「クラウド化」とは、社内のシステムや業務のやり方を、クラウド事業者がインターネット上で提供しているクラウドサービスを利用するやり方に移行することです。
クラウドサービスとは、インターネットを経由して提供されるサービスのことです。
例えば、ファイル保管・データ共有、財務会計、人事労務、営業支援、取引先との情報共有、社内の基幹システムなど、さまざまなクラウドサービスがあります。
近年ではクラウド化を進める企業が増えており、7割〜8割以上の企業がクラウドサービスを利用するとも考えられます。
クラウド化には企業にとって非常にメリットがあり、利益を高めたいなら積極的に推進すべきものです。
それにもかかわらず、
「セキュリティ的に危険なのでは?」
「クラウド化のメリットがよくわからない」
などの知識不足によってクラウド化に二の足を踏んでいる企業が後を絶ちません。放置すれば企業の競争力が低下するリスクさえあります。
そこで本記事では、一見わかりづらい「クラウド化」について、初心者にもわかりやすく解説します。
本記事のポイント
- クラウドの基礎知識から“クラウド化”がよくわかる
- クラウド化のメリット・デメリットを徹底解説
- 企業動向・進め方・注意点まで把握できる
「クラウド化について知りたい」
「自社のクラウド化を成功させたい」
という方におすすめの内容となっています。
この解説を最後までお読みいただければ、あなたは「クラウド化とは何か」はもちろん、良い面・悪い面の両方が体系的に理解できます。さらに、近年の企業動向を踏まえて自社の方針を考え、導入に向けてスムーズなスタートが切れるでしょう。
結果として、あなたの会社に最適なクラウド化を実現できるはずです。ではさっそく「クラウド化」の解説を始めましょう。
1. クラウド化とは
まずはクラウド化の基礎知識から解説します。
1-1. クラウドとはインターネットを経由して提供されるサービスのこと
そもそも「クラウド」の理解が曖昧だという方のために、クラウドの基本からおさらいしましょう。
クラウドとは、“コンピューターによる情報処理を、自分が保有するコンピューターで行うのではなく、インターネットでつながっているクラウド事業者のコンピューターで行うサービスのこと”です。
簡単にいえば、“インターネットを経由して提供されるサービス=クラウド”といえます。
その背景を補足しておきましょう。
クラウド(Cloud)とは「雲」という意味ですが、ネットワークを図解するときにはインターネットを雲として表します。
ここから由来して、インターネットを経由して提供されるサービスを「クラウドコンピューティング」や「クラウドサービス」と呼ぶようになりました。
さらに、クラウドコンピューティングやクラウドサービスは、略して単に「クラウド」と呼ばれます。
「クラウドコンピューティング、クラウドサービス(略語:クラウド)=インターネットを経由して提供されるサービス」
1-2. クラウド化とは既存のシステムや業務をクラウドに移行すること
クラウドが指すものは非常に広範囲にわたります。そのため、さまざまなシーンでクラウドという言葉が使われているというわけです。
前述の「クラウド」の意味を踏まえつつ、企業において使われる「クラウド化」の意味を定義すると、“今までクラウドサービスを利用していなかった既存のシステムや業務を、クラウドに移行すること”と表現できます。
クラウドサービスが多岐にわたるので、クラウド化の実体も同じく多岐にわたりますが、例を挙げてみましょう。
▼ クラウド化の例
・社内インフラ(ファイルサーバーなど)をクラウドに移行する ・PCにインストールしたソフトウェアで行っていた業務をクラウドツールに切り替える ・プログラマーの開発業務のプラットフォームをクラウドサービスに変える |
これらは大きく3つの種類に整理できます。次章で詳しく見ていきましょう。
2. クラウド化の種類
前章では「クラウド化とは既存のシステムや業務をクラウドに移行する」ことだとお伝えしました。
ではクラウド化とは具体的に何をすることなのか?といえば、クラウドサービスの“3つの種類”からアプローチすると、明確に理解できます。
2-1. クラウドには3つの種類がある
クラウドサービスには、「IaaS・SaaS・PaaS」の3つの種類があります。
アルファベットだらけで混乱しそうですが、最初の頭文字がそれぞれ「インフラ・ソフトウエア・プラットフォーム」を表していることを覚えておけば簡単です。
それぞれ詳しく見てみましょう。
2-2. IaaS:社内インフラのクラウド化
1つめのクラウド化としては「IaaS(Infrastructure as a Service)の導入」が挙げられます。これは言い換えれば「社内インフラのクラウド化」です。
“社内インフラ”は、例えば共有サーバーや社内イントラネットなど、業務を行う基盤として社内に整備するもの全般を指します。
IaaSは、デスクトップ仮想化(サーバー上でデスクトップ環境を管理する)や共有ディスクなど、ハードウェアのリソースやインフラ機能の提供を行うクラウドサービスのことです。
▼ IaaSのクラウドサービス例
・(ファイルストレージとして使う場合の)Dropbox ・Amazon Elastic Compute Cloud(EC2) ・Google Compute Engine |
IaaSを導入すると、これまでは自社運用していたインフラ機能を、インターネット上に構築できます。
例えば社内ファイルサーバーをクラウド化して、世界中のどこで仕事をしていてもアクセスできるようにすることが可能です。
2-3. SaaS:ソフトウェアのクラウド化
次に「SaaS(Software as a Service)の導入」を見てみましょう。これは言い換えると「ソフトウェアのクラウド化」です。
ごく身近な例を挙げれば、「PCにインストールして利用していたメールソフトを、ブラウザからアクセスできるWebメール(例:Gmail)に切り替える」ことは、クラウド化といえます。
▼ SaaSのクラウドサービス例
・Dropbox Paper ・Googleドキュメント |
現在では、業務用のクラウドツールが数多く提供されており、多くの業務のクラウド化が可能です。
▼ クラウド化できる業務の例
・財務会計 ・人事労務 ・マーケティング ・営業 ・名刺管理 ・顧客管理 ・書類作成 他 |
実のところ、どんな業務であっても探せば必ずクラウドツールが見つかるほど、クラウドツールは多岐にわたっています。
業務をクラウド化すると、生産性の向上やコスト削減に役立ちます(クラウド化のメリットについて詳しくは、この後に解説しますので続けてご覧ください)。
2-4. PaaS:開発環境のクラウド化
最後に「PaaS(Platform as a Service)の導入」があります。これは簡単にいえば「開発環境のクラウド化」です。
PaaSはソフトウェア開発やシステム開発などに利用されるプラットフォーム(アプリケーションサーバーやデーターベースなど)を提供するクラウドサービスです。
▼ PaaSのクラウドサービス例
・Microsoft Azure ・Google App Engine |
かつて、ソフトウェアなどを開発してローカルでテストするのは、時間も費用も場所も必要で、コストのかかる作業でした。
しかしPaaSを利用すると、プログラマーはオンラインで、コストを抑えて効率的に開発が行えるようになります。
3. クラウド化のメリット
ここまでクラウド化の基礎知識を解説してきました。では、クラウド化は企業にとってどんなメリットをもたらすのでしょうか。
6つのポイントがあります。
・保守・運用を自社で行う必要がない ・働き方改革の推進に役立つ ・災害時のバックアップとして利用できる ・業務の効率化・生産性の向上に効果がある ・コスト削減になる ・セキュリティ面の安全性が高い |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1. 保守・運用を自社で行う必要がない
1つめのメリットは「保守・運用を自社で行う必要がない」ことです。
例えば、オンプレミス(自社運用)のファイルサーバーや社内インフラをクラウド化すれば、もう社内で保守運用を行う必要はありません。
これは単に担当者の負担が減る・人件費を削減できるといった利得にとどまらず、現代の企業において非常に大きな意味を持つことに着目してください。
というのは、2020年代以降の企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する激変のビジネス環境を生き抜かなければならないからです。
DX推進のためには、IT技術を持ったDXを担う人材(いわゆるDX人材)の確保が欠かせませんが、DX人材は日本中で不足しています。
貴重なDX人材のリソースを、社内インフラのトラブル対応やメンテナンスではなく、新製品やサービスなどの新しい価値の創造に集中できた企業が、市場に生き残っていくことになります。
クラウド化によって自社で行っていた保守運用が不要になることは、非常に大きなメリットです。
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3-2. 働き方改革の推進に役立つ
2つめのメリットは「働き方改革の推進に役立つ」ことです。
2018年に成立した働き方改革関連法では「多様で柔軟な働き方の実現」が推進されていますが、クラウド化を進めることはすなわち、多様で柔軟な働き方の実現に直結します。
業務の運用やファイルの保存がクラウド化されていれば、世界中どこにいても、柔軟に仕事することが可能です。コロナ禍で一気に導入する企業が増えた「テレワーク」も、クラウド化が済んでいればスムーズです。
「自社でも働き方改革を進めたい」と考えている企業にとって、クラウド化は改革を成功させる鍵となります。
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3-3. 災害時のバックアップとして利用できる
3つめのメリットは「災害時のバックアップとして利用できる」ことです。
社内に重要なデータを保管していた企業では、クラウド化によって災害時のバックアップが可能になります。
社内に重要データを保管することには、大きなリスクが伴います。自然災害、火災、大規模停電、マルウェア攻撃などによって、社内に保管していたデータすべてを一気に紛失する可能性があるからです。
そこで社内ではなくクラウドにデータを保存することで、リスクヘッジが可能です。クラウドでは、複数の場所にある複数のサーバーにデータがバックアップされていますので、データ紛失の可能性を極めてゼロに近づけることができます。
3-4. 業務の効率化・生産性の向上に効果がある
4つめのメリットは「業務の効率化・生産性の向上に効果がある」ことです。
さまざまな優れたクラウドツールを利用することは、企業の生産性を大幅に向上させます。
例として、10人のチームで行う書類作成を考えてみましょう。今までは、1人がファイルを変更するたびにチームメンバーにメール送信し、ほかのメンバーがそれぞれ順番に編集作業をしていたとします。
この業務をクラウド化すると、10人のチームメンバーが、それぞれ異なる場所から同じファイルを開いて同時に編集できるため、チームの生産性は大幅に向上します。
これは書類作成業務の例ですが、多くの分野の業務においてイノベーションを起こすクラウドツールが開発されています。
業務のクラウド化を進めれば、これまでの努力では到達し得なかったレベルの生産性向上が可能になるでしょう。
3-5. コスト削減になる
5つめのメリットは「コスト削減になる」ことです。
オンプレミスですべてを行おうとすると、非常にコストがかかります。
機器の購入費用、ITシステムの構築費用、保守運用のメンテナンス費用、サーバールーム分の家賃、電源や適性温度の維持にかかる電気代……と、ひとつずつ挙げればキリがありません。
クラウド化すれば、これらの費用がすべて不要になるため、コスト削減になります。
加えて、クラウド化は、ビジネスを拡大あるいは縮小するための柔軟性に優れている点も、コスト削減につながるポイントです。
というのは、オンプレミスではビジネス拡大のために投資したあとビジネスが縮小すれば、投資コストが無駄になります。
しかしクラウドは基本的に従量課金制サービスのため、使った分のお金を支払うだけです。
ビジネスが拡大すれば、それに応じてクラウドサービスの利用量を増やし、逆に縮小したならば利用量を減らすだけですから、投資コストの無駄が発生しません。
3-6. セキュリティ面の安全性が高い
6つめのメリットは「セキュリティ面の安全性が高い」ことです。
多くの人は「クラウド=インターネット上にデータを保管するからセキュリティが低い」というイメージを抱えています。これは誤っているといわざるを得ません。
むしろ何でも見えるところに置いておくよりも、クラウド事業者が安全性と保護を優先して構築した環境に保管したほうが安全という面もあるのです。
たとえるなら、自宅に貴金属を保管しているよりも、厳重なガードある銀行の金庫に保管したほうが安全なのと同じです。
Dropboxを例にとれば、Dropbox のサーバーで保管するファイルはすべて暗号化という厳重なガードがされています。クラウドは、データを保管するための最も安全な方法となるように設計されているのです。
4. クラウド化のデメリット
メリットが多いクラウド化ですが、デメリットも押さえておきましょう。
1 カスタマイズの自由度が低くなるケースがある 2 不適切に利用すればセキュリティリスクが発生する |
4-1. カスタマイズの自由度が低くなるケースがある
1つめのデメリットは「カスタマイズの自由度が低くなるケースがある」ことです。
クラウド化する際には、基本的にクラウド事業者が提供しているサービスプランから自社に最も合うプランを選んで利用することになります。
そのため、自社で自由にカスタマイズした社内インフラを整備していた企業などでは、
「今までよりもカスタマイズできる範囲が狭い」
と感じるかもしれません。
補足としては、クラウド化すると自由なカスタマイズが不可能なのかといえば、そんなことはありません。
既存のサービスプランから選ぶのではなく、クラウド事業者と個別に契約して開発すれば、自由なカスタマイズが可能です。
例えば、JALは自社専用の旅客基幹システムのクラウド化を実現しています。
▼ JALのクラウド化事例
出典:IPA「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた 企業とIT人材の実態調査」
4-2. 不適切に利用すればセキュリティリスクが発生する
2つめのデメリットは「不適切に利用すればセキュリティリスクが発生する」ことです。
これはクラウド化に限ったデメリットではありませんが、誤ったやり方で利用すれば、セキュリティリスクが発生します。
例えば、クラウドサービスにログインしたままのパソコンが外出先で盗難にあったり、パスワードなどのアカウント情報の管理不備で漏洩させてしまったりすれば、不正アクセスの原因となります。
こういったヒューマンエラーへの対処は、クラウドサービスでもIPアドレス制限などのアクセス制御で可能ではありますが、極めて高い機密情報(例えば金融や医療など)は、オンプレミスで運用したほうが良いケースもあるでしょう。
5. クラウド化を推進すべき理由
ここまでにご紹介したメリット・デメリットを踏まえると、ほぼすべての企業において、クラウド化を推進すべきといえるでしょう。
クラウド化のデメリットよりもメリットのほうが大きく上回っているからです。実際、多くの企業がクラウド化で効果を感じています。
5-1. クラウド化に8割以上が効果を感じている
総務料の資料によれば、すでにクラウド化に取り組んでいる企業のうち、85.5%が「非常に効果があった」「ある程度効果があった」と答えています。
逆に、「あまり効果がなかった」は0.2%、「マイナスの効果があった」は0.4%で、両方あわせても失敗リスクは1%以下であることがわかります。
“クラウド化=8割以上が成功(失敗リスクは1%以下)の施策である”と考えれば、むしろクラウド化を推進しない理由はないといえるでしょう。
5-2. クラウド化しない理由は知識不足が大きい
クラウド化のメリットが明らかであるにもかかわらず、クラウド化していない企業の理由の上位は以下のとおりとなっています。
1 必要がない 2 情報漏洩などセキュリティに不安がある 3 メリットが分からない、判断できない |
本記事をここまで読んでいただければ、上記のとおり感じるのは「知識不足によるところが大きい」ことがご理解いただけるのではないでしょうか。
例えば、第1位の「必要がない」に関しては、働き方改革に取り組まなければならない社会情勢や、DX推進の波に乗り遅れれば企業の存続さえ危うくなるビジネス環境を鑑みれば、クラウド化が不要とは決していえないことがわかるはずです。
セキュリティ面への漠然とした不安も、前述のとおりクラウド化はむしろ、社内にデータを保管しておくより安全ともいえます。
メリットがわからないという点については「2. クラウド化のメリット」にて解説したとおりです。
正しい知識を身に付ければ、クラウド化は早急に進めるべきだという結論に至るでしょう。
6. クラウド化の企業動向
実際、ほかの会社はどのようにクラウド化に取り組んでいるのか、動向が気になる方もいるでしょう。
ここでクラウド化の企業動向をご紹介します。
6-1. クラウドサービスの利用状況
クラウドサービスの利用状況は、2019年時点で【64.9%】となっています。想像以上に多くの企業がクラウド化を進めていると感じたのではないでしょうか。
しかもこの数値は、新型コロナウイルス感染症が流行する前の2019年時点のものです。コロナ禍を経た2020年以降は、さらに多くの企業がクラウド化を進めています。
2018年→2019年で6ポイント上昇していることから、2021年以降は70%〜80%の企業がクラウド化すると予測できるでしょう。
6-2. クラウドサービスの利用内訳
次に、具体的にどんな業務をクラウド化しているのか見てみましょう。2019年のクラウド化率が高い順に、以下のとおりとなっています。
1 ファイル保管・データ共有 2 電子メール 3 社内情報共有・ポータル 4 スケジュール共有 5 給与、財務会計、人事 6 データバックアップ 7 営業支援 8 取引先との情報共有 9 eラーニング 10 システム開発、webサイト構築 11 受注販売 12 生産管理、物流管理、店舗管理 13 プロジェクト管理 14 購買 15 認証システム 16 課金・決済システム 17 研究・開発関係 |
例えば「他社がクラウド化している部分からクラウド化を進めたい」という場合には、この順位が参考になるでしょう。
特に4割以上の企業が利用している上位3つ(ファイル保管・データ共有、電子メール、社内情報共有・ポータル)に関しては、早急にクラウド化を進めたいところです。
6-3. クラウドサービスを利用している理由
最後に、クラウド化している理由を見てみましょう。割合が多い順に、以下のとおりとなっています。
1 資産、保守体制を社内に持つ必要がないから 2 場所、機器を選ばずに利用できるから 3 安定運用、可用性が高くなるから(アベイラビリティ) 4 災害時のパッフクアップとして利用できるから 5 サービスの信頼性が高いから 6 システムの容量の変更などが迅速に対応できるから 7 既存システムよりもコストが安いから 8 システムの拡張性が高いから(スケーラビリティ) |
こうして見ると、「2. クラウド化のメリット」でご紹介した内容を、実際にクラウド化している企業が実感していることがわかります。
ぜひ、自社でも自信を持ってクラウド化を進めていきましょう。
7. 企業がクラウド化を進める流れ 5ステップ
「うちの会社でもクラウド化を進めたい」という方へ、実際の進め方を解説します。
ステップ1:クラウド化の目的や用途を明確にする ステップ2:クラウド化に利用するサービスを選ぶ ステップ3:クラウド化の運用ルールやセキュリティポリシーを定める ステップ4:クラウド化を開始する ステップ5:改善を繰り返しながら運用する |
それぞれ見ていきましょう。
ステップ1:クラウド化の目的や用途を明確にする
1つめのステップは「クラウド化の目的や用途を明確にする」です。
まずは、クラウド化する目的・用途・要件などを明確にしましょう。やり方としては「6W2H」のフレームワークに沿って考えるのがおすすめです。
▼ 例:クラウド化の6W2H
何を(What) |
オンプレミス型の社内ファイルサーバー |
誰が(Who) |
システム担当者が管理 |
誰に(Whom) |
社内メンバー全員が利用 |
いつ(When) |
2021年6月から運用開始 |
どこで(Where) |
インターネット上に構築 |
なぜ(Why) |
テレワークへの対応 保守運用リソースの削減 |
どうやって(How) |
クラウドストレージサービスを導入する |
いくらで(How much) |
月額3万円以下 |
ほかに、内容によって事前に洗い出しておくべき要件があれば、この時点で明確にしておきましょう。
ステップ2:クラウド化に利用するサービスを選ぶ
2つめのステップは「クラウド化に利用するサービスを選ぶ」です。
ステップ1で設定した6W2Hをもとにして、自社にとって最適なサービスを選定します。
実際に見るべきポイントは、どんな分野のクラウドサービスを導入するかによって変わります。
例えば、社内ファイルサーバーをクラウドストレージに移行するクラウド化であれば、チェックしたいのは以下のポイントです。
▼ クラウドストレージのチェックポイント
複数のクラウドサービスを比較検討して、最適なサービスを見極めましょう。
ステップ3:社内運用ルールやセキュリティポリシーを定める
3つめのステップは「社内運用ルールやセキュリティポリシーを定める」です。
クラウド化のデメリットとして、“不適切に利用すればセキュリティリスクが発生する”ことをお伝えしましたが、これを防ぐのがルールやポリシーの設定です。
ルールやポリシーの設定には情報セキュリティに関する知識が必要ですが、そもそも情報セキュリティに対するリテラシーが低い企業であれば、クラウド化は、会社全体で学び直しをする良い機会です。
取り返しのつかない失敗を経験する前に、情報セキュリティについて学び、十分な対策を行いましょう。
具体的には、総務省のWebサイトに掲載されている以下のページが役立ちます。
▼ 情報セキュリティ対策に役立つページ
・組織幹部のための情報セキュリティ対策 ・情報管理担当者の情報セキュリティ対策 ・社員・職員全般の情報セキュリティ対策 |
さらに、クラウドサービスについては以下で詳説されています。
▼ クラウドサービスについて
・クラウドサービスを利用する際の情報セキュリティ対策 ・クラウドサービス利用時の注意点 |
以上の知識・情報をベースにしながら、自社の運用ルール・マニュアル・ポリシーなどを整備し、セキュリティリスクに備えましょう。
ステップ4:クラウドサービスの利用を開始する
4つめのステップは「クラウドサービスの利用を開始する」です。
利用するサービスが決定し運用ルールなどの整備まで完了したら、実際にクラウドサービスの利用をスタートします。
業務のやり方が大きく変わるような大規模なクラウド化であれば、社内で勉強会を開き、使い方をレクチャーしましょう。
また、ITスキルのレベルは人によって異なります。フォローが必要なスタッフはシステム担当者が支援しましょう。
利用開始のフェーズでは、ただクラウド化するだけでなく、新しいクラウドサービスが現場で最大限に活用されるよう、必要なバックアップを行うことが大切です。
ステップ5:改善を繰り返しながら運用する
5つめのステップは「改善を繰り返しながら運用する」です。
クラウド化の利点のひとつは、柔軟に拡張や縮小ができる点です。実際に運用しながら、自社に合うように改善していきましょう。
運用するなかで課題や問題点が発見されれば、運用ルールの見直しやサービスプランの変更などで適宜対応していくことが大切です。
より使いやすく、より効率的に改善することで、生産性が向上し企業の利益に寄与できるでしょう。
8. クラウド化の注意点
最後に、これからクラウド化に取り組むうえで注意したいポイントについて、お伝えします。
1 クラウドサービスは現場のメンバーが試用してから決める 2 契約前に中途解約について確認しておく |
8-1. クラウドサービスは現場のメンバーが試用してから決める
1つめの注意点は「クラウドサービスは現場のメンバーが試用してから決める」ことです。
クラウドサービスを導入しても活用されないという失敗が起きる原因は、現場で実際に使うメンバーの立場になってサービスを選んでいないからです。
例えば、経営者が「取引先の仲良しの社長が●●が良いと言っているから導入する」などと勝手に決めたり、ITスキルの高いシステム担当者が現場メンバーのレベルを考慮せずにツールを選んだりすると、失敗リスクが高くなります。
多くのクラウドサービスでは無料のトライアル期間が設けられていますので、最終決定の前に、必ず現場のメンバーが試用しましょう。
実際に使うメンバーにとって使い勝手の良いサービスを選ぶことが、クラウド化成功の秘訣といえます。
8-2. 契約前に中途解約について確認しておく
2つめの注意点は「契約前に中途解約について確認しておく」ことです。
慎重にクラウドサービスを選定しても、「実際に運用してみたら、どうしても自社に合わない問題が発覚したから解約したい」となるケースはあります。
あるいは、導入したクラウドサービス自体に不満はなくても、新しいクラウドサービスがリリースされて、乗り換えたくなることもあるでしょう。
そんなときに備えて、契約前に中途解約について、確認しておくことが大切です。
特に年単位の長期で契約する場合には、途中解約についてどんな規約になっているか、チェックしておきましょう。
短期間で解約する可能性がある場合は、多少割高になっても月単位の契約にするなど、必要な対策をしましょう。
まとめ
「クラウド」とはインターネットを経由して提供されるサービスのことで、「クラウド化」とは既存のシステムや業務をクラウドに移行することです。
クラウド化の種類は、以下の3つに分けられます。
1 IaaS:社内インフラのクラウド化 2 SaaS:ソフトウェアのクラウド化 3 PaaS:開発環境のクラウド化 |
クラウド化のメリットは次のとおりです。
1 保守・運用を自社で行う必要がない |
クラウド化のデメリットは次のとおりです。
1 カスタマイズの自由度が低くなるケースがある 2 不適切に利用すればセキュリティリスクが発生する |
企業がクラウド化を進める流れはこちらです。
ステップ1:クラウド化の目的や用途を明確にする ステップ2:クラウド化に利用するサービスを選ぶ ステップ3:社内運用ルールやセキュリティポリシーを定める ステップ4:クラウドサービスの利用を開始する ステップ5:改善を繰り返しながら運用する |
クラウド化の注意点としては次の2点が挙げられます。
・クラウドサービスは現場のメンバーが試用してから決める ・契約前に中途解約について確認しておく |
クラウド化は、企業にとって非常にメリットが大きいものです。積極的に推進しましょう。
なお、社内ファイルサーバーをはじめとする社内インフラのクラウド化や、業務ツールのクラウド化を検討しているなら、Dropbox Businessがおすすめです。
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