デジタルマーケティングという言葉を目にすることが多くなりました。デジタルマーケティングとはいったい何?という疑問をお持ちの方から、デジタルマーケティングを始めてみたいが、何から手をつければよいのか分からないという方まで、この記事を読むだけでデジタルマーケティングを理解できて、今すぐ始めるために必要な情報をまとめました。
知識がまったくのゼロというところからでも概要を理解すれば簡単に始められるので、ぜひ最後までご一読ください。
目次
1. Web マーケティングからデジタルマーケティングへの進化
2. デジタルマーケティングに必要な 4 つのツール
3. デジタルマーケティングの理解をさらに深める書籍 5 選
4. まとめ
1. Web マーケティングからデジタルマーケティングへの進化
1-1. デジタルマーケティングとは
デジタルマーケティングは、インターネットをはじめとするさまざまなデジタルメディアを通じて商品やサービスなどのマーケティング、販促活動を行うことです。これだけだと現在行われているマーケティングとの違いをあまり感じられないかもしれませんが、インターネット以外のメディア(テレビ、ラジオ、デジタルサイネージ、スマホアプリなど多数)を横断的に活用することで、一元的に管理するところに大きな違いがあります。
ネット広告やテレビ CM など、これまでであれば縦割り的に行われてきたプロモーションが集約されることで、多様化する消費者の行動を効率よく把握できるほか、多様なチャネルでアプローチできるため、現段階で行われているマーケティング活動の集大成のような存在と言えます。
1-2. Web マーケティングとの違い
デジタルマーケティングとよく似た意味で使われている言葉に、Web マーケティングがあります。名称の通り Web サイトを基点としたマーケティングのことで、狭義にはデジタルマーケティングの一種です。それに対してデジタルマーケティングは Web マーケティングもひとつの要素としつつ、それ以外のデジタルメディア全般を対象としているため、Web マーケティングが必然的に到達する次の進化形となっています。
では、Web マーケティングにどんな要素が加わると広義のデジタルマーケティングになるのでしょうか。主なものを挙げてみると、以下のようになります。これをご覧いただくと、「言われてみれば、そうだ」と感じていただけるのではないでしょうか。
- 電子メール、携帯電話のショートメールなど
- SNS
- スマホアプリ
- デジタルサイネージ
- 店頭の POS システム
- IoT
1-3. なぜ、デジタルマーケティングが注目されるのか
それではなぜ、Web マーケティングの次にデジタルマーケティングがここまで注目されているのでしょうか。これに対してもさまざまな意見がありますが、それらを集約するとおおむね以下のようになります。
- 従来のマーケティングは縦割り的で効率がよくない
- 従来のマーケティングでは把握できない消費者行動、嗜好がある
- デジタルメディアが多様化しており、それに合わせる必要がある
- 得られるデータ量が増大しており分析手法が追いついていない
これらに共通しているのは、消費者の行動や嗜好は多様化しておりそれを示すデータの入手が容易になってきたのに対して、それを活用するには従来のマーケティング手法に対して限界を感じている、となります。
これに加えてデジタルマーケティングでは費用対効果も意識されるので、コストに見合った成果を得やすいというのもデジタルマーケティングに注目が集まる理由です。
1-4. DMP とは
デジタルマーケティングを導入するにあたって、その中核となるのが DMP という支援ツールです。Data Management Platform の略で、各方面のデジタルメディアから集められた情報を一元管理し、目的に応じて分析する機能を持つツールのことです。
従来のマーケティングでは各メディアでの活動が縦割りになっていたという課題があったので、DMP ではその課題を解決するために各メディアからの情報が一元管理され、それを横断的に活用できるところに特徴があります。
自社で保有している顧客データやアクセス解析などと、EC サイト側や SNS などから集められた外部データというのは従来別々に集められて管理されてきましたが、DMP ではこうした自社のデータと外部のデータも一元管理されるので、より正確な状況判断やマーケティングが可能になります。
1-5. デジタルマーケティングで押さえておきたい 5 つのポイント
1-5-1. DMP を活用して多様なチャネルから情報を収集、分析
多種多様なデジタルメディアから収集された情報を横断的に一元管理するのが、デジタルマーケティングの肝となる部分です。その中核をなす DMP はこうして集められた横断的なデジタルデータから顧客が求めているものを可視化してくれるツールなので、これまで CRM や SFA などで行われてきたことがより進化した形で実現します。
【CRM とは】
CRM は Customer Relationship Management の略で、直訳すると顧客との関係を管理する手法という意味になります。蓄積された顧客情報から効果的なアプローチ方法を分析し、売上アップを目指すための手法です。IT の発達により CRM ツールが多数リリースされ、より効率のよい管理が可能になりました。
【SFA とは】
SFA は Sales Force Automation の略です。IT の側面から営業活動を支援するためのツールを意味し、営業活動全体の省力化や蓄積データの有効活用などを通じて営業コストの削減と営業効率の向上を目指します。
1-5-2. 顧客管理チャネルの最適化
顧客が利用するデジタルメディアや通信手段はどんどん多様化しています。従来であればメールのみ、Web のみといったように単一のチャネルで個別にアプローチしていたものが、デジタルマーケティングではすべてのデジタルチャネルが一元化されます。
この環境を利用して、それぞれの顧客が好んで利用しているチャネルごとに情報を収集し、アプローチをすることができるようになります。もっぱらメールを利用している人にはメールで、SNS がメインの人には SNS で、といった具合です。
1-5-3. SNS の進化による活用範囲の拡大
SNS の普及と進化は、消費者が自らの意思で手軽に情報を発信できる環境が整ってくることを意味します。Facebook や Twitter などで発信される情報に加え、最近では Instagram での情報発信も活発になっています。
SNS は近年のマーケティング活動におけるアーンドメディアの重要性が高まるにつれて有力なメディアのひとつとして捉えられており、SNS からの情報収集と情報発信はデジタルマーケティングでも意義が大きくなっています。
【アーンドメディアとは】
アーンドメディアとは Earned Media をカタカナで表記したもので、企業が消費者から信用、評判などを得る(= Earn)ために利用されるメディアのことです。代表的なものが SNS で、そこで得られる企業の評価は信憑性が高いと見なされる一方で、企業もひとつのアカウントに過ぎないため飛び交う情報をコントロールするのが難しいという特徴があります。
1-5-4. 購買以外の顧客行動がリアルタイムで収集可能に
従来の営業支援ツールでは消費者の購買以降の行動を分析するのがメインでしたが、デジタルマーケティングでは購買前の行動をモニターすることも可能になります。
例えばアクセス解析では、そのサイトに流入してきた検索キーワードやサイト内の回遊状況などを把握できるため、購買に至るまでの行動を分析することができます。これが可能になると、購買に至らなかった理由や、購買に至った場合にどんな行動を経ているのかによって消費者の心中を察するという、従来は難しかった精度のマーケティングが実現します。
1-5-5. データマイニング
いわゆるビッグデータをはじめ、POS データやアクセス解析など、デジタルマーケティングでは膨大なデータから消費者の嗜好などを導き出していきます。それを可能にしているのが DMP などの支援ツールで、こうしたツールを活用するにはデータマイニングの正確性が鍵を握ります。
膨大なデータからいかに必要な情報を導き出すかというのは統計学など科学的なアプローチも必要になりますが、これらを駆使して消費者が求めているものをリアルタイムに把握することができれば、それはデジタルマーケティングの成功を意味します。
2. デジタルマーケティングに必要な 4 つのツール
デジタルマーケティングを実践するにあたって、必要になるものを 4 つのツールに分類しました。それぞれのツールの役割と、代表的なサービスをご紹介します。
2-1. DMP (データマネジメントプラットフォーム)
Data Management Platform の略である DMP は、その名の通りデータを管理するためのプラットフォームなのでデジタルマーケティングの中核をなす重要なツールです。顧客関係の管理を行う CRM や営業支援システムである SFA などの要素をすべて包含しているもので、デジタルマーケティングを進める上でデータの格納や管理、分析などマーケティングに必要な判断材料が集約されます。
2-1-1. Marketo (マルケト)
マーケティング支援ツールの開発に特化したアメリカの企業による、デジタルマーケティング支援ツールです。クロスチャネルマーケティングという言葉を用いてプラットフォームを提供していますが、これが DMP に必要な機能を備えています。
⇒ Marketo
2-1-2. Rtoaster (アールトースター)
日本国内で高いシェアを持つ DMP です。導入が手軽であること、サポートが充実していることが売りなので初めてデジタルマーケティングを始めたいという企業におすすめです。
⇒ Rtoaster
2-1-3. Oracle Marketing Cloud (オラクル マーケティングクラウド)
世界的なソフトウェア開発企業であるオラクルが提供しているクラウド型のマーケティングプラットフォームです。とても資本力のある会社ということもあってマーケティング関連の企業を積極的に買収しており、この分野での強みはさらに進化すると思われます。
2-2. アクセス解析ツール
自社サイトやコンテンツサイト、EC サイトなどでアクセス解析を行うことは今や常識となっていますが、デジタルマーケティングにおいても貴重な情報源です。
2-2-1. Google アナリティクス
おそらく多くのサイトですでに導入されている、とても有名なアクセス解析ツールです。とても高機能なアクセス解析を無料で利用できるため、これからアクセス解析を導入するという場合は最有力の存在でしょう。
2-3. SEO ツール
SEO とは検索エンジン最適化と訳される、検索エンジンのアルゴリズムに対して親和性の高いサイト制作や外部リンクなどの構築を行うことです。主に Google に対して行われるため、Google が好むようなサイトの作りになっているか、どんなサイトからリンクが張られているかをチェックする必要があります。
そのためのツールが無料で提供されているので、以下にご紹介します。
2-3-1. SEO チェキ!
対象のサイトが、対象のキーワードで検索順位の何位に表示されているのかをチェックするツールです。SEO チェックの基本となるサービスなので同様のサービスはたくさんありますが、この SEO チェキ!はとても有名な存在です。シンプルな作りになっているので手軽に検索順位を調べることができます。
⇒ SEO チェキ!
2-3-2. Open Site Explorer
対象のサイトに他のサイトからどれだけリンクが張られているかというのは、そのサイトの人気のバロメーターと言ってよいでしょう。バックリンク、被リンクなど呼び方はさまざまですが、意味は同じです。この「Open Site Explorer」ではバックリンク(サイト内ではインバウンドリンクと呼ばれています)を調べることができるサービスで、URL を入力するだけでどこからリンクが張られているのかを調べることができます。
2-4. A/B テストツール
A/B テストとは、2 種類のコンテンツを制作してそれぞれを表示してみてどちらが高い効果を上げるかという実験を行うことです。A または B のコンテンツを切り替えて表示することから A/B テストと呼ばれますが、スプリットテストとも呼ばれます。
手動でコンテンツを切り替えて効果を測定することもできますが、それを自動化できる便利なツールもリリースされています。
2-4-1. Gyro-n (ジャイロン)
用意しておいたコンテンツを自動的に切り替えて、それぞれのコンテンツがどんな効果を上げたかを計測できる自動化ツールです。タグを埋め込むだけで簡単に始められる一方で分析機能も優れているので A/B テストの強い味方になります。
⇒ Gyro-n
2-4-2. Optimizely
世界でトップシェアを誇る A/B テストツールです。アメリカ企業のサービスですが、日本語にも対応しています。有名なサイトも多数利用している実績もあるので、30 日間の無料トライアルで効果を試してみるのもよいかもしれません。
3. デジタルマーケティングの理解をさらに深める書籍 5 選
3-1. ユーザ中心ウェブビジネス戦略
デジタルマーケティングを含むすべてのマーケティングは、消費者の心理や嗜好などが思考の基点になっています。その視点に立ったマーケティングの基本を学べる一冊です。
3-2. 顧客を知るためのデータマネジメントプラットフォーム DMP 入門
デジタルマーケティングの中核をなすツール、DMP の優しい入門書です。特に膨大なデータから消費者の心理や行動などを分析する考え方や手法についての解説が詳しいので、DMP の本質に迫ることができます。
3-3. 現場のプロがやさしく書いたWebサイトの分析・改善の教科書
デジタルマーケティングにおいても Web の存在は極めて重要で、そこから得られるアクセス解析などのデータをいかにマーケティングにいかすかが成否を分けます。Google アナリティクスを中心にアクセス解析の正しい考え方を現場のプロが解説しています。
⇒現場のプロがやさしく書いたWebサイトの分析・改善の教科書
3-4. 部長、その勘はズレてます!
この記事でもデジタルマーケティングの一環として A/B テストについて解説していますが、A/B テストをさらに詳しく体系的に学ぶことができるガイド本です。
3-5. 実践!最新デジタル・マーケティング
デジタルマーケティングを広告発信側の目線で俯瞰できる入門書です。具体的な事例が多く紹介されているので、参考になる部分が多いと思います。
4. まとめ
デジタルマーケティングという言葉だけを見ると、どこかで見たようなものという印象を受けるかも知れませんが、ここまでお読みいただいた方は全く新しい概念であることにお気づきかと思います。
だからと言って決して難しいものではなく、DMP などのツールを活用すればこれまで実践することが難しかった顧客管理やビッグデータからの消費者分析などが可能になります。すでに導入している企業の多くが成果を上げており、これからの成長余地も大きな分野です。
今からの導入でも遅くはないので、まずはデジタルマーケティングの概要をつかんでいただいた上でまずはできることから始めてみてはいかがでしょうか。