※本ブログは2022年2月に公開されたブログ記事の翻訳版です。
私たち Dropbox 社員は、これまで常に多様性、公平性、包摂性(DEI)を大切にしてきました。DEI は Dropbox の企業文化に浸透しているだけでなく、Dropbox 内部の仕組みを機能させるために欠かせない概念であり、事業とお客様に対する Dropbox の考え方に大きな影響を与えています。2021 年の Dropbox は、私たちが「バーチャル ファースト」と呼ぶバーチャルな働き方モデルに DEI をより深く浸透させるための取り組みを進めて参りました。
Dropbox は、すべての Dropbox 社員が貢献すべき、多年度にわたる「多様性の実現に向けた取り組み」として、以下の 3 つを掲げています。
- 多様性のある人材を雇用する
- 公平性を確立し、強化する
- 個人の成長を促進する
これらの取り組みは、具体的かつ実際的な行動を必要とするよう意図的に表現されています。これには、Dropbox 社内で DEI を促進するためにすべての社員が何らかの役割を果たせるようにする、という狙いがあります。
2021 年の野心的目標に関する進捗状況、教訓、達成度
Dropbox では、多様性に関する取り組みに加えて、中堅以上のキャリアにある女性および過小評価されたマイノリティ*1(URM)の割合を維持または拡大するための野心的な年間目標を掲げています。2021 年は、こうした立場にある女性および URM の割合を維持または拡大することを目指してきました。このような野心的目標を掲げることは、ビジネス目標を達成し、職場環境を改善し、女性および URM の会社への帰属意識を高めるために大きな意味を持ちます。
2021 年は、人材獲得競争が例年以上に厳しくなり、業界全体が人材の採用および維持に関して未曾有とも言える状況に直面しました。多くの企業がテレワーク中心の働き方に舵を切ったことは、社員の側から見れば、就業先の選択肢がかつてないほど広がったことを意味します。この変化は、中堅以上のキャリアにある URM の割合を維持または拡大することを目指す取り組みにマイナスの影響を与えました。
社内における URM の割合は、2020 年から 2021 年にかけて残念ながらわずかに低下しました。しかし勇気づけられるのは、過去 5 年間で見てみると、女性と URM の割合がどちらも全体的に増加傾向にあることです。この間、管理職にある女性の割合は 25.8 % から 39.8 % に、URM の割合は 5.2 % から 9.8 % に増加しました。Dropbox は 2022 年以降も、職場の DEI を促進するプログラムへの投資を続けて参ります。一連の取り組みによって、女性および URM の割合はさらに大きくなっていくことでしょう。このデータについては、以降で詳しくご紹介していきます。
中堅以上のキャリアにある女性および URM の割合:
2020 年末 | 2021 年の目標 | 2021 年末 | |
---|---|---|---|
中堅以上のキャリアにある女性 | 37 % | 37 % | 40 % |
中堅以上のキャリアにある URM | 11 % | 11 % | 10 % |
すべての女性および URM の割合:
2020 年末 | 2021 年末 | |
---|---|---|
女性 | 40 % | 39 % |
URM | 12 % | 12 % |
では、多年度にわたる取り組みの 2021 年の成果を 1 つずつ詳しく紹介していきましょう。
取り組み 1:多様性のある人材を雇用する
Dropbox では、製品開発チームのメンバー構成を、Dropbox のお客様と同様の多様性を備えた構成にしたいと考えています。2020 年 10 月にテレワーク戦略「バーチャルファースト」を掲げて以来、Dropbox は、米国内での人材採用に関してほとんどの地域的な制約を撤廃し、これまで以上に多様性のある人材にアプローチできるようにしています。その結果 2021 年には、面接を受けた求人応募者と実際の新規採用者のどちらについても、職階を問わず多様性が拡大しています。
人材採用の地理的分散化が多様性に与える好影響
バーチャルファーストに移行する前の 2018~2019 年、Dropbox が雇用した人材のうち、サンフランシスコやニューヨーク市、シアトルといったテクノロジー人材の主な供給地とは異なる地域に所在しているのは全体の 29 % でした。しかし、2021 年末にはこの数字が 56 % に急増。その増加ペースは現在も勢いを増しています。またバーチャルファースト移行後は、求人枠 1 件あたりの応募者が倍増しており、とりわけジェンダーにおける多様性は求人枠 1 件あたり 2019 年比で 2.4 倍、URM における多様性は 2.8 倍に高まっています。
こうしたことのすべてが、多様性に富んだ人材環境の促進につながっています。2021 年には、人材プールにおける URM の割合が、バーチャルファースト移行前である 2018~2019 年の平均と比較して全職階で 4 % 増加しました。社員の所在地域が広がり続けることでさらなる増加が期待できる、今後が楽しみな数字です。
2021 年には、人材採用活動をさらに公平なものとするため、以下のようにさまざまな改善策を実施しました。
- キャリアフレームワークを求人応募者に公開し、公平性を確保するための取り組みが Dropbox でどのように実施されているかを応募者が明確に理解できるようにしました。
- マネージャーが DEI のベストプラクティスを人材採用プロセスのすべてのステップに盛り込めるよう支援する専用のガイドを作成しました。これとは別に、DEI の基礎を学ぶためのトレーニングも以前から実施しています。
- キャリア早期の人材や一般的な技術畑でない人材に改めてアプローチするために、以下の施策を実施しました。
- エンジニアとしての実習機会を提供する「IGNITE」プログラムの第 2 期生を募集
- Next Chapter および Year Up と提携
- Thurgood Marshall College Fund と歴史的黒人大学(HBCU)のパートナーシップを締結し、カスタマーサクセスチームへのインターンシップを実施
また、新たな人材や多様な人材を採用するために、カンファレンスにも積極的に参加しています。各種イベントでの Dropbox の活動とその成果についての記事をご覧ください(Grace Hopper Celebration、Richard Tapia Celebration of Diversity in Computing、AfroTech、Latinas in Tech、NextPlay)。
2021 年の人材採用状況を数字で確認
なすべきことはまだ残っていますが、全体として上記の取り組みは一定の成果を上げています。
- 全体:2021 年の新規採用者のうち、15 % は URM でした。これは、2020 年の 11 % から増加しています。女性と URM の採用者は、5 年前と比較してどちらも約 4 ポイント増加しています。
- 中堅以上のキャリアにある人材:中堅以上のキャリアにある人材に占める女性の割合は 40 % に達しています。過去 5 年間で、この層における女性と URM の割合は大幅に増加しており、女性は 14 ポイント、URM は 5 ポイント増えています。
- 早期のキャリアにある人材:この層に占める URM の割合は 17 % で、2020 年から 5 ポイント増加しました。キャリア早期の女性と URM の採用数も過去 5 年間で増加傾向にあり、女性は 1 ポイント、URM は約 5 ポイント増えています。
視点の多様化は、Dropbox にとって大切なことです。それは、社員の間だけでなく取締役会においても同じです。2021 年、Dun & Bradstreet Corporation の元会長兼 CEO であるサラ・マシューを取締役会に迎えることができたのは、その意味で大きな成果と言えます。
取り組み 2:公平性を確立し、強化する
先ほど述べたとおり、2021 年には、人材獲得競争が一層激しくなりました。このことは、獲得した人材を定着させ、その能力を開発し、キャリアアップさせる取り組みがいかに重要であるかを、私たちに改めて思い出させてくれました。
Project Maia で人材の定着状況を常に把握
2020 年に始まった Project Maia は、女性と URM の定着に焦点を当てた取り組みです。その目的は、離職する可能性のある人材を事前に把握するとともに、そうした人材の引き留め方を理解するためのツールをマネージャーに提供することにあります。このプロジェクトでは、マネージャーに対し、離職する可能性のある社員と直接対話し、Dropbox でのキャリアを続けるために必要な変化、支援、リソースについて話し合うように呼びかけています。
この取り組みについて、2021 年は以下のとおり大きな成果を上げることに成功しました。
- 2021 年末時点で、Project Maia 参加者の定着率は 88 % を達成しました。これは、同じ層のプログラム非参加者における定着率を実に 22 ポイント上回る数字です。
Dropbox LEAD で人材の能力開発を支援
Dropbox では、人材の定着を図るのに加え、女性と URM が Dropbox で公平にキャリアアップを実現できるよう支援するプログラムを策定しています。2020 年に始まった Dropbox LEAD は、キャリア早期に優れた成果を上げている女性と URM の成長を後押しするためのプログラムです。Dropbox LEAD では、プログラム参加者の人脈作り、マネージャーとの関係強化、経営陣との面識獲得、成長の機会の模索、社内における役割拡大をサポートします。
第 1 期のプログラム参加者は、以下のような成果を上げています。
- 同じ層のプログラム非参加者と比較して、昇進の候補に挙がる割合が 2 倍多い
- プログラム参加者の 98 % は、9 か月にわたるプログラム期間中、Dropbox に在籍し続けている
- プログラム参加者の 88 % は、友人や同僚に同プログラムへの参加をすすめるとしている(エンジニアリングチーム、製品チーム、設計チームに限定すると 93 %)
マネージャーの成功を支援する取り組み
マネージャーは、チームのつながりを保つうえでこれまでも大切な役割を果たしてきましたが、その重要性はバーチャルな仕事環境において一層大きくなります。こうしたマネージャーを支援するため、Dropbox では、四半期に一度マネージャーサミットを開催し、同じ立場の人たちとつながり、経営幹部と直接対話し、社外の専門家から助言を得て、コミュニティを築くための機会を提供しています。
すべての人を歓迎する会社になるために
2022 年、Dropbox は、ヒューマン ライツ キャンペーン財団の「企業平等指数」において、8 年連続で 100 点のスコアを獲得しました。企業平等指数は、LGBTQ の社員に関するポリシー、活動、制度を評価する全米規模のベンチマーク ツールです。このスコアは、LGBTQ を受け入れるポリシーや活動が職場にどの程度採り入れられているかを示しています。
取り組み 3:個人の成長を促進する
社員に対し、プライベートと仕事の両面で成長する機会を提供することは、公平でインクルーシブな職場環境を実現するために欠かせません。
継続的な学びの機会
DEI チームは、無意識のバイアス、インクルーシブな職場環境を構築する方法、チームの公平性を実現および促進する方法などをテーマにしたトレーニングとワークショップを実施しています。
これまでに、以下のような成果が得られています。
- 新規採用者の 58 % が DEI トレーニングコースを 1 つ以上受講
- 社員の 62 % が DEI の基礎コースを修了
- 管理職にある社員の 60 % がインクルーシブなリーダーシップについてのトレーニングを修了
- マネージャーの 56 % がマネージャーを評価する「DEI Pathways」を修了
DEI の促進に貢献した社員を表彰
日常的な業務上のやり取りで DEI の価値観を実践している社員がいるのなら、その努力に報いなければなりません。そこで Dropbox では、2021 年、「DEI 実践者アワード」を立ち上げ、Dropbox を多様性と公平性に富んだインクルーシブな職場とするために期待以上の貢献をしてくれている 6 人の社員を表彰しました。
また、定期的な勤務評定において、DEI 関連の取り組みに対する社員の貢献を考慮するようマネージャーに呼びかけるとともに、社員リソースグループ(ERG)の活動に率先して取り組んでいる社員に金銭的な報酬の機会を与えるプログラムを立ち上げています。
各 ERG は、継続的なプログラムを通じて Dropbox における DEI の促進に取り組んでいます。2021 年の主な成果は以下のとおりです。
- 少人数のグループディスカッションを開催:反アジア感情の高まりやアフリカ系アメリカ人に対する人種差別の横行など、ここ数年、衝撃的な社会的事件が相次いでいることを受け、Asians@ と BlackDropboxers のメンバーを招いて、少人数のグループの前で自身の体験について語ってもらいました。この取り組みは、Dropbox のコミュニティの中で、問題に対する理解と支援を深めることを目的としています。また、黒人、ラテンアメリカ系、トランスジェンダー、ノンバイナリージェンダーの各コミュニティとのヒアリングセッションを開催し、職場にいるさまざまな立場の人々の体験を理解する取り組みを実施しました。
- メンターシップの機会の拡充:ERG の 1 つである BlackDropboxers がメンター プログラムの Black Diamonds を立ち上げ、黒人の社員が互いにつながり、1 対 1 のメンターシップで会社中のシニア リーダーからキャリアについての指導を受ける取り組みを開始しました。また同じく ERG の 1 つである Women@ は、Circles プログラムをヨーロッパ/中東/アフリカ地域に拡大しています。Circles は、Dropbox の女性社員を対象に、新たな課題に取り組み、互いに励まし合い、自身の目標についてオープンに語り合うための支援フォーラムです。
- 活動範囲の拡大:Vets@ は Dropbox の人材採用チームと相談し、退役軍人を雇用するためのパイロット プログラムを立ち上げました。この取り組みは、2022 年も継続される予定です。
- 啓発の取り組み:Dropbox の各 ERG は、社内のコミュニティや連帯への関与と支援を促進し、認知度を高めるため、合計で 60 件以上のバーチャルイベントを開催し、7 件の主要な月間啓発目標を掲げました。たとえば、最新の ERG である EnABLE は、身体的な障害やメンタルヘルスに関する課題に対処するうえで、キャリアを通じて経験した事柄を共有するパネルディスカッションを開催しています。
テレワーク中心の世界でコミュニティを築くために
社内のコミュニティ意識を維持し、よりインクルーシブなテレワーク環境を実現するため、Dropbox は、全世界の社員を対象にした初のカンファレンス「Sync Up」を開催しました。完全にバーチャルで開かれたこのカンファレンスの目的は、すべての社員に対し、つながることに専念する時間を提供することでした。ゲスト スピーカーによる講演やパフォーマンス、ワークショップを通じて、社員は仕事から離れて互いに学び合う機会を得ることができました。2 日間にわたって開催されたこのカンファレンスには、さまざまなタイムゾーンに属する社員 1,500 人以上が参加しています。
2022 年の展望
Dropbox は 2022 年を通じて、引き続き多様性に関する取り組みに注力し、バーチャルファーストの中でも社員がつながりを維持できるよう努めて参ります。
Project Maia への継続的な注力
URM の人材の定着率向上を図るため、Dropbox では現在、2021 年の教訓を元に Project Maia をはじめとする各プログラムの改訂を進めています。その一環として、ステイ インタビュー(会社に在職し続けている社員を対象とする面接)の開始を年度の早い時期に変更する予定です。これには、発覚した問題や障壁に対処するための時間をより多く確保するという狙いがあります。また URM の人材の維持に引き続き力を入れる一方、ステイ インタビューの対象を全社員に拡大することを予定しています。
製品多様性会議の設置
製品多様性会議は、Dropbox 製品がインクルーシブである度合いを高めつつ、お客様の間の多様性を広げることを目的とした取り組みです。2021 年、同会議は、明確なミッションを掲げ、Dropbox が新たに開発する製品にバイアスが存在しないかどうかを網羅的に検証するレビュープロセスを策定しました。
また社内の ERG と連携し、機械学習アルゴリズムをトレーニングするための多様なデータセットを収集しています。
2022 年には、前年に得られた教訓を取り込み、新たなメンバーを採用し、製品開発チーム内での同会議の存在感を高め、広範囲にわたる製品開発ライフサイクルにレビュー結果を反映させていく予定です。
サプライヤーにおける多様性の促進
2021 年、Dropbox の調達チームは、サプライヤーの多様性を確保するための土台として、次の施策を講じました。
- より多く、より多様性に富んだ選択肢の中からベンダー、製品、サービスを選定できる新たなプラットフォームを導入
- 小規模な企業が自社の多様性を自己認定できるツールを導入することで、各種認定の申請に要する時間とコストを削減
- 初めて取引するサプライヤー向けに、多様性に関するトレーニングとポリシーを策定
サプライヤーの多様性を確保する取り組みによって、Dropbox は、新たな市場やアイデアにアクセスしやすくなるほか、URM のコミュニティが展開するビジネスを支援、促進し、その経済的な成長を後押しできるようになります。
2022 年、Dropbox は、主な社内調達担当者向けにサプライヤーの多様性に関するトレーニングを拡充し、多様なサプライヤーを社内で推奨し、外部サプライヤーとのパートナーシップを拡大していく予定です。
違いを作るために:ACT レポートと黒人平等指数
DEI を促進する Dropbox の取り組みは、社内に限定されるものではありません。業界全体での取り組みにも積極的に関与しています。2021 年第 4 四半期には、業界でもいち早く「Action to Catalyze Tech(ACT)レポート」に調印しました。ACT レポートは、テクノロジー業界に存在する参入障壁を計画的に排除することを目指す取り組みです。また、業界の他のテクノロジー企業と協力して黒人平等指数(BEI)を制定しました。これは、職場における人種の平等実現に向け、測定可能な変化を促進し、実際の進捗状況を追跡して、その取り組みの内容を実証するための評価基準です。Dropbox では、2022 年もこの 2 つの取り組みを推し進めていくことを予定しています。
2021 年、Dropbox は多くの面で進歩を遂げました。私たちは今後も、社員が抱えるニーズの変化に対応し、DEI を促進する継続的な取り組みを実践するため、さまざまなイニシアチブやプログラムへの投資を続けていきます。多様性に関する責任を果たすことは、よりスマートな働き方を創造するという Dropbox のミッションを達成するために欠かせない重要な要素です。Dropbox は引き続き、DEI に関する野心的な目標を近い将来達成するために努力して参ります。
2021 年のデータ*2
脚注:
- 注:Dropbox では、「過小評価されたマイノリティ(URM)」を、黒人/アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック/ラテン アメリカ系アメリカ人、アメリカ先住民、太平洋諸島系アメリカ人と定義しています。
- ジェンダーに関するデータは全世界の状況に、また人種に関するデータは米国の状況に基づいています。なおこのデータは、フルタイムの正規社員のみが対象です。