ネット上の販促活動をしている企業の方々にとって、コンバージョンの改善は至上命題です。そのためにさまざまな手法やノウハウを試されていると思いますが、AB テストもその中の 1 つとして各方面で大きな成果を上げています。
AB テストって何?どうやったら売り上げにつながるの?という疑問にお応えするため、AB テストの基本的な考え方から実践のポイント、有名な成功事例、そして今すぐ始められる AB テストツールの情報をまとめました。
記事をお読みいただいた後からすぐに AB テストを始められるので、ぜひ最後までお読みください。
目次
1. 最も売れる方法を導き出す AB テスト
2. AB テストを実施するために必要な 6 つのチェックポイント
3. AB テストで劇的な改善が見られた事例 3 選
4. AB テストを実施するのに役立つツール 4 選
5. まとめ
1. 最も売れる方法を導き出す AB テスト
1-1. AB テストとは
AB テストは主に Web サイトやネットサービスなどで用いられる手法で、2 通りの打ち出し方、見せ方などを用意してそれぞれを同じ条件で実験してどちらが高い効果を上げたかを検証して「最も売れる方法」を導き出すために用いられます。A パターンと B パターンという 2 通りを用意して実験をすることから AB テスト、または A/B テストと呼ばれています。
後述しますが、アメリカのオバマ大統領が選挙資金を集めるための公式サイトを AB テストを用いて改善した結果、大きな成果を上げたことでも注目を集めました。今ではネット上での各種プロモーションにも幅広く利用されており、その最終的な目的はコンバージョン率の向上と売り上げへ増加への貢献です。
1-2. AB テストの基本的な考え方
2 つ用意したパターンの両方を実際に試してみて、どちらが効果を上げるかを比較し、高い効果が見られた方を残すというのが AB テストの基本的な考え方です。ただし、実際に販促活動を行っていると試したい方法を 2 つに絞り込むことは逆に難しいことのほうが多いと思います。その場合はいくつものパターンをそれぞれ組み合わせて順に試していく手法がとられ、これを「多変量テスト」といいます。
また、AB テストは一度実施したら終わりというものではありません。テストの結果、高い効果をもたらした方を残し、その後もさらに高い効果をもたらすかもしれない仮説を立てて、それを試すということを繰り返すのがセオリーです。これを繰り返すことによって最適解に到達し、最も売れる方法を導き出すことができます。
1-3. AB テストは何を「テスト」するのか
AB テストは主に Web サイトなどネット上のプロモーションで利用されているので、その前提でテスト項目を列挙すると、主に以下のようになります。
- レイアウト
- コピーライティング
- ボタンの配置、文言(CTA)
- ターゲット、ペルソナ
- イメージ写真、商品写真(写真の有無)
- 価格
些細な変更点であってもどんどん試していくのが AB テストの正しい活用方法なので、これ以外にもちょっとした違いでテストが行われることもあります。
【CTA とは】
Call to Action の略で、Web サイトにある問い合わせボタンや購入ボタンなど、最終的な行動につながる部分のことです。行動喚起の重要な一押しであると見なされており、AB テストによって文言を変えるなどの試行錯誤が行われています。
1-4. テスト結果の活用方法
AB テストを実施した結果、明らかに異なる結果が出たとします。その場合、高い効果が見られたパターンを採用してコンバージョン率の向上を目指すのが正しい活用方法です。
ただし、先述のように AB テストはそれで終わりではありません。採用したパターンが今後も高い効果をもたらし続けるという保証はなく、常に検証を続けていく必要があります。効果が薄れてきた場合や、さらによいと思われるパターンがある場合は再び AB テストを実施し、どちらが最適解であるかを探し続けましょう。
このように細かい改善を続けることによって最終的なゴールを目指す手法のことを、グロースハックといいます。AB テストは、グロースハックの中にある主要な実践手段の 1 つです。
2. AB テストを実施するために必要な 6 つのチェックポイント
2-1. 購買しない理由をなくす
購買しない理由をなくすというのは、ネット上のプロモーション活動ではよく用いられる考え方です。そのページからの遷移をなくすことでページ内の情報に集中してもらうランディングページの考え方も、この延長線上にあるものです。
「高いから」という理由に対しては費用対効果の高さをアピールすることや、「遠いから」という理由に対して通信販売を提案するなど、購買しない理由をあらかじめなくしておくのは、AB テストにも反映するべき概念です。
デザインやユーザビリティにシンプルさを追求して無駄な要素をなくすのも近年よく見られる手法ですが、これも「ごちゃごちゃして分かりにくい」というネガティブ要素を排除し、分かりにくさによって購買しない理由をなくすためのものです。
2-2. 価格にメスを入れてみる
販促活動で価格を変更するのは勇気がいることかも知れませんが、AB テストでは価格面でもさまざまなテストが可能です。安くすれば売れるとは限らないのが近年のマーケティングなので、敢えて高くしてみるなどさまざまなパターンを試していくと、その商品やサービスの適正価格が見えてくるメリットもあります。
2-3. コピーライティング、文章を微調整
コピーライティングを変更してみるというのは、AB テストの王道です。サイト内にはたくさんのコピーライティングがあります。キャッチコピーだけでなくボディコピーと呼ばれる商品説明の本文や、CTAの文言など、変更できる箇所は多岐にわたります。
お金をかけることなくすぐに実施できるので、AB テストが多用されている要素です。
2-4. レイアウトを根本から疑ってみる
サイトのレイアウトは見た目の美しさだけでなく、ユーザビリティや心理的効果に大きな影響を及ぼします。カラム数を変更したり、王道とされているようなレイアウトを変更するなど大胆な AB テストが劇的な結果をもたらした事例が多数あります。
縦に並べられていた情報を横に並べてみたり、その逆にしてみるだけでコンバージョンが改善した事例もあるので、レイアウトに対する先入観を敢えて疑ってみるのも AB テスト的、グロースハック的だと思います。
2-5. 何度も繰り返す
AB テストは手軽にできることもメリットなので、小刻みに何度も実施していきましょう。一度に何もかも改善しようとするのではなく、毎回テーマを絞って些細な変化を比較するのがセオリーです。こうすることによってこれまで抱えていた問題点をピンポイントで特定できるため、以後のグロースハッキングにも役立ちます。
2-6. 1 回の検証項目は 1 つまで
前項で述べたように、AB テストで検証する項目は 1 回につき 1つまでです。そうしないとコンバージョンが改善したとしても何が功を奏したのかが特定できず、間違った解釈をしてしまう可能性があります。
決して欲張らず、少しずつ改善していくという視野で 1 つずつ改善を繰り返していきましょう。
3. AB テストで劇的な改善が見られた事例 3 選
3-1. AB テストの威力を世に知らしめたオバマ大統領の献金サイト
アメリカのオバマ大統領が選挙資金を集めるために公式サイト AB テストを行い、なんと 60 億円もの資金を集めたという事例があります。AB テストの有効性が広く知られる契機となった事例です。
試されたバターンの 1 つ目は、こちらです。
そして、もう 1 つのパターンがこちらです。
大きな違いは、色目とアイキャッチ画像、そしてボタンの文言です。さまざまな AB テストを繰り返した結果、下の家族写真が掲載されているパターンが好まれ、60 億円もの献金集めに成功しました。
⇒ 【出典】How Obama Raised $60 Million by Running a Simple Experiment
3-2. フォームの縦横を変更しただけでコンバージョンが 1.5 倍に
必要事項を入力して送信するというフォームは多くの Web サイトにあるものですが、この入力フォームが縦横のどちらに並んでいるのが高い効果をもたらすのかという AB テスト事例があります。
デザインとの親和性という観点から横並びに配置されていた入力フォームがこちらです。
これに対して入力フォームを大胆に縦にした上で、アイキャッチ画像の上に重なるようにしたパターンが実験されました。
結果は 2 つ目のパターンが圧勝となり、アクセス数はそれほど変わらないものの、コンバージョン数が 87 から 119 へと急増しました。
⇒ 【出典】A/B test case study – Arenaturist booking engine layout
3-3. CTA 文言を変更した事例
AB テストにおいて CTA 文言の変更は頻繁に行われています。あるメルマガ購読を促すサイトにおいて、「購読する」という CTA 文言を「受信する」に変更したところ、200% 以上の改善が見られたという事例があります。
この理由として考えられるのは、「購読」という言葉に付いて回る「お金が必要なのかも」「自宅に何か届くのかも」といった不安を「受信」という文言で払拭したことです。メルマガを受信する程度であれば、というお手軽感が功を奏したのでしょう。
4. AB テストを実施するのに役立つツール 4 選
4-1. Google アナリティクス ウェブテスト(無料)
無料でありながら高性能なアクセス解析ツールとしておなじみの Google アナリティクスに実装されている「ウェブテスト」は、無料で AB テストを実施できるツールです。
「行動」タブから「ウェブテスト」を選択して実施したいテスト指標を選択してコードを埋め込むだけなので、とても手軽です。
4-2. Juicer (無料)
さまざまなサイト分析機能を提供している Juicer には、AB テスト機能があります(サイト上では A/B テストと表記)。無料プランでも AB テストを利用できるため、まずやってみたいという方におすすめです。
有料プランになると AB テストを自分で設定・実施する必要がなく、すべて代行してくれます。
4-3. Optimizely
自動生成されるタグをページ内に埋め込むだけという手軽さの一方で本格的な AB テストを実施できることが売りで、日本企業を含む 7,000 社以上が利用している定番の AB テストツールです。サイトは英語ですが、直感的な操作性も魅力なので、言葉が分からなくてもサービスの利用は十分可能です。
4-4. Gyro-n ABテスト
海外発の AB テストサービスが多い中で、国内の草分け的な存在です。価格も手ごろなので始めやすく、何よりもすべて日本語環境で AB テストを実施できるのは安心感が大きいと思います。14 日間の無料トライアルもあります。
5. まとめ
ここまでお読みいただいた方の多くは、「なんだ、AB テストは簡単そうじゃないか」と思われたのではないでしょうか。A と B という 2 つある選択肢の両方を試してみて、よかったほうを残すという極めてシンプルな考え方で、それでいて大きな効果につながる可能性があるのですから、AB テストは試してみる価値が大いにある施策だと思います。
無料で始められるツールもご紹介しているので、手始めに前から気になっていたことから試してみましょう!