どうして日本は「ハンコ」にこだわる? 海外と日本の契約事情とは

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新型コロナウイルス感染症の拡大で「ハンコ出社」がトレンドワードになりました。契約業務を紙に依存している企業は少なくなく、日本は「ペーパーレス後進国」と揶揄されることもしばしばです。では、日本と海外では契約に対する考え方にどのような違いがあるのでしょうか。今回は、文化的な背景や国民性などの観点で日本と海外を比べることで、ペーパーレス化が遅れている要因を探っていきます。

DXや人材不足を背景に業務効率化は急務に

デジタルによって既存の業界地図が塗り替えられることや、ビジネスのスピードが格段に高速化することが予想されています。また、日本においては少子高齢化にともなう人材不足も深刻化しつつあります。

こうした背景からデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組まざるを得ない状況ですが、まずはその前段階として業務プロセスのデジタル化を進め、業務効率化を図ることから始めなければなりません。

その第一歩となるのがペーパーレス化ですが、なかなか進んでいないようです。この現実を浮き彫りにしたのが、新型コロナウイルス感染症でした。外出を控えテレワークを推進するよう働きかけがあったにもかかわらず、「ハンコ出社」しなければならないと嘆く声がSNSやメディアを賑わせました。海外では見られない現象です。

なぜ日本でペーパーレス化が進まないのでしょうか。その理由は、日本と海外における文化的な背景や考え方の違いにあると言われています。まずは契約に対する考え方から見ていきましょう。

ヨーロッパにおける契約の考え方

ヨーロッパは陸続きで多様な民族や国家が隣り合っています。数多くの紛争に見舞われてきた一方で、契約をもとに取引を行うことで国境を超えた取引の数を増やしてきた歴史があります。現代においてはEUとして共同市場を実現するため、契約法によって積極的に調和し、国家間の取引をスムーズにすることで繁栄していこうとする考え方が支持されています。

アメリカにおける契約の考え方

よく「契約社会アメリカ」と言われるように、何ごとにおいても契約書を取り交わします。明確に意思表示をする国民性が表れており、契約書の内容に不足があるがためにトラブルが発生しないよう、あらゆるケースを想定して規定しておこうという考え方が働いています。そのため、膨大なボリュームの契約書を隅々までレビューすることが当たり前となっているのです。

わかりやすい例を挙げると、メジャーリーグ(MLB)での選手契約があります。MLBでは、厚さ数センチの契約書に条件や待遇を記載し、選手に提示しているそうです。また、多種多様なオプションを用意しており、特に労使協定に関する取り決めでは、移動時に利用する航空チケットのクラスまで詳しく盛り込まれているなど、球団と選手との間で齟齬が起きぬよう事細かに内容が記されています。

日本における契約の考え方

トラブルを未然に防止することが契約書作成の目的のはずですが、日本のビジネスシーンでは、欧米に比べると簡素なものであることが一般的です。細かく盛り込みすぎることで、かえって争いが生じることを避ける意図が働いているとも言われています。

聖徳太子の「和を以て貴しと為す」に象徴されるように、日本では平和を重んじるという価値観が定着しており、その思想は契約書にも現れていると言われています。例えば、できるだけ裁判に持ち込まず話し合いで解決を図ろうとする条項が含まれる点からも、こうした日本人の価値観が見受けられます。

ただ、日本の国際化が進むのに伴い、これまでの契約法や慣習では対応できなくなっていくことが予想されます。

例えば、日本では入社前に就業規則を確かめさせてくれる会社は珍しいのではないでしょうか。「入社してから禁止事項を通達されても……」と感じることもあるかと思いますが、それが現実です。しかし、世界中の人材を受け入れることが増えれば、日本人であっても事前の開示と合意が当たり前になるかもしれません。

なぜ押印やペーパーレス化の取り組みに差があるのか

現在、契約にハンコを採用しているのは日本だけだと言われています。ハンコ文化の発祥とされている中国においても現在ではあまり使用されていません。なぜ日本だけがハンコと紙にこだわるのでしょうか。

その理由としては、技術や運用の面もありますが、そもそも物理的に手触りのある「紙」を信頼しているという考察があります。しかし実際には、現在の電子技術と比べれば紙とハンコのほうが偽造のリスクが高いとも捉えることができます。欧米でも紙は存在し、手書きのサインが用いられていますが、第三者の公証人による証明制度が浸透しており、日本の印鑑証明よりも利用される機会は多いようです。多くの契約書が、どこでも売られている三文判でも信用されるのは、まさに日本の文化を象徴しています。

もう一つの理由として、国土の違いがあります。日本は中国、欧州、アメリカに比べて狭いため、紙の契約書や印鑑を取り交わすのに、比較的苦労しないという事情があります。

このような状況に対して、政府も黙って見てきたわけではありません。電子帳簿保存法、電子署名法、e-文書法といった法整備を進めてきました。ただ、そういった政策を打ち出すも、なかなか企業にペーパーレス化は浸透しませんでした。

背景としてもう一つ考えられるのは、「和」を重んじる文化が誤った方向に働いている可能性です。日本では、効率よりも、和を乱さず足並みを揃えようとする思考が優先され、「時期尚早」と先延ばししがちです。契約は2者以上によって取り交わすものであり、どちらかが先に「電子署名を始めます」とは言いだしにくいのです。しかし、コロナ禍で状況は一変し、電子契約の採用を検討している企業は、着実に増えつつあるのです。

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参照:総務省「令和2年版 情報通信白書

まとめ

コロナ禍によって、日本でも契約書のペーパーレス化が大きく前進しそうな機運となっています。しかし、まだまだハンコから脱却できていない企業は少なくありません。もし、周りの取引先が一様にペーパーレス化し、電子署名を採用するようになったらどうでしょうか。今度は遅れることで足並みを乱してしまうことになりかねません。

また、DXの推進によって世界を相手にビジネスを始めようとするとき、国際郵便で時間をかけて契約を締結している余裕はあるでしょうか。ペーパーレス化の大きな流れに乗るために、まずは社内からペーパーレス化と脱ハンコを実践し、文化を変えておくことが大切なのではないでしょうか。

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