メモを取る技術、メモの活用について関心がありますか?メモを単なる覚え書きではなく戦略的なアイテムだということにお気づきであれば、極めて鋭いポイントに着眼していると言えると思います。
メモの役割は備忘録(忘れないように記録しておくこと)だと思われていますが、実はそれだけではありません。ちょっとしたメモ書きという手軽な行為に思われがちですが、実はメモの活用法はとても奥が深く、メモをうまく活用すると情報の整理や印象アップなどさまざまなメリットを得ることができます。
ライターというのは取材や打ち合わせ、ブレスト、アイデア出しなどでメモを日常的に取る職業です。そこで、ライター歴 10 年以上の筆者が実践してきたメモの取り方や活用法を一気にご紹介します。とても実践的なものばかりで、今すぐ役立てることができますのでぜひ最後までお読みください。
目次
1. 今さら考えてみるメモの重要性
2. ワンランク上のメモ・テクニック 7 選
3. Dropbox でいつでもどこでもメモを取る方法
4. まとめ
1. 今さら考えてみるメモの重要性
1-1. メモの役割
メモとは英語の Memory に由来している言葉で、見聞きした情報を忘れないように書き留めておくことという意味で用いられています。さらに日本語化して「メモる」という言葉も一般的に用いられているので、もはや日本語の仲間入りをしたと言ってもよいでしょう。
あの有名な発明家であるトーマス・エジソンは「メモこそ命の恩人だ」という言葉を遺しており、発明というアイデアを生命線にしていたエジソンにとっては思いついたことをメモしておくことは誰よりも重要だったのでしょう。
また、伝説的な経営者として知られるジャック・ウェルチは情報の徹底した共有こそ経営の基本であると説いており、共有の手段としてメモが大切であるという考えを持っていました。
こうした人たちの言葉からも読み取れるように、メモは単なる備忘録ではなく情報整理プロセスのひとつであり、後で読み返した時に気づきが得られる情報の宝庫でもあると解釈することができます。
デキるビジネスパーソンにはメモの取り方がうまい人が多いというのは、こうしたメモの役割が深く関わっているからでしょう。
1-2. メモを取る場面とそれぞれの目的
1-2-1. 会議、ミーティング
社内でメモを取る場面はとても多く、会議やミーティングなどその場で発言されたことや決まったことなどメモを取るべき項目もたくさんあります。
こうした場面でのメモは議事録という形で清書されることもあるため、その場で取っているメモは清書するための記録用という位置づけになります。会議で交わされる人の会話はメモを取るスピードよりも速く展開されていくので、要点だけをうまく書き留めていくスピード感とテクニックが求められます。
1-2-2. 上司からの指示を受けるとき
上司から指示を受ける際にメモを取ることは、新人研修などでも頻繁に登場するビジネスマナーです。上司からの指示は業務上の命令なので間違うことなく指示を受けるためにもメモは必須です。
上司から呼ばれた際にはメモ帳を持参すること、というのも研修でよく取り上げられるビジネスマナーです。
1-2-3. 得意先との商談、打ち合わせ
取引先や顧客との商談や打ち合わせというのは社外での活動なので、社内よりもメモの取り扱いは重要になります。社内であれば頭を下げれば同じことを再度聞くこともできますが、社外となるとそれが何度も続くと会社の信用問題になってしまいます。
そのためメモは必須ですが、もうひとつの効果として相手の話をしっかりと聞いています、メモを取って間違いのないようにしています、というアピールにもなるというのもビジネステクニックのひとつです。
1-2-4. 研修、セミナー
研修やセミナーなど自分を磨く場でもメモは大いに活躍します。この場合は自分を高めるために必要な情報をいかに効率よく持ち帰るかが主目的なので、メモには後で読み返したときに分かりやすいこと、自分の頭に入りやすいことという再現性が重視されます。
映し出されたパワーポイント資料や板書をそのまま丸写しするのではなく、自分なりに理解をした上でメモを取っていきましょう。それが後になって役立つ自分だけの情報資産になります。
1-2-5. ひらめいたアイデアを書き留める
外部から入ってくる情報を書き留めるだけがメモの役割ではありません。自分の頭の中でひらめいたアイデアをメモに取っておくことも大いに意味があります。何せアイデアは突然浮かんできてすぐに消えていきますが、アイデアをメモに取っておくことで、後で思い出せるようになります。また、それをさらにブラッシュアップして企画案などに練り上げていくこともできるようになります。
パソコンに向かって唸っているときはあんなに苦労しても出てこなかった名案を、外出時に思いつくということは珍しくありません。そんなときのためにいつでも、どこでもメモを書き留めることができる準備をしておくことをおすすめします。
1-3. メモを取る 3 つのメリット
1-3-1. 備忘録
メモを取る直接的なメリットは、忘れないように記録(メモリー)しておくことです。仕事ができる人ほど同時に多くの仕事が動いているもので、それを交通整理するのに記憶だけでは限界があります。忘れてしまうこともリスクですが、複数のクライアントに関する記憶がごちゃ混ぜになってしまうのはもっと大きなリスクです。
それを防ぐ意味でも備忘録としてのメモはとても重要です。また、前項でも述べたように突然思いついたアイデアを記録しておくという意味でも備忘録のメモは重要な意味を持っています。
筆者は通勤や得意先への移動などで自転車に乗ることが多いのですが、なぜか自転車に乗るとアイデアを思いつきやすいので、いつでもメモをできるように準備をしています。その方法については、3 章でご紹介します。
1-3-2. 話の要点をまとめる習慣がつく
メモが持つ潜在的なメリットとして代表的なものが、情報を整理する習慣を身につけられることです。実際にメモを取ってみると分かりますが、会話や頭の中の思いつきにメモを取るスピードが追いつかないのでついつい走り書きのようになってしまいます。
書きたいことをすべて書いていたら到底間に合わないので、要点やキーワードだけを書き留めて後で整理するという人も多いでしょう。実はこの書き方をしている時点で、無意識に頭の中では情報の取捨選択と整理整頓が行われています。
このように論理的なメモ取りを続けていると、情報や論点の整理が上達していくので、敢えてこのような方法でメモを取ることをおすすめします。
1-3-3. 相手が安心する
自分が話している相手が熱心にメモを取っている姿を見て、悪い印象を持つ人はいません。自分の話を聞き漏らさないよう熱心に聞いてくれているという好感を抱くのと同時に、これだけメモを取っていてくれれば伝わっているだろうという安心感を持つことにもなります。
必要に迫られてメモを取っているという当たり前の行為でこれだけ相手によい印象を与えることができるのですから、コミュニケーションテクニックの一貫としてもメモを大いに活用したいところです。
真剣にメモを取っている人の姿を見ると、話している人も自ずと本気になってきます。それで価値の高い情報が得られるのであれば、メモさまさまです。
1-4. メモを取る際に押さえておきたい 3 つのポイント
1-4-1. 基本は手書きで
従来からあるメモ取りの基本は手書きですが、最近ではスマホを使ったメモ取りの方法も一般的になっています。打ち合わせなどで先方が見せてくれた資料を持ち帰るために携帯カメラで撮影する方法や、メモアプリを使う方法など進化は著しいのですが、筆者はやはり手書きをおすすめしたいと思います。
紙面に書いていく際の自由度が比べ物にならないことと、ペンを使って字を書いていく作業は脳とリンクしているので頭に入りやすいという理由からです。
もちろんすべての情報を手書きで記録する必要はなく、先ほどの資料撮影など必要に応じてスマホなどデジタルツールを活用するのがよいでしょう。
1-4-2. 日付と場所を忘れずに
メモを取るときについつい忘れがちなので、そのメモを書き留めた日時や場所の記録です。同じクライアントと複数回打ち合わせをした場合、その都度メモを書き留めたとしてもそれが時系列に並んでいないと意味がなくなってしまいます。それを防ぐためにも日時の記録は大切です。
これを防ぐひとつのテクニックとして、メモ用に使う手帳やノートを常に 1 冊しか持たないことは有効です。1 冊しかないので、自ずとメモは時系列に並びます。このテクニックについては、2-1 で詳しく解説します。
以下は筆者が実際に使用している手帳です。必ずどのメモにも日付と打ち合わせ相手を入れているので、後で読み返したときに思い出しやすくなります。
1-4-3. その瞬間の感覚も記録する
メモに記録されているのは文字や図などですが、特に手書きで書き留めたメモについてはそのメモを取ったときの状況や雰囲気などもリンクしています。打ち合わせの相手が何度も強調していたことについては、メモを取る際にも何度も同じ言葉を書いたり、そこに線を引いたりしているはずです。それを後で読み返したときに「先方がなぜこのことを強調していたのか」という要素を含めた思考ができるので、メモが単なる備忘録ではなくその時間や空間を再現するのに一役買ってくれます。
優先順位を数字で記録しておいたり、メモの余白に自分なりのコメントを入れておくことなど、スペースを自由に使ってメモを取ったときの情報をできるだけ詳細に残しましょう。
1-5. 大切なのは「どこに書くか」ではなく「何を書くか」
デジタルツールの発達によって、「これからはメモもアプリの時代」という論調を目にすることもあります。これだけ便利なツールが登場している昨今なので、もちろんそれは間違いではありません。ただし、それには「アプリの方がその人に合っている」という前提があればの話です。
手書きのメモ帳だけでも、様々な種類があります。B5 ノート、A4 ノート、手のひらサイズのメモ帳、リフィルなど、自分に合った大きさや使いやすいものを選ぶべきですし、アプリを利用する場合であってもたくさんある中から自分に合ったものを選ぶべきでしょう。
大切なのは「どこに書くか」ではなく、そこに「何を書くか」です。筆者は長年リフィルを使用していますが、その理由は後でページを挟み込むことができたり順序を入れ替えたりできるため、メモを時系列で整理しやすいからです。
2. ワンランク上のメモ・テクニック 7 選
単なる備忘録ではなく、より戦略的にメモを活用するためのテクニックを 7 つご紹介します。いずれも筆者が実際に仕事で活用している方法から 7 つをピックアップしてみました。
筆者は手書きでメモを取る主義なので、いずれも手書きメモを前提にしています。
2-1. いつでも持ち歩けるサイズの 1 冊を決める
メモはいつ、どこで取ることになるか分かりません。そこでいつでも持ち歩けるサイズのものを 1 冊だけ用意することをおすすめします。1 冊に絞るのは、そうしておくと自動的にメモの内容が時系列で並ぶため、同じクライアントとの打ち合わせなどで「どっちのメモが最新?」ということで頭を悩ませる必要がなくなるからです。
また、複数のメモ帳に分散させてしまうと目的の情報を後で読み返す際に見つけにくいというデメリットもあります。
2-2. 要点とキーワードだけをメモする
学生時代に「黒板に書いていることをすべて丸写しするのは受講ではない」と説いた先生がいました。その真意は「丸写しは思考停止」とのことでしたが、メモにも同じことが言えます。
その場で交わされた会話を鵜呑みにして丸写ししていたのでは、速記官や IC レコーダーと何も変わりません。それでは現場のスピードについていけないはずなので、要点や後で思い出しやすいキーワードだけをサラサラと書き留めていくのが一流のメモ術です。
ブレストや会議などの席上でこれができる人は、すでにその場で交わされている議論の要点を理解できている証拠です。要点を理解できている人が作成する議事録はとても分かりやすく正確なものになるはずなので、メモ段階で議事録のフレームができているという理想的な状態です。
2-3. 気になったことはコメントをつけておく
メモは自由に書くことに意義があるので、気になったことや後で読み返したときの自分に伝えたいことはどんどんコメントをつけていきましょう。矢印を引いて情報を補完したり、丸で囲むなど方法は自由です。
そのときに感じたこと、これはいただきと思えるような発言や思いつき、気づきがあったらコメントをつけて書き留めておくと、より情報の質が高い生きたメモになるでしょう。
筆者は色を変えてコメントをつけるようにしているので、以下のページでは緑色で書き加えているのがコメントです。
2-4. 読みにくい字でも自分が読めれば OK
メモはついつい走り書きになるので雑な字になりがちです。汚い字はメモとして失格であるという意見もありますが、筆者はむしろ本人が読めるのであれば汚い字でも構わないと思っています。なぜなら、丁寧に書こうとするあまりメモのスピードが落ちてしまい、肝心の情報を記録し損ねるほうが損失だからです。
会議や打ち合わせ、ヒアリングの席上で交わされる会話は話が盛り上がるほどスピードが速くなります。その席上で必要な情報をしっかりと記録するには走り書きにならざるを得ず、さらにその場での気づきやアイデアなどをコメントとしてつけていくとなると、なおさら時間との戦いになります。
字の丁寧さはこの際目をつぶって、少しでも多くの情報をその場から拾うことに力を注ぎましょう。
よく使う言葉は自分で記号を作っておいて、それをメモに書き込んでいくという方法もおすすめです。
2-5. 3 色ペンを使おう
1 本のボールペンで 3 色を使い分けられるものがありますが、より分かりやすいメモを取るためにとても役立ちます。最も多いのは黒、赤、青という組み合わせのボールペンですが、黒と青が若干似ている色なので見分けにくく、黒、赤、緑という組み合わせの 3 色ボールペンをおすすめします。
メモを取っているときはすべて黒で記入し、その場または直後に重要だと思うところには赤で丸囲みや下線を書き入れ、さらに緑でコメントを入れるという方法で統一しておくと、後で読み返したときにとても分かりやすくなります。
先ほどもご紹介した筆者のメモでは、重要と思われるポイントに赤い印を入れて緑色でコメントをつけています。
2-6. 余白を贅沢に使いながらメモを取る
手書きメモのメリットは、紙面のどこに書いてもよいという自由度の高さです。そのメリットをいかして、メモを取る際には贅沢に紙面を使いましょう。余白部分は後から何か書き込むために使えますし、そのまま特に書き込むことがなかったとしても余白が多いとメモを読みやすくなります。
コツとしては左右に意識して余白を作り、書き込む文字についても行間を少し開けておくと、どの方向からもコメントを追記することができます。
2-7. できるだけ早く清書する
スピード重視で走り書きになっているメモは、時間が経つにつれてメモとしての情報価値を失っていきます。走り書きなので後で読み返したときに思い出せる情報が時間を追うごとに少なくなっていくからです。特に次の会議やミーティングなどに参加してメモを取ると、前回のメモを取ったときの記憶が上書きされてしまうので、少なくとも次に何かメモを大量に取る可能性のある日までには清書を済ませておきたいところです。
清書といっても誰かに提出するための書面ではないので、手書きのメモを Word などで入力をしてデジタルデータにしておくという程度の品質で問題ありません。そのファイルを Dropbox などのオンラインストレージに保存しておけば、失うことなくいつでも、どこでも閲覧できるようになります。
3. Dropbox でいつでもどこでもメモを取る方法
3-1. Dropbox
世界的なシェアを持つオンラインストレージサービスの Dropbox ですが、スマホ版アプリにはアプリ上でテキストファイルを作成、編集できる機能があります。通常であればテキストエディタを開いてメモを取り、それをオンラインストレージに保存するという 2 段階の操作が必要になりますが、この Dropbox のテキストエディタを利用すると 1 回の操作でメモ取りと保存、共有が完了します。
筆者はこの方法で、外出先などで思いついたアイデアやちょっとしたメモを記録しています。
3-1-1. テキストファイルを作成する
Dropbox アプリを開き、テキストファイルを保存したいフォルダに進みます。そこで「+」ボタンをタップして、新規作成メニューを開きます。
次に開いたメニューの中から、「テキストファイルの新規作成」をタップします。
3-1-2. メモを取る
テキストエディタが開くので、ここでメモをしたい情報を入力します。「直接テキストファイルを作成できます。」という文章を入力してみました。
3-1-3. Dropbox に保存する
入力を終えたら、右上にある 3 つ点が並んでいるボタンをタップして、保存メニューを開きます。
Dropbox フォルダへ保存されるため、メモを記録したテキストファイルは自動的に共有されます。
以下のようにスマホで保存したテキストファイルをパソコン上から開くこともできるので、外出先に思いついたアイデアを忘れることなく保存してパソコンでの作業に役立てるという機動的なメモの活用が可能になります。
3-2. 複数の人でメモの共同作業をするなら Dropbox Paper
Dropbox には、複数の人で同一のメモを共同作業で編集できる Dropbox Paper があります。議事録の作成やブレストなどにも役立つので、複数の人でメモを編集して情報をまとめていくという作業を日常的に行っている人は、Dropbox Paper がとても便利です。
Dropbox Paper についての詳細は「使ってみたら想像以上によかった!Dropbox社員が教える新「Paper」の効果的な使い方」に詳しい解説がありますので、こちらも併せてぜひお読みください。
Dropbox Paper はスマホ向けアプリも用意されているので、アプリを使えばより機動的なメモの編集や共同作業が可能になります。
4. まとめ
たかがメモ、されどメモ。紙切れに覚え書きをするというイメージでしかなかったメモが、ここまで戦略的なビジネスツールとして活用できることがお分かりいただけたと思います。
メモを取ることは一種の習慣なので、この記事で解説しているようなポイントを意識しながらメモを取ることを習慣づけると、情報の取り扱いや整理をするスキルが飛躍的に向上します。
たかがメモと侮るなかれ、そのメモを味方につけてデキるビジネスパーソンの階段を駆け上がりましょう!