商品開発やマーケティングのために、市場調査を実施したいとお考えですか?いざ市場調査をするとなると何から始めればよいのか、何を準備すればよいのか分からないという方も多いと思います。
市場調査は文字通り市場の動向や選好を知るための重要なプロセスで、この結果によってマーケティングの方向性や、最終的な販促活動の成否にも大きく影響します。
この記事では市場調査の主な方法や調査対象を絞り込むための手法といった概要から、実際に市場調査を行う際のプロセス、そして最後には主要な市場調査会社や自社で調査を実施できる便利なツールなどをご紹介しています。
市場調査の結果をよりよいものにするためにも、ぜひ最後までお読みください。
目次
1. マーケティングは市場調査から始まる
2. 市場調査を実施する 5 つのステップ
3. 市場調査の結果分析と評価
4. 主要な市場調査会社 5 選と自社でアンケートを実施できるツール 2 選
5. まとめ
1-1. 市場調査とは
市場調査とは、企業が商品やサービスの販促活動、マーケティング活動を行う際の根拠となる情報を集める作業のことです。企業は市場調査を通じて需要がどこに、どの程度あるのかという傾向を知り、それに基づいて商品開発や販促活動が行われます。
今やマーケティングは販促活動の根幹をなす大切な工程なので、そのマーケティングの根拠となる市場調査の正確性がその後の販促活動に多大な影響を与えると言ってもよいでしょう。
1-2. 市場調査で情報を集めるさまざまな方法
市場調査は、「市場」という目に見えにくいものが対象の調査なので、そこから情報を得るためにさまざまな方法があります。主な調査方法を以下に解説します。
1-2-1. サーベイ調査
用いられることの多い市場調査の方法で、対象となる人にアンケートを行って回答から市場の動向を見る手法です。従来では街頭や戸別訪問、電話、郵送などによる調査が一般的でしたが、現在ではネットを利用したサーベイ調査も多くなっており、情報収集のスピードが速いことや低コストであるというメリットがあります。
1-2-2. 観察調査
特定の人を対象に行う市場調査です。例えば来店客の動向を調べる場合は、来店客が店内でどういう行動を取るか、どういう経緯で商品を購入するか、といった行動や傾向を分析します。
この手法はネットでもアクセス解析という形で利用されており、アクセスをしてきた人がどういうページを回遊したかによって趣向やニーズを分析することに役立てられています。
1-2-3. フォーカスグループ調査
フォーカスグループとは、特定の的を絞ったグループをいいます。ある商品を特定の人たちに試してもらい、その感想や意見を拾ってその後の改良や改善のヒントにしていくという手法です。
フォーカスグループ調査の手法としては座談会や CLT (会場調査) などが挙げられます。
1-2-4. ミステリーショッパー
別名、覆面調査ともいいます。マーケティングというよりも品質やサービスの維持や改善を目的とした手法で、一般消費者を装った調査員が飲食店などに来店をしてサービスや従業員の振る舞いなどを観察します。
1-3. 調査対象による分類
1-3-1. 悉皆調査(全数調査)
悉皆調査とは別名を全数調査というように、対象となるグループの全数を調査する方法です。最も確実なデータが得られるので理想的ですが、対象のグループが大きくなればなるほど実施が困難になります。
日本国内で実施されている悉皆調査の中で、おそらく最大のものは国勢調査です。なお、悉皆調査は「しっかいちょうさ」と読みます。
1-3-2. サンプリング調査
調査対象となるグループの中から一部の人たちを抽出することをサンプリングといい、それを対象とする市場調査のことをサンプリング調査(標本調査)といいます。
例えばテレビの視聴率は、対象となる家庭に置かれた計測器からのデータによって算出されますが、この計測器はすべての家庭に設置されているわけではありません。つまり、テレビの視聴率調査はサンプリング調査です。
サンプリングの調査の場合、対象となるサンプルをどう抽出するかが調査結果の正確性に大きく影響します。市場調査の目的によってサンプリングの方法を使い分ける必要があるので、サンプリングの方法や誤差の考え方については次章で解説します。
1-4. 市場調査を行う際に決めるべき項目
どんな方法で市場調査を行うにしても、調査を行うにあたって決めておかなければならない項目があります。主な項目を列挙すると、以下のようになります。
- 市場調査の目的
- 方法
- 市場調査を行う対象、グループ、地域など
- サンプルを選ぶ方法
- 市場調査の規模
- 調査項目
- 日程、費用など
市場調査はマーケティング活動の一環なので、マーケティングに必要な情報を集めるという視点を持つと調査計画をイメージしやすいと思います。
1-5. 1 次データと 2 次データ
市場調査によって得られるデータには、大きく分けて 2 つの種類があります。それぞれ 1 次データ、または 2 次データと呼ばれ、情報ソースによって分類されています。
1 次データとは自社または依頼した市場調査会社などが収集したデータで、時間と費用をかけて用意されたものです。それに対して 2 次データとはすでにある調査結果で、調べれば誰でも知りうるデータのことです。業界団体やシンクタンク、国や自治体などが行って発表された調査結果などがこれに該当します。
マーケティングの際にはこの両方が用いられ、2 次データで「若者のクルマ離れ」「糖尿病患者の増加」などといった一般論に近い情報を集めた上で、1 次データによる詳細な情報の収集および分析がなされます。
それでは実際に市場調査を行うにあたって、ロジックの組み立て方やそのプロセスを時系列に次章で解説していきます。
2. 市場調査を実施する 5 つのステップ
2-1. ステップ 1:目的、コンセプトを策定する
市場調査は、この調査が何を目的としているのかという目的の明確化から始まります。単に「市場の動向を知りたい」というだけであれば調査対象が定まらず、調査結果も期待通りのものにはならないでしょう。
商品開発が目的であれば、その商品のコンセプトや魅力に対してどれだけの人がニーズを持っているかを調べるのが目的になります。近年のマーケティングでは、最初にペルソナといってその商品やサービスを求めている人物を想定し、そのペルソナに該当する人がどれだけいるのかという市場調査を行うというのがセオリーとなっています。
もっとも、この順序は逆の場合もあります。市場調査を行った結果見えてきた消費者の選好からペルソナを設定または修正し、そのペルソナに対する販促を行うというマーケティングもあるでしょう。
市場調査を行う最初の段階として、この調査にどんな目的やコンセプトを与えるのかという指針を策定します。
2-2. ステップ 2:調査する内容を整理する
市場調査は質問を投げかけることによって行われます。何を調査したいのかによって質問のあり方も変わってくるので、ステップ 1 で策定したコンセプトに基づき調査で知りたいことを整理します。
せっかくの調査なので知りたいことが多くなりがちですが、調査をされる側は人間なので質問項目が多いとその分データ収集のハードルが高くなります。また、リサーチ会社などに依頼する場合は質問項目が多くなればなるほどコストが増大するので、質問項目の絞り込みと優先順位を決めておく必要があります。
2-3. ステップ 3:仮説を立てる
調査に先立って、調査結果を予想するプロセスも必要です。科学実験が仮説を立ててから行われるのと同じように、市場調査においてもあらかじめ仮説を立ててから実施をして、結果との差異を検証すると分析の精度が高くなります。
なぜなら、仮説が基準となってその基準から見て結果はどうなのかという視点を持つことができるからです。
2-4. ステップ 4:調査の規模を決める
調査対象の全員に対して悉皆調査ができれば理想ですが、ほとんどの場合それは不可能です。そこで調査の規模を決める(サンプリング)ことになります。
サンプリングには以下のさまざまな方法があり、目的に応じて調査対象と規模を決めます。もちろん調査規模が多くなればなるほど悉皆調査に近くなるので調査結果は正確性が増しますが、その分コストが増大します。リサーチ会社に依頼する場合は、コストパフォーマンスを考慮して規模を決めるのがよいでしょう。
サンプリングの方法については、主に以下の方法から選ぶことになります。
2-4-1. 無作為抽出法
何の作為もなくランダムに調査対象を選ぶ方法で、ランダムサンプリングとも呼ばれています。統計学的にサンプルの偏りが生じにくいため、無作為抽出によって行われた市場調査の結果はおおむね、市場全体の答えでもあると見なされます。
2-4-2. 層化抽出法
前述の無作為抽出法は調査対象の全数からサンプリングを行いますが、層化抽出法の場合は母集団をいくつかの層に分けて、それぞれの層から抽出をすることで、各層からまんべんなくサンプリングができる方法として知られています。
代表的な例としてアメリカの世論調査が挙げられます。アメリカは多民族、多宗教国家なので全国民からサンプリングをすると特定の層の人たちがサンプルから外れる可能性があります。その層の意見が調査結果に反映されないため、偏りを防ぐために採用されるのが層化抽出法です。
2-4-3. 多段抽出法
ひとつの大きな母集団(全国民など)から一定の条件でグループを細分化していき、その中からサンプリングを行う方法です。たとえば全国民からの無作為抽出だと特定の都道府県の人が含まれないというデメリットが考えられますが、多段抽出だと都道府県や市町村に細分化していった上でサンプリングを行うと、全国津々浦々からまんべんなく調査対象を得ることができます。
2-4-4. 有意抽出法
無作為抽出に対して、何らかの条件やテーマを設けてサンプリングを行う方法です。無作為抽出よりも正確な結果が得られるメリットがありますが、有意抽出を行うためにはあらかじめ確定している要素が必要です。
例えば自動車に関連する商品開発であれば、この時点で運転免許を持っている人に対象を絞ることができます。その中からペーパードライバーを省いてさらに対象を絞り込んでいくのは、有意抽出のプロセスです。ただしこうした有意による絞り込みはある程度までしかできないことが多いので、そこから先は上記のサンプリング手法がとられます。
2-5. 市場調査の実施
リサーチ会社に依頼する場合、自社で行う場合どちらであっても市場調査の実施には主に 1-2 で紹介した方法を用いることになります。具体的には以下のような方法で情報を収集します。
- アンケート調査
- 座談会、ディスカッション
- 郵送、電話
- ミステリーショッパー
- SNS などのコミュニティを利用して情報を収集 (MROC 調査)
3. 市場調査の結果分析と評価
3-1. 単純集計
調査結果で示されている数値をそのまま集計する方法で、GT 集計とも呼ばれます。市場調査の結果分析では第一段階で行われるプロセスです。単純集計では調査結果の大まかな概要や全体の雰囲気をつかむことができます。
「夕食は何時に食べますか」という回答結果が得られた場合、21 時台に食べるという人が最も多いという結果が表われたら「意外に遅い時間に食べているんだな」という雰囲気をつかむことができます。
3-2. クロス集計
単純集計は質問に対する回答をそのまま数値として評価する方法ですが、それに対してクロス集計は複数の質問を掛け合わせて傾向をつかむ手法です。先ほどの例では夕食を食べる時間帯として 21 時台と答えた人が多かったわけですが、他の質問で年齢や性別などを尋ねている場合、それらの回答と掛け合わせると「20 代の男性は 21 時台に夕食を食べる人が多い」という結果になるかもしれません。
このように、複数の調査結果を掛け合わせることでさらに細かい分析を行うのがクロス集計です。
4. 主要な市場調査会社 5 選と自社でアンケートを実施できるツール 2 選
4-1. 主要な市場調査会社 5 選
4-1-1. インテージ
総合リサーチ大手として知名度が高く、市場調査の手法もバラエティ豊かです。小売店での店頭調査に強みを持っているため、主に一般消費者向けの商品やサービスの開発に適しています。
⇒ インテージ
4-1-2. ビデオリサーチ
テレビの視聴率調査で有名なリサーチ会社です。視聴率調査以外にもラジオなどさまざまな市場調査を行っており、こうしたメディアでの広告戦略には欠かせない情報ソースです。
⇒ ビデオリサーチ
4-1-3. マクロミル
マクロミルモニタという会員制度を持ち、一般消費者向けにアンケートを行っています。そのアンケート回答に応じてポイント特典を付与するという形で情報収集を行っています。
⇒ マクロミル
4-1-4. クロス・マーケティング
ネットを活用した市場調査に強みを持つリサーチ会社です。日本だけでなく海外にも拠点を持っているので、海外での市場調査についてもサービスラインナップが充実しています。
4-1-5. ドゥ・ハウス
多彩な市場調査のメニューと納品の早さが売りのリサーチ会社です。ネット上での調査に加えて店頭リサーチに対応しており、比較的価格設定が安価であることも強みとなっています。
⇒ ドゥ・ハウス
4-2. 自社でアンケートを実施できるツール 2 選
4-2-1. SurveyMonkey
世界的に有名なアンケートシステムです。無料と有料の会員制度があり、無料会員は質問が 10 個、回答が 100 件まで利用できます。
4-2-2. フォームメーラー
パソコンとスマホの両方に対応したアンケートフォームシステムです。無料で始めることができるので、簡易的にネット上でアンケートを実施したい場合に便利です。
⇒ フォームメーラー
5. まとめ
市場調査というと、とても大がかりなもので素人が簡単に手を出せるものではないというイメージをお持ちだったかも知れませんが、ここまでお読みいただいたことで、これなら簡単にできそうだと実感していただけたのではないでしょうか。
最近ではネットを利用した市場調査の方法が確立しているので、以前よりもさらに手軽かつ低コストに市場調査をすることが可能になっています。このように市場調査のインフラが整備されている時代においては、いかに効果につながる調査計画を立てるかがマーケティング全体の成否を分けます。
この記事で解説した市場調査のプロセスを踏まえて、意味のある市場調査を実施していただければ幸いです。