テレワークで働き方改革!メリットデメリット・成功のコツと注意点を解説

働き方改革 テレワーク
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テレワークの導入を通して働き方改革に取り組むことは、すべての企業にとって非常に優先順位の高い課題です。

しかしながら、

「テレワークで働き方改革って、どこから着手して良いかわからない」

「興味はあるけど、デメリットはないの?」

といった疑問や不安を抱えている人が多いのではないでしょうか。

多くの企業が競うようにテレワーク導入に取り組む昨今、取り残されれば競争力を失うリスクがあります。かといって、知識なしに導入すれば大失敗の結果となる可能性もあり、身動きが取りづらいと感じているかもしれません。

よって本記事では、2020年代以降の企業が生き残るうえで重要な鍵を握る「テレワークによる働き方改革」について、詳しく解説します。

本記事のポイント

・働き方改革とテレワークの基礎知識がわかる
・メリット・デメリットの両面を把握できる
・具体的な導入プロセスや成功のコツ・注意点まで解説

 「働き方改革とテレワークについて知りたい」

「テレワーク導入を成功させたい」

という方におすすめの内容となっています。

この解説を最後までお読みいただければ、あなたは「働き方改革とテレワークの基本」はもちろん、どうすればテレワーク導入に成功できるのか、失敗を回避するために注意すべきポイントは何なのかまで、理解できるようになります。

結果として、会社にとっても従業員にとってもWin-Winとなるテレワークを実現できるはずです。それではさっそく「働き方改革とテレワーク」の解説を始めましょう。

1. 働き方改革とテレワークの基礎知識

働き方改革とテレワークの基礎知識

まずはテレワークと働き方改革の基礎知識について、おさらいしておきましょう。

1-1. 働き方改革とは

働き方改革とは、2016年に第3次安倍内閣が提唱した「働き方を見直して多様で柔軟な働き方を選択できる社会の実現を目指す一連の取り組み」です。

2018年6月には「働き方改革関連法」が可決・成立し、働き方改革は国が進める重要な政策といえます。

働き方改革の具体的な取り組み事項としては、以下が挙げられています。

1 非正規雇用の処遇改善
2 賃金引上げと労働生産性向上
3 長時間労働の是正
4 柔軟な働き方がしやすい環境整備
5 病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の推進
6 外国人材の受入れ
7 女性・若者が活躍しやすい環境整備
8 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の充実
9 高齢者の就業促進

出典:内閣官房「ニッポン一億総活躍プラン・働き方改革実行計画フォローアップ」

このように国を挙げて働き方改革に取り組んでいる背景には、少子高齢化・人口減少が進み、人手不足の継続が見込まれる現状があります。

「日本経済の持続的成長のためには、労働参加率を高め、かつ生産性を向上させなければならない」という問題意識があるのです。

政府が働き方改革を推し進める目的は何かといえば、「誰もが生きがいを持って、その能力を最大限発揮できる社会を創り、労働市場を起点にして、日本の経済全体を活性化すること」となります。

参考: 内閣府「第2章 働き方の変化と経済・国民生活への影響」

1-2. テレワークとは

「テレワーク」についてのおさらいです。

テレワークとは、インターネットをはじめとするIT技術を活用して、場所にとらわれることなく柔軟に働く働き方を指します。

具体的に、テレワークを働く場所で分けると、自宅で働く「在宅勤務」、移動中や出先で働く「モバイル勤務」、本拠地以外のオフィスで働く「サテライトオフィス勤務」の3つがあります。

テレワークとは

出典:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト

前述の“働き方改革”のなかでのテレワークの位置付けは、「柔軟な働き方がしやすい環境整備」の施策のひとつとなります。

柔軟な働き方がしやすい環境整備

出典:内閣官房「ニッポン一億総活躍プラン・働き方改革実行計画フォローアップ」

「テレワークのガイドライン刷新と支援」が働き方改革実行計画に組み込まれており、テレワークは働き方改革を実践する具体策です。

1-3. テレワークで働き方改革に取り組むべき理由

「我が社もテレワークで働き方改革に取り組んだほうが良いのか?」と迷っている方もいるかもしれません。

答えは「積極的に取り組むべき」といえます。その理由は大きく分けて2つあります。

1つめの理由は、企業としての社会的責任を果たすためです。国が法律まで定めて推進している事柄ですから、どの企業も無視するわけにはいきません。

一連の働き方改革のなかでも、長時間労働の是正および柔軟な働き方の整備は、多くの企業がすでに取り組みをスタートしています。あなたの企業でも、働き方改革に本腰を入れて取り組むべき時期です。

2つめの理由は、テレワークは企業にとっても大きなメリットがあるためです。具体的にどんなメリットがあるのか、次章で解説しましょう。

2. テレワークで働き方改革をするメリット(効果)

テレワークで働き方改革をするメリット(効果)

テレワークで働き方改革に取り組むと、以下のメリットがあります。

1 非常時にも事業を継続できる
2 優秀な人材を確保できる
3 コスト削減になる
4 生産性が向上する
5 企業イメージの向上に寄与する

ひとつずつ見ていきましょう。

2-1. 非常時にも事業を継続できる

1つめのメリットは「非常時にも事業を継続できる」ことです。

テレワークとは言い換えれば「決められたオフィスに出勤しなくても業務を遂行できる働き方」です。近年、この価値が高まっています。

記憶に新しいのは、2020年の新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の影響です。

多くの企業が混乱するなか、すでに働き方改革の一環でテレワークに取り組んでいた企業は、スムーズに通常業務を遂行できました。

感染症以外にも、地震・台風・大雪などの自然災害をはじめ、従業員のオフィス出勤が難しくなる非常事態は、さまざまなケースが考えられます。

テレワークを導入していれば、非常時であっても事業を継続でき、利益損失を最小限にくい止めると同時に、社会や自社の顧客にとって必要な商品・サービスの提供を持続できるのです。

2-2. 優秀な人材を確保できる

2つめのメリットは「優秀な人材を確保できる」ことです。

社会全体が慢性的な人手不足に陥るなか、あなたの企業でも、

「優秀な人材をなかなか採用できない」

「せっかく優秀な人材を雇用しても、離職してしまう」

といった課題を抱えているかもしれません。

では優秀な人材を確保するためにはどうすれば良いのか?といえば、そのひとつの答えは「働きやすい環境を整備すること」といえます。

そして、テレワークは従業員に働きやすい環境を提供する一環として優れた施策です。実際、テレワークを導入すると、その企業の人気が高まる傾向があります。

例えば、厚生労働省のサイトには以下の事例が記載されています。

横浜の社員数39名の電機工事会社では、テレワークを導入以前は新卒を募集してもせいぜい数人程度しか応募がありませんでした。ところが、募集要項に在宅勤務・モバイル勤務可能と記載したことにより、現在では毎年300人以上の応募があるようになりました。

出典:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト

このように、企業の魅力を高め採用力を向上させるためには、テレワークの導入が効果的なのです。

2-3. コスト削減になる

3つめのメリットは「コスト削減になる」ことです。

まず大きく削減できるコストが、交通費です。オフィスに出勤しなければ、従業員の自宅とオフィスの往復の交通費が節約できます。

加えて営業職など顧客先や現場からオフィスに帰社するルールをやめて、直行・直帰を基本とすれば、必要最低限の交通費しかかかりません。

さらに、オフィスに出勤する人数を減らせばオフィスを縮小でき、地代家賃・光熱費を圧縮できますし、ペーパーレス化することで紙代や印刷費を削減できます。

▼ テレワークで削減できるコストの例

  • 交通費
  • 地代家賃
  • 光熱費
  • 印刷代(紙、プリンタ関連)
  • 備品費 など

このように、テレワークを導入することでさまざまな費用の削減につながることは、大きなメリットです。

2-4. 生産性が向上する

4つめのメリットは「生産性が向上する」ことです。

多くの企業が、テレワークの導入後、生産性が向上したという成果を実感しています(詳しくは後ほど「4. テレワークで働き方改革を実現した成功事例」で紹介します)。

その理由としては、今まで発生していた移動時間などのロスが減って純粋な業務時間が増えることや、通勤時間にかかっていた従業員のストレスや疲れが軽減され、個人の生産性が上がることなどが挙げられます。

加えて、テレワークを導入して従業員の働き方を整える企業の姿勢に対し、従業員のモチベーションが高まる効果も見逃せません。

テレワークが導入された働きやすい職場では、従業員の会社に対する愛着や仕事に対するやりがいも向上し、それが生産性の向上にも影響するのです。

2-5. 企業イメージの向上に寄与する

5つめのメリットは「企業イメージの向上に寄与する」ことです。

働き方改革に真摯に取り組み、社会的責任を果たそうとする企業には、人は誠実な印象を抱きます。

これは前述の採用力を向上させるのみならず、取引先との関係や顧客からの信頼にも影響するため、非常に大きな意味を持ちます。

イメージしやすくするために、逆のパターンを想像してみましょう。

例えば、取引先の担当者の様子から、“時代遅れな古い体質がはびこる、ブラック企業まがいな働き方”が透けて見えたら、どう感じますか。その企業に対する評価は、低くなるのではないでしょうか。

逆に、テレワークをはじめとする働き方改革に積極的に取り組み、従業員がイキイキと働いている企業なら、以下のイメージを持ちます。

▼ 働き方改革に取り組む企業のイメージ

  • 先進性・時代を先取りする能力がある
  • 経営トップの考え方に柔軟性がある
  • 従業員を大切にする良い会社である など

このような働き方改革・テレワーク導入による企業イメージの向上は、取引先や顧客からの好感度を高め、引いては業績向上へとつながっていくのです。

3. テレワークで働き方改革をするデメリット(課題)

テレワークで働き方改革をするデメリット(課題)

メリットの多いテレワークによる働き方改革ですが、一方でデメリットも存在します。

1 従来のマネジメント方法で対応し切れない
2 IT化のノウハウがないと実現が難しい
3 セキュリティリスクの対策が必要になる

それぞれ詳しく見てみましょう。

3-1. 従来のマネジメント方法で対応し切れない

1つめのデメリットは「従来のマネジメント方法で対応し切れない」ことです。

具体的に、従来のマネジメント方法のままでは対応が難しい事項として、以下が挙げられます。

・出勤・退勤・休憩中・外出中などの勤怠管理
・対面での朝礼や進捗報告
・顔色・態度・雰囲気などの非言語の情報をもとにした状況把握
・休憩中の雑談やランチなどでのコミュニケーションを通した関係構築

例えば勤怠管理に関しては、上司による管理が行き届かないためにテレワークの従業員が怠けるケースと、逆に働き過ぎるケースの両方があり、注意が必要です。また、オフィスに従業員が集って働いている環境とは異なり、テレワークでは空気を読むこと・雰囲気から察知することは難しくなります。

結果、部下の異変やトラブル発生の予兆に気づくのが遅れる傾向にある点は、注意したいポイントです。

テレワークを本格導入する場合には、テレワークに対応した新たなマネジメントを一緒に導入する必要があります。

3-2. IT化のノウハウがないと実現が難しい

2つめのデメリットは「IT化のノウハウがないと実現が難しい」ことです。

現在オフィスで行っている業務をテレワークでも可能にするためには、ITに関する知見が不可欠です。

例えば、以下が挙げられます。

・クラウドによるデータ共有
・コミュニケーション用のオンラインツールの導入(チャット、Web会議システムなど)
・勤怠管理ツールの導入
・紙の書類のペーパーレス化

特に、専任のIT管理者がいない中小企業においては、テレワークを実現するうえで、まずは必要な知識を身に付ける必要性があるでしょう。

3-3. セキュリティリスクの対策が必要になる

3つめのデメリットは「セキュリティリスクの対策が必要になる」ことです。

ITの知識がないとテレワーク環境の実現が難しいことは先に述べたとおりですが、知識がないままにテレワークを推進した場合に怖いのが「セキュリティリスク」です。

例えば、テレワークには以下の危険性が潜んでいます。

・公衆Wi-Fiやセキュリティ対策がされていない家庭内ネットワークを経由した情報漏洩
・業務用パソコン・スマホ・重要書類などの盗難・紛失・置き忘れ
・会議音声の盗聴
・パソコンのウイルス感染

顧客情報・機密情報の漏洩をはじめとする重大なトラブルを起こさないためには、セキュリティへの対策が不可欠です。

4. テレワークで働き方改革を実現した成功事例

テレワークで働き方改革を実現した成功事例

ここで、テレワークの課題をしっかり乗り越え、テレワーク導入による働き方改革に成功している企業事例を見てみましょう。厚生労働省の「輝くテレワーク賞」を受賞している企業のなかから4つの企業をご紹介します。

4-1. 味の素株式会社

味の素株式会社は、テレワークの取り組み、ワークライフバランスの実現ともに極めて優れていると評されている企業です。

総従業員数3,000名を超える大企業ですが、2018年3月時点でテレワークの利用者率が8割を超えており、まさにテレワークの先進企業といえます。

組織名

味の素株式会社

創立年

1925年

業種

製造業

所在地

東京都

総従業員数

3,464人(2018年3月時点)

テレワークの導入形態

終日在宅勤務 部分在宅勤務
モバイルワーク サテライトオフィス

テレワークの利用者数(過去1年間)

2,922人(2018年3月時点)

味の素株式会社では「どこでもオフィス」という名称で、テレワーク制度を導入しています。

「どこでもオフィス」の導入

出典:厚生労働省 輝くテレワーク賞 味の素株式会社

味の素株式会社では、働き方改革推進の取り組みを中期経営計画に入れ、経営会議をサテライトオフィスで実施するなど、経営トップが率先してテレワークを推進しているのが特徴的です。

労務管理は勤怠管理システムを活用し、社外からのネットワーク接続時刻を勤怠管理システムに客観時刻として表示させています。

さらに、所定外労働時間・休日労働時間の合計が60時間を超える場合には保健師からのアンケート送付、80時間を超える場合には産業医または保健師による面談を行い、長時間労働の是正にも取り組んでいます。

成果のひとつの指標となる社員の満足度は、2017年度の社内調査で79%の社員が「働きがいを感じている」と回答し高水準です。

参考:厚生労働省 輝くテレワーク賞 味の素株式会社

4-2. SCSK 株式会社

SCSK 株式会社は、2007年に在宅勤務を導入し、2017年にはサテライト勤務やモバイル勤務も含めたテレワーク制度を導入している先進性のある企業です。

組織名

SCSK 株式会社

創立年

1969 年

業種

情報通信業

所在地

東京都

総従業員数

7,568人(2018年8月時点)

テレワークの導入形態

終日在宅勤務 部分在宅勤務 
モバイルワーク サテライトオフィス

テレワークの利用者数(過去1年間)

4,675人(2018年8月時点)

SCSK 株式会社では「どこでもWORK」という施策を推進しています。どこでもWORKでは「場所にとらわれない柔軟な働き方」を目指して、リモートワーク・ペーパーダイエット・フレキシブルオフィスの3つの施策を三位一体で推し進めています。

リモートワーク・ペーパーダイエット・フレキシブルオフィスの3つの施策

出典:厚生労働省 輝くテレワーク賞 SCSK 株式会社

テレワークを始めるにあたっては、制度面およびIT面の情報を、マニュアルやガイドブックとして整備しています。

  • 制度面:規程、手続き、セキュリティなどの観点から、本人と上長の双方が知っておくべき情報
  • IT面:自宅などからテレワークを行うための設定方法、在席管理システム・チャットツールの活用方法、Web 会議の開催方法など

特筆すべきは、テレワークの推進が長時間労働を誘発することのないよう、テレワークによる深夜および休日勤務は社内規定で禁じている点です。

これらの取り組みの結果、従業員の生活の質や生産性の向上という成果が出ています。

生労働省 輝くテレワーク賞 SCSK 株式会社

出典:厚生労働省 輝くテレワーク賞 SCSK 株式会社

4-3. 株式会社お金の家庭教師

大企業の事例を続けてみてきましたが、中小企業でも厚生労働省から表彰されている企業があります。

株式会社お金の家庭教師は従業員数52名の企業で、全社員がテレワーク勤務を実施しています。会社設立当初よりテレワークを導入しており、テレワークが文化として根付いている企業です。

組織名

株式会社お金の家庭教師

創立年

2008年

業種

情報通信業

所在地

東京都

総従業員数

52人(2020年8月時点)

テレワークの導入形態

終日在宅勤務 部分在宅勤務
モバイル勤務 サテライトオフィス勤務

テレワークの利用者数(過去1年間)

52人(2020年8月時点)

株式会社お金の家庭教師の特徴的なのは、採用活動までも完全にオンライン化しており、全国どこにいても就労が可能なことです。

育児や介護などで制約のある人の就業機会の拡大に貢献している点が評価されています。

人事・労務管理の整備の工夫としてユニークなのは、チーム制を採用していることです。

チームで業務に対応することで、過度な長時間労働の発生を防ぐと同時に、個人の事情による急な稼働時間の変更にもチームで対応できる体制を組んでいます。

厚生労働省 輝くテレワーク賞 株式会社お金の家庭教師

出典:厚生労働省 輝くテレワーク賞 株式会社お金の家庭教師

組織内のメンバーは、ほかのメンバーの労働時間および業務内容を確認できます。よって自分の生産能力を認識でき、その結果、労働時間の管理能力が高まるという好循環が生まれています。

加えて、業務ではクラウドによるデータ共有だけでなく、同時編集できるオンラインツールを使用するよう徹底周知して、生産性向上を図っているのもポイントです。

社内だけでなく、顧客とのやり取りにもオンラインツールの利用をお願いしており、必要であれば、操作方法のレクチャーまで実施しています。

社員の満足度アンケートでは、8割以上の社員が働き方に満足しているという結果を得られており、特に従業員100名以下の中小企業にとっては参考になるポイントの多い事例です。

参考:厚生労働省 輝くテレワーク賞 株式会社お金の家庭教師

4-4. 株式会社リコー

株式会社リコーは従業員数1万人を超える大企業ですが、経営者や管理者が率先して働き方改革とテレワークを推進している点が評価されています。

全社員を対象としたセキュリティ教育の実施やマネジャーに対する意識啓発なども充実しています。

組織名

株式会社リコー

創立年

1936年

業種

電気機器製造・販売業

所在地

東京都

総従業員数

10,415人(2019年7月時点)

テレワークの導入形態

終日在宅勤務 部分在宅勤務
モバイル勤務 サテライトオフィス勤務

テレワークの利用者数(過去1年間)

3,953人(2019年6月時点)

株式会社リコーでは、2018年4月より以下のとおりリモートワーク制度を導入しています。入社1年以上の正社員などが対象で、月10日(週3日)までのリモートワークが可能です。

厚生労働省 輝くテレワーク賞 株式会社リコー

出典:厚生労働省 輝くテレワーク賞 株式会社リコー

運用ルールやマネジメント上の留意点、制度に関するQ&Aなどは「リモートワーク制度運用ガイド」として詳細が設定されています。

人事評価面での取り組みとしては、全マネジャーに対してワークショップを実施し、リモートワークの活用および人事評価制度についての説明を実施。例えば、リモートワーク中は常にチャットを起動しておくことで、業務状況の把握と円滑なコミュニケーションを実現しています。

参考:厚生労働省 輝くテレワーク賞 株式会社リコー

5. 働き方改革でテレワークを導入する流れ 7ステップ

働き方改革でテレワークを導入する流れ 7ステップ

「うちの会社でも、働き方改革でテレワークを導入したい」と感じたら、ぜひ導入に向けて取り組みを始めましょう。

テレワークの導入プロセスは、大きく7つのステップに分けられます。

▼ テレワーク導入プロセス

テレワーク導入プロセス

出典:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト

それぞれ詳しくご紹介します。

5-1. ステップ1:導入の検討と経営判断(導入目的・基本方針の決定)

1つめのステップは「導入の検討と経営判断(導入目的・基本方針の決定)」です。

何のために・どんな戦略でテレワークを実施するのか、経営判断として経営トップが方向性を定めることが大切です。

テレワーク導入に成功している企業では、経営計画にテレワーク施策を盛り込み、経営トップの強いリーダーシップのもとにテレワークを推進しています。

まずは、経営トップ自身がテレワークへの取り組み方針を策定しましょう。参考情報として、テレワークの導入目的として多いのは、生産性の向上・ワークライフバランスの向上・勤務者の移動時間の短縮などとなっています。

テレワークの導入目的

出典:総務省「令和元年通信利用動向調査」

あなたの会社でテレワークを導入する目的と戦略を明確にし、基本方針を定めていきましょう。

5-2. ステップ2:推進体制の構築(プロジェクトチーム結成)

2つめのステップは「推進体制の構築(プロジェクトチーム結成)」です。

ステップ1で設定した方針に沿って、必要なメンバーを招集してテレワーク推進のプロジェクトチームを結成しましょう。

というのも、テレワークの推進は、1部門の担当者だけでは不可能だからです。社内の部署を横断したチーム結成が不可欠です。

具体的に参加すべき部門としては、以下が挙げられます。

・経営企画部門
・総務・人事部門
・情報システム部門
・導入対象部門

テレワーク推進をスムーズに進めるコツとしては、導入対象部門のトップをチームメンバーとして消臭することです。プロジェクトチームのリーダーになってもらうと、なお良いでしょう。

例えば、人事部が熱心にテレワークを導入しようとしても、肝心の現場が反発すると、導入がスムーズに進みません。そこで現場部門のトップをプロジェクトに巻き込んでいくことが重要です。

5-3. ステップ3:現状把握(業務分析)

3つめのステップは「現状把握(業務分析)」です。

ステップ2で結成したプロジェクトチームが中心となって、現在の業務を分析し、現状を把握していきます。

具体的な業務分析のポイントは、以下のとおりです。

▼ 業務分析のポイント

1 業務時間:業務にかかる時間がどれくらいか
2 使用文書:どのような書類を利用しているか、紙か電子か、電子化の必要な文書はどれくらいか
3 システム:テレワークでも実施可能なシステムが揃っているか、セキュリティは担保されているか
4 個人情報:業務上取り扱う個人情報などはあるか
5 コミュニケーション:業務は何人で行うか、やりとりの頻度はどのくらいか、Web会議システムで対応可能か

出典:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト

業務分析の結果を踏まえ、現状の業務を以下の3つに分類します。

▼ 現状の業務の分類

1 現状でテレワーク可能な業務
現状の働き方をテレワークでも支障なく実施できる業務。

2 対策実施によりテレワーク可能となる業務
文書の電子化やコミュニケーション環境の電子化(Web会議の導入など)、セキュリティ対策の実施などによってテレワークが可能となる業務。

3 実施困難な業務
機械的な操作を必要とする業務、人と対面することが必要な業務など。ただし、このような業務であっても報告書を1日まとめて書くなどの対応により、テレワークできる場合もある。

出典:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト

5-4. ステップ4:導入に向けた具体的推進

4つめのステップは「導入に向けた具体的推進」です。

ステップ3で分類した「現状でテレワーク可能な業務」「対策実施によりテレワーク可能となる業務」を踏まえつつ、具体的にどのようにテレワークを推進していくかを定めていきます。

ここで定めるべき項目としては、以下が挙げられます。

1 対象者
2 テレワークの形態
3 労務管理制度の見直し
4 社内制度・ルールの整備
5 システムの準備(セキュリティ)
6 文書の電子化
7 執務環境の整備
8 教育・研修(意識改革)

具体的に何を設定すべきかの詳細は企業によっても異なりますが、最低限設定すべき内容は以下を参考にご覧ください。

▼ 厚生労働省のパンフレットより

厚生労働省のパンフレット

出典:厚生労働省

5-5. ステップ5:試行導入

5つめのステップは「試行導入」です。

テレワークでは、実際に運用してから課題や改善点が発見されることがほとんどです。

完璧な制度を作り上げてから導入するよりも、小規模で試行導入を繰り返しながら改善していったほうが、結果として早く最適な体制にたどり着くことができます。

ステップ4で社内制度の骨子ができあがったら、対象者や業務を限定したうえでテレワークを試行導入しましょう。

5-6. ステップ6:効果測定(問題点の発掘/対策実施)

6つめのステップは「効果測定(問題点の発掘/対策実施)」です。

ステップ5の試行導入を踏まえて効果測定を実施し、問題点を発見して改善しましょう。

具体的に効果測定の項目として評価すべき内容は、以下のとおりです。

▼ 定量評価項目

1 顧客対応:顧客対応回数、顧客対応時間、顧客訪問回数、顧客訪問時間
2 残業時間:所定外労働時間をテレワーク対象者とそれ以外の社員で比較
3 事務効率:伝票等の処理件数、企画書等の作成件数、企画書等の作成時間
4 オフィスコスト:オフィス面積、賃借料、コピー・プリント費用
5 移動コスト:移動時間、移動コスト
6 情報通信コスト:情報システム保守費用、通信費用
7 人材確保:入社応募者の数や質、離職者数
8 オフィス改修コスト

▼ 定性評価項目

1 顧客満足度
2 従業員満足度
3 コミュニケーションの頻度・質
4 情報セキュリティ意識の徹底度
5 業務の自律性
6 働き方の質:仕事への満足度、通勤疲労度、働き方への満足度
7 生活の質:家族との団らん、趣味・自己啓発の充実度、育児・介護のしやすさ

出典:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト

5-7. ステップ7:本格導入

7つめのステップは「本格導入」です。

ステップ5〜6の試行導入→効果測定→改善を経て、本格導入の拡大範囲を決定し、テレワークを本格的に導入していきます。

最初からすべてがうまくいく企業は存在しませんが、早くスタートした企業ほど試行錯誤を繰り返して、企業力にも寄与する強いテレワーク制度を完成させています。

テレワーク施策において最も重要なのは、テレワークのプロジェクトを途中で消滅させずに、ステップ7の本格導入までやり遂げることです。

導入後も定期的に評価を実施し、問題点があれば都度改善を繰り返して、あなたの会社ならではの優れたテレワーク制度を構築していきましょう。

参考:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト

6. テレワークで働き方改革を成功させるコツ

テレワークで働き方改革を成功させるコツ

テレワークで働き方改革を成功させるためには、どんなポイントを押さえれば良いのでしょうか。2つのコツをご紹介しましょう。

6-1. 企業の経営方針として実行する

1つめのコツは「企業の経営方針として実行する」ことです。

テレワークを導入する流れの解説内でも触れましたが、テレワーク推進の成功は、従業員ではなく経営トップのリーダシップが鍵を握ります。

テレワークを企業戦略として捉え、中長期的な経営計画に組み込んだうえで実行していきましょう。

もしあなたが経営者の立場でなく従業員の立場であれば、経営者がリーダシップを取るよう、説得できるかが鍵を握るといえます。

「テレワークを導入してほしいのに、経営トップが導入してくれない」

といったケースでは、行政のテレワーク窓口に相談してみるのもおすすめです。

▼ テレワークの相談窓口
テレワーク・サポートネットワーク

6-2. クラウドでのデータ共有やオンラインツールを活用する

2つめのコツは「クラウドでのデータ共有やオンラインツールを活用する」ことです。

テレワークで生産性を向上させるうえでは、クラウドサービスの利用が不可欠といえます。

ファイル共有をクラウドで行ったり、同時編集できるオンラインツールを利用したりすれば、テレワークによる業務効率は大幅に向上します。

例えば、Dropbox Businessは、リモートワークで多くの企業に活用されているクラウドサービスです。

Dropbox Business

テレワークに必要な数々の機能を兼ね備えていますので、テレワーク環境の整備を大幅に効率化できるでしょう。

Dropbox Business

 

 

詳しくはこちら

7. 働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)とは

働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)とは

厚生労働省では、随時「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」の申請を受け付けています。

「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」とは、テレワークの取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成する助成金です。

設定した成果目標の達成状況に応じて、1企業あたり最大300万円(1人あたり最大40万円)が支給金額となります。

テレワーク導入の支給対象となる取り組み

出典:厚生労働省

適用には各種要件がありますので、詳しくは厚生労働省サイトの「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」にてご確認ください。

8. 働き方改革でテレワークを導入する際の注意点

働き方改革でテレワークを導入する際の注意点

最後に働き方改革でテレワークを導入する際の注意点をお伝えします。

8-1. 社内規則・規程の整備をしっかりと行う

1つめの注意点は「社内規則・規程の整備をしっかりと行う」ことです。

テレワークで直面しやすい課題として、労務管理をはじめとするマネジメントの難しさや、情報セキュリティへの対応が挙げられます。

これらのほとんどは、事前の規則・規程の整備が不十分だったことに起因するものです。

テレワーク導入にあたっては、就業規則をはじめとする社内規則・規程の整備をしっかりと行っておきましょう。

テレワークに係る規則整備の体系

出典:総務省「テレワークの普及促進に向けた調査研究」

規則・規程の整備にあたっては、以下の資料が参考になります。

    参考:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト

    8-2. テレワークの導入ありきで進める

    2つめの注意点は「テレワークの導入ありきで進める」ことです。

    テレワークを企業戦略実行のひとつの手段として考えるなら、“手段ありきで物事を進めるのは本質的ではない”と感じる方もいるかもしれません。

    プロジェクトに着手したとしても、途中で企業に利益がないと判断すれば撤退するのが通常のあり方といえます。

    しかしながら、テレワークに限っては、テレワーク導入は揺るがない決定事項として、「テレワークを導入する。テレワークありきで利益を最大化するためにはどうすれば良いか」という思考プロセスを取ることが大切です。

    テレワークは現代の働き方のスタンダードとなりつつあり、この流れは加速する一方と考えられるからです。コロナ禍を経て、ニューノーマルの代表ともいえるのがリモートワークです。

    この流れを無視することは、もはやどの企業もできないでしょう。ぜひ、テレワークのプロジェクトチームを発足させ、導入まで完遂してください。

    まとめ

    働き方改革とは、働き方を見直して働き方を見直して多様で柔軟な働き方を選択できるようにする一連の取り組みのことです。

    テレワークとは、インターネットをはじめとするIT技術を活用して、場所にとらわれることなく柔軟に働く働き方を指し、働き方改革を実践する具体的施策のひとつという関係性にあります。

    テレワークで働き方改革をするメリット(効果)は以下のとおりです。

    1 非常時にも事業を継続できる
    2 優秀な人材を確保できる
    3 コスト削減になる
    4 生産性が向上する
    5 企業イメージの向上に寄与する

    テレワークで働き方改革をするデメリット(課題)は以下のとおりです。

    1 従来のマネジメント方法で対応し切れない
    2 IT化のノウハウがないと実現が難しい
    3 セキュリティリスクの対策が必要になる

    テレワークで働き方改革を実現した成功事例として4社の例をご紹介しました。

    1 味の素株式会社
    2 SCSK 株式会社
    3 株式会社お金の家庭教師
    4 株式会社リコー

    働き方改革でテレワークを導入する流れは、以下の7ステップです。

    ステップ1:導入の検討と経営判断(導入目的・基本方針の決定)
    ステップ2:推進体制の構築(プロジェクトチーム結成)
    ステップ3:現状把握(業務分析)
    ステップ4:導入に向けた具体的推進
    ステップ5:試行導入
    ステップ6:効果測定(問題点の発掘/対策実施)
    ステップ7:本格導入

    テレワークで働き方改革を成功させるコツとして次の2つが挙げられます。

    1 企業の経営方針として実行する
    2 クラウドでのデータ共有やオンラインツールを活用する

    働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)とはテレワークの取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成する助成金です。

    働き方改革でテレワークを導入する際の注意点はこちらです。

    1 社内規則・規程の整備をしっかりと行う
    2 テレワークの導入ありきで進める

    テレワークの導入は、企業にとっても従業員にとってもメリットが大きく、やりがいを感じながらイキイキと働く一助となります。

    本記事でご紹介した導入の流れを参考に、さっそく導入に向けて動き出しましょう。テレワークと関係性が深いDX(デジタルトランスフォーメーション)については、以下の記事で解説しています。あわせてご覧ください。

    DX推進をわかりやすく解説!成功事例・失敗事例・進め方までわかる