ファイルサーバーとNASって何が違うの?導入時の注意点と賢い使い方をくわしく解説

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ファイルサーバーとNASの違いや、それぞれの導入メリットの違いについてご存知でしょうか。例えば、NASを活用すれば多くの人が共有フォルダにアクセスできるようになるため、メールでやり取りしながらファイルの共有を行うといった煩雑さもなくなり、生産性の向上が実現できます。しかし、何の計画性もなく安易に立ち上げてもうまく活用することはできないでしょう。本記事ではNASとファイルサーバーの概要を解説するととともに、導入時の注意点などを解説します。

ファイルサーバーとNASの違いとは?

ファイルサーバーは、ファイルを保管・共有するためのサーバーです。一般的にファイルサーバーとカテゴライズされている製品は「Microsoft Windows Server」などのOSや専用ソフトウェアのインストールおよび設定が必要になります。ちなみに、広義にはNASもファイルサーバーの一種だと言われています。

NASとは、LAN に接続して利用する外付けハードディスクを指し、ファイルのバックアップや共有などをするために利用されています。一般的に外付けハードディスクはPCと1対1で接続して使いますが、NASはLANのネットワークに接続して、そのネットワークに参加している各デバイスからのアクセスできるのが特徴です。また、メーカー独自の組み込みOSを採用していることが多く、ネットワークに接続するだけですぐに利用できるのもポイントです。

※NASの詳しい概要はこちら

多くの場合ファイルサーバーは、アクセスするユーザーが複数の拠点で百人以上在籍しているといった企業で使われ、これに対してNASは少人数で構成されたグループで利用されることが多いです。

ファイルサーバーはもともと大規模容量のストレージと内部接続されており、容量の増設もしやすくなっています。これに対してNASは大規模容量に対応した製品も最近出てきていますが、現状ですと拡張性ではファイルサーバーのほうに軍配があがります。

NASはファイルサーバーと比較して価格帯も低く、数名で起業したスタートアップなどでは使い勝手のいいツールと言えます。ファイルサーバーよりも低消費電力も低いため、コストパフォーマンスが高いというメリットもあります。

複数のデバイスからアクセスしてファイルを共有したい、大切なファイルを安全にバックアップしたい、業務で活用したスマホのデータ置き場がほしい、といったニーズを少人数のグループで満たすなら、NASは最適な製品だと言えるでしょう。

また、少人数でも導入しやすいことから、例えば、現場ごとやプロジェクトごとにNASを使ったり、支社や支店などの単位でNASを使ったりと、場所や期間を限定して利用したい場合にもNASは役立ちます。ですが、導入しやすいがゆえに、逆に管理が行き届かなくなってしまうケースも多いため、導入する際には注意が必要です。

ファイルサーバーとNASの比較表

ファイルサーバーとNASのファイル保管の仕組み

ここで、ファイルサーバーとNASがどのようにしてファイルを保管しているのかを説明します。

ファイルサーバー内のストレージもNASも、複数のHDDを1つのドライブのように認識させるRAIDという機能によってデータを保存します。RAIDには複数のレベルがあり、RAID0、RAID1、RAID5、RAID6があります。RAIDはストレージ内でのデータの安全性を確保するためにも必要な技術です。

RAID0は複数のハードディスクに分散してデータを保存し、RAID1は2台のハードディスクを並列に接続して両方に同じデータを保存し、片方のハードディスクが故障しても残ったハードディスクからデータの復旧が可能です。

RAID5はRAID0とRAID1のメリットを併せ持ち、複数のハードディスクに書き込みを行って高速化を図りながらミラーリングもしているためデータの復旧も可能です。

RAID6は、4台以上のハードディスクで構成し、2台のHDDが故障するというレアケースにおいてもデータの復旧が可能です。価格帯は、RAID0やRAID1のものと比較してRAID5、RAID6の製品の方が高価になります。

NASについては、このRAIDの構成をユーザーが詳細に設定する必要がありません。そのため技術や知識がそれほどないユーザーでもすぐに利用開始することができます。

その反面、通常、ファイルサーバー内のストレージのようにユーザーのニーズに応じてRAIDの構成を柔軟にカスタマイズすることはできません。

ファイルサーバーの低価格化・簡素化とNASの高機能化が進む

小規模なスタートアップ企業では、当初、仕事の情報を共有する場合、メールなどでやり取りしているケースがほとんどでしょう。つまり個々のファイルが各社員のPCのハードディスクにばらばらに保管されている状態です。

これでは迅速に情報共有できません。小規模企業が成長するためには、大きなプロジェクトを社員全員で取り組み、成果をあげるのが不可欠です。その際に、情報共有が遅いようではビジネス競争で優位に立てません。迅速にファイルを保管・共有するための設備投資が必要になります。ではその際に、ファイルサーバーかNAS、どちらを選べばいいのでしょうか。

以前までは、小規模なスタートアップ企業であればNASを選ぶという選択肢しかない状況でした。しかし、昨今のファイルサーバーの低価格化・簡素化とNASの高機能化により、状況が変わりつつあります。

ファイルサーバーの中には、高度な機能を省いて低価格化を実現した「エントリーモデル」が人気を呼ぶようになりました。拡張性の高さはそのままに、設定や運用の多くを自動化する機能などを搭載することで、ユーザーの負荷を低減させる製品も出てきているようです。

また最近のNAS製品は、機能の高度化が進み、中にはファイルサーバー並みの使い勝手を実現しているものもあります。システムを停止することなくハードディスクを拡張させることができたり、より安全にデータを保管できる機能を組み込んだりできる製品も出てきています。今までは、アクセス権の設定などはファイルサーバーでしかできないというイメージがありましたが、昨今ではこうした設定が簡単にできるNAS製品も登場しています。

さらに、HDDよりデータの読み書きの速度が速いSSDを搭載したNAS製品も市場に出てきています。これまでNASはファイルサーバーに比べて、セキュリティの確保が難しいと言われることもありましたが、昨今の製品では、あらかじめセキュリティ対策を施したものも登場しています。

遠隔地からリモートでアクセスするならファイルサーバーで、という見方がありましたが、最近は、こうしたリモートアクセスも簡単にできるNAS製品も出ているようです。

このように考えると、ファイルサーバーかNASのどちらを選択するかという問題は、近い将来、アクセスユーザーがどれくらいに伸びるのかということと、社員のITリテラシーの高さに依存するのではないでしょうか。

社員数も拠点数も大幅に拡大しそうだ、ということであれば、上位モデルにアップグレードしやすいファイルサーバーのエントリーモデルを他のIT製品とともに買いそろえ、購入コストを抑えるという手も有効でしょう。ただし、社員の中にITリテラシーがある程度高い人がいないと、運用負荷に耐えられないかもしれません。もちろん、外部に運用を委託できる余裕があれば問題はありません。

逆に、少数精鋭で仕事をまわしていくのであれば、少しグレードが高めのNAS製品を使うのも手です。しかしこの場合、複数のハードウェア製品を管理できる能力を持った人が社内に在席していることがポイントになります。あるいは、常駐はしていなくても、トラブルが起きたときに、できるだけ低コストかつ迅速に解決してくれる外部スタッフがいるのが望ましいです。

まとめ

ファイルサーバーかNAS、どちらかを選択して活用していくか考えたときに大きな問題となるのが、運用スタッフの問題です。ハードウェアはどんなに丁寧に使っていても、一定年数が過ぎると故障リスクが一気に増加するため、ハードウェアの管理と設定などの工数を考えれば、社内か社外で運用担当者を置く必要があります。起業したばかりの小規模企業では、そこまで考える余裕は正直ないでしょうが、その後、数年でこうした課題をクリアにしていく必要があります。

ここでもう一つの選択肢として考えられるのが、Dropboxのようなクラウドストレージサービスの導入です。

Dropboxなら、少なくともハードウェアの管理をする必要はなくなります。容量も管理画面で数クリックするだけで簡単に拡張できます。さらにモバイルツールも含めてあらゆるデバイスで簡単にアクセスでき、専用のワークスペースなどを活用して、リモートワークでの業務効率向上や外部企業とのコラボーレションの迅速化も可能です。

また、クラウドストレージサービスはBCP対策にも効果的というメリットもあります。国内企業の中には、大規模災害の影響でオフィス内に設置していたハードウェアが壊れてしまい、企業の存続にとって重要なデータを損失してしまったというケースもありました。こうした経験も踏まえ、Dropboxをはじめとしたクラウドストレージサービスを最大限活用しようというユーザーも増加しています。

ファイルの保管・共有においては、各製品・サービスの最新の特長をチェックするとともに、運用人員や災害リスク、そして新しい働き方なども考慮したうえで、選択することをお勧めします。

さよならファイルサーバー