クラウドソーシングとはいったい何かという疑問をお持ちですか?また、興味はあるものの何から始めたらよいのか分からない方も含めて、クラウドソーシングに対する注目度は以前よりも高くなっています。
注目度が高くなっている分だけ期待値も高くなりますが、メリットばかりではなく知っておくべき問題点があるのも事実です。
この記事では、クラウドソーシングとは何かという根本的な疑問からメリットとデメリット、代表的なサービスの使い方、そして活用事例までをご紹介します。仕事を発注したい人、受注したい人それぞれの立場で、この記事を読めばクラウドソーシングを理解できるように情報をまとめていますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
1. クラウドソーシングとは
2. 代表的なクラウドソーシングサービス紹介
3. クラウドソーシングが活用されている主な活用事例
4. まとめ
1. クラウドソーシングとは
1-1. 発注者と受注者が出会うクラウドソーシング
クラウドソーシングは、「クラウド」と「ソーシング」が組み合わさった言葉です。「クラウド」とは直訳すると「群衆」という意味で、ここでは主にネット空間のことを指し、「ソーシング」は業務委託を意味します。
ネット空間で不特定多数の人に取引を求め、そこで出会った人からサービスやコンテンツを購買するのがクラウドソーシングです。ある仕事を任せたい人がネット上でその仕事を担当してくれる依頼先を募集し、それを見つけた人が応募をするという形で取引が成立し、ネット上で役務の提供と報酬の支払いが完結します。
仕事を外部委託することをアウトソーシングと言いますが、クラウドソーシングはその外部委託先をクラウド、つまりネット空間に求めるためこう呼ばれています。
1-2. クラウドソーシングの仕組み
クラウドソーシングには発注者と受注者がいます。それを運営者が取り持つ形で成立しており、発注者から受注者に支払われる報酬の一部をシステム利用料金として徴収することで運営が成り立っています。
仕事の発注形式を大きく分類すると「プロジェクト」と「タスク」があり、プロジェクト形式の場合は発注者がプロジェクトを任せる相手を探し、交渉で取引成立を目指します。もう一方のタスク形式は比較的単純な作業を交渉を経ずにウェブ上で納品まで完結して、その成果物を承認すると取引成立となって報酬が支払われます。
事前にやり取りや交渉をするので、ある程度どんな相手に依頼しているのかが分かるプロジェクト形式に対して、タスク形式は依頼先が誰なのかをほとんど意識することなく取引が完了します。
1-3. クラウドソーシングのメリット
発注者と受注者をつなぐ仕組みはこれまでにもありましたが、インターネットを利用するクラウドソーシングには特有のメリットがあります。発注者、受注者それぞれの目線で挙げてみると、以下のようになります。
1-3-1. 発注者のメリット
- 安価に効率良く仕事の依頼先を探せる。
- 大量のタスクを一度に進行させたい場合など大勢の依頼先を一度に見つけることができる。
- 評価制度があるため、ある程度スキルや仕事の評価を把握しながら依頼できる。
- コンペなど多くの人からアイデアを募りたい場合に発注しやすい。
1-3-2. 受注者のメリット
- 自宅、会社にいながらにして営業活動ができる。
- 報酬の受け渡しを運営側が担保しているため未払いなどのトラブルがない。
- スキル、評価の高い人は営業活動をしなくても仕事を探せる。
これらを総合すると、発注側にとっては個人事業者や小規模なビジネスであっても依頼先を探しやすく、受注側にとってはフリーランスで活動している人(ライター、デザイナー、プログラマーなど)やスキルがあるものの経験が浅い人、育児などで時間的な制約がある人などにも仕事の機会があるというメリットが考えられます。
1-4. 知っておきたいクラウドソーシングの問題点
前項ではメリットを挙げたクラウドソーシングですが、もちろん知っておくべき問題点もあります。発注者、受注者それぞれに考えられる問題について挙げてみましょう。
1-4-1. 発注者に考えられる問題点
- 顔が見えない相手に仕事を任せる不安がある(納期や品質など)。
- 守秘義務を徹底してくれるかの確証が持てない。
- 継続的に仕事を依頼するにあたって信頼関係を構築しにくい。
1-4-2. 受注者に考えられる問題点
- 発注者が依頼先を全面的に信頼しているわけではなく、条件の良い仕事が少ない。条件の良い仕事は実績のある人にしか回ってこないので経験が浅い人は稼ぎにくい。
- 顔が見えない取引相手だけにその場限りの取引では、条件が悪い一方で高い品質を求めてくることがある。
- 上記 2 点の問題がありながら取引が成立してしまっており、受注者の待遇が改善されにくい。
発注者にとってはどこの誰か分からない相手に納期のある仕事を任せて大丈夫かという不安がつきまとい、受注者にとっては顔が見えない者同士の取引ということで条件が改善されないという不満が現場から聞かれます。
この条件面については発注側が相場を熟知していないという理由も関係しており、発注側、受注側双方の未熟さは手軽に利用できるクラウドソーシングが持つメリットの裏返しかも知れません。
2. 代表的なクラウドソーシングサービス紹介
ここではフリーランスで働いている人の多くがその存在を知っている代表的なクラウドソーシングサービスとして「クラウドワークス」と「ランサーズ」を紹介。運営会社の概要、受発注方法、実際に使ってみた感想などを取り上げます。
2-1. クラウドワークス
2-1-1. クラウドワークスの概要、運営会社など
「クラウドワークス」は、株式会社クラウドワークスが運営する大手クラウドソーシングサービスです。2014 年には東証マザーズに上場を果たしており、2016 年現在ですでに会員数が 95 万人を突破するなど順調な業績で推移しています。
⇒ クラウドワークス
2-1-2. クラウドワークスの使い方(発注、受注)
クラウドワークスを利用するには、まずはユーザー登録から始めます。ここで作成するアカウントは発注、受注共通なので 1 つのアカウントを持っていれば両方で利用可能になります。
トップページにある新規登録フォームにメールアドレスを入力することからスタート、画面の指示に従って手続きを進めてください。
アカウントの作成が完了すると、マイページで発注と受注の両方を操作できます。発注画面と受注画面の切り替えは、管理画面右上にある「クライアント(発注者)メニュー」「メンバー(受注者)メニュー」をクリックで切り替えます。
【発注の方法】
クライアントメニューに切り替えて、上部メニューの「新しい仕事を依頼」をクリック、そこからは発注したいカテゴリーや形式、条件など画面に従って選択、入力していきます。
公開が完了したら、後は受注希望者からの連絡を待つか、上部にある「クラウドワーカーを探す」をクリックして自ら依頼先を検索して声を掛けていきます。
【受注の方法】
メンバーメニュー(受注者メニュー)で上部にある「仕事を探す」をクリック、そこから目的の仕事を検索するのが最も簡単な方法です。意中の案件を見つけたら、応募をして発注者からの反応を待ちます。
その他には、すでに実績があるクラウドワーカー(クラウドワークスでの受注者のこと)になっていると発注者側からオファーが届きます。発注者側から声を掛けてきているので成約の可能性が高く、実績を積んでいくと条件の良いオファーも届くようになります。
2-1-3. クラウドワークスの特徴
国内大手のクラウドソーシングサイトであるクラウドワークスには、いくつかの特徴があります。
プロジェクト単位での報酬計算だけでなく時給制といって時間単位での工数に対して報酬が決まる仕組みを導入していること、「プロクラウドワーカー」という実績の多い受注者を認定する制度を設けていることなどが目を引く特徴で、特にプロクラウドワーカー制度は発注者側が依頼先の選定に役立つとして好評のようです。
2-1-4. フリーランサーとして実際に使ってみた感想
実際にクラウドワークスを利用してみた感想として最も印象的なのは、「少なくともライティング案件については機能している」と思えることです。クラウドワークス全体でもライティング案件がかなりのウェイトを占めているようで、運営側にもクラウドワーカーとしてライターを積極的に募集、育成したいという意図が見られます。
クラウドソーシングにありがちな異様に単価の低い案件も依然として多く見られますが、その中でも予算を用意して本気で取り組みたいと考えているクライアントも散見され、こうしたクライアントは優秀なクラウドワーカーとうまく仕事をこなしている様子がうかがえます。
数年前と比べると格段に発注者の質が高くなっていることは実感できるので、後はそれに対して受注者側がどこまで要望に応えられるかという段階にあるといえるでしょう。
2-2. ランサーズ
2-2-1. ランサーズの概要、運営会社など
「ランサーズ」は、社名も同じくランサーズ株式会社が運営する大手クラウドソーシングサービスです。前項の「クラウドワークス」と並び日本国内ではシェアを二分するほどの存在感を持ちます。
国内においてはクラウドソーシングサービスの草分け的な存在で、設立当初からの強みもあってプログラム開発やウェブ制作などの分野の案件が多いという特徴が見られます。
⇒ ランサーズ
2-2-2. ランサーズの使い方(発注、受注)
初めてランサーズを利用する場合は、トップページにある「仕事をしたい方」「依頼をしたい方」それぞれの目的に応じたボタンをクリックすることから始めます。いずれも会員登録が必要なので、初めての場合は以降の画面で会員登録の手続きをします。
無料のアカウント作成が終わると、ログインすることで全ての操作を管理画面から行うことができるようになります。
【発注の方法】
管理画面の右上にある「仕事依頼(無料)」ボタンをクリックして、カテゴリー選択から順に必要事項を選択、入力していきます。投稿が完了したら受注者が検索できるようになるので、応募者からの連絡を待ちます。
また、上部メニューの「ランサーをさがす」をクリックして要望に合致するスキルを持っている人を探してオファーすることも可能です。
【受注の方法】
現在募集中の仕事は、上部メニューの「仕事をさがす」をクリックして検索できます。膨大なカテゴリーから自分のスキルで担当できそうな仕事を選び、その中から意中の仕事を探してください。
また、実績のあるランサー(ランサーズでの受注者のこと)になっている場合はその実績を見て発注者側からオファーが届く場合もあります。
2-2-3. ランサーズの特徴
クラウドソーシングの草分け的存在ということもあって、新しい働き方の提案というコンセプトが前面に出ています。仕事のしかたについても応募者の中から依頼先を選ぶプロジェクト形式、単純作業を多くの人に担当してもらうタスク形式、それに加えて多くの人から提案を募って採用した人に対して報酬が支払われるコンペ形式などがあります。
設立当初にプログラム開発やウェブ制作などの案件が多かったこともあって、現在もこうした開発系、制作系の案件に強みを持っています。
2-2-4. フリーランサーとして実際に使ってみた感想
利用者に対するプッシュ型のアプローチがとても多いサービスだと感じます。1 日に少なくとも 4~5 回は運営側からメールが届き、最新の案件や「ランサーとして活躍するには」というコンテンツなどが配信されます。また、しばらく利用していないと「最近利用していませんが、いかがですか?」という趣旨のメールも届きます。
知名度の差なのか、双璧であるクラウドワークスよりも発注者側からのオファーは少ないように感じますが、投稿されている案件の数にそれほどの差はありません。ランサーズの場合は運営側が積極的にアプローチをしているので、発注者自らがあまり動かないのかも知れません。
一度、発注者に納品をしても連絡が途絶えたことがありましたが、それを運営側に伝えるとすぐに動いてくれたようで発注者側から連絡があり、無事に検収完了(報酬の支払い)となりました。この一件で、金銭的なやり取りにはかなり厳格なルールが運用されていると感じました。
2-3. 両者をうまく使いこなすコツ
ライティングなど「文系」に強いクラウドワークスと、開発・制作など「理系」またはクリエイティブ系に強いランサーズという大まかな傾向はあるものの、どちらも発注をするのは無料なので多くの発注者は両方のサイトに案件を投稿しています。
つまり、掲載案件による得手不得手はほとんどないということです。後は好みの問題ということになりますが、ひとつ考慮しておきたいのは先ほどの強みと自身のスキルとの関わりです。
ライター活動をしている人であればクラウドワークスで実績を積んだ方がライティング案件のオファーが入りやすくなりますし、プログラムやウェブ制作などのスキルを持っている人はランサーズで実績を積んだ方が有利でしょう。
受注者にとって、クラウドソーシングのメリットを享受するにはある程度の実績が必要になるので、どこで実績を積むかという戦略は最初に立てておくことが得策です。
3. クラウドソーシングが活用されている主な活用事例
3-1. 発注者側の活用事例
3-1-1. 自社のロゴデザインを公募
地方でブランド農産物を栽培から販売まで手掛けている企業にとって、ブランド価値を高めるためのロゴや各種商品パッケージなどのデザインは必須です。しかし農村部であるがゆえに近所に頼めるデザインオフィスがなく、広くアイデアを募る目的もあってクラウドソーシングに発注しました。
都市部、農村部を含む日本全国からの応募や提案があり、その中からブランドイメージに合致するものを選び、そのデザインを提案した人とはデザイナーとしてさまざまな商品のデザインを継続的に依頼、統一感のあるブランドイメージの確立によってブランド農産物の地位を確かなものとしました。
3-1-2. 人件費、固定費の削減に成功
システム開発や運営を行う企業では比較的単純な作業も多く、こうした作業に社員の経営資源を割くのは人件費のムダであると以前から感じていました。そこでアルバイトやパートなどのスタッフを募集したこともありますが思うように人材が集まらず、結果として社員が担当するというムダが続きました。
クラウドソーシングが登場し、単純作業であれば外部に委託できるのではないかと思って募集したところ、作業量に対してのみ報酬が発生するので人件費の削減が実現しました。
また、クラウドワークスで仕事を受注しているのは個人が多く、生活の合間を見つけて作業をしてくれるので人によっては土日など休日にも仕事が進捗するのも魅力的です。
これにより社員が本来取り組むべき仕事と、外部に委託する単純作業をうまくすみ分けることができるようになりました。
3-1-3. 自社ホームページを安価に作成
小規模ビジネスや個人事業者にとって、集客ツールとしてホームページの重要度は大資本企業よりも高くなります。しかし小規模ビジネスであるがゆえにホームページに投じる予算にも限りがあるため、本来最も必要な事業者の手元にホームページがないという状態でした。
個人間の取引であればウェブ制作会社に依頼するほどの費用をかけなくても制作してくれる人がいると思うものの、そういう人とのマッチング手段がありませんでした。クラウドソーシングはこうした事業者と個人レベルの受注者をマッチングできるため、限られた予算の中で集客ツールとして十分使えるホームページが完成、運営できるようになりました。
3-2. 受注者側の活用事例
3-2-1. 優秀なセールスパーソンとして活用する個人事業者
個人事業者や小規模企業の場合、経営者自らが営業活動をしている例がよく見られます。営業活動がメイン業務のうちはよいのですが、受注量が増えてくると本業が忙しくなるため営業活動に割ける時間が取りづらくなります。
クラウドソーシングはクライアントとの物理的な距離に関係なく「仕事の質」だけで営業活動ができるので、元から実績のある事業者にとっては強力な営業ツールとなります。
この事例では小規模なウェブ制作会社がクラウドソーシングを営業リソースとして活用していますが、他の業種でも同様の利用方法は十分に考えられます。
3-2-2. 年齢、職業、性別、居住地に関係なく受注を安定化
年齢や職業、性別、そして居住地に関係なく発注者が望む仕事ができるという一点で仕事を取ってくることができるので、フリーランスで活動している人にとっては受注量を安定させる効果があります。
たとえば出産などで仕事がしたくてもフルタイム勤務ができない女性もいます。そのような状況でも、持っているスキルをいかして空いた時間だけでも働きたいという願いはクラウドソーシングでかなえられるので、在宅ワークの形で働く女性が増えています。金銭的なメリットだけでなく、それまで社会で活躍していた女性にとっての働きがいを見出しやすい仕組みでもあるので、本当の意味での「ワークライフバランス」が実現しました。
4. まとめ
「クラウドソーシングとは」という意味の解説に始まり、代表的な大手サービスを紹介し、クラウドソーシングが有効活用された事例をご紹介してきました。「クラウドソーシングとは」という概念から具体的な利用イメージまでご理解いただけたのではないでしょうか。
メリットとデメリットの両方があるものの、ネットを使った新しい働き方が提案されていることは事実です。ここでご紹介した活用事例はほんの一部で、他にもクラウドソーシングを有効に活用して課題を解決した企業、新しい働き方を手に入れた人はたくさんいます。「クラウドソーシングとは何か」という疑問をお持ちだった方にとって、この記事が一歩を踏み出すきっかけになることを願っています。