あなたはマインドフルネスという言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?
マインドフルネスとは、簡単に言うと「心が今、起きていることに 100 % 集中する」ことです。
仏教の教えに根ざしたもので、仏教では悟りを開くためにとても重要な概念となっています。
最近、いろんなメディアでもこのマインドフルネスという言葉を目にするようになりました。
マインドフルネスが注目されている背景には、その有効性を示す研究結果が次々と見つかっているということ、そして、そうした根拠を元に Google を始めとした多くの有名企業が研修に取り入れていることなどがあります。
この記事では、記憶力や免疫力、集中力の向上など様々なマインドフルネスの効果とやり方を紹介します。
私自身、ヨガを 15 年、瞑想を 10 年間やってきたことで、アスリートとビジネスマンとしてのパフォーマンスを向上することができたので、私自身の体験も交えて紹介します。この記事がより素敵な人生を過ごすご参考になれば幸いです。
ちなみに、マインドフルネスを実施している有名人は多くいます。
スティーブ・ジョブズ、イチローたちが有名です。ベストセラー作家で世界トップクラスのビジネスマンなどをインタビューしているティム・フェリスは、インタビューしたトップクラスの人たちの 80 % が瞑想などのマインドフルネスを実践していると話しています。ティム・フェリスがインタビューした一人で俳優でカリフォルニア州知事でもあったアーノルド・シュワルツェネッガーもかつては瞑想を練習し、瞑想を辞めた後も1年半ほど効果が持続したと本人が実感しているそうです。
企業だと Google がマインドフルネスを研修に取り入れていることはよく知られています。日本でも Yahoo! Japan が研修に取り入れていますね。
有名人や有名企業の利用に関する記述
- 伝記作家Walter IsaacsonはJobsの言葉を引用して、マインドフルネスを生前に何年も練習していたことに言及している
- デレクジーターがイチローについて語るインタビューでは、イチローの試合前の瞑想について言及している
- ティム・フェリスがインタビューしたトップパフォーマー達のマインドフルネスに付いて話している Podcast
- グーグルのマインドフルネスの活動を記述した書籍:グーグルのマインドフルネス革命、
- Yahoo Japan! がマインドフルネスを研修に取り入れていることを取材したサイエンスZERO 「新・瞑(めい)想法 “マインドフルネス”で脳を改善!」
それでは、早速はじめていきましょう。
目次
1. マインドフルネスとは
マインドフルネス(Mindfulness)の定義は「心が今、起きていることに 100 % 集中する」ことです。
マインドフルネスは人間が生まれつき持っている能力であり、自分たちの存在、心の状態を感じる力を育む練習です。自分のやっていること、心の状態を感じ、起きたことに対してオーバーにリアクションしなくなります。
もう少し分かりやすい定義として、瞑想から宗教色を除いたものをマインドフルネスと提示することもできます。
マインドフルネスは私たちに何かを新たに足してくれるものではありません。自分たちを変える必要もありません。しかし、科学的に実証された方法で練習することで自分に生まれつき備わっている能力が育まれていきます。
マインドフルネスを練習することで、自分をより素敵にすることでしょう。
少し考えてみてください。忙しい現在社会の中に生きていると一定時間、1 つのことだけに集中しているということは多くないと思いませんか。
何かに集中しようとしても、スマートフォン、SNS からの通知によって集中が途切れたり、心の中で別のことを考えてしまうこともあるかと思います。それは当たり前のことです。
でも、そんな忙しい現代社会でさまざまな邪魔するものがある中、集中力を鍛え、心を今よりも落ち着いた状態に保つことができるようになると、今よりも良い状態でいることができると私は実感しています。
2. マインドフルネスの効果
マインドフルネスの練習をし、マインドフルな状態になると、集中力が増し、ストレスが減り、脳の老化に良い影響を与えることができます。
集中力が増すということは、より長い時間、または深い集中力で仕事、勉強ができるため、同じ時間の中でも多くの成果を出せるということです。みんなに平等にある時間をより効果的に使い、より良い成果を作るようになるということです。
ストレスが減るということは、同じ環境にいても自分の感じ方が変わっていくため、以前はストレスを感じていたことでも、落ち着いて対処し、ストレスを感じなくなるか、以前ほどのストレスを感じなくなります。
また、マインドフルネスの研究を行っているハーバード大学のサラ・ラザール教授の行った調査と実験を紹介します。
以下のことは上のサラ・ラザール教授の TED でのスピーチで紹介されていることを分かりやすく紹介します。
2-1. 多くの研究結果でヨガや瞑想がストレスの軽減、集中力の向上などに貢献していると報告
効果のあらわれの 1 つ目に、ヨガ、瞑想を行うことで以下の効果があると報告している研究結果がたくさんあります。
- ストレスの軽減
- 症状の緩和
- うつ病
- 不安障害
- 痛み
- 不眠症
- 集中力の向上
- 生活の質の向上(幸せを感じる)
具体的に 2 つほど記事と論文を紹介します。
1. MIT (マサチューセッツ工科大学) とハーバード大学が実施した瞑想のいいこと
2. カーネギーメロン大学のクレスウェル教授のマインドフルネスに関する論文:Mindfulness Interventions
2-2. 瞑想している人たちは年齢とともに大脳皮質が縮むことを遅らせている
2 つ目は、瞑想をしている人としていない人を比較し、瞑想と年齢の関係を見たところ、瞑想をしている人は瞑想をしていない人と比べて大脳皮質が縮んでいないことが分かった、ということです。
上のグラフは横軸が年齢、縦軸が大脳皮質の厚さです。
赤い四角は瞑想をしていない人たちのグループです。青い丸は瞑想を日々 30〜40 分実施している人たちです。
瞑想をしないグループは年齢とともに大脳皮質が縮んでいきます。これにより年を取ると物忘れをする傾向が出てきます。
しかしこの研究によると、瞑想をしている 50 歳の脳には 25 歳と同量の大脳皮質があったことがわかりました。結果として、瞑想に行うことによって加齢による大脳皮質の収縮を防いだり、遅らせることができると考えられます。
2-3. 瞑想をしていない人たちが瞑想を 8 週間実施したことで脳に変化が
3 つ目は、瞑想をしたことのない人たちが 8 週間瞑想を毎日 30 から 40 分続けたことによる結果です。瞑想を練習する前と 8 週間後の脳を MRI で撮影して、どのように脳が変化したのかを見たところ、大きな変化が 2 つあることが分かりました。
2-3-1. 学習、記憶、感情の制御を司る海馬にいい影響
まず、学習、記憶、感情を司る海馬が大きくなったことを発見しました。
逆にうつ病、心的外傷後ストレス障害がある人は海馬のグレーの部分が小さい傾向があります。
グラフの青が瞑想をしていない人で、赤いグラフが 8 週間瞑想を実践した人です。縦方向が脳が増えた量を示しています。
2-3-2. 共感、同情を司る耳の上にある側頭頭頂接合部が増えた
他人の立場に立って考える能力、共感、思いやりに関わる、耳の上にある側頭頭頂接合部にも変化がありました。瞑想とヨガを実践した人たちに変化がみられたのです。
青と赤の色は 1 つ前のグラフと同じグループを示しています。瞑想をしている人はしていない人と比べて側頭頭頂接合部が増えていることがこのグラフからわかります。
2-3-3. ストレスに対しても強くなる扁桃体の縮小
最後に、不安、危険を感じて動き出す扁桃体の働きが減りました。瞑想を練習した人たちは扁桃体が小さくなりました。ストレスが減ったと言った人ほど、扁桃体が小さくなっていました。
ストレスが減るとストレスホルモンの分泌を指令する扁桃体の活動が減るということです。
上のグラフの横軸はストレスの変化、縦軸は扁桃体の変化です。ストレスの変化を 0 を基準として左に動いて減った人は、扁桃体の縦軸も下に下がっている傾向を示しています。
ネズミを使って扁桃体についての実験が行われました。普通の幸せなネズミに 10 日間ストレスを与え、実験前と後で扁桃体を測定したところ、大きくなったのです。10 日間の実験を終えたネズミは元の普通の環境に戻されました。そしてそれから 3 週間後に再度扁桃体を測定したところ、扁桃体は大きいまま、ストレスを感じる状態は変わりませんでした。ネズミたちは以前のように走り回らず、オリの端っこにいたのです。
8 週間、瞑想した人たちは環境が変わっていないのにストレスが減ったと報告しています。逆に実験のネズミはストレス環境から抜けて元の環境に戻っても、ストレスを感じていました。これらのことを組み合わせて解釈すると環境の変化が人に影響するのではなく、人が環境に対してどう思うのかでストレスが増えたり、減ったりすることがわかります。
3. マインドフルネス瞑想をやってみる
瞑想の方法はさまざまな方法があります。ここでは、初心者にも優しい方法と私が実施している方法と心構えについて紹介しますので、ご参考になれば嬉しいです。
3-1. 呼吸瞑想
普段、生活していて呼吸を意識することは少ないのではないでしょうか。
ここでは、普段意識しない「呼吸」に意識を向けます。
呼吸は自律神経を整えます。息を吸うと交感神経、吐くと副交感神経が働きます。意識的に呼吸することで自律神経のバランスを整えることができるのです。
嫌なこと、悲しいことがあって心が乱れた時に呼吸瞑想を行ってみるといいでしょう。
または、朝、夜と自分の都合の良い時間を見つけて呼吸瞑想を行ってみることもおすすめです。私は朝、家族よりも早く起きた時に瞑想をしています。毎日するのがベストですが、できない日があっても落ち込むことはありません。とにかくやってみること、そして、続けることが大事です。
最初は 2、3 分実施することから始めて、慣れてきたら 10 分、20 分行ってみてはいかがでしょうか。
ステップ 1. 姿勢と服装はリラックスできるもので
姿勢は床や座布団の上に座ってもいいですし、椅子に座ってもいいです。床に座る場合はあぐら、椅子に座る場合は、両足を少し開いて座りましょう。両手を膝のあたりに軽く置きます。
ステップ 2. 3 回ほど大きく深呼吸
自然なペースで 3 回ほど深呼吸をします。鼻から大きく息を吸って、鼻から吐きます。
ステップ 3. 鼻に流れる空気を観察
自然に呼吸をします。吸うのも吐くもの鼻で行います。
鼻の中を通る空気を観察します。呼吸と共に鼻の中を空気が流れるのを感じます。
ステップ 4. 肺やお腹の動きを観察
器官を通って肺に達する空気、膨らんでしぼむお腹へと感覚を広げていきます。続けられるだけ続けます。
3-2. マントラを唱える方法
瞑想をしている時に頭の中をよぎる自分の声が気になる、自分の集中力に自信がない、と思っているようでしたら、マントラを唱えながら行う瞑想を試してみるのもいいでしょう。
マントラとは、祈りを表現した短い言葉です。マントラの「マン」は心を意味します。「トラ」は乗り物という意味です。心をより瞑想の深い部分に誘引するためにマントラを使うと思ってください。
ステップ 1. マントラを決めます
自分の中でマントラとして唱える言葉を決めます。短い言葉で大丈夫です。私は「ありがとう」とすることが多いです。
ステップ 2. 目を閉じて、鼻呼吸を行い瞑想を始めます
上の呼吸瞑想同様、鼻で呼吸を行います。
ステップ 3. マントラを唱える
自分で決めたマントラを繰り返しゆっくり心の中で唱えます。私なら、「ありがとう、ありがとう、ありがとう…..」と言った具合です。呼吸を吸うときに「あり」と唱え、吐くときに「がとう」と一呼吸で一回マントラを唱えることが多いです。
ステップ 4. 雑念が出てきたら、またマントラを唱える
マントラを唱えることが消え、雑念が出てきたら、再度マントラを唱えてください。これを繰り返します。
自分の都合の良い時間、実施してみてください。
私は 20 分瞑想を行うようにしています。
私の瞑想方法
以前ヨガの先生から教えてもらい、ずっと行っている呼吸瞑想の方法があるのでご紹介します。
姿勢と服装は上で書いたものと同じです。呼吸瞑想するときは鼻の穴から出入りする空気を、唇の上の口髭が生える部分で感じるようにしています。ここの部分で鼻に出入りする空気を感じることは、あまりしたことがない方がほとんどかと思います。意識を落ち着け、唇の上の部分に意識を集中し続けることで感じ続けることができます。
3-3. 心構え
瞑想をしているといろんな考えが頭の中で出てきます。そんな時、頭の中を空っぽにしなければいけないとは思わないでください。最初から次から次へと出てくる思考を止めることは難しいからです。
私も瞑想をしていて考えが出てきますが、考えが出てきたからダメということはありません。ただ考えが出てきたら、それを見ればいいのです。
うまくできたかできなかったかはあまり気にしない
瞑想を行ってみてうまくできたか、できなかったかは気にしないことをお勧めします。
私たちは小さい頃から物事を判断することを自然と訓練してきています。なので、瞑想をした場合もうまくできた、できなかったと判断したがると思います。しかしここでは、判断しないことを練習してみてください。判断せずにただ見るだけです。
私は瞑想で途中で寝てしまう日もありますし、とても集中できる日もあります。1 つ信じていることは、やり続けることで上手くなっていくということです。一喜一憂せずに瞑想をゆるく続けることが良いと思っています。
4. マインドフルネス・瞑想を練習できる場所
4-1. 東京マインドフルネスセンター
予約不要でクラス受講ができます。ホームページに開催イベント日時が記載されています。
センター長の長谷川氏は、マサチューセッツ大学医学大学院教授・同大マインドフルネスセンターの創設所長ジョン・カバット・ジン博士の「MBSR ワークショップ」を始め多くのマインドフルネスのプログラムを修了されています。
住所:東京都港区赤坂 3-9-18 BIC 赤坂ビル 8 階
4-2. マインドフルネス & ヨガネットワーク
ホームページに開催日が掲載されています。講師の山口氏はマインドフルネスに加え、ヨガ、心理カウンセラーも行っている専門家です。
住所:東京都豊島区目白 3-20-18
4-3. 臨済宗妙心寺派 東京禅センター
世田谷にあるお寺妙心寺が座禅体験を開催しています。
昼、夜の複数の時間帯と場所で座禅体験を実施しています。
住所:東京都世田谷区野沢 3-37-2 龍雲寺会館
5. マインドフルネスに関する参考図書
5-1. 〜1 日 10 分で自分を浄化する方法〜 マインドフルネス瞑想入門
マインドフルネスの効果、やり方を分かりやすく解説しています。さらに瞑想をガイドしてくれる CD がついているので、実践したい初心者に優しい 1 冊です。
5-2. 「あるある」で学ぶ 余裕がないときの心の整え方
精神科医で住職の川野泰周氏が書かれた本です。日常生活で出てくるシチュエーションから、どのように良い方向に解決していけばいいのかをあるある形式で書いています。随所で瞑想方法も紹介しています。
6. マインドフルネスにより私が実感した効果
冒頭に私自身のパフォーマンスが上がったと書きました。ここに具体的に紹介させていただきます。私はアスリートとしては BMX という競技自転車の大会で 45 回優勝した経験があります。現在は、Dropbox にて Growth Marketing の仕事に従事する傍ら Excel、マーケティングに関する本を 2 冊執筆しています。
6-1. アスリートとして感じた効果
アスリートとしてパフォーマンスが向上したと感じたのは、まだ現役アスリートの時にヨガをやるようになってからのことです。ヨガによって 2 種類のパフォーマンスの向上を感じました。
6-1-1. 身体的パフォーマンスの向上
1 つ目は、体がより脳の思うままに動くようになったことです。ヨガを行い、バランスを取る技が練習をしていないのにうまくなりました。たとえば脳が馬車を操作する御者だとします。体は馬です。ヨガを行なったことで、御者が手綱を通して馬に出す命令の伝わる速度が速くなったように感じたのです。
6-1-2. 精神的パフォーマンスの向上
2 つ目は、メンタル面が落ち着き、本番環境により強くなったことです。本番でも以前よりも落ち着いて竸技できるようになりました。競技を本気で行なっている方は分かると思いますが、自分のメンタルコンディションは体のコンディションと同じように大事です。
ヨガによって、より良いコンディションに自分のメンタルを持っていくことができるようになったので、現役時代にヨガをやるようになってから、大会でのパフォーマンスが良くなりました。
下の動画は 2016 年の時に出場した大会での映像で、現役アスリートからは 10 年前に退いていますが、全国で8位という結果をいただくことができました。40 代になっても競技に出られるのもヨガと瞑想を続けているからかと思っています。
もしかしたら、ヨガ、瞑想のマインドフルネスを実行し続けてきたから、年齢を重ねてもパフォーマンスが出せるようになったのかもしれないです。
上記で紹介した調査結果で脳の老化を抑える、防ぐ効果があると書いていますが、身体的な老化を多少なりともあるのかもしれないですね。
6-2. ビジネスマンとしてのパフォーマンスの向上
1 年前に本を書いていた時のことも紹介させていただきます。春に本を書いていたのですが、毎日朝 3 時半から 5 時半の間に起きて、6 時半まで執筆していました。その後は家族の朝食を作り、会社に行って仕事をしていました。このような生活を数か月していると非常にストレスが溜まります。私も締め切りの 2 か月前ごろから、「これを続けていたら精神的に病んでしまう」と思いました。
でも、無事健康を害さずに本の執筆を終えることができました。それができた 1 つの理由として、毎朝起きて原稿を書く前に 20 分間瞑想をしていたからだと思います。
瞑想をすることで心と頭をリフレッシュし、1 日を始めることができていました。もちろん睡眠でもリフレッシュしているのですが、瞑想で行うリフレッシュはまた別の効果があると私は感じています。
ヨガ、瞑想による具体的な効果として私が実感していることを紹介させていただきました。
あなたも行えば、あなたなりの効果を感じられると思います。
7. 最後に
いかがでしたか?マインドフルネスについて多少なりとも理解を深めていただければ幸いです。
サラ・ラザール教授は発表の中で「環境ではなく、環境の受け止め方でストレスの感じ方は変わる」と話していました。
私自身、ヨガを 15 年行なってきて、ヨガを始める前の自分と今の自分を比べると同じ環境下でも、今の方が落ち着いた状態でいられると実感しています。
自分の状態が落ち着いているので、より冷静に行動ようになりました。これにより出てくる結果も良いものになる可能性が高くなっていると思っています。これもマインドフルネスの効果だと実感しています。
継続することできっと、もっと先の世界や感じ方を発見できるかもしれません。マインドフルネスで自分の心を引き続き磨き続け、成長していきたいと思っています。