英国のオンラインDJスクールCrossfaderの創設者にきく、DJの新しいかたち

Jamie Hartley, founder of Crossfader online DJ school
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〜音楽好きの Crossfader ユーザーを DJ に変えた新しいインテグレーションとは〜

 

「DJ 技術の大きな進化と、学びのオンライン化が同時に起こったのです」— ジェイミー・ハートレー

DJ ブースで最も貴重な物と言えば、まずターンテーブルとレコード盤のコレクションを思い浮かべるかもしれません。でも 2021 年に DJ になるということは、想像以上に複雑なことです。複雑なのは使う機材だけではありません。世界的なパンデミックの時代に生きることが複雑なのです。

ツアーは延期されましたが、今までは出会えなかったかもしれない多くのファンとつながる新しい方法を見つけて、DJ やアーティストが刺激を受けているという朗報も聞こえてきます。Dropbox では、DJ がこの新しい状況を乗り切り、チャンスを最大限に活用できるよう、作業を効率化してシンプルにする Denon DJ ハードウェア インテグレーションを inMusic と連携して開発しました。

DJ プレイの中で音楽ストリーミング サービスの使用をためらっていた方には、最適な代替案となります。Denon DJ ハードウェア インテグレーションにより、ライブ パフォーマンス中に Dropbox の音楽ライブラリから簡単にストリーミング再生できるのです。好きな曲をプレイし、他の DJ とコラボし、リクエストに応え、世界中のファンのネットワークに作品を宣伝して配信するなど、活動の幅が広がります。さらに、このインテグレーションでは Dropbox が初めてハードウェアに組み込まれたので、ノートパソコンすら不要になります。

この新しいインテグレーションにより、Denon DJ ハードウェアから Dropbox の音楽ライブラリにアクセスできます。

The new integration
Denon DJ ハードウェア内から Dropbox music library にアクセスが可能

今回は、新しいソフトウェアやテクニカル ツールの使い方を教える、英国を拠点に活動するオンライン DJ スクール、Crossfader の創設者であるジェイミー・ハートレー氏に詳しい話を伺いました。Dropbox と Denon DJ ハードウェアをどう使ってきたのか、そもそもどのようにして DJ の世界に入ったのかなど、いろいろな話を聞くことができました。

Dropbox: Crossfader を創設する前に、プロの DJ になることに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

ハートレー氏: 私が生まれる前から筋金入りのパーティ ピープルだった父の影響です。パーティ三昧の暮らしを卒業した今でも音楽が大好きで、DJ をしている友人もたくさんいました。 父は家にターンテーブルをいくつか持っていて、私はそれで遊び始めたのですが、私の中で音楽で遊ぶことへの興味に火が付いたのを、父は見逃しませんでした。

それから、当時 DJ をしていた友人の 1 人に私を紹介し、その方に基本を教えてもらったのです。そのとき私は 14 歳くらいで、少年のうちに何かに夢中になって、それをマスターしなければと思っていました。

音楽を操って遊べることにすっかり魅せられ、クラブに通い始めるようになるまでずっと熱中していました。DJ が客に向けてどのようにパフォーマンスをし、聴衆を動かすのかを見るのが好きでした。パフォーマンスを見ることで、この芸術スタイルへの情熱がさらに高まったのです。

DJ の活動を何年くらい続けた後で、Crossfader を始めようと思いついたのですか?

ハートレー氏: DJ として働いて 10 年ほど経った頃です。17 歳のときにレジデント DJ としてクラブで働き始め、英国中のさまざまなクラブで週に 5、6 回プレイしていました。音楽への情熱を養いながら生計を立てると同時に、楽しむことができた体験でした。

最初の頃、ミキシングのテクニックを手ほどきしたり、機材について教えてくれたりする指導者はいましたか?それとも、ほとんど自分でやる必要があったのでしょうか?

ハートレー氏: 父の紹介で何度か教えてくれた方の他には、とくに指導者はいませんでした。何年も自ら試行錯誤し、苦労していろんなことを身につけました。それが Crossfader の誕生に大きく関わっています。私は何年もかけて失敗ばかり繰り返し、そこから教訓を得て、一人前の DJ になりました。こうした教訓を共有できれば、他の人は同じ過ちを犯さなくても済むのだと気づいたのです。

そこで私は、学ぶべきポイントをすべてパッケージ化した指導用のカリキュラムを作成し始めました。そうして Crossfader が生まれたのです。最初は、私が立ち上げた小さなスタジオでのマンツーマン DJ スクールで、そもそもオンラインにする予定はありませんでした。DJ としての地元の評判を利用して、「一緒に学ぼう。僕の経験に基づいて教えるから、悪い癖が付かないし、ミスもしない。ずっと早く DJ 技術を習得できるよ」と言っていただけなんです。

「この機能はプロデューサーと DJ のコミュニティも 1 つに統合しています。そこから生まれる可能性を考えると、本当にワクワクします。」

スクールをオンラインにするというアイデアのきっかけは?

2 年前からマンツーマンで指導していたのですが、1 日中ずっと教える生活になっていました。それに、息子が生まれたので、夜クラブに出かけるのは控えようと思っていました。習いたい人はどんどん増えていましたが、1 日の時間が足りないので教えることは物理的に無理でした。

「これからどうすればいいのだろう。もっと多くの人に教えるにはどうしたらいいのか?」いつもそう自問していました。スクールを大きくしてもっと多くの指導者を集める、という拡張方法もぼんやり考えていたのですが、地元だけではなくその先にも興味がありました。

本当にそれがきっかけで、オンライン DJ 教育の場があまりないことに気づいたのです。ギターやピアノの講師が指導書をまとめているのを見かけるようになって、「DJ の分野でこれをやればいいんじゃないか」と思いました。そこから、オンライン DJ スクールの Crossfader が育っていきました。

オンラインで拡大するには細心の注意を払う必要があるので、残念ながらマンツーマン授業はやめざるを得ませんでした。その仕事から手を引くのは難しい決断でしたが、より多くの人に届けるためには、身近な人へのサービスをやめなければならないことを悟りました。

Dropbox:技術の進歩と仕事への影響についてお伺いしたいと思います。技術の向上は、ミキシングやレコーディングやパフォーマンスの可能性を大きく広げたはずです。機材の進歩が働き方に与えた影響には、どのようなものがありますか?

ハートレー氏: とても興味深い質問ですね。というのは、DJ 技術の大きな進化と、学びのオンライン化が同時に起こったからです。

長年、DJ には 2 つのターンテーブルかプレーヤーとミキサーが必要でしたが、こうした機材は非常に高価なので、野心ある DJ が市場に参入する障害になっていたのは間違いありません。ちょうどオンラインで Crossfader を公開した頃には、数分の 1 の価格で手に入り、iPad やスマートフォン、ノートパソコンに接続できる DJ コントローラーが増え、市場に大きな変化が起こりました。この進化によって DJ を志す人たちの市場が大幅に広がり、私たちはそのお手伝いができるようになりました。コントローラーにはボタンやつまみ、フェーダーなどがたくさん付いているので、DJ 初心者には宇宙船のコックピットのように見えるかもしれません。

一方でソフトウェアがますます複雑になったことで、音楽をクリエイティブにミックスするテクニックだけでなく、この DJ ソフトウェアと DJ プレイに関わるテクノロジーを身につける方法を Crossfader で教える機会が広がりました。

Dropbox の Denon DJ インテグレーションにより、DJ プレイにリクエストを簡単に追加できます。

Dropbox / Denon DJ インテグレーション
Dropbox / Denon DJ のインテグレーションで、自分のセットにリクエストを追加するが容易に

「このインテグレーションを使えば、ファイル リクエスト機能を使用するだけで、最新の曲を Dropbox に直接ドロップできます。」

Dropbox: Dropbox の新しい Engine OS インテグレーションを使ってみた印象と、Denon DJ ハードウェアの使い方がどのように変わったかを教えてください。

ハートレー氏: 少し前から使っていましたが、最近、このインテグレーションでミキシングをしてみました。曲を取り込んで Dropbox に入れるだけなので操作は簡単です。あとは Denon DJ ハードウェアにログインすれば、あらかじめ用意しておいた曲のセットをハードウェアのフォルダに入れることができます。とてもシンプルで効率的です。

その後、すべてクラウドから呼び出してミックスを録音できました。外付けドライブや USB メモリに曲を書き出してから別のハードウェアに接続する、なんてことも考えなくて済むようになりました。このインテグレーションを使えば、どこにいても DJ プレイができます。家にいてアイデアが浮かんだら、このフォルダに曲をドロップするだけで、翌日スタジオに行くときにはノートパソコンやハード ドライブを持って行かなくても、スタジオのハードウェアに直接ログインできます。その結果、私や Crossfader チームのワークフローがシームレスになりました。

今後、コロナが収束し、クラブが再開したときの可能性にワクワクしています。フェスやナイトクラブ、バーやもっと小さな会場で働いている地元の DJ が DJ ブースに戻れるようになったら、その会場にやって来てログインするだけで、あらかじめ用意した音楽にアクセスできるようになるのです。これは素晴らしいことです。特に何人もの DJ が一晩中入れ替わってプレイするようなイベントでは、このインテグレーションのおかげで機材を入れ替える必要がありません。

もう 1 つの良い点は、音楽プロデューサーが制作した音楽を、お気に入りの DJ にとても早く簡単に送れることです。今一番多く行われているのは、プロデューサーが新しい曲を DJ にメールで送り、DJ がダウンロードして DJ ソフトウェアにインポートし、USB にエクスポートして DJ ハードウェアに接続するという方法です。このインテグレーションを使えば、ファイル リクエスト機能を使用するだけで、最新の曲を Dropbox に直接ドロップできます。あとは、手元の Denon DJ 機材にログオンするだけで、すぐにミキシングを開始できます。この機能はプロデューサーと DJ のコミュニティも 1 つに統合しています。そこから生まれる可能性を考えると、本当にワクワクします。

Dropbox: コロナ禍で会場が閉鎖され、ショーが中止になった後で、新しいことをしたい、家で学びたいという人々の関心がにわかに高まったのでしょうか?

ハートレー氏: それは間違いありません。2020 年 4 月に英米やヨーロッパがロックダウンされたときに需要が一気に高まりました。一夜にしてすべてのクラブが閉鎖され、何もかも止まってしまったとき、人々は「そうだ、ずっと学びたいことや、やりたいことがあったのに時間がなかったけど、今はその時間がある」と考えるチャンスをもらったのです。

ロックダウン中の趣味として DJ を選んだ人たちが一歩ずつ進もうとしているときに、学びの場を提供したのが私たちでした。ロックダウンの影響は DJ 業界全体に確実に広がっていました。最初の影響は、DJ 機材が売り切れてしまい、新製品の発売を待たされたことでしたが、ライブ ストリーミングでもすぐに同じことが起こりました。DJ がオンラインでパフォーマンスをしなければならなかったため、ライブ ストリーミングに関連する機材がすべて売り切れ始めたのです。

ロックダウンの中で個人的に楽しかったのは、世界中の DJ のライブ ストリーミングが毎晩たくさんあったことです。クラブのライブではなかなか見ることのできない大好きな DJ のプレイを見ることができました。今では家で見ていても絆を感じられるようになったのは、DJ 業界全体がほぼ一夜にしてライブ ストリーミングを採用したおかげです。

「今では家で見ていても絆を感じられるようになったのは、DJ 業界全体がほぼ一夜にしてライブ ストリーミングを採用したおかげです。」

Dropbox: 今までの働き方をどのように適応させる必要がありましたか?リモートでの共同作業は増えましたか?

ハートレー氏: ロックダウンになる前から Dropbox を使っていましたが、バックアップを作成したりファイルを保存したりするだけでした。最初にロックダウンが実施され、チームが離れて作業するようになってすぐに、私たちは Dropbox を多用するようになり、monday.com とリンクして、プロジェクトに関する連絡を取ってすべてのファイルと最新情報を追跡できるようにしました。

教材のコンテンツを撮影して Dropbox にアップロードしたら、それを他のメンバーがダウンロードして編集し、もう一度アップロードします。Dropbox は Monday とリンクしているので、チームの全員が 1 か所で同じプロジェクトにアクセスしてコミュニケーションを取ることができます。その後、ファイルにアクセスしてメモを付けたり、他のメンバーがファイルをアップロードしたり、また別のメンバーが同じプロジェクトにサムネイルを貼り付けたりもできます。全員が自分のピースを足して、情報のジグソー パズルを組み立てるのです。

当時は気づいていませんでしたが、パンデミックに見舞われる前のワークフローに問題があったことは間違いありません。すべてを切り離すことで、はるかに自分の作業に集中できるようになったのですから。同じ部屋にいなくても、クラウドを使えば、メンバー間の距離がいくら離れていても共同作業ができることに気がつきました。

DJ は Engine PRIME コレクションを Dropbox に同期し、Dropbox Personal Cloud Integration(Engine PRIME、Engine OS)を使用して、世界中のあらゆる Engine OS デバイスからリモート アクセスできるようになりました。詳細は、dropbox.com/apps/engine_os をご覧ください。

 

本ブログは、2021年2月に公開されたブログ記事の翻訳版です。