エドワード・ノートン氏、映画製作のための
スマート ワークスペース構築について語る

映画製作ではチーム全員が連携して複雑な作業をこなしていく必要があります。
そのため、撮影期間が 50 日しかないという状況のなかニューヨークで映画を製作したいとしたら、引き受けてくれる製作会社は皆無に等しいでしょう。

ニューヨークでの映画製作では、万全の準備が必要となります。

こう語るのは、ジョナサン・レセムの小説を映画化した新作「マザーレス ブルックリン」で脚本、監督、製作、主演を務めるエドワード・ノートン氏です。

同氏がこの小説の映画化を思い立ったのは 1999 年。当時の映画界には、この 10 年のうちに登場した共同作業ツールはまだありません。監督のアイデアを形にするために、製作チーム全員にイメージを伝えるには時間も手間もかかっていました。

以前は、やりたいことをどのように実現するかを伝えるために、ストーリーボード アーティストと何週間もかけて打ち合わせをしていました。でも最近は、iPhone で 2K や 4K での撮影が可能となり、画像を取り込んで書き込めるツールもあるため、より高度な方法で細やかにビジュアル ストーリーテリングをあらかじめ作成できるようになりました。

以前からテクノロジー通で知られるノートン氏は、EDO というデータ サイエンス会社の共同創業者でもあります。

データ サイエンティストによると「ディテールを追加すると深みが増す」とされています。「マザーレス ブルックリン」でノートン氏は、監督、脚本家、主演として多くのディテールを担い、膨大な作業を同時にこなすことが必要でした。

1 人で膨大なディテールを創り上げ、瞬時に多くの人に伝え、周りと調整して進める一方で、スケジュールと予算は守る。これは、いったいどうすれば実現できるのでしょうか。

目次

  1. 全員でアイデアを共有しなければなりません。
  2. 私たちが作ったのはコミュニケーションのためのワークスペースです。テクノロジーの世界では真新しさはないかもしれませんが、映画の世界では、これでもかなり先進的なのです。
  3. 撮影に 50 日もかからなかったと言ったら、すぐには信じてもらえませんでした。

1. 全員でアイデアを共有しなければなりません。

映画製作は、頭の中に浮かんだアイデアを紙に書き出すことから始まりますが、その最小限の骨組みに肉付けするには、プロダクション デザイナー、視覚効果スーパーバイザー、カメラマン、衣装など、多くの人の協力が必要となります。そのため、全員でアイデアを共有し、同じ認識で作業に取り組まなければなりません。

ノートン氏が「グランド ブダペスト ホテル」で監督兼脚本のウェス・アンダーソン氏と一緒に仕事をしたとき、2 人で最初に話し合ったのは「キュレーション プラットフォーム」の必要性についてでした。

これは、監督がビジュアル ストーリーテリングに必要な要素をまとめて保管し、クルーのメンバー全員と簡単に共有できるようなプラットフォームで、サイズが大きくて扱いにくいファイルをメールで送る必要もなくなります。

効率を上げるツールは多くあり、デジタル色補正といった強力なツールが可能性を切り拓いてくれるでしょう。そう聞くと、『もう映画製作に時間をかけなくてよい』と思われるかもしれませんが、もっと掘り下げてできる環境になればなるほど、必ず前よりも時間をかけたくなるものです。

ノートン氏はキュレーション プラットフォームとして機能するソリューションを見つけようと、「「週 4 時間」だけ働く。」作家、ティモシー・フェリス氏に電話でアドバイスを求めました。

ティモシーは仕事の効率化に関して常に追及している人物なので、最新情報を知りたいときは決まって彼に聞いています。すると、『Dropbox のドリューに聞くといいよ。あそこはいつも何か新しいことをやっている会社だから』と教えてくれました。そこで、ドリューに電話して今探している機能を説明すると、『ちょうどよかった。もうすぐ Paper というツールをリリースするので試してみないか』と勧めてくれたのです。

ノートン氏は早速、Dropbox Paper に 2 つのプラットフォームを作成しました。

1 つは、この映画の全シーンを保管するためのプラットフォームです。全部で 150 ~ 160 ぐらいあるシーンをひとつ残らず保管するビジョン プラットフォームとして使用し、シーンごとに参考資料用の写真をアップロードしました。たとえば、新聞の売店で居眠りしている店員を写したヴィヴィアン・マイヤーの写真を見つけ、シーンとして再現したいと思ったら、該当するシーンのファイルに保存します。

2. 私たちが作ったのはコミュニケーションのためのワークスペースです。テクノロジーの世界では真新しさはないかもしれませんが、映画の世界では、これでもかなり先進的なのです。

ノートン氏のチームでは、グループ内のコミュニケーションに Slack を使用しています。また、各部署の責任者は、サイズが大きくてメール添付に向かない写真や動画の共有に Dropbox フォルダを利用しています。

Dropbox の人が Slack の担当者を紹介してくれました。Slack と Dropbox のインテグレーションはとても役立っています。旧ペンシルベニア駅のシーンはすべて、私と視覚効果スーパーバイザーとで考えました。この駅舎はもう残っていないので、CGI 環境を丸ごとセットに組み込む必要があります。分解しても巨大なファイルです。今朝、車で移動中に確認したのですが、これは Dropbox に保存されていて、Slack から開くことができます。2 つのツールが連携しているのでとても便利です。

製作チームの Slack チャネルでは、『5 日目のシーンを更新したからチェックして』というメッセージと、Paper ファイルへのリンクを一緒に送信できるので、受け取った相手はスマートフォンを操作するだけで最新シーンをチェックできます。25 年近くこの業界にいますが、以前はこんなことは考えられませんでした。私だけでなく、多くの人がそう感じているはずです。

チームは作品のシーンごとに Paper ドキュメントを作成しました。シーンに使う予定のものは基本的にすべてドキュメントにまとめたので、他のメンバーから質問があがることもありません。たとえば、衣装の用意ができているかどうかを知りたければ、Dropbox にアクセスしてフォルダを見るだけでわかります。まるでコラージュのようです。見るだけですべてを把握できるのです。

Paper は情報をまとめて管理できる便利な場所ですが、ストーリーボードの作成にも最適でした。

シーンのドキュメントは、チームが常に参照していたとノートン氏は述べています。あるシーンの映像をあらゆる角度から見たいと思ったら、すべて Paper ドキュメントで参照できます。毎日の撮影では、その日の作業をシーンごとに断片化していました。

細かい撮影プランを立てていたので、1 日の撮影を効率よく進めることが何よりも重要でしたが、翌日のドキュメントを開けば、誰もが予定されているその日の手順を確認することができました。撮影日ごとに、そうしたドキュメントを用意しておくと、クルー全員がスマートフォンでチェックできるのでとても画期的でした。

3. 撮影に 50 日もかからなかったと言ったら、すぐには信じてもらえませんでした。

質問があれば、その場で Paper ドキュメントの製作ノートに書き込むことができるので、メールで問い合わせる必要がなく、大幅な時間の節約につながりました。

私だけでなく、助監督、撮影監督にとっても、Paper ドキュメントはとても便利なツールでした。ある映画製作者にこの作品を見せたら、皆が撮影日数を 75 日ほどと予想しました。撮影に 50 日もかからなかったと言ったら、『いったいどんな手を使ったんだ?』とすぐには信じてもらえませんでした。

私たちが作ったのはコミュニケーションのためのワークスペースです。
テクノロジーの世界では真新しさはないかもしれませんが、映画の世界では、これでもかなり先進的なのです。

めったに人を褒めないニューヨークのクルーたちが、ロケでここまでの情報が準備されていたことはないと言ってくれました。普通なら毎日最初にリハーサルに向けて準備する内容を Paper で済ませているからですね。Paper という便利なツールのおかげで、この映画で実現したいことを、全員の力で事前に視覚化することができました。本当にすばらしいことです。実際、もっと時間があればもっとすごいことができたと思います。

Dropbox は先日、未来のスマート ワークスペースを構築するための第一歩として Dropbox Spaces(スペース)を発表しました。ノートン氏が思い描く、映画製作のためのスマート ワークスペースとはどのようなものでしょうか。

複数の作業を一括管理するためのキュレーション スペースとして使用し、チーム メンバーがそれぞれ担当する作業に必要な情報を追加できたら便利ですね。その際、タブのようなものを使って監督、製作ノート、衣装、ストーリーボードなどラベル付けできたらいいと思います。そうすれば、あるシーンのドキュメントを確認するとしても、タブを目安に各部門の情報を大きなくくりで参照でき、ワークスペースの機能を存分に活かせます。あるいは、「コラージュ モード」を選ぶと、すべてが網羅されていてスクロールでブラウズできるなど、製作の進捗状況を総合的に確認できたらいいですね。

ノートン氏が「マザーレス ブルックリン」の映画化を思い立って 20 年。その間にテクノロジーは劇的に変化しました。AI や VR などの新しいテクノロジーが登場し、映画製作に活かせる機能がますます増えつつあります。ノートン氏のような先駆者は、これからの 20 年で何を生み出すのでしょうか。

エドワード・ノートン氏がメガホンをとった新作映画「マザーレス ブルックリン」は、2020 年に劇場公開予定です。

チームのプロジェクトに、Dropbox のスマート ワークスペースを活用しませんか。詳しくは dropbox.com/smart-workspace をご覧ください。

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