提案書の書き方をお探しですか?提案書を作成しようといざ始めてみたものの、初めての方にとっては書き方についての疑問が生まれるのは当然のことです。何か書き方に決まりごとはあるの?やってはいけないこととは、どんなこと?提案書と企画書の違いは?
この記事では、提案書の定義から書き方まで、提案書に関する疑問にお答えするために必要な情報をまとめました。せっかくの提案内容をしっかり伝えて、それが結果を生むことは、自身の評価アップにもつながります。
この記事では長年にわたるコンサルティング業界で経験した筆者が実体験で学んだ知識から、納得できる提案書を作り上げるための書き方と、今すぐ使える便利なテンプレートもご紹介しますので、ぜひご一読ください。
目次
1. こんなに重要な書類、提案書
2. 正しい提案書の書き方と、やってはいけない NG 行為
3. 今すぐ使える提案書の例文、テンプレート集 3 選
4. 優秀な提案書、企画書を参考にできる紹介サイト 3 選
5. まとめ
1. こんなに重要な書類、提案書
1-1. 提案書とは
提案書とは、提案先に対して業務の改善や取り組むべきことなどの提案事項を書面化したものです。提案書を受け取った側はその内容を精査し、採用すべきと判断した場合は提案内容に沿った行動をとることになり、提案側はその行動をサポートします。
提案書は報告書とは異なり、提案先が知らないようなことや専門外であることを伝えることも目的とし、提案を受けた側はその提案書によって新たな気づきを得られることもあります。
1-2. 提案書を作成する目的
提案書には大きく分けて 2 つの種類があるので、その種類によって目的が異なります。
2 つの種類というのは、社内および社外のどちらに向けた提案であるかによって分けられます。社内に向けた提案書の場合は業務改善や安全対策など社内にある問題を解決することを目的にしたものが大半です。
もう一方の社外に向けられた提案書は営業ツールであることが大半で、その提案が採用されることによってビジネスに発展することを目的としています。
1-3. 提案書と企画書の違い
提案書とよく似た書類に、企画書があります。名前が似ているので同義と見なされることもしばしばですが、実際には少し意味合いの違いがあります。
提案書は何らかの改善案や対策など伝えるためのものであるのに対し、企画書は新規プロジェクトや催しもの、新商品などを企画してそれをまとめたものです。
ゼロの状態を基準にすると、何らかの問題がある状態(マイナス)からそれを解決に導く目的を持つのが提案書で、ゼロから新しい事業やプロジェクトなどを展開することでプラスの価値を提案するのが企画書ということになります。
1-4. 提案書に必要な CTPT とは
企画書で重要であるとされている CTPT は、提案書にも当てはまります。この CTPT はそれぞれの構成要素から頭文字を取ったもので、以下の意味を持っています。
- C = コンセプト 提案の背景や目的
- T = ターゲット 誰に対して向けられたものか
- P = プロセス 提案をどのように実行するかという方法論
- T = ツール 提案を実行するために必要なもの
この 4 つの要素、視点が揃っていれば提案書として「何が言いたいのか、何をしたいのか、どうやって実行するのか」ということが明らかになります。
作るだけモノが売れた売り手市場の時代とは異なり、現代のビジネスにはマーケティングが必要になりました。前半の CT で何を誰に提案したいのかという部分を明確にするのは、こうしたモノの売り方にも合致します。
C で提案先の問題点を指摘したうえで、最初の T で誰がその提案で得をするのか、どんな得をするのかというメリットをしっかりと記載することが提案書にとって求められる要件です。
1-5. 提案とは、問題解決である
提案書と企画書の違いについて、提案書は問題や課題を解決する方法を提案するためにもっぱら用いられると述べました。この点は提案書の重要な部分で、問題解決への方策やアイデア、道筋が書かれていないものは提案書と呼べないと言ってしまってもよいでしょう。
業務改善や問題への対策、問題解決を支援する仕組みやツールの紹介など、あらゆる提案が目指す最終的なゴールは今ある問題の解決でなければなりません。
1-6. 提案によるメリットを伝える
提案書の要件として、その提案を採用した暁にはどんなメリットがあるのかを明確にする必要があります。提案を受ける側としては提案内容の中で最も期待している部分でもあるので、できるだけ少ない負担で大きなメリットが得られるように提案内容を練り上げていくと、よりメリットが大きく感じられるはずです。
2. 正しい提案書の書き方と、やってはいけない NG 行為
2-1. 提案書を作成するまでの思考プロセス
提案書の作成には、頭の中で進める一連の決まった思考プロセスがあります。実際に書類として作成を始める前に、以下の流れで書く内容を用意していきます。
2-1-1. 問題点の聞き取り、情報収集
提案書は問題や課題を解決する方法を提案するためのものなので、まずは何に困っているのか、何を改善したいのかという聞き取りを行います。提案書の質を高めるためにも、この作業には時間と手間を惜しまないようにしましょう。
ここでどれだけ正確に情報収集をできているかは、その後に続くプロセスに大きな影響を与えます。
次の項目でも触れますが、ここで集めた情報は提案書の冒頭部分になります。「こういうことでお困りではありませんか?」という呼びかけから始まると、読み手の共感を得やすくなります。
2-1-2. 課題解決の方法を考えられる限り出してみる
情報収集の結果、その課題を解決できる方法がいくつか思いつくはずです。現実味のあるものからないものまで、思いつく限り出してみます。たくさん出れば採用される提案内容が出る可能性も高くなるので、さまざまな視点から出してみると面白いアイデアに恵まれるかも知れません。
アイデアを出す方法にはさまざまなノウハウがありますが、行き詰ったときには「アイデアを出す正攻法 6 選とアイデアに困った時の奥の手 3 選」で解説しているような方法もアリです。
2-1-3. 現実味のある提案内容を絞り込む
色々と出してみた解決策の中で、多くても 3 つ程度に絞り込みをします。同じ切り口の案よりも、異なる切り口から攻めるような構成にすると提案内容が豊かになります。ここで異なる切り口の解決案を提示できるかどうかは、前項の案出しにかかっています。
ここで絞り込んだ解決案は、提案書の中では 2 番目に書くことになります。
2-1-4. 提案内容を実行する予算やスケジュールを確定させる
提案をリアルに感じてもらうためには、その提案内容を実行できる方法論が提示されているのが一番です。予算やスケジュールなど、提案内容を実行する際に必要になるもの、いつまでに成果を得られるのかという点も明らかにします。
複数の提案内容を書き入れると、予算やスケジュールで比較しやすくなります。
ここ確定させた内容は、提案書の末尾に書きます。
2-1-5. 考えられる注意点、留意事項を挙げる
提案段階で考えられる注意点や留意事項、それによって起きる不利益などもしっかりと書いておきたい部分です。読み手からのツッコミを防ぎ、提案内容が絵に描いた餅ではないことを伝えるために重要な最後の締めくくりです。
前項の予算やスケジュールの直後か、それと同じ項目に記入するのが提案書の書き方としてはセオリーです。
頭の中でここまでの思考プロセスを経た結果まとまった情報をもとに、次はいよいよ提案書の作成です。
2-2. 提案書の書面に必要な情報
提案書は、おおむね以下のような形になります。ここでは、それぞれの項目別に書き方を解説していきます。前項の思考プロセスと同じ順序になっています。
2-2-1. 提案先が抱えている問題点の整理
提案とは問題解決であると定義づけられている以上、提案書の冒頭は現在ある問題点への指摘から始まるのがセオリーです。問題点が 1 つであるとは限らないので、複数ある場合はそれを洗い出して整理します。当事者にとっては自分で気づきにくい問題点もあるので、こうした問題点をうまく整理して伝えるだけでも提案書の意義はあります。
ここで的確な指摘をするためには、入念な情報収集が欠かせません。それは社内、社外、どちらに向けた提案書であっても同じです。関係者へのヒアリングや周辺の情報を収集し、その情報の質が高ければ高いほど提案書の価値も高くなります。
2-2-2. 提案したい内容
問題や課題を指摘した上で、それをどうしたいのかというのが提案書の本題です。どうやって問題を解決、改善したいのかを記載して提案書を通じた意思表示をします。思考プロセスの中で複数の解決案が出てきたのであれば、それを 3 つ程度までに絞り込み、まとめます。
重要なのは、提案内容の裏付けです。最初は単なる思いつきから始まったことであっても、提案段階では具体性や実現性が伴っている必要があります。理論武装とまでは言いませんが、読み手が抱く疑問点にはあらかじめ答えられるだけの情報は盛り込んでおきたいところです。
2-2-3. 提案が採用された場合のメリット
3 番目にくるのは、セールストークでも重視されるベネフィット(利益)です。提案をした背景には、その提案が採用されたことによるメリットがあります。そのメリットをしっかりと伝えることで提案に魅力を感じてもらいます。
この場合も「今より良くなる」ということを漠然と伝えるのではなく、問題が解決・改善されたことによる数値的な変化を分かりやすく伝えることが提案書の価値を高めてくれます。
社内外のどちらに向けた提案書であっても、書き方の基本は同じです。
2-2-4. 予算
提案内容を実行する場合に必要となる費用を明確にします。社外向けの営業ツールとして作成される提案書の場合は、特に重要な項目です。費用が高いという印象を避けるために、費用対効果の高さを強調することも必要になるかも知れません。
複数の解決案を提示する場合は、予算面で比較しやすいようにすると費用対効果を強調しやすくなります。
2-2-5. スケジュール
実際に提案内容を実行する場合、いつまでに何が完了するのかというスケジュールを明確にします。予算とあわせてスケジュールを明確にすることは、提案内容にリアリティを与えます。
2-2-6. そこで起こりうる問題点など
提案段階で考えられること、起こりうる問題について分かっていることを付記しておくことも提案書の書き方として有効です。
トラブル防止や読み手からのツッコミを未然に防ぐという意味と、さらに「そこまで思慮が及んでいる提案」という印象を与えることができるため、より提案が採用されやすい環境が作られます。
2-3. 提案書の書式
提案書に決まった書式はありません。企業によって所定の様式を設けているところがあるかも知れませんが、ほとんどの場合は必要事項が揃っていれば問題ありません。
提案書に必要な情報はすでに解説してきた通りですが、大切なのは順序です。問題提起から始まって解決法の提案、そして必要なものや考えられる問題といった補完情報で完結するというのが基本的な形なので、それが満たされていれば提案書としての体裁は成り立つでしょう。
現場でよくとられているテクニックとして、情報量が多い場合であっても提案書は 1 枚に収めるのがよいというものがあります。ページ数が多くなることで全部を読む意欲を削いでしまうという理由や、複数のページにわたっていても忙しい人に対して要点だけを伝えるために「1 枚目だけは読んでください」と伝えれば最も肝心な部分は読んでもらえる可能性が高くなるという事情があるからです。補足するデータや情報などが多くなる場合は添付資料として別紙にまとめるのがよいでしょう。
2-4. 提案書の書き方でやってはいけない 4 大 NG 行為
2-4-1. コンセプトが分かりづらい
提案書という名前が示しているように、提案書には何か提案したいことがあります。書き手が提案したいことには必ずコンセプトがあるはずなので、それが明確になっていないのは最大の NG です。
書き手にとっての言いたいことが心の中では明確になっていたとしても、それが提案書に反映されていなければ「何を言いたいのか分からない」となってしまい、提案に対する興味を失わせてしまいます。
問題提起から提案という流れに至るまで、何をどうしたいのかというコンセプトはとても大切です。提案書の書き方というと小手先のテクニックに感じられるかも知れませんが、一番大切なのはコンセプトを伝えること、つまり何を言いたいのかを伝えることです。
2-4-2. 提案が目的になってしまっている
メリットを感じられないことに、人はなかなか本気になれません。提案書の書き方においても提案を実行した場合のメリットを伝える必要性はとても高いわけですが、この時に設定するゴールがずれているために提案書の価値が下がってしまうことがあります。
提案書を作成すること、提案を実行することは目的ではなく、手段です。その手段をとった結果として得られるメリットが最終ゴールであるという構図を崩さないようにしましょう。
日本全国の各地で第三セクターが苦戦を強いられているのは、そこに商業施設や鉄道などを作って街を活性化させることが最終ゴールであるにもかかわらず、いつの間にかこうした施設を作ることが目的にすり替わってしまっているからです。
2-4-3. 実現性が乏しい
絵に描いた餅という言葉がありますが、提案書がこれに該当してしまうと残念な結果を招きます。どれだけ素晴らしい提案であっても、そこに予算や人的資源、時間などさまざまな面で実現性がなければ意味がありません。もしその提案が採用されたとしても、実行段階でその現実を突き付けられることになります。
第三セクターの話ばかりで恐縮ですが、失敗したプロジェクトの中には「景気回復」という漠然とした要素を前提にしたものもありました。景気が回復することに対する具体的な根拠があればよいのですが、それがないままで期待するというのは、やはり実現性に乏しい提案・企画だったと言わざるを得ません。
2-4-4. 分かりきったことを提案しない
簡潔に要点をまとめるのは、提案書の書き方として重要なセオリーです。問題点の指摘や提案において、すでに提案を受ける側が認識していること、すでに何らかの対策を打っていることにまで提案をする必要はありません。その提案に至る背景として触れることは構いませんが、そのことが提案の本題ではないはずです。
あくまでも提案先が認識しているもののまだ漠然としている問題や、まだ気づきが得られてないことに対しての提案というのが最も伝わりやすいので、今さら指摘するまでもないことにスペースを割くのは得策ではありません。
3. 今すぐ使える提案書の例文、テンプレート集 3 選
3-1. 目的別に提案書のテンプレートが揃う「bizocean」
多彩なビジネステンプレートを配布している「bizocean」の、提案書テンプレート集です。新規事業や商品企画など、この記事では企画書に分類しているものも含まれていますが、無料でダウンロードできる提案書テンプレートの種類はトップクラスです。
3-2. Word および Excel 用提案書のテンプレート
提案書は Word で作成されることが多いのですが、ここでは Excel 用のテンプレートも用意されているのがユニークです。テンプレートの内容はこの記事で解説している提案書そのものなので、ダウンロードしてそのまま必要事項を埋めていくことで提案書が完成します。
3-3. 例文とサンプルが豊富な提案書テンプレート
場面別、用途別のビジネス文書テンプレートを配布している「ビジネスマナーと基礎知識」による提案書テンプレートです。ユニークなのはテンプレートだけでなく、そこに何を記入するべきかという解説と例文が入っていることです。
4. 優秀な提案書、企画書を参考にできる紹介サイト 3 選
4-1. SlideShare
世界的に有名なスライド(企画書)の紹介サイトです。英語のサイトなので英語メインですが、「提案書」「企画書」「プレゼン」など日本語で検索すると日本語の優秀作も多数ヒットします。
ただ、この SlideShare は英語など多言語のスライドを見ることができるのが売りなので、外国語のものでもデザインなど参考になるスライドは多いと思います。
4-2. alle
英語メインの SlideShare に対して、こちら alle は日本語サイトです。掲載されているスライドも日本語なので、書かれている内容などを参考にしやすいでしょう。
⇒ alle
4-3. 第 6 回 販促会議 企画コンペティション
タイトルの通り、販促会議のコンペで優秀作となったスライドが紹介されています。広告業界の大御所、宣伝会議が主催しているコンペだけあって受賞作は見ごたえがあります。
5. まとめ
社内に向けた提案書は、業務改善の第一歩です。そして社外に向けられた提案書は、新たなビジネスの第一歩です。いずれにしても提案書は、そこから何かを始めるファーストステップなので、しっかりとした情報収集と分析の上に成り立ったものであればあるほど、その後の展開がより実りの多いものになります。
この点を踏まえて、提案すること、提案書を作成することが目的になってしまわないように、真の目的達成に向けたプロセスを歩むことが大切になります。そのための第一歩に、この記事が参考になることを願っています。