写真: ニック・ストリート氏、Vans グローバル マーケティング戦略担当責任者
私たちは昨年カナダのバンフで開催された The Gathering に赴き、世界中で熱狂的なファンを持つブランドのマーケティング リーダーたちが、いかにして会社をカリスマ的存在に導いたのかを聞いてきました。
その会場で、シューズ ブランドの Vans でグローバル マーケティング戦略担当責任者を務めるニック・ストリート氏にお話を伺うことができました。同氏は、広告代理店に外注するのではなく、社内チームが発案したアイデアを元にマーケティング活動を展開しています。その具体的な方法を語っていただきました。
目次
Vans グローバル担当マーケターへの質問 7 つ
- Vans が設立されて 50 年以上経ちますが、その長い歴史の中で印象的な出来事をいくつか教えていただけますか?
- Vans がストーリーを「語る」のではなく「実践する」ようになったのは、何がきっかけだったのでしょうか。具体的に教えていただけますか?
- スケートボード カルチャーをルーツに持つ Vans ですが、今日ではスノーボードにも進出し、ここでもナンバーワンのブランドとなっています。なぜ新しい分野に進出しようと思ったのでしょうか?
- スポーツの文化的支援者としての草の根的な取り組みがうまくいっているかどうかは、どのように判断されているのでしょうか?
- チームでの共同作業を促進するために、どのような工夫をしていますか?
- マーケティングをグローバルに統括し、担当する市場の異なるさまざまなチームを監督するという立場で、事業所や地域の枠を超えたチームワークを促進するために、何かしていることはありますか?
- ともに楽しむことが共同作業を円滑にする秘訣というわけですね。チームの連携がうまくいったケースで、特に印象に残っているものはありますか?
1. Vans が設立されて 50 年以上経ちますが、その長い歴史の中で印象的な出来事をいくつか教えていただけますか?
Vans というブランドがスタートしたのは 1966 年に創業者のポール・ヴァン・ドーレンが家族とともに東海岸から南カリフォルニアに移住し、Van Doren Rubber Company を設立したときのことです。
当時は工場を兼ねた小さな店でした。ポールは工場で、一般向けの特注靴を作っていたんです。彼はこの当時から直販こそが進むべき道だと考えており、小売店舗としてはいち早く直販モデルを取り入れていました。
それ以来 Vans は、たゆむことなく進化を続けています。
サーフィンやスケートボードなどとの交流を通して、それぞれのファンも Vans というブランドも育っていったのです。52 年経った今でも、アクション スポーツ向けの製品を提供しており、さらにはストリート カルチャーやアート、音楽といった分野にも進出をしています。
これまでのような形でイベントに協賛する代わりに
自分たちが主体となって Vans ならではの体験を作り出したり
パートナーとしてクリエイティブなコミュニティを支援したりすることに力を入れています。
— ニック・ストリート氏 Vans グローバル統合マーケティング担当バイス プレジデント
2. Vans がストーリーを「語る」のではなく「実践する」ようになったのは、何がきっかけだったのでしょうか。
具体的に教えていただけますか?
今日、「経験価値マーケティング」と呼ばれているものは、Vans がこれまでのマーケティング活動でずっと重視してきたことでもあります。私たちがスケートボードやサーフィンを支援するということは、それらを生で体験できるようにするということです。
Vans は、こうしたスポーツの文化的な支援者として、アスリートたちがやりたいこと、表現したいことを実現するための場を提供してきました。
それは、マーケティング戦略というよりも、草の根的なアプローチでお客様と直接向き合うための手段だったのです。
このような場を作る力は、地に足を付けて成長してきた Vans だからこそできることです。
最近では、スポンサーとしてイベントに協賛する代わりに、自分たちでイベントを主催する機会が多くなってきました。その良い例が、2 年前に立ち上げたスケードボード競技大会の「Vans Park Series」です。
この大会は、広告代理店ではなく私たち自身で作り上げたもので、Vans 社員のアイデアが元になっています。この大会は大きな成功を収めました。オリンピックに正式採用されたスケートボード 2 種目のうちの 1 つが、この大会と同じ形式なのです。
3. スケートボード カルチャーをルーツに持つ Vans ですが、今日ではスノーボードにも進出し、ここでもナンバーワンのブランドとなっています。
なぜ新しい野に進出しようと思ったのでしょうか?
Vans の歴史を振り返れば、ごく自然な成り行きと言えると思います。サーフィンから始まり、スケートボードに進出、そしてスノーボードが次に来たというわけです。新しいものばかりではなく、たとえば BMX のように、ごく初期のころから力を入れているものもあります。
4. スポーツの文化的支援者としての草の根的な取り組みがうまくいっているかどうかは、どのように判断されているのでしょうか?
Vans にとって最も重要なのは、お客様との関わり合いであり、お客様とどれだけ深くつながれるかです。
現在なら、ソーシャル メディアで人気を集めることが、ブランドの知名度を上げるのに役立つことも確かです。しかし、それよりも大切なのは、実際のイベントでのお客様との関わり合いであり、そうした場で生み出されるコンテンツを通じてお客様が得る体験なのです。
Vans は、広告代理店に頼るタイプのブランドではありません。
私たちが主催するイベントの元になるアイデアは、すべて社内で発案されたものです。
5. チームでの共同作業を促進するために、どのような工夫をしていますか?
共同作業において、何よりも大切なのは人です。
私たちが主催するイベントの元になるアイデアは、すべて社内で発案されたものです。どこかの広告代理店が提案したものではなく、Vans の社員や、私たちと協働しブランドに貢献してくれるアスリートやアンバサダーから生まれたアイデアなのです。こうした人々の声に耳を傾け、小さなところから具体化していく。Vans の場合、このやり方が最もうまくいっています。小さなところから始めるのは、そのアイデアがどれくらい大きく育つか、やってみなければわからないからです。優れたアイデアがあれば、それを実践できる場を提供し、支援するようにしています。
成功の秘訣として、私たちが長年大切にしているのは、カルチャー面で共感できる人たちと仕事をすることです。私たちはこれまで常に、Vans というブランド、そして Vans が支えるカルチャーの「世話役」となってくれる人々に恵まれてきました。
グローバルなイベントを実施するときには、
チーム全員がそのイベントで何らかの役割を担うことになります。
…これは、役職に関係なく共同作業を促進するための取り組みなのです。
6. マーケティングをグローバルに統括し、担当する市場の異なるさまざまなチームを監督するという立場で、事業所や地域の枠を超えたチームワークを促進するために、何かしていることはありますか?
メンバーと頻繁に顔を合わせ、たくさん話し合うことを大切にしていますが、楽しむことも大事だと思っています。これは特に、イベントを開催するときに言えることです。たとえば、グローバルなイベントを実施するときには、チーム全員がそのイベントで何らかの役割を担うことになります。
デジタル マーケティングの担当者も例外ではなく、案内役を務めるなど、何らかの形でイベントの運営に携わります。これは、イベントという場にできるだけ多くの人が参加できるようにし、役職に関係なく共同作業を促進するための取り組みなのです。
7. ともに楽しむことが共同作業を円滑にする秘訣というわけですね。チームの連携がうまくいったケースで、特に印象に残っているものはありますか?
むしろ、共同作業がスムーズにいかないケースの方が珍しいと言えます。
Vans は極めて実践的な会社で、DIY という言葉は Vans のためにあるようなものです。イベントの運営方法、仮設トイレの発注方法、認可の取得方法を学ぶところから、イベントを戦略的に見せるところまで、すべて自分たちでやります。社員はみな、驚くほどさまざまな分野で活躍し、多くの役割を果たしてくれています。
この記事以外にも、チームによる共同作業をスムーズに行うためのヒントをご紹介しています。
詳しくは、「仕事のための仕事」をなくすための大事な 8 つのヒントをダウンロードしてご覧ください。