企業の社会貢献が売上をアップさせるソーシャルマーケティングの基本と事例集

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ソーシャルマーケティングを企業のイメージアップ、販促活動に役立てたいといとお考えですか?始めてみたいと思うものの、ソーシャルマーケティングがどういうもので何から始めればよいのか分からないという方もおられるのではないでしょうか。

ソーシャルマーケティングは企業の社会貢献や CSR 活動をマーケティングの一環とする考え方で、企業の社会的責任という思想が発達している欧米ではすでに広く浸透しています。日本でもこうした考え方定着してきており、今後の企業活動で重要な位置を占めると見られています。

この記事では、ソーシャルマーケティングの概要や基本的な知識を解説した上で成功事例や有力な寄付先など、今すぐソーシャルマーケティングを始められる情報をまとめました。これからのマーケティング活動に社会貢献を採り入れたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

目次

1. 企業の社会貢献が市場を切り拓くソーシャルマーケティング
2. ソーシャルマーケティングの成功事例 5 選
3. テーマ別 主な寄付先一覧
4. まとめ

1. 企業の社会貢献が市場を切り拓くソーシャルマーケティング

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1-1. ソーシャルマーケティングとは

ソーシャルマーケティングとは、企業が社会的責任を果たすことで企業イメージの向上を図り、ポジティブなイメージを販促に採り入れるというマーケティング手法のことです。1971 年にフィリップ・コトラーというアメリカの経営学者によって提唱された概念で、現在主流になりつつある CSR (企業の社会的責任) という考え方につながっています。
それまでのマーケティングは市場での売り上げ拡大にのみ関心が払われ、お金儲けのためなら何でもありという考え方が普通でしたが、いきすぎたコマーシャリズムへの反省も含めて、企業が社会の一員として存在する以上、社会に何らかの貢献をするべきという考え方が台頭しました。

草分けになるような事例としては、クレジットカード大手のアメリカンエクスプレス社が行った「自由の女神修復キャンペーン」が有名です。同社発行のカードを利用するたびに一部が自由の女神修復費用に寄付されるというキャンペーンをしたことで「アメックスのカードを使えば自由の女神を修復するのに協力できる」という消費者意識が芽生え、大成功を収めたことが耳目を集めました。

1-2. ソーシャルマーケティングの基本的な思想

ソーシャルマーケティングは企業が社会的責任を果たすことをマーケティングの材料としている部分があります。そのため、最終的にはお金儲けのためと指摘されることもあるのですが、企業が社会貢献をすることにはさまざまな思想があります。

その思想をそれぞれの企業が自社にできることで体現しているわけですが、底に流れている思想はおおむね共通しています。

【ソーシャルマーケティングの思想的要件】

  • 自社の事業と関連性がある
  • (表面上は)見返りを求めていない
  • 目的が社会全体の利益である
  • 商業主義によって不利益を被っている存在への救済
  • 何らかの形で「愛」がある

1-3. なぜソーシャルマーケティングが重視されるのか

マーケティングとは、市場の中で競争力を高めて売れる仕組みや環境を作るための作業です。ソーシャルマーケティングが重視されている背景には、消費者側の企業への意識変化があります。

かつてあった大量生産、大量消費という経済構造の中では「とにかく安くてよいものを作る」ことが最も競争力につながっていたため、それ以外のことに関心を持たない企業がほとんどでした。その結果、公害という副産物が生まれてしまったのはご存じの通りです。企業活動を通じて社会が不利益を被ることに対する関心が高まり、公害を出さない、環境に配慮している企業であることをアピールする必要が出てきました。

この考え方を発展させると、同じような性能や価格の商品が 2 つある時、消費者はそれぞれを生産・販売している企業価値の差に注目します。社会貢献に積極的な企業とそうでない企業のどちらを購入するかを考えると、企業がソーシャルマーケティングを重視する理由が自ずと分かると思います。

商品やサービスの中身だけで差別化をするのが難しい時代において、企業がどんな考え方を持って社会貢献をしているのかという差が競争力を決めるのです。

1-4. ソーシャルマーケティングで企業が得られるメリット

1-4-1. 競争力の強化

CSR 活動などに積極的であることは、企業価値を高めます。この優位性を市場での競争力強化につなげられる時代なので、ソーシャルマーケティングを通じて競争力の強化、シェアの拡大が期待できます。

特に一般消費者への訴求力が高いので、B to C ビジネスを展開している企業にはよりメリットが感じられるでしょう。

1-4-2. 投資家への訴求

消費者に対する競争力だけでなく、ソーシャルマーケティングは投資家に対する競争力強化も期待できます。株主から CSR についての質問や提案が出る時代なので、投資家に対して株主になるメリットを伝えやすくなります。

投資家への訴求効果は、安定株主の確保や株価の安定などにつながります。

1-4-3. 保険効果

あまり注目されない部分ですが、ソーシャルマーケティングには保険効果があります。その効果が顕著に表れたのが、1992 年のアメリカ・ロサンゼルスで起きた暴動事件です。暴動が発生したロサンゼルスでは略奪や放火などが横行して大変な被害が発生しましたが、そこにあった 60 店舗ものマクドナルドは被害に遭うことはありませんでした。同社は以前から現地での社会貢献活動に積極的で、人々から高い評価を得ていたことで暴徒もマクドナルドの店舗に危害は加えないようにしようという意識が働いたそうです。

よい行いをしているといつか何かの形で返ってくることを因果応報といいますが、ソーシャルマーケティングにもこの言葉が当てはまりそうです。

1-5. ソーシャルマーケティングの主な社会貢献活動

ソーシャルマーケティングの一環で行われる社会貢献活動には実にさまざまな種類がありますが、大きく 6 つに分類することができます。その主な分類は、以下の通りです。

1-5-1. 環境保護

環境保護は、ソーシャルマーケティングや CSR 活動の定番ともいえる分野です。ここでいう環境というのは地球レベルの環境保護や特定の地域に対する緑化運動、ごみを掃除する美化運動なども含まれます。CO2 排出が多い企業は、そのイメージを払しょくするために別の方法で CO2 を削減して差し引きゼロにする「カーボンオフセット」を CSR の一環として取り組んでいることもあります。

【環境保護をテーマとしたソーシャルマーケティングの例】

1-5-2. 国際貢献

世界に目を向けると環境破壊や戦争、貧困、病気など深刻な問題が山のようにあります。日本さえよければいいという考え方ではなく、こうした恵まれない国や地域のために貢献をするという考え方も、ソーシャルマーケティングによく見られるものです。

特に、原材料を海外から輸入している企業などに多く見られるテーマです。

【国際貢献をテーマにしたソーシャルマーケティングの例】

1-5-3. 人道支援

貧困や環境破壊、戦争などによって今すぐ命に関わるような危険な状況にある人はたくさんいます。そんな人たちに手を差し伸べるのが人道支援ですが、国家レベルだけでなくたくさんの企業が人道的な支援活動をソーシャルマーケティングの一環として位置付けています。

【人道支援をテーマにしたソーシャルマーケティングの例】

1-5-4. 啓発活動

看過できない問題が起きているのに、多くの人がそれを知らないということはたくさんあります。また、正しい知識を持っていないばかりに不幸が繰り返されているという事例も後を絶ちません。そこで正しい知識を多くの人に知ってもらうための啓発活動をソーシャルマーケティングの一環として行っている企業があります。

【啓発活動をテーマにしたソーシャルマーケティングの例】

1-5-5. 教育

子供への教育もソーシャルマーケティングでよく採り入れられるテーマです。教育産業や食品メーカー、流通業などによるものが多く見られ、食品メーカーや流通業の場合は食育という切り口で積極的な活動例が見られます。

【教育をテーマにしたソーシャルマーケティングの例】

1-5-6. 災害復興支援

阪神淡路大震災や東日本大震災をはじめ、台風や豪雨など、日本は天災の多い国です。災害の被害に遭った地域に対して義援金や現地で生産されたものを積極的に購入するなど、災害復興支援に取り組む企業も数多くあります。

商品の購入が被災地支援になるというのはとても手軽で分かりやすいので、ソーシャルマーケティングの効果が出やすいテーマです。

【災害復興支援をテーマにしたソーシャルマーケティングの例】

2. ソーシャルマーケティングの成功事例 5 選

2-1. ボルヴィック「1L for 10L」

ボルヴィックは世界的に有名なミネラルウォーターのブランドです。水という商品を販売していることに関連して、安全な水を入手するのが困難なアフリカのマリ共和国で井戸や給水設備を設置する支援活動を 10 年にわたって続けました。ボルヴィックの水を 1 リットル飲むとアフリカに 10 リットル分の水が生まれるだけの支援ができるという分かりやすさが功を奏し、ボルヴィックの販売増というマーケティング成果が生み出されました。

この活動は 2016 年 8 月に終了しましたが、その理由は目標とする水が得られるだけの設備ができたので、使命を果たしたというものでした。

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ボルヴィック「1L for 10L」

2-2. サントリー「天然水の森 人類以外採用」

タイトルだけを見ると採用ページなのか、それともいったい何?と不思議になるキャンペーンを展開しているのは、飲料メーカー大手のサントリーです。キャンペーンサイトを見ると求人サイトのような造りになっていますが、その中身は天然水を生み出す森を守ろうという趣旨の CSR 活動です。

ユーモアあふれるキャンペーンであることも注目を集め、「水のサントリー」というイメージの醸成やブランディングに成功しています。

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サントリー「天然水の森 人類以外採用」

2-3. ザ・ボディショップ「動物実験反対」

環境保護やコミュニティトレードなど、社会貢献活動に積極的な企業として知られる、THE BODY SHOP (ザ・ボディショップ)。とりわけ化粧品製造の際の動物実験への反対意思は強く、これまでにもさまざまな方法で動物実験をなくすための活動を行っています。

この活動ではソーシャルマーケティングという意図よりも動物実験をなくしたいという思いが先に立っていますが、結果として社会貢献意識の高い企業であると認知されるようになりました。

【コミュニティトレードとは】

経済的に不利な立場にある人たちや経済活動のせいで生活の場を奪われるなど不利益を被っている人たちと対等な取引を行うことで利益を取ってもらう商取引のことです。類義語のフェアトレードでは、販売力の弱い途上国のコーヒー農家と先進国の大企業が対等な取引を行うなどの活動が見られます。

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ザ・ボディショップ「動物実験反対」

2-4. アメリカンエクスプレス「自由の女神修復キャンペーン」

世界的に有名なクレジットカードブランド、アメリカンエクスプレスが行った「自由の女神修復キャンペーン」は、現在のような形のソーシャルマーケティングの草分けになっていると言われています。

このキャンペーンは 1983 年に行われたものですが、それまでにも同社は文化遺産の修復や保護などを各地で行っており、このキャンペーンもその一環でした。ニューヨークのシンボルである自由の女神像に対するアメリカ国民の関心は高く、その修復に資するならということでアメリカンエクスプレスカードを利用する人が急増、なんと対前年比で 28 %もカード決済額が増えたそうです。新規のカード申し込みも 45 % 増えたということで、このキャンペーンが同社のマーケティングに大きく貢献していることが分かります。

アメリカンエクスプレス「Historic Preservation Initiatives」

2-5. 石原軍団の炊き出し

少々番外編ではありますが、知名度が高いという意味では芸能プロダクションの石原プロが災害被災地で行っている名物の炊き出しも、立派なソーシャルマーケティングです。期間が短く、テレビカメラの前で芸能人が現地で炊き出しをしているだけで売名行為だという指摘もありますが、石原軍団が行くことでマスコミからも注目され、結果として視聴者の被災地への関心が高くなります。

この活動は名物と称されるほどおなじみになっているため、「石原軍団=災害時の炊き出し」というポジティブなイメージが浸透していることはイメージが大切な芸能人にとって意味のあるものです。

3. テーマ別 主な寄付先一覧

自社でも CSR 活動を通じてソーシャルマーケティングを実践したいという場合、今すぐ始められる手段として寄付が考えられます。それぞれの企業の事業内容によって、事業内容に近いテーマで寄付活動をしていることを CSR 情報として公開することで、ソーシャルマーケティングを実践に移すことができます。

それぞれのテーマごとに主要な寄付先の一覧を、以下にご紹介します。

3-1. 環境保護

3-1-1. WWF Japan

世界的に有名な環境保護団体の日本支部です。地球全体の環境保護という視点では最も有力の寄付先となります。

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WWF Japan

3-1-2. 日本自然保護協会

主に日本国内の環境保全、自然保護の活動を行っている団体です。

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日本自然保護協会

3-1-3. 日本野鳥の会

紅白歌合戦の人数カウントで有名な団体ですが、名称の通り野鳥の保護や、野鳥が生息する場所の保存活動を行っています。公益財団法人の法人格を持つ老舗の団体でもあります。

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日本野鳥の会

3-2. 国際貢献

3-2-1. 日本ユニセフ

国連の関連団体として全世界で活動する団体です。知名度も高く、ソーシャルマーケティングを推進する企業からの寄付も多く見られます。

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日本ユニセフ

3-2-2. ジョイセフ

途上国で厳しい状況にある女性への支援に絞った活動を行っている公益財団法人の NGO です。女性向けの商品やサービスを取り扱っている企業にとって CSR活動との高い親和性が見込めます。

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ジョイセフ

3-3. 人道支援

3-3-1. SHARE

医師や看護師などが立ち上げた、国際医療支援団体です。

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SHARE

3-3-2. ジャパンプラットフォーム

政府や経済界など各方面からの資金を活用して難民や災害時の緊急援助などを行う団体です。

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ジャパンプラットフォーム

3-4. 啓発活動

3-4-1. がんの子どもを守る会

小児がんに苦しむ子供たちを支援する公益財団法人で、小児がんについての啓発活動にも積極的です。子供向けの商材を扱う企業などの CSR 活動と親和性が高いでしょう。

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がんの子どもを守る会

3-4-2. エイズ予防財団

HIV 感染についての正しい知識を啓発し、感染拡大を食い止めるための活動を行っています。

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エイズ予防財団

3-5. 教育

3-5-1. あしなが育英会

事故や病気などで親を亡くした子供たちの教育機会を支援する非営利団体です。知名度が高く、教育関連企業からの寄付も多く見られます。

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あしなが育英会

3-5-2. カタリバ

災害や経済的な理由などによって教育機会の格差が生じてしまうのは不公平であるとして、格差是正の支援を行っている団体です。

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カタリバ

3-6. 災害復興支援

3-6-1. 日本赤十字社

災害時の義援金といえば最も高い知名度を有しているのが日本赤十字社です。災害復興支援が有名ですが、その他にも医療や人道的な支援などを幅広く行っています。

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日本赤十字社

3-6-2. 日本財団

幅広い社会貢献活動をしている団体で、災害被災地支援をはじめ企業と連携した社会貢献活動にも積極的です。

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日本財団

3-6-3. ふるさとチョイス

ふるさと納税の特典紹介サイトですが、自治体への寄付の一環で災害被災地への寄付を募っています。

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ふるさとチョイス「災害支援でチョイス」

4. まとめ

企業も社会の一員として社会的な責任があるという考え方は企業だけでなく消費者にも浸透しているので、社会貢献に積極的な企業が選ばれる時代になりました。こうした意識がソーシャルマーケティングを成り立たせており、この傾向は今後さらに強まるでしょう。

そんな時代において社会貢献活動をマーケティングに採り入れることは決して売名行為ではなく、「損して得取れ」というビジネス感覚だと思います。

成功事例や有力な寄付先の団体の紹介もしているので、今すぐできることからソーシャルマーケティングに参入してみてはいかがでしょうか。

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