イラスト:ファニー・ルオー
本記事は Dropbox UX Writer の John Saito がこちらで執筆した記事を本人の許可のもと掲載しています
デザインについて考えるときに、真っ先に「文書」のことを思い浮かべる人はあまりいないでしょう。でも多くのデザイン チームにとって、文書は作業の中で重要な役割を果たしています。
以前 Twitter でアンケートをしてみたのですが、プロダクト デザイナー 3 人のうち 1 人が、作業時間の 25 % 以上をかけて文書を読んだり書いたりしているそうです。それなのに、文書について話題にすらしないデザイン学校が多いのは、おかしな話ですね。
確かに、文書にはインタラクティブなプロトタイプほど「グッとくる魅力」はないと思いますが、デザインを文書にすれば、アイデアを一気に膨らませることができます。思考を言葉に変えることで、その言葉が花を咲かせて実を結ぶからです。
デザインをうまく文書にできれば、こんな良いことがあります。
- 考えを整理しやすくなる
- 視点を明確にできる
- 目標を軸にしてチームを集められる
- 方法だけではなく理由を説明できる
- 議論で時間を浪費しなくて済む
- 開発者の作業が楽になる
Dropbox では、すべてのプロジェクトでデザインの文書を作っています。どんなプロジェクトも最初の一歩を踏み出す瞬間があります。私たちにとっては、その一歩が Dropbox Paper で文書を作ることになる場合が多いのです。
では、デザインについての文書は、どうやってデザインすれば良いのでしょうか?文書作成について何かヒントがないか、チームのデザイナーに聞いてみました。いくつかご紹介します。
1. 文書を結び付ける
デザインの文書は、プロジェクトで作成される文書の 1 つに過ぎないので、他の文書の中に埋もれてしまうことが多いものです。
そこで文書がバラバラにならないように、エミリー・ミラーは文書の一番上にインデックスを付けています。インデックスにはプロジェクトの関連文書の名前を記載し、すべての関連文書の一番上に同じインデックスを付けます。「ウェブサイトのナビゲーションを小さくしたようなもの」とエミリーは言います。
たとえば、デザインの文書に「プロジェクト ポップアップ(デザイン)」という名前を付けるとしたら、エンジニアリングの文書とコピー ライティングの文書にも、同じパターンに沿って「プロジェクト ポップアップ(エンジニア)」と「プロジェクト ポップアップ(コピー)」という名前を付けます。
こうしておけば、チーム メンバーはインデックスを手掛かりにして、関連するすべての文書をすばやく簡単に見つけることができます。
2. 絵文字を活用する
最近は、多くの人がメッセージ アプリで絵文字を使っています。Dropbox でも、デザインの文書でたくさんの絵文字を使います ?
絵文字は単なる飾りではありません。絵文字を使えば、ざっと目を通すだけで文書の意味を伝えやすくなります。また、特定の部分に注目を集めることも、ステータスを伝えることさえできます。
たとえば、シータ・チャタジーのチームでは、スケジュールの現在の週を示すために押しピンの絵文字を使っています。また、工事現場に穴を掘るアニメーション絵文字を使用して、ある部分がまだ作業中であることを表しています。穴掘りのアニメーションを見れば、そのデザインがまだ確定ではないことがわかるのです。
私たちのチームには、文書のタイトルに絵文字を使うデザイナーもいます。Paper でタイトルの頭に絵文字を付けると、その絵文字はブラウザのタブに表示されるファビコンになります。絵文字があればその文書を簡単に見つけることができるので、いくつものタブを同時に開いているときに便利です ?
3. 経験を追体験する
たいていの場合、デザイナーは新しいプロダクトを一から作るのではなく、現在のフローに手を加えることで、より良いものにしています。
サラ・リンは、ワイヤーフレームや模型を組み立てる前に、現在のフローをたどって、表示されるものをすべて文書に記録しています。これは、経験を追体験していると言えるかもしれません。
サラは、自分の考えをチェック用文書にすべて書き込み、メインのデザインの文書からリンクするようにしています。そして、現在のフローのスクリーンショットを撮ってユーザーの操作を再現し、チェック用文書に記録します。そうして、フローのステップごとに、良い点と悪い点について詳細なコメントを書いています。
サラは、詳細なチェックを行うことで、ユーザーの立場になって考え、ユーザーに感情移入できると言います。UX の詳細なチェックと言えば、サミュエル・フリック氏のユーザー オンボーディングの解体を思い出しますが、こんな風に自分のプロダクトを解体してみたら、自分の作品を最も辛辣に批判できるはずです。
4. 物語を紡ぎ出す
ローラ・バーベラのデザインの文書を読むと、そこには物語があります。それは、仕事で辛い思いをしているコリーンという医療研究者についての感動の物語です。
彼女の物語は、まるでハリウッド映画に出てきそうなストーリーで、大掛かりなプレゼンテーションの話や、書類をなくしたことやベーグルを焦がしてしまったエピソードなどが語られています。そこには対立がありクライマックスがあり、解決編があります。つまり、優れた物語にあるものがすべて含まれています。
話をもっと面白くするために、ローラはあちこちでポップ カルチャーを引き合いに出して、物語に味わいを添えています。
ローラは、こうした物語を使ってデザインを説明しています。「問題 X を抱えているユーザー A」ではなく、現実の問題に直面しているリアルな状況の人物のために、そのデザインがあると述べているのです。物語にすることで、問題と解決策に説得力を持たせることができます。
5. 気持ちを高める
「文章で人をアイデアに夢中にさせることができる」と、ライハン・ハッサンは私にそう言いました。
どういう意味か尋ねたら、ライハンはデザインの文書をプレゼンテーション ツールとしてどう使っているか説明してくれました。いくつか見せてくれたのは、文字が少なくビジュアルの多い文書です。
付箋紙の写真や、チャットのやり取りのスクリーンショット、スケッチ、ビデオ クリップ、さらには Framer のプロトタイプなど、さまざまなビジュアル素材が文書に含まれていました。これがすべて Paper ドキュメントに埋め込まれ、彼のアイデアに臨場感を持たせるのに役立っているのです。
ハッサンはさまざまな種類のビジュアルをつなぎ合わせてストーリーを作り、プレゼンで使う台本にしています。
「人を夢中にさせることができれば、弾みを付けるのは簡単だ」とライハンは言います。ビジュアル素材の助けを借りることで、雲をつかむような現実味のないアイデアも、はるかに具体的で説得力のあるものに見えるのです。
6. 出来事の記録を残す
デザインの端々がどれほど素晴らしくても、他のメンバーは作品について必ず質問をします。なぜその構成要素を使ったのか、○○と××については検討したのか、この機能とのやり取りはどうなっているのか、などの質問があるはずです。
そこでデザインの背景となった考えを文書にしておけば、多くの手間を省くことができます。首尾よく行けば、あなたがどのようにしてそのソリューションにたどり着いたのかを、文書によってチーム全員が理解してくれるでしょう。特に、遠隔地のチームと共同作業する場合は、良い文書があれば役に立ちます。
メリッサ・マンデルバウムにとって良い文書を書くとは、「出来事の記録をできる限り良い状態で残す」ことです。デザインの文書を作るとき、メリッサは複数のデザイン案を挙げ、それぞれに対する賛成と反対の意見、リスク、未解決の問題を書き込みます。だから彼女のデザインが行き当たりばったりのものではなく、考え抜かれたものであることがわかるのです。
「決めたデザインについて文書を書く作業を大事にして、もっと時間をかけると良いと思います。そうすれば、決定について話し合ったり見直したりする作業が絶対スムーズになりますから。」メリッサはそんなアドバイスをくれました。
7. デザインの墓場を作る
デザイナーが最終的な方向性を決める前の試行錯誤は、ものすごい量になることがあります。でも、何十個もの案をリストにして見せたら、周りはうんざりしてしまいますよね?そんなときはどうすればよいでしょうか?
カイル・デッカーは、ボツになったプランを集めて、「デザインの墓場」という名の文書を作っています。過去のプロジェクトの古いデザイン数十件に、自分自身のメモを添えた文書で、メモには、その案がなぜ残らなかったかの理由が書かれています。
カイルは、メインのデザインの文書が雑然としないように、こうした古い案をメインの文書とは別にしていますが、いつか古い案を復活させる必要があれば、クリックするだけですぐに利用できます。
どんなことがあっても、古いデザインを捨ててはいけません。昨日ボツにしたデザインが、明日は天の助けになるかもしれませんから。
8. パートナーを探す
デザインの文書を書く大きなメリットは、文書を使って、デザインについての意見を簡単に集められることです。チームの仲間は、文章にインライン コメントを付けて、質問をしたり、ときには賛辞を送ったりすることができます。
でも、文書でコメントを集めたことがある方なら、フィードバックをもらうことが嬉しいときと嫌なときがあることがわかるでしょう。ある段階で、デザインはより大きなグループと共有する必要があります。そうなれば、全員の気持ちがひとつになることはなくなるのです。
そのような状況では、まずパートナーを見つけるべきだ、とウェス・オヘアは薦めています。文書を大きなグループと共有する前に、まずグループ内の 1 人と共有し、その人に文書をひととおり説明して、理解してもらえるかどうかを確かめるのです。そうすれば、大きなグループと共有して承認を受けようとするときに、少なくとも 1 人はもうあなたの味方になっています。
文書をどのように共有するかの判断が、どんな内容を書くかと同じくらい重要な場合があるのです。ウェスのおかげで、私はそれに気づきました。
最後に
8 人のデザイナーに話を聞いて、デザインの文書を作る方法は 1 つではないことがわかりました。デザイナーは誰でも自分だけの方法を持っていますが、1 つや 2 つは互いに学べるコツもあるはずです。
この記事に登場したデザイナーとつながりたいと思った方は、次のリンクをクリックしてみてください。
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