2022年7月公表のDXレポート2.2 --「デジタル産業宣言」がDXの“分断”を解消させる理由とは

  • 0
  • 0
  • 0
  • 0

2018年公表の「DXレポート1.0」で警鐘を鳴らした「2025年の崖」をきっかけに、多くの企業がこれまでのビジネスのあり方に危機感を覚え、デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けて取り組みを始めました。しかし、思わぬ誤解や新たな課題を招いたため、経済産業省はたびたびDXレポートをアップデートし、
2022年7月に最新版となる「DXレポート2.2」を公表しました。本レポートの要となるのが「デジタル産業宣言」です。今回は、DXレポート2.2の内容についてわかりやすく解説していきます。

DXレポートが招いた「DX=レガシーシステムの刷新」と「相互依存問題」の誤解

経済産業省が2018年に公表したDXレポートは、「2025年の崖」に警鐘を鳴らすものでした。2025年の崖とは、日本企業がDXに十分取り組まなければ年間で最大12兆円もの経済損失を被り、国際競争力を失うというもの。DXレポートをきっかけに、DXという言葉の認知や危機感は浸透していった一方で、DXレポートが誤解や課題を招いてきた側面もあります。

例えば「DX=レガシーシステムの刷新」という誤解です。DXレポートにおいて経済産業省は、2025年の崖につながる主な原因としてレガシーシステムの存在を挙げました。しかし、企業の多くは「DX推進はレガシーシステムから脱却しさえすればいい」と誤解することに。DXの本質は「バリューアップ(攻めのIT投資)」です。レガシーシステムの刷新はあくまで手段の一つであり、その先を見据えた経営戦略が求められています。

また、ほとんどの企業がIT投資を「業務効率化」中心に進めていることも課題となっています。JUAS(一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査報告書2022」(※)によると、IT投資予算の約8割をラン・ザ・ビジネス(既存ビジネスの維持・運営)にあてていることが明らかになりました。

※出典:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書 2022

さらに「ユーザー企業とベンダー企業の相互依存問題」も指摘されています。これは、ユーザー企業は「ITシステム開発をベンダー企業に“丸投げ”している状態」、対してベンダー企業は「労働量に対して対価を得ている状態」というような関係性を指します。このようにユーザー企業とベンダー企業が、ITの知見やノウハウを貯めることなく双方に依存している状態は「低位安定の関係」と呼ばれています。この関係性を続けていては、DXの推進が困難とされています。

こうしたDX課題に対応すべく、経済産業省はDXレポートをアップデートしてきました。例えばDXレポート2では「DX=レガシーシステムの刷新」という誤解を指摘し、DXレポート2.1では「ユーザー企業とベンダー企業の相互依存問題」に触れました。そして、2022年7月に公表された最新版が「DXレポート2.2」です。

DXレポート2.2の変更点とメッセージとは?

DXレポート2.2はDXを成功に導くための方向性として下記の変更点、メッセージを発しています。

1.DX推進の取り組みは進んでいる

前章ではDX推進における課題を解説したものの、DX推進は着実に進んでいます。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が提供する「DX推進指標 自己診断」に取り組む企業は増えており、「先行企業(※成熟度レベル3以上)」の割合も増えました。また3年連続で自己診断を提出している企業は、よりDXが進んでいることも分かっています。(※成熟度レベル3とは、DXを全社戦略のもと部門横断で推進)

ooooo参照:経済産業省「DXレポート2.2」を基に作成

2.業務効率化やコスト削減ではなく、収益向上を目指す

ITで既存ビジネスの業務効率化、コスト削減を目指すのではなく、まったく新しいビジネスモデルの創出による「収益向上」を目指すよう促しています。既存ビジネスでもデジタル技術でこれまでにない付加価値を加え、収益につなげることが重要としています。

3.経営陣がトップダウンで行動指針を示す

CEOやCIOなど経営陣がビジョン・戦略を示すだけでなく、社員一人ひとりが何をすればいいか理解できるよう、具体的なアクションまで落とし込むことが重要です。

DXが進まない企業の特徴として、経営陣はビジョン・戦略を示すことに終始してしまい、社員の働き方・やり方に変化がないことが挙げられます。あるいは部門ごとに少しずつDXを始めて広げようとして、他部門との調整を図るために「結局、もとに戻ってしまう」という課題も挙げられているのです。

一方、DXで収益向上に成功している企業は、社員全員が新しい働き方・やり方で進められるよう、また高いエンゲージメントで取り組めるよう、判断の拠りどころとなる行動指針まで落とし込みます。そして、部門間の相互依存関係を理解し、トップダウンで全社一斉にDXを推進しています。

4.DX推進の協力者、仲間を集める

ユーザー企業とベンダー企業の相互依存関係から脱却することは、一企業だけでは困難です。相互依存関係ではなく「相互成長関係」を目指すためには、経営者が
DXに関する価値観を外部へ発信し、同じ価値観をもつ同志を集め、ともに発展的なDX推進を目指す関係性を築いていくことが重要です。

社内外のDX分断を解消する「デジタル産業宣言」

こうした部署間や企業間での分断を解消するため、DXレポート2.2では「デジタル産業宣言」を目玉としています。その狙いは「収益向上を達成する行動指針を全社に浸透させること」と「経営者の価値観を外部へ発信させること」です。

デジタル産業宣言は、宣言の背景と目指す方向性に加えて、DX推進の模範的企業を調査した結果のポイントを5つ(ビジョン駆動、価値重視、オープンマインド、継続的な挑戦、経営者中心)に集約しています。

これをベースに経営者自身の考え・信念を書き加え、署名とともに「私のデジタル産業宣言」として社内や外部へ発信する、という運用を想定しています。これにより社内では「効率化ではなく、収益向上に舵取りする」「全社一斉に行動指針を示す」といったDXの加速を、外部では「DX推進の同志を集める」「自社だけでなく他社をも牽引する」という相互成長の後押しに役立てられるでしょう。

ooooo参照:経済産業省「DXレポート2.2」を基に作成

なお、デジタル産業宣言は2001年の「アジャイルソフトウェア開発宣言」にヒントを得たものです。アジャイルソフトウェア開発宣言は、米国ユタ州にいた17名のソフトウェア開発者により作成され、開発の指針として4つの価値観、12の原則を記しています。

当時、アジャイルソフトウェア開発宣言は大きなムーヴメントを巻き起こし、指針を共有するために「アジャイル開発」が生まれ業界にイノベーションをもたらしました。デジタル産業宣言にもDX推進の指針として同じようなムーヴメントを期待されているのでしょう。

まとめ

本質的なDXを進めるために、経済産業省はDXレポートの更新、公表を続けてきました。DXレポート2.2は「収益向上を重視する」「トップダウンで行動指針を示す」「社外の同志と協力し合う」というDX目標の達成を目指し、「デジタル産業宣言」を活用するよう促したものです。

Dropboxは、上述した「相互成長関係」の実現を支えるサービスとして活用可能です。簡単な操作でファイル共有を行えるだけでなく、ファイル便やPPAP(暗号化したパスワード付きZipファイルでの送付)の一手間を効率化することに役立ちます。これにより、ビジネスをシームレスにつなぎ、ワークフローの変革をサポートできます。

サイバー犯罪のリスクにも対処できるよう、ファイルの暗号化や2要素認証といったセキュリティ機能も備わっています。また、メンバーごとにアクセス権限を設定し、機密ファイルを保護することも可能です。

さらにDropboxは「動画の読み込みスピードを強化」「Dropbox上でPDFの直接署名に対応」するなど、最新のビジネス環境に合わせたアップデートを続けています。新しいビジネスの創出、既存ビジネスの付加価値向上による収益向上を実現するために、Dropboxを活用してはいかがでしょうか。

さよならファイルサーバー