経済産業省が警鐘を鳴らすように、すべての企業が将来的なIT人材不足に備えなければ、今後ビジネスの継続が難しくなると言われています。これまでのように、ベンダーに依存するのではなく、少しでも社内にITノウハウを残していかなければなりません。そこで注目を集めているのが「ノーコード・ローコード開発ツール」です。これにより、IT部門だけでなく、事業部門でもアプリケーションの開発を進められるようになり、ひいては市民開発が実現に近づきます。今回はノーコード・ローコード開発ツールとは何かを振り返るとともに、どのようにツールを社内普及させていくべきかについて考えていきます。
ノーコード・ローコード開発ツールとは
ノーコード・ローコード開発ツールとは、プログラミングに関する知識を持たない人でも、コードを書くことなくアプリケーションの開発が可能になるものです。テンプレートや機能を直感的な操作で選択していくだけで、容易にアプリケーションを開発できます。詳細なコードを書かないため、カスタマイズの行き届いたアプリケーションを開発するのには適してませんが、シンプルな機能を備えたアプリケーションの開発には向いています。
ノーコード・ローコード開発ツールのいずれも、GUIベースのツールを使うことで現場部門でも迅速なアプリケーション開発が可能になります。そのため、外部のIT企業に依頼することなく、迅速なアプリケーションの内製化が実現するのです。
IT人材不足がDXの妨げに
昨今、日本企業の多くがDXを実現すべく奮闘しており、既存のレガシーシステムやアプリケーションを刷新して、業務効率化や新たなビジネスモデルの創出を実現しようとする企業も少なくないでしょう。
その一方で、DXの旗振り役となるIT人材の不足が大きな社会問題になっています。経済産業省が危惧しているように、国内のIT人材はIT企業に集中する一方で、ユーザー企業に従事している割合が欧米に比較して著しく低い状況にあります。さらにIT企業が東京に一極集中することによって、地域のデジタル化を推進するIT人材は常に不足している状態でもあります。
参照:経済産業省「我が国におけるIT人材の動向」を基に作成
そのため、DXの一環として自社で利用するシステムやアプリケーションを開発しようとするときにも、外部IT企業、しかも多くは首都圏にあるベンダー企業へ発注せざるを得ない状況になりがちです。そうなると時間もコストも必要となり、迅速なDXの実現は至りません。またDXに限らず、IT人材不足はビジネス継続にも影響を及ぼしかねません。
そこで、外部企業に頼ることなく自社のリソースを有効に使いながら、素早くオリジナルのシステムやアプリケーションを開発する手段として、「ノーコード・ローコード開発ツール」が注目されるようになりました。
ノーコード・ローコード開発ツールの社内普及を進めるには
このように、ノーコード・ローコード開発ツールは利便性の高いツールではありますが、単純に導入しても期待する効果は得られないでしょう。ここからはツール導入を阻む要因をいくつかご紹介します。
1.全社一括でツール導入しようとする
現場のITリテラシーが低すぎる、もしくはモチベーションに差がありすぎる場合、反発が起きることもあります。そのため、まずはやる気のある部署からスモールスタートし、そして成功事例を積み上げることが重要です。これにより、ツールに興味を持つ部署が出てきて、自然に拡大していくことでしょう。
2.導入時のツール説明、運用に負担がかかる
たとえ、専門知識なしでツールが使えるとしても、最初に、ベンダーからのセミナー、サポートセンター、テキストでの説明などを行わなければ、ツールの社内普及は難しいでしょう。そこで、まずは組織に1人以上のメンターをつくり、すぐに横でツールについて何でも聞ける人が設置することが重要です。
3.開発の難しさによって使い分けが必要
業務担当者のITスキルや実装機能よっては、ノーコード開発ツールだけでは実現が難しいケースもあります。その場合はベンダーに依頼するのも手です。
4.IT部門の運用負担を考える
市場には数多くのノーコード・ローコード開発ツールがあり、複数のツールを利用可能にしている企業も多く見られます。もちろん、各ツールならではの特徴があるため、その運用でも問題ありませんが、その際は社内にヘルプデスクを設置する必要が出てきて、IT部門の負荷が増えかねません。そのため、ユーザーから直接ベンダーに問い合わせできるツールを選定することも大事になってきます。
上記の点に注意しつつ、ノーコード・ローコード開発ツールを使うことで、より一層、システム、アプリ開発の内製化が実現に近づくはずです。
まとめ
Dropbox では、数多くのノーコード・ローコード開発ツールと連携することが可能となっています。各種ツールでアプリケーションを開発する場合、Dropbox
API を利用することでファイルやデータベースの保存先として Dropbox を指定することが可能となります。完成したアプリケーションでは、Dropbox にファイルを保存したりデータベースを構築したりといったことが、アプリの中でシームレスに実行できるようになります。
Dropbox と連携するローコード開発ツールとして、「kintone」が挙げられます。例えば、エンジョイント税理士法人様では、顧客との間で締結する顧問契約について、かねてから kintone で構築したアプリにより管理していました。しかし、契約書を作成する場合にはそのデータを参照し、担当税理士が手作業で作成していました。そのため、契約書の作成漏れや入力ミスが頻発したほか、保存時のファイル命名ルールもバラバラで、あとからデータを参照するのに手間と時間がかかって非効率であることも問題になっていました。
そこで電子署名ソリューションとの連携も含め、Dropbox と kintone で構築したアプリとをAPI連携させ、契約書の作成から保管、さらには顧問先への送付といった作業の自動化するのに成功しました。
このように、ノーコード・ローコード開発ツールによる内製化を実現したい企業は、ぜひ Dropbox を活用することを検討してアプリケーション開発を手がけていただきたいものです。