これらは誰もが日常の雑談で使用しています。現実世界に基づいた言葉だからこそ、私たちはその意味がわかります。メタファーはあまりに自然であるため、ほとんどの人は何も考えずに受け入れているのです。

デザインとメタファー

私たちが話したり何かを書くとき、意識せずにメタファーを使うことがあります。同じことが製品のデザインにも言えます。

たとえば、私たちが毎日目にするアイコンの多くはメタファーです。

  • 設定 = ⚙️
  • 編集 = ✏️
  • 添付 = 📎
  • 削除 = 🗑
  • アカウント = 👤
  • 通知 = 🔔
  • 検索 = 🔍
  • コメント = 💬
  • 詳細 = ⋯

これらのアイコンは、ある物事を別の形で表しています。✏️ ボタンをクリックして編集するとき、現実の鉛筆を使用する訳ではありません。🔍 ボタンをクリックして検索するとき、実際には虫眼鏡は関係ありません。

しかし、アイコンを繰り返し目にすることで、私たちはこれらのメタファーを学習し、記憶します。そして、日常的なボキャブラリーの一部になります。

これらのアイコンが説明文なしで表示されていても、多くの人はそれらのメタファーが意味することを、文脈だけで理解できます。

メタファーって素晴らしいと思いませんか?

不思議な言葉

製品デザインでは、アイコン以外にもメタファーが使われています。製品で使用される言葉の多くもメタファーに基づいています。

Medium 社が新しい 👏 ボタンに切り替えたときのことを覚えていますか? この変更に関して、私が最も興味を引かれたのはボタン自体ではなく、その用語でした。

Medium 社は、この変更を展開した際に、Medium 社の記事はパフォーマンスであるという新しいメタファーを発明したのです。

この考え方を裏付けるため、彼らは製品全体に新しい用語を導入しました。applause(称賛)、claps(拍手)、fans(ファン)、audience(オーディエンス)などがその例です。これらはパフォーマンスに関する言葉ですが、Medium 社ではこれらの言葉を記事について語るために使用しているのです。

ゆくゆくは Medium 社がこのメタファーをさらに拡張していくことが想像できます。spotlight(スポットライト)、backstage(バックステージ)、encore(アンコール)などの新機能を目にする日がくるかもしれません。

しかし、これらは表面をなぞっただけです。目を凝らして見れば、身近なデジタル製品に使用されているメタファーに気が付くでしょう。

最後の 2 つの例が示すように、ある概念に複数のメタファーがある場合があり、それが一般的でもあります。なにしろ、愛には少なくとも 99 のメタファーがあるのですから。

メタファーが重要な理由

メタファーは、デザインを直感的に理解できるかどうかに影響を与えます。実世界で結び付けられる物事をベースとしている場合、そのデザインを理解することは簡単です。しかしデザインのベースがあまりにも抽象的だと、それを見る人たちの目は点になるだけです。

実例として、私が最近買ったベビー モニターについてお話ししましょう。便利な機能があるのですが、このオン/オフ スイッチが頭にくるのです。

これはオンでしょうか、オフでしょうか。

左側には垂直なラインがあります。右側は丸です。簡単そうですよね?

いいえ、そんなことはありません。私も、私の妻もこれではオンとオフを見分けることができません。なぜなら、このメタファーが理解できないからです。

これらの記号は何を意味しているのでしょうか。線と円なのでしょうか。数字の 1 と 0? アルファベットの I と O? もしかして棒人間の頭と身体とか?🤔

実は線は「オン」、円は「オフ」を意味しているらしいのですが、実生活のメタファーに基づいていないため、素直に受け入れられません。

試しにこのデザインで他のアイデアを出してみたら面白いのではないかと、太陽がオン、電流がオン、マイナスがオフなどを考えてみました。

オンとオフのその他のアイデア

何をデザインしていても、メタファーの視点を取り入れると、新しいソリューションを模索する際に役立ちます。その概念を現実世界と結び付けることで、意味を最初からすんなりと理解できるようになります。

メタファーが逆効果となるとき

お気に入りのジーンズのように、メタファーは多くの場面にフィットしますが、見境なく使用すればいい訳ではありません。

避けた方が無難な場合もあります。たとえば、携帯電話のホーム画面にはカメラ アイコンがどこかにあると思います。タップすると、カメラが開きます。当然ですね。

では、カメラ アイコンを目のようなメタファーに置き換えることを想像してください。カメラは世界を見る目の代わりになるからです。

文字どおりのアイコンとメタファーのアイコン

もうおわかりですね。ここではメタファーはあまり良いアイデアではありません。文字どおりのアイコンで問題なければ、あえてメタファーを使用する必要はありません。

一般的に、メタファーは人々が実際に概念を理解する助けになる場合に適しています。メタファーが抽象的になりすぎると、濁った水のように先が見えなくなるのです。

情報満載のメタファー

ライターにとって最も荷が重い仕事は、物事に名前を付けることです。名前を付けるのは、ヘッドライン、見出し、ボタン、プライベートでは赤ん坊だってあり得ます。

複数のアクションにつながるボタンに名前を付けなければならない場合もあります。たとえば、メニューを開き、そこで 5 種類の異なるアクションを行うボタンなどです。とにかく多数の意味がある言葉でなければならないため、これを「情報満載のメタファー」と呼んでいます。

以下に、iOS で使用されている情報満載の視覚的メタファーの例を示します。左側のスクリーンショットに上矢印のアイコンがあります。これをタップすると、右側のメニューが開きます。

この上矢印アイコンにはたくさんの意味があります。このアイコンをタップした後は、AirDrop を介して共有する、お気に入りに追加する、iBooks に保存する、コピーする、ニュース アプリで開く、などができます。

では、このアイコンを何と呼べばいいでしょうか。共有、追加、保存、コピー、開く。1 つのアイコンに多数の意味があるので、名前を付けるのは困難です。

情報満載のメタファーは非常に抽象的になりがちなので、得てして理解しづらいものになります。

自分が情報満載のメタファーを使用していることに気付いた場合、1 つの概念に多数の意味を詰め込みすぎているのかもしれません。より直感的なものにするには、細かく分割したり、別の方法でグループ分けできるか確認した方がいいでしょう。

メタファーを使いこなす

ここまでで、デザインの世界でメタファーが果たす大きな役割をご理解いただけたかと思います。メタファーの助けを借りれば、現実世界の何かに関連付けることで、どのような概念でも伝えることができます。

ただ、複雑な概念であればなおさら、デザイナー、イラストレーター、ライターが適切なメタファーを思い付かないこともあります。最近では、メタファーのアイデアを出すことに役立つ多くのツールがあります。

ここでは、特に便利なブレインストーミング ツールをいくつかご紹介します。

1. Noun Project(thenounproject.com
Noun Project は、ほとんどすべてのアイコンを網羅する巨大なデータベースです。start などの単語を入力すると、その概念に関連するアイコンを閲覧できます(ホームのスタート ボタン、ロケット発射アイコンなど)。デザイナー、イラストレーター、ライター向けのインスピレーションの宝庫です。

2. Google 画像検索(images.google.com
Noun Project で検索結果が表示されなかった場合、Google 画像検索を試してみましょう。検索結果には不要な情報が混ざっているかもしれませんが、宝物が見つかることもあります。creativity を検索すると、色、電球、芸術などの興味深いメタファーを発掘できます。

3. Thesaurus.com(thesaurus.com
メグ・ロビショード氏は Shopify で活躍するイラストレーターです。ロビショード氏が語る物語の中で、彼女がイラストレーターとして最も頻繁に使用するツールが類語辞典(シソーラス)だと説明しています。その理由は、物事を別の角度から見ることができるからです。「改善」を検索すれば、高める、磨く、前進するなど、すべてまったく異なるメタファーであるアイデアが得られます。

4. 熟語辞書(idioms.thefreedictionary.com
熟語辞書はコピーライターの秘密兵器です。万能の特効薬ではありませんが、工夫を凝らしたクリエイティブなメタファーを探しているときに適しています。多くの熟語は物質的な世界に基づいているため、精神的な描写をしたい場合には特に便利です。

5. Wordnik(wordnik.com
Wordnik は世界最大のオンライン英語辞書です。Wordnik で特筆すべきことは、「Relate(関連付け)」セクションです。類語に加えて、同様の文脈で使用される単語や、その他の関連単語を見ることができます。時にはでたらめな結果が表示されることもありますが、多くのアイデアをすぐに欲しいときには Wordnik が命の恩人になります。

メタファーが意味をつくる

メタファーは私たちを取り囲む世界に意味を与え、複雑なアイデアを理解する助けになります。

世界では時に思いもよらないことが起こりますが、メタファーのおかげでそれを表現することができます。

メタファーはインターネットをクラウドに、愛を戦場に、時間をお金に変えることができます。メタファーはまるで魔法です。

誰もがメタファーを日常的に使用しているということは、私たち全員が魔法使いだと言えるのではないでしょうか。✨ 🎩✨

もちろん、これもメタファーです。


とりとめのない文章を読んでいただきありがとうございます。また、冒頭のイラストを描いてくれたカート・ライス氏に大きな感謝の意を表します。ライス氏が描く魔法は、dribbble.com/curt_rice でもっと詳しくご覧いただけます。

メタファーに飢えてしまった方のために、アイデアの糧をご紹介します。

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