DX推進をわかりやすく解説!成功事例・失敗事例・進め方までわかる

dx 推進
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DX(デジタルトランスメーション)とは「デジタル技術を活用して起こす変革」のことです。

DX推進で実際に企業が行うことは以下のとおり定義できます。

デジタル技術を活用して、
1. 製品・サービス・ビジネスモデルを変革する
2. 業務そのものや組織そのものを変革する
→ これらの変革を実行した結果として競争上の優位性を確立する

DX推進は、これからの企業が変化に対応して生き残るために不可欠であるにもかかわらず、

「DX推進って、イマイチ具体的に何をすべきなのかわからない」という方が大多数です。

このままDX推進に乗り遅れれば、事業継続が不可能になるリスクさえあるため、早急に取り組みをスタートしなければなりません。

よって本記事では、2020年代以降の経営にとって重要な「DX推進」について、成功事例・失敗事例を交えて解説します。

 本記事のポイント

  •   DX推進の基礎知識・メリット・デメリットが把握できる
  •   DX推進の成功事例・失敗事例を解説
  •   DX推進の進め方まで網羅

    「DX推進について知りたい」
    「自社のDX推進を成功させたい」

    という方におすすめの内容となっています。

    この解説を最後までお読みいただければ、あなたは「DX推進の基本」はもちろん、企業事例から成功のコツや失敗回避の教訓まで学ぶことができます。

    結果として、自社を大きな成長に導くDX推進を実現できるはずです。ではさっそく解説を始めましょう。

    1. DX(デジタルトランスメーション)とは

    DX(デジタルトランスメーション)とは

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    DX推進について詳しく解説する前に、DX(デジタルトランスフォーメーション)についての基礎知識からおさらいしましょう。

    1-1. DXの基本的な定義

    DXの基本的な定義

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)とは、一言でいえば「デジタル技術やICTを活用して起こす変革」のことです。

    DXはもともとウメオ大学(スウェーデン)のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した概念で、「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」とされています。

    ICT(Information and Communication Technology:インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)とは、情報通信技術のことです。

    ICTの浸透によって、安心・安全な社会、持続可能な社会、生産性の向上、健康の質の向上など、あらゆる面が良くなっていくというのが、DXの根幹にある考え方となります。

    ▼ DXのイメージ図

    DXのイメージ図

     

     

     

     

     

     

    出典:総務省「平成30年版 情報通信白書」

    1-2. 従来のIT化とDXとの違い

    ここで疑問に感じるのが「IT化とDXって、何が違うの?」という点かもしれません。

    IT化(効率化やコスト削減を目的としたIT技術の導入)は以前から推進されており、今さら目新しさを感じない方が多いでしょう。

    従来の情報化やICT利活用とDXが異なるのは、DXは既存のビジネスモデル自体に変革を起こす点です。

    ▼ 従来とDXの違いイメージ

    従来とDXの違いイメージ

     

     

     

     

     

     

    出典:総務省「令和元年版 情報通信白書」

    従来のIT化は、IT技術を活用して、既存のビジネスモデルやシステムをより効率的に、より便利にするためのものでした。

    一方DXは、デジタル技術やICTを活用することでビジネスモデル自体を根本的に変え、新しいものへ刷新していく考え方です。

    このポイントは、企業がDX推進するうえで非常に重要となりますので、押さえておきましょう。

    2. 企業がDX推進で実際に行うこと

    企業がDX推進で実際に行うこと

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    では、“企業がDX推進で実際に行うこと”とは何でしょうか。

    経済産業省が2018年12月に発表したDX推進ガイドラインでは、以下のとおり定義されています。

    企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

    出典:経済産業省「DX推進ガイドライン」

    ここからキーワードを拾って整理すると、企業のDX推進で行うことは以下のとおり定義できます。

    ▼ 企業がDX推進で行うこと

    デジタル技術を活用して、
     1. 製品・サービス・ビジネスモデルを変革する
     2. 業務そのものや組織そのものを変革する
    → これらの変革を実行した結果として競争上の優位性を確立する

    それぞれ詳しく見てみましょう。

    2-1. 製品・サービス・ビジネスモデルを変革する

    1つめは、デジタル技術を活用して「製品・サービス・ビジネスモデルを変革する」ことです。

    活用する具体的なデジタル技術としては、以下が挙げられます。

    ・5G(第5世代無線通信方式)
    ・IoT(モノのインターネット)
    ・AI(人工知能)
    ・ビッグデータ
    ・ソーシャル技術
    ・クラウド 他

      上記は一例ですが、日々さまざまな分野でデジタル技術が開発されています。

      新しいデジタル技術を取り入れて今までにない新しい製品やサービスを開発することが、DX推進のひとつの柱といえます。

      DXの基本概念は前述のとおり「ICTの浸透によって、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」です。

      企業においては、新たな製品・サービスの開発によって新たな価値を社会に提供することが、人々の生活を良い方向へ変化させることにつながります。

      さらに、事業そのものの構造や利益を上げるための仕組み(ビジネスモデル)も、従来の型にとらわれず新しいスタイルを生み出していくことが、DXの実践となります。

      具体的な事例は、後ほど「6. DX推進の成功事例」にて紹介しますので、続けてご覧ください。

      2-2. 業務そのものや組織そのものを変革する

      2つめは、デジタル技術を活用して「業務そのものや組織そのものを変革する」ことです。

      具体的な取り組み例としては、以下が挙げられます。

      ・社内の古いITシステム(レガシーシステム)を刷新する
      ・アナログで行っていた作業をシステムで自動化する
      ・AI(人工知能)を業務に導入する
      ・クラウドサービスの導入で業務のあり方を変える
      ・作業ロボットやドローンを導入する

        なかでも経済産業省が危機感を持って推進しているのが、古いITシステムの刷新です。というのも、老朽化した既存のITシステム(=レガシーシステム)は、DX推進の足かせとなっていると考えられるためです。

        既存システムの現状と課題

        出典:経済産業省「DXレポート」

        つまり、DX推進に取り組む優先順位としては、最初に老朽化したレガシーシステムから脱却しないことには、すべてが始まらないというわけです。

        3. いまDX推進に取り組むべき理由

        いまDX推進に取り組むべき理由

         

         

         

         

         

         

         

         

         

        さて、ここで気になるのが、

        「そもそも、DX推進は取り組むべきものなのか?」

        という点ではないでしょうか。

        答えは「大企業はもちろん、中小企業も、すべての企業ができるだけ早くDX推進に取り組むべき」といえます。

        その理由を解説しましょう。

        3-1. DX推進の本質は「競争上の優位を確立する」ことにある

        まず押さえておきたいのが、前述のとおりDX推進の本質は、競争上の優位を確立することにあるという点です。

        ▼ 企業がDX推進で行うこと

        デジタル技術を活用して、
         1. 製品・サービス・ビジネスモデルを変革する
         2. 業務そのものや組織そのものを変革する
        → これらの変革を実行した結果として競争上の優位性を確立する

        国が政策としてDXを推進している背景には、日本企業の競争力を高めてグローバルでの日本の国際競争力を向上させる狙いがあります。

        つまり、DX推進とは競合他社に対しての企業競争力を高め、市場で優位に立つために実践するものです。

        となれば、すべての企業がDX推進に取り組むべきことは、自明の理ともいえます。

        3-2. DX推進に乗り遅れれば事業継続が不可能になるリスクがある

        次に「できるだけ早く」DX推進に取り組むべき理由についてです。

        いま日本国内では、国のDX推進に応える形で、多くの企業がDX推進に乗り出しています。

        DXとは根本的にビジネスのあり方そのものを変革する取り組みですから、いつあなたの業界に破壊的なゲームチェンジが起こっても、おかしくありません。

        安定していた市場シェアが下剋上のごとくガラッと変わる可能性があります。特に、旧態依然としてデジタル化が遅れていた業界ほど、ひとたび革新的なサービスが登場すれば、状況が一変するリスクが高いでしょう。

        DX推進に乗り遅れた企業は、最悪なケースでは事業継続が不可能になります。

        DX推進とは、企業の生き残りをかけた激しい戦いともいえるのです。

        4. DX推進のメリット・得られる成果

        DX推進のメリット・得られる成果

         

         

         

         

         

         

         

         

         

        実際にDX推進に取り組んだ場合、どんなメリットがあるのでしょうか。

        すでにDX推進している企業のアンケート調査によれば、以下の5つの恩恵を受けています。

        1 顧客からの評判やロイヤルティ・顧客維持率が向上する
        2 生産性が向上する
        3 コスト削減になる
        4 利益が向上する
        5 新しい製品やサービスによる売上が生まれる

          DXの恩恵に関するアンケート調査

          出典:経済産業省「テジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討」

          それぞれ詳しく見て見ましょう。

          4-1. 顧客からの評判やロイヤルティ・顧客維持率が向上する

          1つめのメリットは「顧客からの評判やロイヤルティ・顧客維持率が向上する」ことです。

          企業活動において、顧客から良い評判を得て、ロイヤルティ(愛着や信頼)を高めることは絶対に欠かすことのできないポイントです。

          多額のマーケティング費用をかけて、顧客維持率 (CRR)の向上やチャーンレート(解約率)の低下に取り組んでいる企業は多いでしょう。

          DX推進に取り組むことには、顧客ロイヤルティやCRRを高める効果があります。

          DX推進に取り組む企業姿勢が良いイメージを醸成するとともに、本質的なDX(=人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる)を実践したなら、顧客満足度が向上することはいうまでもありません。

          DXは顧客ロイヤルティや維持率を高める優れた手法ともいえるのです。

          4-2. 生産性が向上する

          2つめのメリットは「生産性が向上する」ことです。

          少子高齢化社会である日本において、多くの企業は慢性的な人手不足に陥り、生産性の向上に頭を悩ませています。

          「すでに可能な限り効率化を図ったけれど、生産性の向上が頭打ちになっている」という企業において、抜本的な解決策となるのがDX推進です。

          前述のとおり、DXでは既存業務の効率化を図るのではなく、業務そのもの・組織そのものを変革します。

          結果として、これまでの効率化施策とは一線を画する、大幅な生産性向上を達成するケースも多く、その恩恵は大きなものです。

          4-3. コスト削減になる

          3つめのメリットは「コスト削減になる」ことです。

          デジタル技術の導入によって、コスト削減につながるシーンはさまざまありますが、特に目立つのが「レガシーシステム(老朽化した古い既存ITシステム)の刷新」によるコスト削減効果です。

          というのは、レガシーシステムは保守・運用に多大な資金と人材を要しており、まるで金食い虫の様相を呈しているからです。

          DXレポート

          出典:経済産業省「DXレポート」

          DX推進によってレガシーシステムを刷新すれば、これまでレガシーシステムに投資していた資金や人材を有効活用できるようになり、コスト削減につながります。

          4-4. 利益が向上する

          4つめのメリットは「利益が向上する」ことです。

          ここまで解説してきたとおり、顧客維持率と生産性が向上し、コストが削減されれば、当然ながら企業に残る利益は増大します。

          増大した利益がさらなる競争力の源泉となり、市場の優位性を一層高めることが可能です。

          ビジネス環境の激しい変化にあっても生き残り続けていく、強い企業となることができるでしょう。

          4-5. 新しい製品やサービスによる売上が生まれる

          5つめのメリットは「新しい製品やサービスによる売上が生まれる」ことです。

          前項で触れたように、利益が向上することは企業にとって大きなメリットですが、それが既存事業の拡大ではなく、新しい製品やサービスによる売上を創造できることは、DX推進の強みといえます。

          新しい製品やサービスは、新しい価値を社会に提供し、新たな顧客と出会わせてくれます。

          時代に合った柱となる新規事業を生み出せるため、経営地盤が安定し、社会に貢献し続ける企業として成長できるでしょう。

          5. DX推進のデメリット・課題

          DX推進のデメリット・課題

           

           

           

           

           

           

           

           

           

          企業とって恩恵の多いDX推進ですが、デメリットもあります。DX推進に取り組むうえでは、事前に把握しておくと良いでしょう。

          1 成果が出るまでに時間がかかる
          2 レガシーシステム刷新の負担が大きい
          3 DX推進を担う人材の確保が必要になる

            それぞれ解説します。

            5-1. 成果が出るまでに時間がかかる

            1つめのデメリットは「成果が出るまでに時間がかかる」ことです。

            前述のとおりDXを推進すれば企業にとってさまざまな良い効果がありますが、DXに即効性はありません。

            取り組みを開始してから成果として実感できるまでには、数年単位での時間が必要です。

            だからこそ、できるだけ早急にDX推進に取り組むべきともいえるのですが、短期的な売上を重視する企業にとっては、即効性がないことはデメリットとして感じられるでしょう。

            5-2. レガシーシステム刷新の負担が大きい

            2つめのデメリットは「レガシーシステム刷新の負担が大きい」ことです。

            DX推進に取り組むうえで足かせとなるレガシーシステム(老朽化した既存のITシステム)を抱えている場合には、刷新する必要があります。

            企業の状況にもよりますが、レガシーシステム刷新に大きな負担が発生することが多く、これを乗り越えられるか明暗が分かれるところです。

            具体的には新システムの開発・導入のコスト負担、膨大な機能を持つ既存システムの分析や要件定義にかかる人的リソース、現システムから新システムへの移行に必要な社内教育など、企業によっては年単位の長期計画で取り組まなければなりません。

            どこかのタイミングでレガシーシステムから脱却しなければ先がないことは理解していても、刷新にかかる負担の大きさから先送りしてしまう企業は多く存在します。

            長期的な経営計画のなかで、経営トップの判断として実行していく決断力が求められるところです。

            5-3. DX推進を担う人材の確保が必要になる

            3つめのデメリットは「DX推進を担う人材の確保が必要になる」ことです。

            DXを進めるためには、いわゆる「DX人材」と呼ばれるスキルを持った人材の確保が必要になります。

            ▼ DX人材の例

            DX人材の例

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

            出典:IPA「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」

            しかしながら、現在DX人材は転職市場でも高い人気となっており、採用が難しい状況となっています。

            DX人材をどのように確保するか、また社内において教育していくかは、DX推進における大きな課題といえるでしょう。

            6. DX推進の成功事例

            DX推進の成功事例

             

             

             

             

             

             

             

             

             

            ここで実際にDX推進に成功した企業事例を見てみましょう。

            以下の3社をご紹介します。

            1 富士フイルム株式会社
            2 日本航空株式会社
            3 東京地下鉄株式会社

              6-1. 富士フイルム株式会社

              デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた 企業とIT人材の実態調査

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

              出典:IPA「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた 企業とIT人材の実態調査」

              富士フイルム株式会社は、新規事業への取り組みを積極的に進めているのが特徴的です。

              その背景には、2000年以降の「フィルムからデジタルへの変革期」を体験した危機感があります。

              DXの必要性を一足先に実感しているからこそ、既存のビジネスモデルに縛られず、DX推進によって積極的に新規事業に取り組んでいく企業姿勢があるのです。

              次々と新規事業を打ち出す実行プロセスで重要な鍵を握るのが「デジタル変革委員会」です。

              数あるアイディアからデジタル変革委員会が全社横断的に取組むべきテーマを設定し、プロジェクトを進める。そうすることにより、プロジェクトを進めるうえでの障壁が少なくなることに加え、他部門への横展開もしやすくなる。故に、デジタル変革委員会には課題設定力がある社員が選出されている。

              出典:IPA「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた 企業とIT人材の実態調査」

              DX推進で製品・サービスの開発に取り組むうえで、非常に参考になる事例といえるでしょう。

              6-2. 日本航空株式会社

              デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた 企業とIT人材の実態調査

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

              出典:IPA「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた 企業とIT人材の実態調査」

              日本航空株式会社の特筆すべき点は、7年がかりで基幹システムを刷新していることです。

              刷新前の既存システムは自営で運営しており、刷新されるのは実に50年ぶりで、まさにレガシーシステムからの脱却に成功した事例です。

              DX推進をする基盤を完成させたため、これから攻めのDX推進に転じることができます。

              同じタイミングで「JAL Innovation Lab」という社内外の人材が集まってDX推進に取り組む環境を実現しており、今後の展開が注目される企業事例です。

              6-3. 東京地下鉄株式会社

              デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた 企業とIT人材の実態調査

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

              出典:IPA「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた 企業とIT人材の実態調査」

              東京地下鉄株式会社は、iPadとデータの活用により業務に変革を起こしています。

              トンネル検査などのメンテナンスの記録を、開発したアプリを用いてiPadで行い、データベースに格納するという仕組みを構築しました。データ解析によって効率的な検査計画・補修計画を実現しています。

              こういった取り組みを支えるのが、社内で実施しているデータ分析活用人材育成教育です。

              DX人材を育成する体制を整えることで、DX推進を加速しています。

              7. DX推進の失敗事例

              DX推進の失敗事例

               

               

               

               

               

               

               

               

               

              前章では企業の成功事例をご紹介しましたが、一方でDX推進に失敗する企業も存在します。

              ここでは、日本よりもDX推進が進んでおり先行事例の多いアメリカの初期における企業事例を見てみましょう。

              1 General Electric(GE)社
              2 Ford 社
              3 Procter & Gamble(P&G)社

                7-1. General Electric(GE)社

                まずはGE社の失敗事例です。

                米大手複合企業GE社は、2011年から、同社を産業用ソフトウェア及びデータ活用事業で世界をリードするデジタル企業に変革するという「インダストリアル・インターネット(Industrial Internet)」戦略の下、産業向けIoTのプラットフォーム「Predix」の構築に多額の投資を開始。

                2015年には、2020年までに同社を世界のソフトウェア企業のトップ10に成長させるという目標を掲げ、そのデジタル戦略をリードする事業部門「GE Digital」を新設した(1,500名以上を新規採用)。

                しかし、なかなか成果を上げられず、長引く株価低迷を受けて、GED gitalは長期的なイノベーション目標よりも業績向上を睨んだ短期目標の達成にフォーカスせざるを得ない状況に陥り、2017年、同社CEOのJeff Immelt氏は退任に追い込まれた。

                出典:JETRO「アメリカにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状」

                DX推進のデメリットとして成果が挙がるまでに時間がかかることを挙げましたが、GE社もなかなか成果を挙げられずにCEOが退任に追い込まれています。

                敗因は、特定分野にフォーカスせずに、質より量でDX推進を進めようとしたことと考えられています。

                GEの失敗から私たちが学ぶべきは、DXを推進するうえではフォーカスを絞り、かつDXに対して強い熱意のある小規模チームがリーダーシップを取るべきといえるでしょう。

                7-2. Ford 社

                次にFord社の失敗事例を見てみましょう。

                米自動車メーカー大手Ford社のCEO、Mark Fields氏(当時)は2014年、成長著しい輸送サービス市場に参入するため、「パーソナルモビリティ」をイノベーションの軸に据えた大規模な事業変革計画を発表し、2016年、同戦略をリードする子会社(Ford Smart Mobility社)をシリコンバレーに設立した。

                高度なモビリティ技術を用いてデジタル自動車を開発することを目標として設立された子会社であるが、Ford社はデジタル事業を同社の他の自動車製造部門とは完全に切り離して運営、他の事業部門とほぼコミュニケーションをとらずに開発されたFord Smart Mobility社のサービスに対する品質問題などを背景に、同子会社は2017年におよそ3億ドルの損失を計上した。

                これを受けてFord社の株価もおよそ40%下落し、Fields氏は同年辞任した。

                出典:JETRO「アメリカにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状」

                Ford社の敗因は、組織全体が一丸となって取り組むのではなく、子会社として別会社を設立してしまったことにあります。

                Ford社の失敗からは、DX推進は各事業部門を横断して組織一丸となり、部門間でのコミュニケーションを十分に取りながら進めるべきという教訓が得られます。

                7-3. Procter & Gamble(P&G)社

                最後にP&G社の失敗事例をご紹介します。

                米日用品大手P&G社のCEO、Robert McDonald氏(当時)は2011年、「地球上で最もデジタルな企業」になるためのDXイニシアチブを提唱した。

                同イニシアチブは、同社のあらゆる事業部門にテクノロジー(データ解析)を大々的に適用することで、消費者向け商品・サービスを改善するという漠然とした目標が掲げられていた。

                しかし、同社は当時既に競合企業に大きく差をつけ、業界リーダーとして確固たる地位を築いており、世界経済危機後の不況下で具体的な達成目標を示すことなく行われた莫大な投資に対して得られた効果(ROI)は僅かであった一方、一部で競争力が低下する結果となった。

                McDonald氏は株主から業績不振の責任を追及され、2013年に辞任している。

                出典:JETRO「アメリカにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状」

                P&G社の敗因は、具体的な達成目標を示すことなく莫大な投資を行ったことにあります。

                P&G社の失敗からは、DX推進において投資を行ううえでは、目的や創出する価値を明確にし、具体的な達成目標を示すべきであると学ぶことができます。

                8. DX推進の進め方 2ステップ

                DX推進の進め方 2ステップ

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                これからDX推進に取り組みたいと思ったら、どこから着手すれば良いのでしょうか。

                経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」をベースに、実際の進め方を解説します。

                DX推進は、大きく次の2ステップに分けられます。

                1 DX推進のための経営のあり方・仕組みを整える
                2 DX実現の基盤となるITシステムを構築する

                  DXを推進するための2つの方法

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                  それぞれ詳しく見ていきましょう。

                  ステップ1:DX推進のための経営のあり方・仕組みを整える

                  1つめのステップは「DX推進のための経営のあり方・仕組みを整える」です。具体的には、以下を実践していきます。

                  経営戦略・ビジョンの提示

                  想定されるディスラプション(「⾮連続的(破壊的)イノベーション」)を念頭に、データとデジタル技術の活用によって、どの事業分野でどのような新たな価値(新ビジネス創出、即時性、コスト削減等)を生み出すことを目指すか、そのために、どのようなビジネスモデルを構築すべきかについての経営戦略やビジョンが提示できているか。

                  経営トップのコミットメント

                  DXを推進するに当たっては、ビジネスや仕事の仕方、組織・人事の仕組み、企業文化・風土そのものの変革が不可欠となる中、経営トップ自らがこれらの変革に強いコミットメントを持って取り組んでいるか。仮に、必要な変革に対する社内での抵抗が大きい場合には、トップがリーダーシップを発揮し、意思決定することができているか。

                  DX推進のための体制整備

                  経営戦略やビジョンの実現と紐づけられた形で、経営層が各事業部門に対して、データやデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを構築する取組について、新しい挑戦を促し、かつ挑戦を継続できる環境を整えているか。

                  投資等の意思決定のあり方の確認

                  DX推進のための投資等の意思決定において、コストのみでなくビジネスに与えるプラスのインパクトを勘案して判断しているか。他方、定量的なリターンやその確度を求めすぎて挑戦を阻害していないか。投資をせず、DXが実現できないことにより、デジタル化するマーケットから排除されるリスクを勘案しているか。

                  出典:経済産業省「DX推進ガイドライン」

                  ここで思い出していただきたいのが、「7. DX推進の失敗事例」で学んだ教訓です。

                  ▼ 失敗事例からの教訓

                  ・DX推進において投資を行ううえでは、目的や創出する価値を明確にし、具体的な達成目標を示す
                  ・DXを推進するうえではフォーカスを絞り、かつDXに対して強い熱意のある小規模チームがリーダーシップを取る
                  ・DX推進は各事業部門を横断して組織一丸となり、部門間でのコミュニケーションを十分に取りながら進める

                    先人に学び、同じ失敗を回避すべく、体制を整えましょう。

                    ステップ2:DX実現の基盤となるITシステムを構築する

                    2つめのステップは「DX実現の基盤となるITシステムを構築する」です。

                    多くの企業ではレガシーシステムがDX推進の足かせとなる現実がありますので、まずは新たなITシステムの構築から着手する必要があります。

                    DX実現の基盤となるITシステムを構築する

                    出典:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討」

                    DXを実現するために必要な、新たなITシステムのあるべき姿のイメージは以下のとおりです。

                    ▼ 新たなITシステムのあるべき姿(イメージ)

                    新たなITシステムのあるべき姿(イメージ)

                    出典:IPA「DXの実現に向けた取り組み

                    DX推進の基盤となるITシステムの実現を目指して、IT担当者およびITベンダーが協働し、新たなシステムを構築していきましょう。

                    9. DX推進に関連する補助金・助成金

                    9. DX推進に関連する補助金・助成金

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                    DX推進に関連する補助金・助成金をご紹介します。

                    9-1. IT導入補助金

                    IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等がITツールを導入する経費の一部を補助する補助金です。

                    DX推進の取り組みでITツールを導入した際にも、補助対象となります。

                    導入するITツールの内容によってA類型・B類型の分かれており、補助金の金額は以下のとおりです。

                    ▼ IT導入補助金の上限額・下限額・補助率

                    A類型

                    30万~150万円未満

                    B類型

                    150万〜450万円以下

                    補助率

                    1/2以内

                    給付を受けるためには、導入するITツールの要件や審査があります。詳しくは「IT導入補助金」にてご確認ください。

                    9-2. 自治体のDX補助金

                    自治体によっては、独自のDX補助金を交付しています。

                    例えば、以下のとおりです。

                    ▼ 自治体のDX補助金

                    実施時期や内容はさまざまですが、所在地の自治体の情報をチェックして、受けられる補助金がないか確認しましょう。

                    10. DX推進の注意点

                    DX推進の注意点

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     


                    最後に、DX推進の注意点をお伝えします。

                    10-1. DX推進は取り組み続ける必要がある

                    1つめの注意点は「DX推進は取り組み続ける必要がある」ことです。

                    ここまでお読みいただくと、

                    「DXにはゴールはなく、企業の経営戦略として、永続的に取り組み続ける必要がある」
                    …ということがおわかりいただけたのではないでしょうか。

                    たとえ失敗したり、壁にぶつかったりしたとしても、DXの取り組み自体をやめることは、得策とはいえません。

                    実際に、GE・Ford・P&Gといった世界のトップ企業も失敗を経験しながら、改善を繰り返しDXに取り組んでいます。

                    失敗を過度に恐れることなく、DX推進に取り組み続ける企業姿勢が重要です。失敗を避けてDXを推進しないことは、逆に企業としての競争力を失うリスクがありますので注意してください。

                    10-2. 着手できる部分からでもDX推進を進める

                    2つめの注意点は「着手できる部分からでもDX推進を進める」ことです。

                    多くの企業でレガシーシステムがDX推進の足かせとなることは繰り返し述べたとおりですが、実際にはレガシーシステムの刷新に着手し完了させるまでには、長期間の時間が必要です。

                    ではその間、DXを推進しなくて良いのか?といえば、答えはNOです。レガシーシステムを抱えながらでも、着手できる部分からDX推進を進めてください。

                    例えば、近年多くの企業が採用しているクラウドストレージの導入は、比較的簡単に業務へ変革を起こせる方法です。

                    ▼ クラウドストレージで変革できる業務

                    クラウドストレージで変革できる業務

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                    詳しくは「Dropbox Business」をご覧ください。

                    まとめ

                    DX(デジタルトランスメーション)とは、「デジタル技術やICTを活用して起こす変革」のことです。

                    DX推進で実際に企業が行うことは以下のとおり定義できます。

                    デジタル技術を活用して、
                     1. 製品・サービス・ビジネスモデルを変革する
                     2. 業務そのものや組織そのものを変革する
                    → これらの変革を実行した結果として競争上の優位性を確立する

                    いまDX推進に取り組むべき理由として、以下が挙げられます。

                    1 DX推進の本質は「競争上の優位を確立する」ことにある
                    2 DX推進に乗り遅れれば事業継続が不可能になるリスクがある

                      DX推進のメリット・得られる成果は次のとおりです。

                      1 顧客からの評判やロイヤルティ・顧客維持率が向上する
                      2 生産性が向上する
                      3 コスト削減になる
                      4 利益が向上する
                      5 新しい製品やサービスによる売上が生まれる

                        DX推進のデメリット・課題は次のとおりです。

                        1 成果が出るまでに時間がかかる
                        2 レガシーシステム刷新の負担が大きい
                        3 DX推進を担う人材の確保が必要になる

                          DX推進の成功事例として以下の3社を紹介しました。

                          1 富士フイルム株式会社
                          2 日本航空株式会社
                          3 東京地下鉄株式会社

                            DX推進の失敗事例として以下の3社を紹介しました。

                            1 General Electric(GE)社
                            2 Ford 社
                            3 Procter & Gamble(P&G)社

                              DX推進の進め方は次のとおりです。

                              ステップ1:DX推進のための経営のあり方・仕組みを整える
                              ステップ2:DX実現の基盤となるITシステムを構築する

                                DX推進に関連する補助金・助成金には、以下があります。

                                ・IT導入補助金
                                ・自治体のDX補助金

                                  DX推進の注意点として次の2点が挙げられます。

                                  1 DX推進は取り組み続ける必要がある
                                  2 着手できる部分からでもDX推進を進める

                                    DX推進は企業力を高めるうえで非常に重要です。ぜひ、早急に取り組みを始めましょう。