たたき台を作ろうと思ったものの、何から始めればよいのかお困りですか?たたき台という呼び方だけだと、どういう主旨の書類を作ればよいのかよく分からないという方も多いことでしょう。
たたき台は刀など金属製品を作る鍛冶場に語源を持つ言葉で、取り急ぎ現段階のアイデアや企画を書面化したもののことです。ここから企画案を磨き上げていくことが前提になっているので、その段階での企画の概要や全体像をまとめるのに役立ちます。
この記事ではたたき台の正しいあり方や書き方、そしてたたき台を作成するのに役立つアプリのご紹介をしていますので、どうぞ最後までお読みください。
目次
1. アイデアの素案や原案、たたき台
2. 上司をうならせるたたき台作り 7 つのポイント
3. たたき台の作成に便利なおすすめツール 3 選
4. まとめ
1. アイデアの素案や原案、たたき台
1-1. たたき台の正しい意味と語源
ビジネスシーンで、上司から「たたき台を作ってみて」という指示を受けることはよくあります。たたき台という言葉のニュアンスから叩く(バッシング)ための草案を作ることだと解釈している人は多いのですが、厳密にはそういう意味ではありません。
確かに、たたき台はその後の企画案を練り上げていく一連の流れの中で最初にくる工程です。大まかな草案をまとめたものをたたき台として提出した後はそのたたき台に対して手を加えていきながらロジックの整合性がとられた企画書に仕上がっていくので、バッシングという意味での叩くことを前提にしているという意味で解釈されるのも無理はありません。
たたき台は漢字で書くと「敲き台」となります。見慣れない字ですが、これは刀などを作る鍛冶場で使われる台のことです。この敲き台に真っ赤になった鉄を乗せ、叩くことで製品を作っていく光景は容易に想像できると思いますが、これから製品になる真っ赤な鉄を乗せる台がたたき台なので、「新しいものを作り上げるための土台」というのが正しい解釈です。
1-2. たたき台と意味が似ている言葉
たたき台という言葉には、類義語がたくさんあります。素案や原案といったとても意味が近いものから、アウトラインや大筋、概要といったように「細かいことは決まっていない段階のアイデア」という意味で使われている言葉も、たたき台の類義語です。
また、たたき台のことは英語で draft と表現されることがあるので、この draft を直訳して下書きという言葉もたたき台と同じように用いられています。
いずれも意味合いは似ていて、初期段階の企画案で粗削りな状態のもの全般を指している言葉です。
1-3. たたき台の存在理由
どんな企画案であっても、最初は誰かの思いつきから始まります。思いつきの段階ではまだロジックも整理されておらず、アイデアと呼べる状態のものではありません。
その状態からアイデアをとして練り上げていくプロセスで登場するのが、たたき台です。たたき台があるからこそアイデアはより具体性や現実性を持ったものとなり、最終的には企画書という形で提案されます。
粘土から陶器を作るとき、最初に大まかな形を作ってからろくろを回して形を整えていきます。この最初に作る大まかな形が、アイデア創造におけるたたき台と同じ意味を持っていると言えるでしょう。
1-4. ビジネスシーンでのたたき台
企画案や提案内容をまとめていくには、何度も会議やブレストなどが行われます。そのときに取っ掛かりとなるような情報がないと議論は盛り上がりにくく、その取っ掛かりとなるのがたたき台です。
冒頭で「たたき台を作ってみて」という指示を上司から出されることが多いと述べましたが、これは企画・提案の第一工程を指示しているという意味です。そこで作られたたたき台をもとに、企画・提案の内容を整えていく工程がその後に控えていることも同時に意味しています。
1-5. たたき台がないとどうなる?
たたき台がなければ思いつきからアイデアへの橋渡しが難しくなるため、この部分にたたき台の存在理由があると言ってよいでしょう。後述しますが、たたき台は手直しや微調整を繰り返してアイデアを具体的なものにしていくので、そのベースとなるたたき台は重要な存在です。
デザインの世界にはラフといって、下書きのような段階で一度確認を取る工程があります。文章作成の世界にも草稿やプロットといって、最終原稿の前段階でおおむねどんな内容にするのかという原稿があります。
ゼロの状態から何かを創造する作業には必ず、このようにたたき台に相当するプロセスがあるのです。
2. 上司をうならせるたたき台作り 7 つのポイント
2-1. とにかく早く提出する
たたき台は草案の段階なので、作成にそれほど時間はかからないというのが一般的な認識です。そのため、指示を受けたら早めに提出するべきです。時間が経てば経つほど本格的に作り込んだものを期待されるので、たたき台はとにかく早く提出するという意識を持ちましょう。
2-2. 完成形を目指さない
たたき台は、あくまでも草案であり、下書きです。最初からいきなり完成形を目指さず、本来の語源のように「ここからたたいて仕上げていく」という感覚で充分です。
そもそも、たたき台の段階では必要な情報も十分揃っていないはずなので、この段階で完成形を目指すことは不可能です。その中で無理に完成させようとしても意味がないので、現段階で揃っている情報でサラサラと書き上げる感覚が最適です。
アイデアやロジックが詰め切れていない部分も当然あると思いますが、たたき台の段階では解決するよりも、その詰め切れていない部分があるという注釈をつけておくだけで問題ありません。
2-3. たたき台で様子を見てみる
たたき台は企画案の前段階という位置づけなので、一度そのたたき台を提出してみて様子を見るというテクニックも活用したいところです。どんな指摘が入るのか、そのたたき台に対して誰かが別の案を出してくるのか、といった具合に「誰が何を言うか」という点に注目していると、たたき台をブラッシュアップしていく方向性が見えてきます。
たたき台は指摘されてナンボの書類なので、色々な人から意見を仰ぎましょう。
2-4. コンセプトだけはブレない
たたき台から企画案の確定という一連のプロセスでは、何度も手直しや微調整が加えられますが、その流れの中で唯一変わらないものがあります。それは、コンセプトです。「なぜこの企画が立案されたのか」という背景や提案先のニーズ、ベネフィットなどは変わらないはずです。もしそれが変わる場合は、別の企画案が新たに生まれたと考えるべきです。
そのため、コンセプトだけはたたき台の段階であってもしっかりと固めておきたいところです。
2-5. 何度も手直しをして最終形に近づける
国会で法案が議論される際にも「議論のたたき台」が用意され、そのたたき台に対して手直しを加えながら議論を深めていく手法が採られています。ビジネスシーンでのたたき台もこれと同じで、最初に提出したたたき台がそのまま最終形になることはほとんどなく、細かく何度も手直しを加えながらブラッシュアップしていくのがセオリーです。
むしろ、何度も手直しされるということは議論が深まっている証拠なので、そこで指摘されたことや新たに出てきた課題などは、たたき台があったからこそ得られた気づきです。
何度も手直しをして提出するということを繰り返していると、そのたたき台作成を指示した上司も状況を把握しやすいので「報・連・相」がうまく機能します。
2-6. 細かいことを気にしない
どうせ作るなら上司が唸るようなたたき台を作りたいと思うのは人情ですが、それはたたき台の役割ではありません。指摘されてナンボ、ツッコミが入ってナンボという感覚の方が最終的によいものができるので、たたき台の作成段階では細かいことをあまり考える必要はありません。
こう言うと雑な仕事をしているように感じるかもしれませんが、それよりもスピード感を大切にしてテンポよく内容を磨き上げていくほうが秀逸な企画書ができあがるというのは、筆者の経験上でも実感しています。
よくあるツッコミとして具体性や実現性、コストパフォーマンスなどが挙げられますが、これらを詰めていくのはたたき台が作成された後の話で構いません。
2-7. たたき台の段階で必要であると分かったものをリストアップする
たたき台を実際に作成していると、必要になりそうなものがおぼろげに見えてきます。まだそれが確定的なものではなくても、「必要になりそうなもの」としてリストアップしておくと、それも議論の対象にできるので企画案を練り上げる作業の効率がアップします。
ここでいう「必要なもの」とは、コストや時間、人的なリソースなども含まれます。
3. たたき台の作成に便利なおすすめツール 3 選
3-1. PowerPoint Mobile
マイクロソフト社の有名なプレゼンソフト、PowerPoint のモバイル版です。スマホでスライド作成ができるので、最終的に PowerPoint 形式で企画書を作成するのであれば、たたき台の段階から PowerPoint で企画案を練り上げていくと効率的です。
モバイル版とはいえ、本格的な編集が可能なので外出先や移動中などで名案を思いついたらすぐにそれを反映できます。
⇒ Android 版アプリ
⇒ iOS 版アプリ
⇒ Windows 版アプリ
3-2. Cacoo
クラウドベースで作図ができるサービスです。たたき台の段階では図で企画案を整理していくことも多いので、この Cacoo を利用して企画案を図式化してまとめていくと整理しやすく、またクラウドに保存・共有できるので他の人と共有しながらたたき台をブラッシュアップしていくことも可能です。
3-3. Dropbox Paper
Dropbox Paperは、その名の通り 1 枚の紙に対して複数の人が自由に書き込みをしながらアイデアや情報をまとめていく作業に使うためのツールです。リアルペーパーであればその場に全員がいないと共同作業はできませんが、Dropbox Paper は離れた場所であってもいつでも好きな時に共有ファイルの編集が可能です。
この機能はたたき台の作成やブラッシュアップにとても有効です。スマホ向けのアプリも用意されているので、より機動的なたたき台の共有が可能になります。
Dropbox Paper のより詳しい情報や具体的な使い方については、「使ってみたら想像以上によかった!Dropbox社員が教える新「Paper」の効果的な使い方」をお読みいただけると深く理解していただけると思います。
4. まとめ
ビジネスシーンでたたき台という言葉は比較的気軽に多用されていますが、その本当の意味や役割はあまり浸透していないように感じます。そこでこの記事ではたたき台が持つ本来の意味と役割を解説しました。たたき台は企画の初期段階で欠かせない大切なものであり、いかにそれをブラッシュアップしていくかが企画案の出来栄えにも大きく関わっていることを感じていただけたのではないでしょうか。
この記事でも述べてきた通り、あまり難しく考えることなく、とにかく作ってみるというスタンスで、そこから素晴らしい企画案が生まれるきっかけになれば幸いです。