2020 年のサマリー
- 昇進率は 5 年連続で女性が男性を上回る。
- マネージャー以上の職階における女性および過小評価されたマイノリティ(URM)の割合は、女性が 35 % から 37 % に、URM が 10 % から 11 % に増加した。
- Dropbox における女性の割合は、会社全体で 40 %、リーダー層で 41 % だった。
- Project Maia と Dropbox LEAD という 2 つのプログラムを開始。
- Project Maia は、女性と URM の人材を会社に定着させるためのプログラム。130 人以上の Dropbox 社員を招き、Dropbox で働くにあたって重視すること、Dropbox で仕事を続ける動機について意見を交換。この結果、プロジェクト参加者の定着率 96 % を達成。
- Dropbox LEAD は、キャリア早期における女性と URM のキャリア開発と昇進に焦点を当てたプログラム。プログラムの実施期間中、参加者の 48 % が昇進し、全員が 2020 年末時点で Dropbox に在籍。
- 米国の黒人層に対する根強い人種差別の根本原因について Dropbox 社員に啓発するための 6 か月間のプログラム「Truth and Reconciliation(真実と和解)」を開始。
- ニューロダイバーシティ(脳の多様性)と異なる身体的能力を持つ社員に焦点を当てた新たな社員リソース グループ(ERG)enABLE を創設。
- 2021 年には、多様性、公平性、包摂性(DEI)に関する各種プログラムを拡充し、マネージャーがチームに与える影響に焦点を当てつつ、より包摂的な雇用および採用制度を構築するための取り組みを継続する予定。
Dropbox が考える企業文化とは、社員が共有する価値観、信念、行動によって体現されるものです。つまり、私たちが日々、ともに働く姿勢こそが企業文化だということです。多様性、公平性、包摂性(DEI)に関する取り組みは、Dropbox の企業文化、社内制度の仕組み、事業に対する考え方において重要な位置を占めています。Dropbox は 2020 年、社員の多様性、包摂性を重視する文化の醸成、主なビジネス活動への DEI の原則の取り込みにおいて、大きな進展を果たしました。
Dropbox は、多様性に関して集中的に活動を展開し、その理解を確固たるものとするために、次の 3 つの「多様性の実現に向けた取り組み」を掲げました。
- 多様性のある人材を雇用する
- 公平性を確立し、強化する
- 個人の成長を促進する
あわせて、女性および過小評価されたマイノリティ(URM1)の割合を高め、社員の定着率に関するマネージャーの責任を重視し、包摂性を重視する文化の醸成に社員が積極的に関われるよう支援してきました。
Dropbox の 2020 年の野心的目標
DEI に関する Dropbox の哲学は一貫しています。それは、私たちが製品やサービスを提供している世界中のお客様と同様の多様性を社内で実現することです。2019 年、Dropbox は、マネージャー以上の職階における女性および URM の割合を増やす取り組みを開始しました。その目標を達成した後、2020 年には、対象をシニアレベルの一般社員にも拡大。さらに、Y Combinator でグループ パートナーを務めるマイケル・サイベル氏を取締役会に迎え入れました。Dropbox は、外部からの人材雇用経路をあらゆるレベルで多様化し、中堅社員向けのキャリア開発プログラムを策定し、目標を上回る数の人材を昇進させています。次の表をご覧ください。
|
2019 年
末時点
|
2020 年
野心的目標2
|
2020 年
末時点
|
マネージャー以上の職階における女性の割合
|
35 %
|
35~36 %
|
37 %
|
マネージャー以上の職階における URM の割合
|
10 %
|
10~11 %
|
11 %
|
多様性の実現に向けた取り組みを通じて進化する Dropbox の DEI 戦略
2020 年、Dropbox は DEI 戦略を実行に移し、多様性の実現に向けた取り組みに全社規模で注力しました。取り組みのテーマである「I am committed(私は全力で取り組みます)」に沿って、すべての Dropbox 社員に対し次の 3 点に真剣に取り組むよう求めました。
多様性のある人材を雇用する
- マネージャー:採用担当者と協力して、未経験者を採用する際には多様性のある人材プールを作り上げる。
- 一般社員:自分の人脈を使って、より多様性のある人材プールを作り上げる。
公平性を確立し、強化する
- マネージャー:チームの公平性を確立し、チーム メンバーが責任の範囲を広げ昇進を果たせるように支援する。
- 一般社員:すべてのチーム メンバーのキャリア開発と昇進を公平に後押しする。
個人の成長を促進する
- マネージャー:自分の先入観を自覚、理解し、偏見を減らすために行動し、職場における対立を解消するよう、自分自身とチーム メンバーに働きかける。
- 一般社員:自分の先入観を自覚、理解し、偏見を減らすために行動し、職場における対立を解消するよう、自分自身に働きかける。
多様性の実現に向けた取り組みを社員が実践できるよう、DEI を強化するための仕組みがさまざまな機会に組み込まれています。具体的な仕組みについては、以下のマップをご覧ください。
では、2020 年におけるそれぞれの取り組みの内容を詳しく紹介していきましょう。
多様性のある人材を雇用する
業界および大学からの採用
- 業界採用チームは、マネージャーレベルの人材を中心に、多様な人材を惹き付け採用しようと尽力しました。2020 年は採用担当者にとって難しい 1 年でしたが、多様性のある人材マッピングを活用して人材採用戦略を強化。求職者が Dropbox にもたらすであろう価値と求職者に欠けている可能性のあるスキルに目を向けながら、「絞り込みと振るい落とし」のアプローチに基づいて採用活動を実施しました。
- 大学採用チームは、多様性のある新卒者とインターン希望者を惹き付けるための充実した各種プログラムを策定しました。Dropbox 社員から話を聞けるインターン向けの社員リソース グループ(ERG)会議をオンラインで開催し、参加者に「DEI Fundamentals(DEI の基礎)」トレーニングに参加してもらいました。社外では、歴史的黒人大学(HBCU)で学生向けのワークショップ シリーズを開催し、新しい採用ツール Jumpstart を既存のシステムに統合。この結果、インターン応募者全体で、URM の割合は 7 % から 34 % に、女性の割合は 26 % から 34 % に増加しています。
カンファレンスへの参加をはじめとする社外への働きかけ
2020 年、Dropbox は、社外に働きかけるための取り組みを開始。各種カンファレンスに参加して、メンターシップや多様な人材の採用に力を入れていることをアピールしました。心強いボランティアの協力やリーダー層の関与もあり、以下のカンファレンスで大きな成果を上げることに成功しています。
- ACM リチャード・タピア記念会議 – コンピューティング分野における多様性
- アフロテック ワールド
- グレース・ホッパー記念会議
- Out & Equal ワークプレイス会議
- ヒスパニック系プロフェッショナル エンジニア協会全国会議
- ウィメン イン プロダクト
実習プログラム
2018 年に始まった IGNITE は、一般的なコンピュータ サイエンスの経歴を持たない新人ソフトウェア エンジニアを対象に、6 か月に及ぶ有給での実習機会を提供するプログラムです。Dropbox は 2020 年も本プログラムを実施し、現時点での最新の実習生は 4 月にプログラムを修了。2020 年は、プログラム参加者 9 人中 7 人(78 %)が正規社員として雇用されており、プログラム開始当初からの採用率も 76 % に上っています。
また Dropbox は、元受刑者のテクノロジー業界での社会復帰を支援するプログラム Next Chapter とも提携しています。2020 年は、Dropbox をはじめとするテクノロジー企業での正規雇用を目指す 2 人の実習生を Next Chapter から受け入れ、実地訓練やメンターシップ、プロジェクト参加の機会を提供しました。
公平性を確立し、強化する
昇進率は、過去 5 年間、女性が男性を上回るという結果になりました。また URM の昇進率は非 URM とほぼ同じであり、Dropbox における平等と公平性の浸透ぶりが実証されています。この野心的目標の達成を後押ししたプログラムの例をご紹介しましょう。
多様な人材の維持
昇進における公平性を促進するためには、女性と URM の人材維持を優先しなければなりません。Project Maia はそのために始まったプロジェクトです。プロジェクトでは、アンケート結果や社員減少のパターン、退職者面接で得られた知見に基づき、Dropbox 社員の中から参加者を選出しました。その後、参加者とマネージャーが「ステイ インタビュー(会社に在職し続けている社員を対象にした面接)」を通じて、社員をつなぎ止めるための計画を共同で作成。130 人以上の Dropbox 社員が、Dropbox で働くにあたって重視すること、Dropbox で仕事を続ける動機について意見を共有しました。この結果、プロジェクト参加者の 2020 年末時点における定着率は、96 % という高い水準を維持することに成功しています。なお現在も、引き続きプロジェクトの長期的な影響を追跡中です。
Dropbox Leadership Exploration and Development(Dropbox LEAD)プログラム
2020 年に始まった Dropbox LEAD プログラムは、優れた業績を上げている中堅レベルの女性と URM が人脈を構築し、経営幹部との面識を得て、次のキャリア ステップに向けた準備を行えるよう支援するプロジェクトです。プロジェクト参加者は、キャリア ワークショップ、社内外のメンターとの出会い、ピア グループによるフォーラム、それぞれに割り当てられた課題などを経験しました。多くの参加者は、プロジェクト後により大きな責任を割り当てられ、昇進を果たすか、または昇進間近の地位を確立しています。
個人の成長を促進する
Truth and Reconciliation:米国の黒人層が経験している問題への対処
Black Lives Matter 運動が大きな注目を集める中、Dropbox CEO のドリュー・ハウストンは、黒人社会への強い連帯を示すよう社員に呼びかけました。Dropbox 社員は公民権と人権のために立ち上がり、Black Lives Matter Network、National Urban League、NAACP Legal Defense and Educational Fund への寄付金として 100 万ドルを超える資金を集めました。
また、アフリカン ディアスポラ美術館およびアメリカン大学のキース・レオナルド博士と連携して Truth and Reconciliation プログラムを創設し、米国の黒人社会が永続的に被っている不平等の根本的な原因について Dropbox 社員に啓発しています。研究者、詩人、活動家、アーティストがこのプログラムに加わり、警察の対応や経済、教育、公衆衛生、法律および政策、抵抗運動についてさまざまなメディアで議論を交わしました。このプログラムは 2020 年の Dropbox における最高の学習体験と評価されており、2021 年もプログラムの継続を計画しています。
成長を続ける Dropbox の DEI トレーニング プログラム
Dropbox は、すべての Dropbox 社員を対象にしたコア トレーニングとして、「DEI Fundamentals(DEI の基礎)」、「Inclusive Leadership(包摂性のあるリーダーシップ)」、「Ally Skills(連携のスキル)」の 3 つを実施しています。2020 年には各トレーニングを見直し、より魅力的でわかりやすい内容に改訂しました。
- DEI Fundamentals:マイクロアグレッション、帰属、チーム力学についての詳細情報を追加
- Inclusive Leadership ワークショップ:包摂性のあるチーム環境を構築し、ビジネスのあらゆる部分に DEI を取り込む方法をリーダー層向けに説明
- Ally Skills ワークショップ:コミュニティの連携を強化するための具体的なヒントを Dropbox 社員に提示
社員リソース グループとのつながり
活発に活動する Dropbox の社員リソース グループ(ERG)は、DEI に関する Dropbox の取り組みの中で、以前から重要な役割を果たしています。とりわけ 2020 年という不確実な 1 年において、コミュニティ意識とともに、例年以上に大切なものをもたらしてくれました。いくつかの例をご紹介します。
- ニューロダイバーシティ(脳の多様性)と異なる身体的能力を持つ社員に焦点を当てた新たな ERG である enABLE を創設しました。 米国障害者雇用啓発月間に合わせて最初の伝承月間を催し、幅広いスピーカーを招いてアクセシビリティやメンタル ヘルスに焦点を当てた講演を行いました。
- Women@ と enABLE は、テレワークに伴うコストとメンタル ヘルスの問題を緩和するため、介護やメンタル ヘルス関連の給付金を全社規模で支給するきっかけとなる知見をもたらしてくれました。
- BlackDropboxers は、2 回目となる 3 日間の会議を開催し、コミュニティの育成と成長に焦点を当てたイベントを実施しました。 シェラ・ホワイト=ラムゼイ博士、テクノロジー人類学者のアレックス・ウルフ氏、Jamba Juice 創業者のジェームズ・ホワイト氏、女優のイッサ・レイ氏が講演を行いました。
Dropbox の草の根多様性グループ
Dropbox には、Ladies Who Create(LWC)や Diverse Dropbox Design(3D)など、DEI の普及を主眼とする自立的なグループもいくつか存在します。こうしたグループは、率直な対話の機会を設け、デザイン チームの働き方に包摂性を取り込むための活動を展開。3D は、デザイン分野におけるキャリアを具体的に検討できるよう中学生を支援する Inneract Project や、テクノロジー業界向けのポートフォリオ作成についての助言を提供する Blacks Who Design などの非営利組織にも支援を提供しました。
Dropbox の法務担当者で構成される多様性ワーキング グループは、顧問弁護士事務所に対し、事務所内で活用できそうな Dropbox の知識を提供。また Women in Finance や Circles Mentorship Program などのチームは、社内のコミュニティ意識向上に貢献してくれました。
主なビジネス活動への多様性の取り込み
Dropbox は、製品多様性会議や Dropbox Catalyst プログラムを通じて、ビジネス活動に多様性を取り込む活動を始めています。
- 製品多様性会議では、エンジニアリング、製品、デザインの各チームが DEI チームと協力し、各種 ERG とともに定期的に製品レビューを実施。開発中の新製品に潜在的な偏見が含まれていないかどうかを検証しています。
- Dropbox Catalyst プログラムでは、マイノリティや女性が経営する企業に対し、テレワークに関する知識やリソースを提供。また、Dropbox の製品を優待価格で利用できる特別なライセンスを供与しています。
今後の取り組み
Dropbox は、会社としての多様性、公平性、包摂性を高めるため、2021 年も多様性の実現に向けた取り組みを継続します。マネージャー以上の職階に女性および URM を採用、維持する上での野心的目標もすでに策定しています。その計画の一部をご紹介しましょう。
多様性のある人材を雇用する
- 職務別の雇用目標を策定する。経営幹部とその職務については、説明責任に関するベンチマークを設定する。
- バーチャル ファースト戦略を活用し、人材の民族、ジェンダー、学歴、地域の多様化を図るための雇用経路を構築する。
公平性を確立し、強化する
- Project Maia と Dropbox LEAD を継続し、キャリアの初期~中期にある Dropbox 社員の維持と昇進に力を入れる。
個人の成長を促進する
- Truth and Reconciliation シリーズを拡充し、地域特有のジェンダーや平等の問題を取り上げる(ヨーロッパ、アジア、米国)。
- 多様性を推進する Dropbox 社員の表彰プログラムを創設し、包摂性のあるコミュニティの実現にすべての Dropbox 社員が責任を果たすための計画を策定する。
- DEI に関する現在の社内プログラムとそれがもたらす影響について、社員が勤務時間中に学ぶ機会を設ける。
DEI に関する取り組みは継続的なプロセスです。バーチャル ファースト企業を目指す Dropbox が人間的なつながりを維持するためには、多様性を実現するための戦略と取り組みがこれまで以上に重要です。2021 年には、一般社員とマネージャーに対して、個人が成長を果たし、包摂性を重視する文化に貢献し、野心的目標以上の成果を達成するためのツールを提供します。全社を挙げた取り組みとコミュニティの存在。真に包摂的な Dropbox の実現に向けて歩みを進めるためには、それが唯一の手段であると私たちは考えています。
2020 年の成果3
脚注
1. 注:Dropbox では、「過小評価されたマイノリティ(URM)」を、黒人/アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック/ラテン アメリカ系アメリカ人、アメリカ先住民、太平洋諸島系アメリカ人と定義しています。
2. 新型コロナウイルス感染症の影響により雇用に遅れが生じているため、目標とする割合を範囲で示しています。
3. Dropbox では、「リーダー層」をディレクター以上の職階と定義しています。「マネージャー」は、直属の部下が 1 人以上いる人物を指します。