「ビジネスではメールよりチャットを使った方が効率化するのだろうか・・・」
今まで使い慣れているメールからチャットに変えるのは、大きな意思決定だと思います。
ビジネスにおけるチャットユーザーは増加傾向にあり、例えば、日本のビジネスチャット市場においてシェア 70 %を占めると言われている「チャットワーク」は、2017 年 2 月時点で 127,000 社以上に導入されており、増加率は 2016 年から 1 年間で 140% と年々増え続けています。
確かにチャットはメールと違いリアルタイムで意思疎通ができることから、やり取りを迅速化させます。
ビジネスにおけるコミュニケーションをスピーディーにさせたいと考えているならば、チャットの導入を検討すべきです。
しかし、ビジネスでのやり取りを 100% チャットでカバーすることはできません。
状況別にしっかりとメールや対面、電話などの方法も交えて使い分ける必要があります。
この記事では、実際にメールとチャットを使いながらそれぞれの性質を分析し、最適な使い分け方やビジネスへもたらす効果についてまとめています。
今後のコミュニケーションツールの選定に参考にしてみてください。
<目次>
1.メールとチャットを状況別に使い分けるべき
1-1. 情報共有に重きを置くならチャット
1-2. エビデンスを残したい時はメール
1-3. 早急に連絡を取りたい時は電話
2.ビジネスにおけるチャットとメールの効果
2-1. チャットは早く結論を出せる
2-2. メールは重要な相手とのコミュニケーションを円滑にする
3.チャットを導入する時の注意点
3-1. 相手にも同じツールを使ってもらう必要がある
3-2. ツールも作業内容によって使い分けるべき
3-3. 一番の伝達手段は対面であることを忘れない
まとめ
1.メールとチャットを状況別に使い分けるべき
それぞれの特性を踏まえて、大まかに下記シチュエーションによって使い分けをするべきです。
・情報共有に重きを置くなら・・・チャット
・エビデンスを残したいなら・・・メール
・早急に連絡を取りたいなら・・・電話
1-1. 情報共有を大事にするならチャット
チームメンバーが多く関わる案件の場合は、情報共有がしやすいチャットを使うべきです。
チャットではテーマごとにチャットルームを作成し、1 人が多数にメッセージを送ることができます。プロジェクトごとに内容を分けてやり取りできるので履歴も簡単に追えます。メールであれば、1 通 1 通が独立して存在しているため、同じ話題のメールを探し開封して内容を確認する手間があります。チャットであれば、チャットルームを遡って見ていくだけでやり取りの流れを確認することができます。途中からプロジェクトに参加したメンバーも、チャットであれば履歴を見てこれまでの話の流れを把握することも可能です。
1-2. エビデンスを残したい時はメール
重要な意思決定時などエビデンスとして残したほうがいいやり取りは、メールにしたほうが確実です。チャットはメッセージの削除や編集ができてしまうものがあります。「前はこう言っていた!」と主張しても、内容を変えられてしまったら通じなくなります。メールは、重要書類の取り交わしのような重々しい印象は与えないので、簡易的なエビデンス保管に最適です。
もちろん毎回エビデンスを残さなければならないという状況はそこまでないという場合、社内外問わずチャットツールに統一した方がさらに効率は上がります。状況や相手によって使い分けましょう。
1-3. 早急に連絡を取りたい時は電話
急遽当日の予定が変わった場合のアナウンスなど早急に伝達しなければない場合は、電話が最適です。メールやチャットは、人によってはプッシュ通知をオフにしていて、メッセージが来ているのがリアルタイムにわからない場合もあります。
ヤフーと慶應義塾大学の研究によると、プッシュ通知は仕事の休憩時など開封されやすいタイミングがあり、たとえプッシュ通知をオンの設定にしていても相手に気づかれない場合があります。
電話であれば、電源が入っていない場合を除いて相手にリアルタイムに通知できる可能性が高くなります。
ただ、電話連絡の注意点としては、日程の通知などは電話で意思を伝えた後に、メールやチャットで同じ内容を送ったほうがベターです。「ミーティングは何時だっけ?」と後から不安になってしまう可能性がある内容の場合、いつでも確認できるように、文章として送付してあげたほうが親切です。
2.ビジネスにおけるチャットとメールの効果
チャットとメールがそれぞれビジネスにもたらす効果は下記の通りです。
2-1. チャットは早く結論を出せる
■文面を考える時間が削減される
チャットは本当に伝えたい内容だけを送ることができます。
メールは基本 1 通が独立しているため、件名を書き本文に宛名と挨拶文と内容と・・・など多くの要素を記載する必要があります。
例えば、「お世話になっております。○○事業部の△△です。××の件についてメールいたしました。」などよく使いそうな挨拶文などは、辞書登録を活用するなど工夫できますが、パターン全てをカバーすることはできませんし、結局登録自体にも時間がかかってしまいます。
最近は、「メールの件名だけでコミュニケーションする」といった考え方も出てきましたが、件名の字数制限もありますし、ごく近しい相手にしか通用しない方法です。
チャットであれば、送りたい相手もしくはグループを指定してメッセージを送れば、宛名も書く必要ないですし、単に了解の旨を伝える時など挨拶文を省くこともできます。要点だけを簡潔に送ることができるので、メールを作成するよりも早くメッセージを送れます。
■早く応対する意識がつく
チャットは相手から要点だけが端的に送られてくることが多いので、読む時間が削れて早く返信することが可能です。メールであれば、開封し内容を読み、返信する文面を考えるというステップがいるので、気持ち的にも返信するのが億劫になることがあるかもしれません。場合によっては日をまたいでの意見交換になる可能もあります。
チャットであればリアルタイムにまさに対面で話しているかのようにやり取りができるので、その場でスピーディーに次のアクションに移ることもできますし、それが全体的な業務効率にもつながります。
また、緊急時で手元にパソコンがなくてもチャットであればスマートフォンで迅速にメッセージのやり取りができるため、移動などの時間を有効活用できます。
ダイヤモンドオンラインによると、生産性が高いと言われる Google では仕事効率化のため「早く結論を出す」ことを意識してチャットを主に使っているそうです。実際に Google の社員に聞いたところ、場合によって Gmail を使うこともありつつチャットが主なコミュニケーションツールだそうで、もしその場で結論を出すために専門家が必要であれば、その場で呼び出して打合せを終わらせ、持ち帰りとはしないようにしているということでした。
■絵文字だけで返事もできる
送る相手との距離感にもよりますが、例えば、「了解しました」「よろしくお願いします」と言った内容のメッセージに、お辞儀をしている絵文字だけ送信すれば事足りることもあります。文章を打つ手間が省け、相手に自分の気持ちを効果的に伝えることもできます。
ただ、エラ・グリクソン博士の研究では、ビジネスメールに絵文字を入れることは相手に「能力」が低く見える可能性が高いと言われていますので、特に社外利用の際は気をつけてください。
2-2. メールは重要な相手とのコミュニケーションを円滑にする
■重要なエビデンスとして残る
前章の「1-2. エビデンスを残したい時はメール」でも言及しましたが、メールはエビデンス保管に役立ちます。特に社外のクライアントやパートナーとのやり取りは、後でトラブルにならないためにメールのほうが安心です。
また、チャットだと複数のやり取りのため一部メッセージを見落としてしまう可能性もありますが、メールであれば開封する手間があるため、印象として残りやすくなります。
■相手に切迫感を与えない
メールは一方向の伝達手段のため、相手の好きなタイミングで開封してもらうことが前提になります。チャットのようにリアルタイムでのやり取りではないため、「今結論を出して返信しないと!」といった切迫感を相手に与えません。緊急性がないものなのにチャットや電話をかけてしまうと、相手によっては不快に思う人もいます。
3.チャットを導入する時の注意点
チャットをコミュニケーションツールとして導入する場合は、より効果的にチャットを使うために、下記の点に注意してください。
3-1. 相手にも同じツールを使ってもらう必要がある
メールはメールアドレスさえ分かっていれば、相手が同じメーラーでなくてもメッセージを送ることができます。しかし、チャットツールの場合は、相手にそのツールをダウンロードして登録してもらう必要があります。この人とのやり取りはツール A だけど、この人とはツール B で・・・など使うツールが乱立してしまったら効率も落ちてしまいます。相手に登録をお願いすれば解決しますが、周りでよくやり取りする相手とも相談してどのツールが最も適しているかを検討することも大切です。
3-2. ツールも作業内容によって使い分けるべき
用途によって複数のチャットを使い分けた方が作業効率化につながることもあります。特にアウトプットを出す作業時には、チャット専用ツールの利用が弊害となる可能性もあります。特に、ある 1 つの文書やデザイン画を複数人で作る際には、その文書やデザイン作成ツール内のコメント機能を使った方がよりスムーズです。
例えば、2016 年に Dropbox が発表した「 Dropbox Paper 」は、複数人でリアルタイムに文書やデザインを作成することができ、コメント機能も備えています。
これがもしチャットツールと文書作成ツールが別々だったら、文書を見て編集しつつ、チャット専用ツールの画面を別に開いてやり取りするといった手間がかかります。1 つのチャットツールに絞ればいいというわけではなく、作業内容によって使い分ける必要があります。
3-3. 一番の伝達手段は対面であることを忘れない
チャットは手軽であるため、同じ事務所内にいてもコミュニケーションをなんでもチャットで済ます人も中には出てくるかもしれませんが、チームワークの形成のためには対面コミュニケーションも大事です。マサチューセッツ工科大学の研究によると、優れたチーム形成には対面でのコミュニケーションが最も効果的だそうです。
対話とは別にエビデンスとしてチャットも送る必要もあるかもしれないですが、すべてのコミュニケーションをチャットにするのはチームワーク形成にとって危険です。
まとめ
メールとチャットをうまく使い分ける方法はお分かりいただけたでしょうか。
仕事をスピーディーにするにはチャットの活用は適していますが、メールを使った方がいい場面もあります。コミュニケーションツールの見直しにぜひ参考にしていただければと思います。