カレン・O、没入型インスタレーション作品の制作について語る

Yeah Yeah Yeahs のリード ボーカル、カレン・O は、デンジャー・マウスと共同制作した新曲「Lux Prima」の初期のミックスを聴いていたとき、この曲は「強烈なプレゼンテーションを求めている」と直感しました。

夫と私はリビング ルームの床に寝転がって、大きな年代物のスピーカーでミックスを聴いていました。その状態で聴いていると、頭の中で映画が始まり、いろんな場所に連れていってくれます。『今目を閉じて床に寝転がってるこの感覚を、もっと強くしたような体験が作れたらステキじゃない?』私たちはそう思いました。この感覚の要素を再現し、言葉では表せないやり方で頭の中をかき回すようなインスタレーションが作れないかと。

カレン・O は言います。

数日後カレン・O は、映像作家のウォーレン・フーとバーナビー・クレイ、音響デザイナーのレン・クライス、照明デザイナーのトビアス・ライランダー、プロデューサーのマンゴ・マクラガンなど、オールスターのクルーを結集し、このビジョンの実現に取り組み始めました。チームは、通常のライブよりもオーディエンスを強く包み込むような共通体験を生み出そうと、コラボレーションを始めました。それぞれ世界中のさまざまな場所で活動していたので、DropboxDropbox Paper を利用してアイデアを集め、プロジェクトを現実のものにしました。

そうして、光とアート、音楽、宇宙、デザイン、そしてモーション デザインが融合した「Lux Prima との遭遇(Encounter with Lux Prima)」が生まれました。それはライブであり、リスニング パーティーであり、レーザー ライト ショーでもある作品でした。

「2001 年宇宙の旅」のスターゲート シークエンスがモノリスに 3D 投影され、カレン・O のボーカルとデンジャー・マウスのグルーヴィーな演奏が 4 チャンネル ステレオ サウンドで周りをグルグル回っているのを想像してみてください。それがいかに陶然とした体験であったか、私の文章では十分に伝えることができません。

そこでカレン・O に、プロジェクトの原点とその後の展開、そして意図するものについてのコメントを求めたところ、彼女は次のように語ってくれました。

この体験から、普通のライブではできないどのようなものをオーディエンスに感じ取ってほしいと思っていますか?

カレン:最近では、スマートフォンのスピーカーやヘッドフォンで音楽を聴く人が増えていますが、 このような現代のリスニング スタイルは見直さなければなりません。音楽を聴くというシンプルな行為はスピリチュアルな体験であり、それ自体が自分自身の再創造であるとも言えるからです。

私にとって重要だったのは、こうしたサラウンド サウンドによる Hi-Fi リスニングのパワーを人々に知ってもらうことでした。それに、ライブという共通の空間なら、当然リスナーもそこで起きている出来事に参加することになります。そうすればいっそう特別な体験になりますし、独りぼっちで音楽を聴くときよりも、周りの人たちと一緒になってさらに音楽に夢中になれるかもしれません。

もう 1 つ私が目指していたのは、オーディエンスを包み込むような没入型体験の可能性を突き詰めることでした。

私にはずっと、天気を屋内に持ち込むというアイデアがありました。秋の日の雨を思い浮かべるような歌があったら、会場の美術館の中でも雨を感じられる。これってすごいですよね。自然は感情に強く訴えるものです。私たちの気分や感情に自然がどれほど影響を与えるか、考えてみてください。だから私たちチームは、自然現象を参考にして作業しました。やはり感情に強く訴える音楽と組み合わせることで、粛然とした雰囲気を作り出せると思ったからです。

友人と集まって一緒にアルバムを聴くのは、今では滅多にない共有体験だとクライス氏は言っていました。その共有体験を取り戻すことが大切だと思うのはなぜですか?

カレン:元はと言えば、私たちは(ソーシャル メディアやインターネットを通じて)今まで以上につながれるのに、それ以上に孤立感を感じるようになっているという話を最近よく耳にするからです。

私はもう 20 年もライブ パフォーマンスをしてきましたから、オーディエンスを集めて共有体験でカタルシスを感じさせることの価値がよくわかっています。それはこの上なく美しく、そして貴重な体験なのです。

私は出不精な方で、何でも手元にある便利さが好きなんですが、意識してライブを聴きに出かけたり、公園を散歩したりして、たくさんの見知らぬ人に囲まれるようになってからの方が、生きているのを実感し、周りの世界とのつながりを感じるようになりました。

音楽は、私たちの殻を打ち破り、感情をさらけ出し、一体感を持たせることができる、人生の贈り物です。今まで 25 年以上の間、音楽は私の命を救ってきました。だから、ライブ ショーに行くのか、オペラを観るのか、愛する人と自宅の床に寝転がって聴くのか、私たちの没入型インスタレーションに参加するのかは関係なく、誰かと一緒にいるという体験を皆さんと共有したいのです。

イベントの参加者たちは体験づくりに手を貸している共同制作者だと思いますか?そう思うなら、「Lux Prima との遭遇」の一員であるオーディエンスにどんな声をかけますか?

カレン:もちろんです。皆さんは、グループで瞑想したことがありますか?1 人で瞑想するときの 10 倍の力をもらえます。私は、ニュー エイジの世界に足を踏み入れているんだと思います。でも、このインスタレーションの無形の効果に意識を集中させた群衆のエネルギーが、その場を去るときの皆さんの感覚に影響を与えることは間違いありません。それが強ければ強いほどいい気分になるはず。至福の時が流れるでしょう。

「Lux Prima との遭遇」のプライベート オープニングでの
デンジャー・マウスとカレン・O

インスタレーションの制作ではどんな課題があって、それをどのように克服したのですか?

カレン:一番大きな課題は、実現のための資金を出してくださる方(Dropbox さん、ありがとうございます)に、このインスタレーションについて説明することでした。新しいアイデアで、まだ誰もやったことがないと言えるくらいクールな試みで、出資者は自分が何に加わろうといるのか知りたがっていたからです。

信頼して私たちに賭けてほしいとお願いし続けたのですが、これがプロジェクト最大の難関の 1 つでした。だから、最終的に実現することができたのは本当にすばらしいことだと思っています。

自分の琴線に触れるかどうかにかかわらず、何か「新しい」ものを創造する人には、常に敬意を払うべきです。今までの経験とは違う何かを世界に広めることは、良いことであろうとなかろうと、途方もなく大きな成果ですから。

もちろん、今回の「Lux Prima との遭遇」は最高の成果ですよ。どん底まで落ちそうな瞬間を乗り切るために一番良いのは、まったく自信がないとしても、「凄いモノを作ってるんだ」という顔をして、前に進むことです。私はチーム全員を信じていますし、彼らも私を信じてくれています。そのことが、課題を克服するのに大いに役立っています。

チームではどのようにして共同作業しているのですか?その作業方法はユニークなものですか?

カレン:今回のプロジェクトでは、クリエイティブな作業が他の作業よりも自然に進みました。参加してくれたアーティストは皆、自分のジャンルで強烈な魅力を放っている人たちで、才能をワイルドに発揮できるこんなアート プロジェクトがやりたくてウズウズしていました。

照明アーティスト兼ディレクターのトビアス・ライランダーは、プロジェクトの初日から「天球のタイム ライン」を緻密に計画していました。クリエイティブ ディレクターのバーニー・クレイは、光り輝く蛾や、石庭の模様を描く日本の熊手のような込み入ったデザインを生み出すのに奮闘していました。

つまり、すべてのアーティストがこのインスタレーションのエッセンスに波長を合わせ、美しく調和していたのです。中でも、デイヴィー・エヴァンの貢献はずば抜けたもので、えも言われぬ美しさを生み出す圧倒的なテクニックで、私たちの「ラピス」に命を吹き込んでくれました。 その軸となったのはリスニング体験です。

私たちはレン・クライスとともに、リッチな 4 チャンネル ステレオ サウンドに重低音を加えて楽曲をミックスしました。どういうことかわからなければ、まず聴いてください!すぐにわかります。

「ラピス」の意味について教えてください。
その石は何を象徴しているのですか?

カレン:ラピスとは、私たちの旅が始まる玄関であり、内面を投影するキャンバスでもあります。私は、このインスタレーションの中心にモノリスを置く、というアイデアが気に入っていました。モノリスは神秘的で、古めかしく堂々として、時にはまるで異質に感じられます。私たちの無力さとはかなさを思い出させてくれるものです。モノリスは私たちを本来の場所に戻し、ひれ伏させます。そして私たちは謙虚になって、体験がもたらすすべてのことを受け入れるのです。

パート 2 では、「Lux Prima との遭遇」でのクリエイティブ プロセスについてデンジャー・マウスにインタビューし、Dropbox がその制作をどのように支えたかをプロデューサーのマンゴ・マクラガン氏に伺います。

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