文書の保存期間、ちゃんと把握していますか? 文書保管に効果的なシステムとは

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企業活動では多岐にわたる文書を作成しますが、取引や決算など、文書の種類によっては法律で保存しなければならない期間が定められています。企業はそれらの文書を適切に管理し、提出を求められた際は迅速に対応できるようにしなければなりません。また、法定保存期間を過ぎた文書は速やかに廃棄処理することも大切です。今回は、「文書の保存期間」の基礎を紹介するとともに、どのようなシステムやサービスを使えば効率的に管理できるかをご紹介します。

文書保管の基本的な考え方

企業が取り扱う文書には適切な保存期間があり、法令で定める文書を勝手に処分してしまうと、過料を課せられることがあります。また、法令違反にあたらない場合でも、文書が適切に管理できていなければ、コンプライアンスが問われ、企業の信頼性やブランドイメージが失墜しかねません。一方で、定められた保存期間以上に保管していると保管スペースを圧迫し、管理コストを増やしてしまうため、廃棄処分することも必要です。

文書は作成から廃棄までのライフサイクルを適切に管理しなければなりません。しかし、定期的に見直して判断するようでは手間がかかりますし、担当者が変われば取り扱いに迷うかもしれません。効率的な文書管理のためには、文書を作成した段階で保管期限を決めておくとよいでしょう。

代表的な法定保存文書とその保存期限

会社法、労働基準法、各種税法などによって、文書の保存期間が定められています。金融や製造など業種によって適用される個別の法律もありますが、ここでは代表的なものの一部をご紹介します。

●2年間保存

健康保険に関する書類
厚生年金保険に関する書類
雇用保険に関する書類

●3年間保存

労働者名簿
派遣元・派遣先管理台帳
災害補償に関する書類
タイムカードなど労働時間の書類
郵便物等の発受信簿
労使委員会議事録

●4年間保存

雇用保険の被保険者に関する書類

●5年間保存

健康診断個人票
従業員の身元保証書
介護保険に関する書類(介護計画、サービス提供記録、苦情の内容等の記録など)
※厚生労働省令では「介護保険サービスが終了してから2年間」となっているものの、自治体によっては5年間の保存を求めています

●7年間保存

仕訳帳・現金出納帳・固定資産台帳など取引に関する帳簿
決算に関して作成された書類(10年保存が義務づけられている書類以外) 取引証憑書類(領収書、借用書、預金通帳、小切手、振込通知書、請求書、契約書、見積書、仕入伝票など)
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
源泉徴収簿(賃金台帳)

●10年間保存

株主総会議事録
取締役会議事録
委員会議事録
計算書類および附属明細書(貸借対照表・損益計算書など)
会計帳簿および事業に関する重要書類(総勘定元帳・各種補助簿・株式台帳など)

●永久保存

法令などで定められていないものの、永久保存が必要と考えられるものです。

●定款

株主名簿、新株予約権原簿、社債原簿、端株原簿、株券喪失登録簿
登記・訴訟に関する書類
官公署への提出文書、許認可書、通達などに関する重要な書類
社規・社則と、その通達文書
効力が永続する契約にまつわる文書
重要な権利や財産に関する書類
製品開発・設計に関する重要な文書

文書管理システムを導入する利点とは

さまざまな文書を効率良く管理するための手段として、「文書管理システム」があります。文書保管システムは、契約書や社内規定のほか、営業報告書や稟議書など多方面の書類を一元管理し、期限管理や権限管理の機能を備え、容易に検索できるようにしているものが一般的です。

中には、開発資料や設計図を扱えるようになっているもの、ナレッジ共有機能に重きを置いているものなど、製品によって特色があります。また、多くの文書は紙の原本保管を求められてきましたが、近年では「e-文書法」や「電子帳簿保存法」の要件を満たしている場合には電子保管することができるようになっています。システムの選定においては、こうした法令への対応状況についてもチェックする必要があります。政府は対象の拡大や、より簡便に扱えるようにするための法令改正を繰り返していますので、今一度ペーパーレス化できないか見直してみるとよいでしょう。

ただ、過去に作成した膨大な文書を新たに導入する文書管理システムへ取り込むには、手間やコストの負担が気になるところです。文書管理システムのオプションとして、取り込みやシステム登録の代行サービスを提供しているベンダーもありますので、利用を検討してみてください。

電子帳簿保存法上の区分イメージ

電子帳簿保存法上の区分イメージ

参照:国税庁 令和3年5月発行「電子帳簿保存法が改正されました

クラウドストレージ+文書保管サービスで手軽に始める文書管理

システムを導入しなくても、「クラウドストレージ」と「文書保管サービス」を組み合わせることで代替することも可能です。具体的には、文書はスキャナで読み取ってクラウドストレージで保管し、原本は段ボール単位で貸倉庫に出し入れできる文書保管サービスで保管する方法です。

内容を見返したい時には、いつでもどこからでもクラウドストレージにあるコピーを参照できます。またPDFファイルをOCR機能で検索可能にしておけば、検索性も高まります。クラウドストレージによってはTo-Do管理機能が付いたサービスもありますので、合わせて利用することで処分すべき文書をリストで把握可能です。このとき、契約書の場合は廃棄の観点だけでなく、契約期間の終了にともなう再締結を失念しないように管理しておくことが大切です。

たとえばDropboxの場合、全文検索機能でWordやPDFのほか、画像内テキストを認識して、目的の文書に素早く到達することができます。また、共同ドキュメント編集サービスDropbox Paperは、To-doリストの作成とユーザーの割り当て、通知の機能を備えていますので、文書管理でも役立ちます。

すべての文書がペーパーレス化を認められているわけではありません。そのため、文書を保管するキャビネットがオフィススペースを圧迫するのも仕方がないことと言えます。ですが、クラウドストレージと文書保管サービスを組み合わせることで、withコロナ時代に対応したオフィスのスリム化と在宅勤務の環境整備を、手軽に始めることができるのです。

保存期間を過ぎた文書の廃棄方法

文書には、個人情報や機密情報を含むものが少なくありません。そのため、保存期間を過ぎた文書はシュレッダーや溶解処理で廃棄する必要があります。シュレッダーはその場で手軽に処分できる一方で、大量処分時には手間がかかりますし、目が粗いと復元されてしまう可能性があります。溶解処理業者に委託して段ボールごと処理してもらう方法もありますが、機密情報を適切に扱っている事業者であることをよく確認してから利用するようにしましょう。

まとめ

企業で作成する文書は、法令に則った適切なライフサイクル管理が必要です。前述したように、効率良く管理するためには、文書管理システムの導入を検討しましょう。また、Dropboxのようなクラウドストレージと文書保管サービスを組み合わせて利用することで、少ない投資ですぐに文書管理を始めることが可能です。

注意が必要なのは、いずれにせよ保管期限を誤って設定してしまったのでは意味がないということです。処分した後から気づいても、書類は戻ってきません。

ただし、Dropboxの場合には、エクステンデッド バージョン履歴アドオン「EVH」を追加することで復元することが可能です。先ほどご紹介したように、法令で保管が義務づけられている期限は、基本的に最長でも10年間です。EVHを利用すれば、データ作成日から最長 10 年間、バージョン履歴とデータ保護が適用されますので、後から誤削除に気づいたとしても十分に対応することができます。

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