議事録の作成を任せられて、正しい書き方をお探しですか?議事録は文字通り会議での議論を記録するためのものですが、議事録にはそれ以外にも大切な役割があるので、その役割を果たせるような内容や体裁になっている必要があります。
この記事では、議事録を初めて作成する方や、どうせ作成するならワンランク上の議事録を作成して社内での評価を高めたいという方のために議事録の書き方の基本からとても便利なテンプレート、さらにワンランク上をいく議事録を作成するノウハウやテクニックなどについて網羅しています。
この記事を読めば議事録の書き方をマスターできるように構成していますので、ぜひご参考にしてください。
目次
1. 今さら聞けない議事録の基本
2. 必要事項を埋めるだけの便利な議事録テンプレート 4 選
3. ワンランク上をいく議事録作成のヒントと上司の評価を高めるテクニック
4. 議事録の書き方でありがちな 3 大 NG 行為
5. まとめ
1. 今さら聞けない議事録の基本
1-1. 議事録とは何か
議事録という言葉にある「議事」とは、会議上での発言や展開、そこから出た結論などを意味しています。つまり、議事録とは会議に関する重要な情報を記録する書類のことです。
ビジネスの現場では、会議やミーティングが日常的に行われています。その回数が多くなればなるほど、議事の内容を記録しておく必要性が高くなり、その役割を担っているのが議事録です。
新人ビジネスマンや若手社員などにその作成を任される場面も多く見られますが、それは単に議事の記録というだけでなく会議の内容から仕事を学ぶこと、議事録の作成を通じて情報をまとめて伝えるスキルを高めることなども期待されているからです。
1-2. 議事録を作成する目的
議事録を作成することには、主に以下のような目的があります。
- 出席者だけでなく出席者以外にも会議の内容を記録、共有する
- 新たに浮き彫りになった課題を記録して次の会議につなげる
- 発言を記録することで「言った言わない」のトラブルを防止する
議事「録」という言葉のニュアンスから、会議の内容を正確に記録することに意識が傾きがちですが、議事録には情報の共有や業務改善など二次的な目的が含まれていることが分かります。
こうした目的は、議事録の書き方にも影響する重要な部分です。
1-3. 議事録に必ず記録するべき内容
会議に関連する情報で記録すべき内容として、議事録には以下の情報が記載されていることが必須です。
- 会議の名称、タイトル
- 会議の日時
- 出席者
- 議題
- 議事の概要
- 出席者による発言の記録
- 決定事項
- 所見
議事録の書き方について特定のフォーマットがあるわけではありませんが、どのフォーマットであってもおおむね上記の内容が共通して含まれています。
最後の所見については唯一、議事録を作成した人による主観や感想を述べる部分なので場合によってこの欄がないこともあるでしょう。この欄の書き方については、後述します。
1-4. 会議の進行に記録が間に合わない時は
会議は口頭で進められるので、議事録を作成するためにメモを取っていたとしてもスピードが追い付かないこともあるでしょう。そんな場合には録音をしておいて後から書き起こす方法も有効です。
会議の録音には IC レコーダーを使うのが定番でしたが、今ではスマホのアプリで使いやすいものが多数あるので、アプリを起動したスマホをテーブルに置いておくのが手軽でおすすめです。
Android 、iOS 共通で「PCM 録音」という無料アプリがあるので、こちらを使うのもよいでしょう。
⇒ Android 版ダウンロードページ
⇒ iOS 版ダウンロードページ
1-5. 議事録の書き方で押さえておきたい 5 つのポイント
1-5-1. 決定事項は漏れのないように
議事録に記載される中で、決定事項は最重要情報です。その会議で何が決められたのか、どんな方向性が示されたのかを正確に記載します。決定事項の大小にかかわらず、会議で決まったことは漏れのないように記載しましょう。
1-5-2. 会議や決定事項に出た数値を積極的に記載する
会議場で出た数値や決定事項に含まれている数値などは積極的に記載するようにします。議事録に数値を含めることにより曖昧さが回避され、より正確性の高い情報を報告することができます。
1-5-3. 5W1H を意識する
いつ、どこで、誰が、何を、いつまでに、どうやってやるのか。期限や責任の所在を明確にする意味でも、5W1H を意識することはとても重要です。もちろんこれは議事録に限らず、あらゆるビジネス文書に共通するポイントでもあります。
1-5-4. 読む人が上司やクライアントであることを意識する
議事録を作成する際に必ず意識するべきなのは、読み手です。誰が読むのかを想定して書くことで書き方も変わり、伝わりやすさも変わります。議事録には報告書の意味合いもあるので、最初に目を通すのは上司です。
次に議事録を見る可能性があるのは、クライアントなど取引先の人です。こうした人が読んだ時に情報が分かりやすく整理されていること、読みやすい体裁になっていることなどは議事録を作成した人の評価に直結するので、大いに意識するようにしましょう。
1-5-5. 決定事項の次に大切な「次なる課題」
一度の会議ですべての事柄が決まって、課題が解決するとは限りません。むしろ、そうではない場合のほうが多いでしょう。そんな時に記録しておきたいのが、会議で浮き彫りになった次なる課題です。
議事録にこれがしっかりと記載されていると次の会議との連続性が生まれ、それぞれの会議の持つ意味がより大きくなります。
出席者の発言によって指摘された問題、議論の中で浮き彫りになった課題、議事録作成者が気づいたことの問題提起など、次なる課題が明確になっている議事録はその価値を高めてくれます。
2. 必要事項を埋めるだけの便利な議事録テンプレート 4 選
2-1. そのまま Office で使える議事録テンプレート マイクロソフト
2-2. 議事録の他にも各種ビジネステンプレートが充実 富士ゼロックス
コピー機や複合機などのメーカーで知られる富士ゼロックスのサポートサイトに、各種ビジネス文書のテンプレート集があります。
ここにある「議事録 2」というテンプレートは定番と言えるもので、それぞれの項目を埋めることで議事録に必要な情報が揃うようになっています。
2-3. 大きな感想欄のある議事録テンプレート
「会議報告書」という名称で配布されている議事録テンプレートです。他の議事録テンプレートと違って決定事項よりも大きな感想欄があることです。自分なりの所見を述べたい場合におすすめです。
2-4. 必要事項を簡単に入力できる Word 用テンプレート
デザイン性に優れ、選択によって入力できるようになっているので簡単な操作だけで美しい議事録を作成することができます。
3. ワンランク上をいく議事録作成のヒントと上司の評価を高めるテクニック
3-1. 決定事項を掘り下げて報告する議事録を作成
決定事項を箇条書きのように羅列するだけでなく、その決定に至った経緯や責任の所在、期限などを分かりやすく記載すると質的・量的に情報の価値が向上します。
その会議に出席していなかった人が読んでも分かりやすく、まるでその会議に出席したかのような気になれるほどのリアルに情報を伝えられるのが理想的です。
3-2. 会議前に論点を想定し、会議後に検証する
会議が開かれるということは、その議題に対する課題や論点がある程度設定されているはずです。事前にその論点を想定、整理しておくと議事の進行がスムーズになるだけでなく議事録の作成においても論点整理と決定事項の対比を盛り込むことができるので、読む人の関心を引きやすくなるでしょう。
無味乾燥な書面になりがちな議事録にストーリー性を与えるのも、ワンランク上をいく議事録のポイントではないでしょうか。
3-3. ピラミッド構造を意識する
情報を記録して伝えるには、3 つの段階があります。それはピラミッドのような構造になっていて、図式化すると以下のようになります。
それぞれ上から「タイトル」「見出し」「小見出し」に置き換えても成り立つように、情報を見出し程度の要約から概要、そして詳細へと掘り下げてピラミッドの形のように情報量を増やしていくのが最も分かりやすい構成とされています。
議事録の書き方においてもこのセオリーを意識すると、情報が整理されてとても読みやすくなります。
3-4. 所見欄で自分の感じたことを論理的に展開する
すべての企業で通用する方法ではないかも知れませんが、議事録に所見欄を設けられる場合は、そこが作成者にとってアピールの場にもなります。この会議に参加してみてどう思ったのか、そこから自分なりに導いた結論や新たな課題など、上司だけでなく他の会議参加者が持っていなかったような視点で論じることができれば、大きなアピールになります。
ただし、長々と持論を展開するための場ではなく、あくまでも「ちょっと意見を添える」という趣旨の記入欄です。あまり出すぎた意見を述べるよりも、一言献上するというつもり簡潔に真摯な意見を述べるのがよいでしょう。
3-5. 上司からの評価をアップさせる 3 つの中上級テクニック
3-5-1. 「決まらなかったこと」に注目する
1-5-5. で先述していますが、会議ですべてのことが決定するとは限りません。その会議で決まらなかったこともあって当然です。何が決まらなかったのか、なぜ決まらなかったのかという課題点を整理しておいて、次回の会議で決めるには何が必要かをまとめておくと論点整理になり、議事録の価値はさらに高くなります。
こうした項目がない場合は上司から指摘される可能性があるので、先にそこに触れておくことは議事録作成者の評価も高めます。
3-5-2. 会議中に議事録を完成させてしまう
通常、議事録は会議が終わった後でできるだけ早く作成するべき書類です。それをさらに発展させて、会議中もしくは終了直後に議事録を完成させるテクニックがあれば、上司はそのスピードの速さに驚くと同時に評価もアップするでしょう。
そのためには、事前にひな形を作っておく必要があります。テンプレートなどを活用して、そこにあらかじめ議事で触れられそうなこと、発言されそうなことを整理しておきます。こうしたことはその議題に対する理解が深ければ深いほど予測できる情報も多くなるので、「予習」がモノをいいます。
そのひな形を開いた状態で会議中にどんどん入力をしていき、後は書き込んだことを整理するだけで議事録の完成です。
3-5-3. 敢えて余談も盛り込む
会議中には脱線した話、冗談などが飛び交うこともあります。もちろんこれらの情報は議題と関係がないものですが、そういったやり取りがあったことも書き添えておくと、「漏らさず話を聞いていた」という印象を与えます。
あまり多くなると論点を整理しづらくなるので、1 文だけでもそういった記述があるという事実が意味を持ちます。
3-6. 議事録作成の強力な新兵器、Dropbox Paper
Dropbox が提供している Paperは、ブラウザ上でドキュメントを作成できるサービスです。ブラウザ上で各メンバーがファイルを共有しながら記入、編集をしていけるので、これを議事録作成に活用すると以下のことが可能になります。
- 参加者全員が議事録作成に参加できるため、会議の進行とともに議事録ができていく
- 過去の議事録を簡単に参照できるため、会議の連続性が担保される
議事録を書くという作業が単なる報告から、アイディアをまとめる手段へと進化させられるのも、情報を共有しながら議事録を作成するメリットです。
Dropbox Paper を使った効果的な議事録の書き方については、「使ってみたら想像以上によかった!Dropbox社員が教える新「Paper」の効果的な使い方」の「3-2. 議事録」に詳しい解説があります。
Paper で作成した本物の議事録も紹介されているので、ぜひご参照ください。
4. 議事録の書き方でありがちな 3 大 NG 行為
4-1. 発言をただ記録しているだけ
議事録の役割は会議での議論や発言を記録することにありますが、それだけだと単なる記録です。議事録は読み手が存在する報告書の一種なので、単に発言を機械的に記録するものではありません。
発言の趣旨や決定事項などが整理されていて、「このような会議が行われて、こんなことが決まりました」という必要な情報がしっかりと網羅されていることが求められます。
単なる発言の記録だけであれば、録音ないし録画をしておけばよいことになるので、議事録が持つ役割を忘れないようにしましょう。
4-2. テンプレートをそのまま使って没個性になる
この記事では定番となっているものを中心に、議事録のテンプレートをご紹介しています。ここにご紹介しているものの他にも、ネット上には議事録のテンプレートとして使えるものがたくさんあります。
これらは無料で利用できてとても便利ですが、テンプレートに依存しすぎることにも注意が必要です。なぜなら、テンプレートに依存すればするほど「どこかで見たことのある体裁」になりやすく、没個性になるからです。
差別化よりも正確な情報をまとめることに主眼が置かれている場合はそれでも構いませんが、議事録の書き方を通じて自分をアピールする目的が含まれている場合は、テンプレートにも自分なりのオリジナリティを加えてみてはどうでしょうか。
その点を踏まえて、この記事ではすべて Word で編集可能のテンプレートを集めています。
4-3. 提出までに時間がかかりすぎている
人間の発言や思考には、鮮度があります。会議上での発言は会議が終わると同時に鮮度が落ちていくため、鮮度が高いうちに議事録にまとめることはとても重要です。
かなり時間が経過してから議事録を提出すると、発言者だけでなくその議題に関わっている人の関心や意見が別のところにいってしまっている恐れがあります。
その会議がその日に開催されたことには、タイミング的に何らかの必要性があったはずなので、そのタイミングを逸脱して鮮度を落とさないようにしましょう。
翌日に提出するのが理想とされていますが、遅くとも一両日中に作成して提出するのがセオリーです。
5. まとめ
ここまでお読みいただいて、議事録が持つ目的や役割について意外に感じた方もおられるのではないでしょうか。議事録の書き方を狭義で考えるのであればテンプレートなどを活用するのが最も手軽ですが、それだけが本質ではないことをご理解いただけたと思います。
議事録という名の報告書を通じて、会議での発言や雰囲気、決定事項などをいかにうまく伝えるかが、議事録の書き方に潜んでいる本質です。議事録を読む人の多くは上司など組織の中枢に近い人なので、その人たちにうまくアピールできるように、この記事の情報をご活用ください。