クリエイティブな作業をするのに、クリエイターである必要はありません

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※本記事はmediumに掲載されたDropboxのプロダクト デザイナーのデイビッド・スティネットによる記事を和訳したものです。

小さい頃、初めて取り組んだ創作作業を覚えていますか?赤、青、緑、オレンジの色で気の向くままに書き殴り、線がはみ出してもお構いなしだったのではないでしょうか。子供のときは誰もが、絵を描いたり歌を歌ったり、物語を作ったりしながら日が暮れるまで楽しむことができました。ではなぜ大人になると、この創造力を使わなくなってしまうのでしょうか。

何かを創造する力、つまり自己表現の欲求は芸術家だけのものではありません。誰の中にもある力です。ところが大人になる過程のどこかで、世の中には「創造力豊かな人」と「そうでない人」、「右脳派」と「左脳派」、「芸術家タイプ」と「会計士タイプ」の 2 種類の人がいて、皆生まれつきどちらかのタイプに分けられると教えられ、その結果、絵筆や粘土、ノートをしまい、続けていても何の役にも立たないという理由から、あれほど楽しかった創作を止めてしまうのです。

「クリエイティブ」とは肩書きではなく、どう考えるかということ

製品デザイナーである私は、クリエイティブなアイデアを思いつくには必ずしも芸術家である必要はないという証拠を日々目にしています。クリエイティブであるのに、その人の性格や職業、大学院で取得した学位は関係ありません。クリエイティブとはどう考え、どう取り組むかという1 つのプロセスです。誰でも関わることができ、関わった人は全員が何らかの価値あることに貢献できます。なぜこれに気付いたのかを説明しましょう。 

Dropbox のデザイン チームに加わるまで、私は Pinterest のディスカバリー チームの一員として、ユーザーが興味の対象を見つけやすくするためのサポートを担当していました。チームの仕事は、ユーザーにとって関係があり、興味をかき立てそうなコンテンツを勧めるにはどうすればよいかを調査結果から探ることです。チームはこの調査を通じて、何かを収集するだけでクリエイティブな気分になる人が大勢いることに気付きました。わざわざ家のリビングをリフォームしたり、ガーデニングを始めたりしなくても、自分の心に響くものを集めたり、いつかやってみたいことを想像したりするだけで、壁を塗ったり地面を掘ったりといったことと同じように、人は創造力をかき立てられるのです。 

誰でもシンプルな行為を通じてクリエイティブを感じられるというこの発見は、私にとって製品のデザインを考えるうえでの基本となりました。Dropbox Paper のデザインではこれを重要なコンセプトとして、常に立ち返るようにしています。 

私たちはこの数年間、真っ白いキャンバスを超える共同作業ツールの開発に取り組んできました。そのツールとは、アイデアを最初に書き込んだ瞬間から美しく見せられるようデザインされた柔軟なワークスペースであり、その目的は、アイデア、コンセプト、ストーリー、ビジョンを誰もが簡単に共有できることにあります。キャンバスに絵を描くのと違って手が汚れる心配は要りません。では、どのようにしてそれを実現したのでしょう。 

形ではなくアイデアを大切に

創造力にとって最大の障害物は、完璧なものを作らなければならないという思い込みだと私は考えます。この思い込みのために、自分のアイデアはまだ完成していないからと披露をためらう人が数多くいます。しかし、アイデアをすぐに美しく(しかも自動で)見せることができれば、そのためらいのほとんどは消えるのではないでしょうか。そして、アイデアを早々と披露することに不安を感じなくなるのではないでしょうか。クリエイティブの過程の早い段階でアイデアについて話し合えれば、それをもとに改良し、よく練り込まれたアイデアへと発展させることができます。 
 
Dropbox Paper を初めて使ったとき、真っ先に気付いたのは、使いやすさを第一にした、とにかくシンプルなツールだということでした。デザイナーとして引き付けられる何かがありました。何も描かれていないキャンバスを目の前にして、私は、なぜアイデアを付箋に書き留めることが好きなのかを思い出しました。付箋のアイデアは何ものにも縛られていないからです。 
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デザイン チームは Paper について、世の中に存在する機能を組み込むことだけがすべてではないと考えます。あえて機能を搭載しないことが、Paper をより優れたツールにしているのです。他の共同作業ツールを見ればわかるように、どれも、その進化のもとは昔からあるワープロです。ワープロの原形はタイプライターで、そこからさらに印刷物、手書き原稿へと遡ることができます。 

つまり書式設定機能とは、印刷物の名残を留めているにすぎないことがほとんどなのです。しかし、時の流れとともに、文字によるコミュニケーション方法も進化してきました。さまざまな機能が次々登場しましたが、製品の多くは昔からのテクノロジーを基に作られているので、常に以前からある機能セットを維持しないと、ユーザーの中に困惑する人が出てきてしまいます。たとえば法務部門です。法務の場合、扱う書類の書式を余白から色、文字のサイズ、フォントとすべて管理しなければなりません。なぜなら、裁判所に書類を提出する際、裁判官から所定の書式を用いるよう要求されることがよくあるからです。

でも、Dropbox Paper のユーザーに想定される人たちにとって、レイアウトの正確さは大した問題ではありません。それよりも、アイデアを伝え合うことの方が大切です。Paper の製品デザイン チームがユーザーを対象に実施した調査では、書式設定の選択肢を減らした方が、プロセスをクリエイティブに進めやすいことがわかりました。そこで Paper に関しては、ブレインストーミングの流れを妨げる要素をわざとすべて取り除き、できるだけ少ない手間で簡単にアイデアを披露できるようにしました。その結果、書式設定ツールをあれこれ探さなくても、見栄えのよい資料をすぐに作成することが可能になったのです。 

優れたアイデアはチーム全員の話し合いから

Paper では、職階に関係なく承認プロセスを進められます。しかし、最初からこの仕組みをデザインしようとしていたわけではありません。これは、ちょっとした嬉しいハプニングから生まれた機能です。私たちは、共同作業にチーム全員が参加すると、自然と何かが起きることに気付きました。 

チーム メンバーは全員が、プロジェクトやアイデアを次に進めるという目標を持っています。そのためプロジェクトの進捗に有効なアイデアがとにかく貴重なのです。インターンの案だろうと CEO の考えだろうと構いません。チーム メンバー一人ひとりの協力を尊重し、等しく評価する必要があるのはこのためです。 

最後には最も優れたアイデアが採用されるはずですが、発案者は必ずしもベテラン社員とは限りません。Paper は、上下関係を意識せず共同作業に取り組めるよう作られています。たとえば、弊社の共同創業者であるドリューやアラシュのコメントとインターンのコメントが隣同士に並んでいて、どちらもアイデアとしても意見としても優れているのを見たら、チーム全員でプロジェクトに取り組んでいるという実感がわきませんか?Paper は、コンテンツを最もシンプルに見せられるツールだと私たちは考えています。Paper でアイデアを検討するとき、誰が変更を加えているかはあまり重要ではありません。それよりも、どこが変更されたかが重要だからです。

徹底的な透明性でレビュー プロセスが向上。上下関係とは無縁のレビューが可能に

よりよい共同作業ツールの開発には何が必要でしょう?結論から言うと、数限りない共同作業が必要でした。Paper の開発に Paper を使ったことで、デザイン チーム自体が成功事例になったのです。この製品のデザインを考えるにあたり、私たちは、多くの人が共同で使っているコンテンツ作成用のドキュメントが、一番貴重な資料になることに気付きました。そこで、共同作業している人が誰かをドキュメント自体に表示する方法を探ろうと考えたのです。
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まず、プロフィール写真とリストのビューを加え、今一緒にドキュメントで作業している相手がわかるようにしました。さらに、誰が何を書き込んだかがわかるようにしたところ、好評だったので、プロフィール写真が目立つように機能を改良しました。そして最初の数か月で、私たちは新たな目標を立てるまでに至りました。それは、コンテンツの作成では誰もが平等だとユーザーに感じてもらう、という目標です。

透明性により、上下関係のない円滑なコミュニケーションが可能に

Dropbox は、オープンであることを大切にする企業です。私たちはその精神を Paper のワークスペースに持ち込もうと、次のようにユーザーに尋ねてみました。「皆さん自身が気分よく作業できますか?ご自分のコメントが、一緒に作業している他のメンバーとの関係の構築や共感に役立っているという安心感はありますか?」自分以外の人が何を考えているかがわからなければ、共感したり互いに理解したりすることはできません。今の状況が誰にでもわかる共通のワークスペースを作れば、ドキュメントを見ていない人がいるのではないかという心配をなくすことができるかもしれない。私たちはそう考えました。 

フィードバックの管理に 1 日振り回される必要はありません

プロジェクト管理の仕事が、あっという間に人間関係の管理に変わってしまった経験はありませんか?問題の一部は、従来型ツールが抱える限界に起因しています。特にレビュー プロセスや承認プロセスでは、この限界のために余計な仕事がよく発生します。今の状況を考えてみましょう。ほとんどの場合、レビューではまず、受け取った手書きのスケッチをスキャンして PDF を作成し、その後チーム全員がそれぞれ注釈を付けてデザイナーに送り返すという方法が採られています。さらに別の 3 ~ 4 人の関係者からもコメントをもらう必要がありますが、これがチーム メンバーのコメントと正反対であることが多いため、デザインを一から考え直して再度レビューするというプロセスが何度も発生します。 

クリエイティブな仕事に従事している人にとって、この相反するコメントをよこした「その他の関係者」との人間関係に対処し、グループ全員に彼らのコメントを伝えることは、重荷以外の何ものでもありません。また、図案には、背景がわからないという問題もあります。メールを使って、どの図案をどのように変更したいのかを説明することもできますが、これでは時間がかかるばかりです。Paper を使えば、作成するコンテンツの横に背景がわかるように図案を配置できます。イメージ図を埋め込んで、なぜこうしたのかを説明したり、関連するさまざまな図案を紹介したり、どのようなフィードバックが欲しいのかを伝えられます。全員で同じドキュメントにアクセスして、互いにコメントを確認し合うこともできます。 

承認プロセスを合理化する最終的な目標は、作業の効率化とチームの生産性向上ではありません。生産性向上ツールは、週 60 時間の勤務を 40 時間に減らせると謳っているものがほとんどですが、Dropbox Paper に関しては、週 40 時間に減らした業務時間をできるだけ楽しくしたいというのが私たちの目標です。アイデアが次々とわくような気がする、いつもより創造力を発揮できそうな気がする、仕事に大きな価値を感じる。このように感じてもらえれば、やりたいことができるので仕事に来るのが楽しくなります。こうしたことに、Dropbox と Paper が少しでもお役に立てればというのが私の心からの願いです。 

デイビッド・スティネットは Dropbox Paper のプロダクト デザイン チーム リーダーです。この新しい共同作業ツールを使えば、クリエイター タイプ以外の人も、クリエイティブのプロセスに楽しく加われます。詳しくは、dropbox.com/paper をご覧ください。

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