イラスト:ファニー・ルオー
ずっと前は、物書きの仕事とは、遅い時間に起き出し、背中を丸めて眉間にしわを寄せながらノート パソコンに向かい、薄暗い部屋で自分だけの世界に没頭して何時間もキーを叩くものだと思っていました。
でも今の私は、プロダクト デザイン チームの UX ライターを務め、マネージャーへのブリーフィングやブレインストーミング、プロジェクトのキックオフ ミーティング、ライター向けのワークショップ、デザイン セッションなどで毎日忙しくしていると、不思議なものです。プロジェクトはあっと言う間に進行していくので、自分の世界に閉じこもって 1 人でアイデアを煮詰める時間など、ほとんどないのが実情です。
物書きの仕事をする上で、気をつけていることをご紹介したいと思います。
目次
- 孤立にご注意
- 仕事は「I」ではなく「We」で
- 広く共有する
- 自分の仕事をチームの手柄に
4-1. 歓迎の姿勢を見せる
4-2. 仲間の存在を刺激にする
4-3. 共有のタイミングを計る
4-4. 早い段階で共有する
4-5. 全体像が見えるようにする
4-6. 状況を把握する
4-7. メンバーに質問する
4-8. スランプを乗り越える
4-9. チーム意識を持つ
4-10. 相棒を見つける
4-11. 共有の場を離れない
4-12. 落ち着いて作業を続ける
4-13. フィードバックは贈り物
4-14. 他者を尊重し、大切なことに集中する
4-15. 前向きに捉える
4-16. みんなは 1 人のために
1. 孤立にご注意
デザイン チームの一員になる前は、クリエイティブ ライティングや出版に関する業務に従事していたときの経験から、未完成の仕事は人に見せないようにしていました。なぜならば、作業途中の仕事は、自分自身のアイデアに浸ることのできる神聖なパーソナル スペースのようなものだったからです。
しかし、もし今でも同じような仕事をしていたら、仕事がスムーズに進みません。
自分だけのアイデアで作ったものを、自信満々でチームに披露しようとしても、すでにプロジェクトの方向性が変わっていたり、新たな制約が生じていたりすることがあるからです。
あなたにも心当たりはありますか?
未完成のスケッチや雑でまとまりのないメモを見せるのは、気まずいかもしれません。冷や汗をかくこともあるでしょう。でも UX ライターになった私は、早い段階でアイデアを共有することで、時間を節約し、創造性を刺激することができています。
積極的に共同作業を採り入れれば、もっと器用で機転の利くライターになれるかもしれません。
2. 仕事は「I」ではなく「We」で
最近の仕事で書いた文章を思い出してください。デザイン仕様、エラー メッセージスプラッシュ画面、広告の企画書など、何でもかまいません。
形式やスタイルがどうであれ、文章を書くことには、何かを伝えるという目的があります。そして多くの場合、書くことによって、作業過程でフィードバックを受けやすくなります。
今後、仕様書の作成や複数の関係者がいるプロジェクトに関わることがあったら、とても重要なプロジェクトの文書を闇雲に 1 人で作成するようなことになっていないか、一呼吸してみてください。
1 人で作業していると、自分の世界に閉じこもってしまいがちなので、注意が必要です。製品のための文章を書く仕事を独力で成し遂げることはできません。あなたにはパートナーが必要なのです。
3. 広く共有する
私の場合は、プロダクト デザイナーや他の UX ライターを見習いながら、自分の世界に閉じこもりがちな作業スタイルを、周囲を巻き込んでいくスタイルに少しずつ変えていきました。
たとえばコピー ライティングでは、作業プロセスを通じてデザイナーやエンジニアプロダクト マネージャーから得るフィードバックによって、何をどのように書くかが決まっていきます。
形や大きさ、色の異なる動物たち — 写真
こうして多様な視点を取り入れながら、よりクリエイティブな成果物をともに作り上げていくのです。
4. 自分の仕事をチームの手柄に
自身の作業プロセスにチームを巻き込むためには、多少の訓練が必要になるかもしれません。そこで、物書きの仕事に共同作業を採り入れるための 16 のヒントをご紹介しましょう。
4-1. 歓迎の姿勢を見せる
まずは最も大事な点です。物書きが共同作業をするとき、自分とは異なる専門知識を持ち、自分とは違う方法で問題を解決する人々からフィードバックを受け取ることになるとき、他人の意見に寛容な心と、アイデアを 1 か所で共有するためのツールが必要です。
そのためには、Dropbox Paper などの共同編集ツールでドキュメントを作成し、チーム メンバーと共有するとよいでしょう。
この共有ドキュメントは、文筆家のためのサロンと考えることができます。誰もが自由に出入りしてアイデアを提案できる、明るくて居心地のよいリビング ルームのようなものです。
ドキュメントの閲覧を歓迎し、気軽に意見を述べてくれるようお願いしましょう。
4-2. 仲間の存在を刺激にする
同僚が自分の文章に目を通してくれているのがわかると、作業を続けてアイデアを練り上げようという気持ちになります。
ドキュメントを見てくれる同僚たちは、陸上競技大会で観客席に座る応援団のように感じられます。声援を送ってくれるだけでなく、息切れしたときには、トラックに入ってバトンを受け取ろうとさえしてくれる仲間なのです。
4-3. 共有のタイミングを計る ⏰
ドキュメントを共有する気になったら、どのタイミングが効果的かを考えてみましょう。そのとき、メンバーを招待してドキュメントを共有し、自分の考えや文章の案を伝えることになります。
でもその前に、いったん立ち止まってみた方がいいかもしれません。共有のタイミングが早すぎると、不安になって提案されるアイデアを飲み込むのが難しくなるおそれがあるからです。
初期のアイデアをある程度まとめてから同僚を招待し、意見や提案を求めるのをおすすめします。
4-4. 早い段階で共有する
ひらめいたアイデアを捉えて、スケッチや手書きのメモ、ブレインストーミングなどの手段を使って、プロジェクトのビジョンをおおよその形にします。
次に、共有の前に 1 人で作業する時間を決めましょう。30 分でも 1 時間でも数日間でもかまいません。大切なのは、明確に期限を定めて、予定以上の時間を費やさないようにすることです。
作業を共有すれば、それだけで物事が前に進みます。
信頼の置ける誰かを招待して、協力を依頼しましょう。
最初の 1 人から意見を聞いたら、その内容をじっくり検討してください。必要に応じてフィードバックを反映し、さらに別の人を招待します。
4-5. 全体像が見えるようにする
ドキュメントの冒頭や一番下に、プロジェクトの計画を目立つように書いておきます。完璧な計画でなくても、とにかく共有することが大切です。
アウトラインがお好きなら、それもドキュメントに加えましょう。スケッチや To-do リストでもかまいません。
間違いや未完成部分について、言い訳を書き込みたくなってしまうかもしれませんが、それよりは、自分がやりたいことをまとめた簡単なコメントを加えておきましょう。
4-6. 状況を把握する 💬
ドキュメントを共有することは、メンバー全員で同じ情報を把握するのにも役立ちます。
4-7. メンバーに質問する
作業途中の仕事を共有する場合は、求めているフィードバックの種類を明確にしておきましょう。次のような感じです。
3 つの選択肢で迷っているような場合は、有望なものはどれで、そうでないものはどれか、意見を求めます。
特に苦戦している箇所がある場合は、その部分をハイライトして助言を求めましょう。
ドキュメントの冒頭に質問リストを付けておき、回答が得られたらチェック マークを付けるようにしてもよいでしょう。
完成に近づいてきたら、次はメンバーに簡単な見直しをお願いしましょう。
4-8. スランプを乗り越える
書くことは一筋縄では行きません。おぼつかない足取りで暗闇を歩いているような気分になってしまったら、パートナーや関係者に助けを求めましょう。
未解決の問題がある。プロジェクトの目的が明確になっていない。データが足りない。そんな問題に直面している場合は、手助けが必要であることをメンバーに伝えるべきです。
問題が何であれ、それをドキュメントに書き込みましょう。「未解決の問題」というセクションを用意してもいいですし、ブレインストーミングや会議メモの文書のあちこちにコメントを付けておくだけでもかまいません。
そうしたら、新しいメンバーを招待して一緒に問題を解決していきましょう。
1 台のノート パソコンで一緒に作業する人々 — 写真
4-9. チーム意識を持つ ✊
共同作業を経験することは、社会で必要なスキルを身に着けることにもつながります。
4-10. 相棒を見つける
誰かに自分の作業を「監督してもらう」ことで、集中力が増し、仕事に勢いが付きます。誰かの存在を常に心に留めておくことは、執筆中にオーディエンスの存在を意識し、作業の目的意識を高めることにもつながります。
全米小説執筆月間のようなムーブメントが書き手の生産性向上にとても効果的なのは、コミュニティ感覚と責任の意識が生まれるからです。
執筆作業を前に進めるという目的では、仲間からのいい意味でのプレッシャーが大きな効果を発揮します。ぜひ、執筆作業の進み具合を友達や知人に伝えてみてください。作業がいつ頃終わる予定かを教えて、ときどき進捗状況を尋ねるよう頼んでみましょう。
4-11. 共有の場を離れない
ドキュメントを共有すると、作業しているときに誰かが同じドキュメントを開くことがあります。そんなとき、別のプライベートなドキュメントに内容をコピーしてそこで続きの作業をしようという気持ちになったことはありませんか?
私も以前はそうでした。
たとえば、最初の下書きを熱心に書いているところに突然、ドキュメントの右上に上司のバッジが現れました。
「ボスはなぜ今これを見ているのだろう?まだ完成していないのに!」
入力している途中で、キーボードに載せた手が固まってしまいます。
「ああ、途中で見てほしいなんて頼んでいないのに。がっかりされたら大変だ!」
もしここで「闘争か逃走か」反応が出てしまったら、弱点を隠そうという強い思いにかられてしまうかもしれません。しかしここは我慢して、共有の場に留まりましょう。
4-12. 落ち着いて作業を続ける
チーム メンバーがあなたの仕事に関心を示してくれるのは、ありがたいことです。しかし、流れに乗って作業を進めているときには、人の意見がわずらわしく感じられてしまうかもしれません。
フィードバックに対応しつつ、執筆を続けるのは簡単ではありません。
共有ドキュメントで作業をしているときに、コメントが殺到して途方に暮れてしまったら、落ち着いて内容を確認できる状態になるまで放っておくことをおすすめします。
思い切って無視してしまうのです。少なくともしばらくの間は。
その場合は、コメントには後で対応するというメッセージをドキュメントの冒頭に書いておくとよいでしょう。
4-13. フィードバックは贈り物 🎁
チーム メンバーからのコメントや提案を頭に入れ、評価して優先順位を決めましょう。
4-14. 他者を尊重し、大切なことに集中する
的外れなフィードバックばかりだと感じていませんか?役に立つ提案だけではなくときには的外れな提案が混ざっているとしても、自己防衛的になったり、他者からのアイデアを切って捨てたりするようなことはやめましょう。
チーム プロジェクトで創造性を発揮するためには、考え方の違いを尊重することも重要です。たとえ締め切り間近でも、自分がまったく違う意見だとしてもです。
次の点を忘れないようにしてください。
フィードバックは対話
コメントの内容がよくわからなければ、当人に確認しましょう。顔を突き合わせて会話することで、誤解を解消し、明確に理解できる場合もあります。
文脈を踏まえる
当初の計画やアウトラインに立ち戻ってから、フィードバックに目を通し、プロジェクトの目標達成に役立ちそうなものを見極めましょう。フィードバックを反映した結果についてもメンバーの意見を聞いてみてください。
4-15. 前向きに捉える
ありがちなのは、肯定的なフィードバックは軽視し、否定的なコメントにばかりこだわってしまうことです。
難しいプロジェクトに取り組んでいるのであれば、励みになるコメントが常にドキュメント上に表示されるようにしてみてください。
ばかばかしく思えるかもしれませんが、ちょっとしたほめ言葉をときどき目にすることで、文章を練り上げるモチベーションを保つことができるものです。
4-16. みんなは 1 人のために
「We」のアプローチは、時間を節約し、新しいアイデアを着想し、スランプから脱出するのに役立ちます。
仕様書や UX コピー、レポート、プロジェクト計画書の作成といった執筆作業にこのアプローチを採り入れれば、これまでよりも楽しさとやりがいを感じながら仕事に取り組めるようになります。少なくとも私は、オープンで周囲を巻き込む作業スタイルに変えたことで、仕事を短時間で軌道に乗せられるようになり、チーム メンバーの同意を取り付けるのも簡単になったと思います。
みなさんも、アイデアを早期に共有して仕事の質を高められたという経験はありませんか?
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